上総柚香
私は混合診療に基本的に賛成である。
何故なら混合診療は患者ニーズの多様化につながると考えているからである。
まず前提に、混合診療とは保険診療と自由診療を併用したものである。日本のほとんどの地域では原則、混合診療は認められておらず、保険適用外の治療をすれば、本来それに至るまでに保険が適用できる医療行為も全額自費診療扱いとなってしまい、患者の経済的負担は多大なものになっている。
日本国憲法14条では、『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。』と規定されている。法の下に平等とは、原則として、すべての人々を一律、画一的に取り扱うことを意味する考え方がある。また、さらに踏み込み、現実の状況を考慮した上で、積極的な機会の提供を通じで、社会的な格差を是正しようとする意味もあるとの考え方もある。混合診療は、積極的な機会の提供を通じて、社会的な草を是正する側面を持つと私は考える。しかし、混合診療を受け入れることは、診療の質の低下、経済力による医療格差、国民皆保険の崩壊につながるとも考えられており、慎重に考察しなければならない。「基本的に賛成」としたのは、賛成するにあたり、先ほど述べた問題点を含め、調整すべき点が挙げられるからである。
1.健康保険の適用と健康保険適用外の線引きについて
社会保障制度とは、憲法25条生存権のすべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むため、安心快適に過ごすために設けられた制度であると私は考えている。よって、社会保障制度は誰か特定の人の為ではなく、自分の為、皆の為のものであり、社会連帯、共助の観点から支えていくべきである。健康保険の適用とする診療は皆の利益であり、最低限度の生活を営むために、症状に合わせ平等に行われるべきである。混合治療における保険の適用と保険適用外の線引きは社会的規範にそぐわなければならない。
歯医者では混合治療が認められてきた。虫歯治療にあたり、銀歯を入れること、セラミックを入れること、金を入れることでは少々意味が変わってくる。健康保険適用内の銀歯を入れることで健康や最低限度の生活を得ることができる。しかし、見た目や強度を良くしたい、といったような自己の要求を満たす理由で、銀歯ではなくセラミックを入れる治療には、健康保険適用するのではなく自分で払うべきであろう。金歯は個人資産にもなるのである。
病院では差額室料が存在する。病院に入院した際、プライバシーの保護、より良い環境で医療を受けるための特別医療環境室を利用する(同意書にサインがない、または医師の判断で入院された場合は、病院側は請求できない)と、健康保険適用外の費用、差額室料が発生してくる。病室のグレードアップは、個人の利益であり、グレードアップせずとも最低限度の生活を営むための医療はなされるのであるから、個人から徴収するのは当たり前であろう。では保険のかからない差額室料は混合診療の一種と言えるのではないだろうか。日本医師会は病院のベッドはあくまでアメニティにとどまり、診療行為ではないため、その部分で費用を徴収しても混合診療には該当しないと解している。
混合診療を認めると、整形や形成手術での医療行為や入院も該当してしまう。本来自由診療で行うべき医療行為も保険で賄われてしまうのである。ヒヤルロン酸注射やビタミン注射を保険適用で打つことができると病院側も勧めることができる。これらは、個人の利益でしか成り得ない上、健康保険適用とするのはおかしい。
不妊治療はどうだろう。現在、不妊原因を探るためになされている不妊検査までの一般診療であれば、それらのほとんどに健康保険が適用される。しかし、人工授精、体外受精、顕微授精などの生殖補助医療は保険適用外である。その理由として、厚生労働省は、@成功率の低さA多胎妊娠に対する減数手術などについての倫理的問題B非配偶者間での不妊治療における社会的合意が得られないことC限られた医療費財源の効率敵配分、をあげている。以上のことから、保険適用には治療の安全性(社会的規制)、治療の有効性、倫理的問題、医療費財源の問題が重視されている。不妊治療をうけている9割の人は保険適用を望んでいるとされていことから、自治体によって、高額の治療費がかかる特定不妊治療において、経済的負担を図るため、医療保険が適用されない治療費の全部、又は一部が助成されている。要件は年収や年齢、法律婚の有無等、細かく決められている。同じ金額、同じ回数で、25歳と40歳の人が不妊治療を受けるとでは、効果が変わってくる。医療財源を有効に使うという点では、要件設定や、年齢に伴う回数制限は有効に思う。しかし、憲法14条の法の下の平等に反するのではないか。法の下の平等をどう解釈するかによるだろう。国民皆保険は、生活保護者を除き、皆が支払い、皆が保障をうけている。不妊治療に保険を適用し、少子化が改善されれば、個人の利益だけではなく皆の利益になり得るだろう。私は少子化が社会問題になっていることから、不妊治療は積極的に保険適用若しくは混合治療にしてよいと考えている。合理性、経済的規制を考え、制限を設けなければならないようなら、平等ではなくなり、国民皆保険で扱えないから、自由診療の病院独自の料金設定を統一し、自治体単位ではなく全国で統一し、かつ3割負担に近しい助成金を給付するとしたらどうか、と考えた。
臓器移植は小腸を除く臓器移植に保険が適用されている。小腸移植は高度先進医療として認められている。よって手術自体は保険が適用されないが入院費用、検査などは保険適用になる。しかし、その反面、臓器提供者が少なく、イスタンブール宣言が出されるまでは、海外渡航診療移植(医療観光)が目立っていた。公費負担制度は給付対象を日本国内での治療に限っているため、海外渡航診療移植は保険が適用されず莫大な資金がかかる。また、お金を積めば横入りして良いのかという考えに国際的にも反対傾向であり、厳しいのが現状である。国内では、人工心臓に保険が適用されるようになり、待機期間中の生存率があがった。それでも、移植の適応がありながら、1年間で半分の患者さんは亡くなっている。
混合診療で得た財源を、高度医療を受けることでしか完治が不可能な患者さんに回すことで、より医療の水準を上げることができるのではないか。
2.ドラッグラグとは
現在日本の薬代は総括原価方式をとっている。医療機関はコストと利潤で成り立っている建前、薬価で売らず実勢価格で売り、その差額分を収入とする習慣がある。これらが存在すると、医療機関の薬剤処方の偏りが生じ、公平な処方が妨げられ患者への治療に影響が出てしまう。社会的規範の影で自己の利益を優先する構造になってしまっている。よって2年ごとに実勢価格に近づくよう強制的に引き下げられている。
薬は動物実験、人体実験による治験を行ったあと、PMDAで審査を行い、安全性を確認した上で使用され始める。未承認の薬の使用は、日本では自由診療となり、お金がかかってしまう。日本は欧米と比べ新薬の承認審査体制の不備や、治験の基準や環境が整ってないことなどから、新薬の認可が遅れている。また、日本の制度では効能・効果毎の承認を受けないと保険適用されないため、保険診療では承認されていない効能・効果には使えない。欧米で実用から10年以上経過した薬が日本で未だに承認されていないと言われている。混合診療が開始されると、未承認薬をつかった治療に保険適用をすることができる。海外で開発されたばかりの施術や薬が自由診療となっているわけではない。混合診療により、薬の承認が遅れる可能性もある。よって、有効な薬はいち早く承認し、保険適用にすべきであるし、体制を整えるべきである。でなければ、経済的余裕のある患者のみ選択肢が増え、いつまでたっても、長期的な患者の利益にならないからである。
3.既に始まっている混合診療
去年末、安倍首相は「やる気のある地方の自治体が、規制改革で地方厚生を実現できるよう地方創生特区を、今春を目処に新たに指定する」と表明した。東京では、東大病院、慶応病院、国立がん研究センターの3施設で混合診療に関する規制を緩め、国内未承認薬を使った、治療を可能にすることで、先端医療に道筋をつけようとしている。どのくらい混合診療を受ける患者がいるのか、これからの保険改正に大いに参考になるのではないだろうか。
1で述べたことは保険外併用医療費制度に準ずる。保険外併用医療費制度とは保険適用外の診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める「評価療養」と「選定療養」については、保険診療との併用が認められており、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、その部分については一部負担金を支払うこととなり、残りの額は「保険外併用療養費」として健康保険から給付が行われる。
不妊治療の例にも上げたが、私は積極的に保険外併用医療制度の該当診療を増やすべきであると思う。しかしそれでは、財政難が続く中、回らないのではないか。だからこそ、保険外併用医療制度は、混合診療の禁止という日本の医療保険制度の原則の例外にとどまらず、混合診療とすればどうだろうか。
再生医療に伴う薬事法の改正にも目を離せない。再生医療は治験および承認から保険適用までの間、保険外併用療養の評価療養として行うほか、「条件・期限付き」承認の場合でも保険適用することを決定した。『再生医療はiPS細胞等による、革新的な医療として実用化に向けた国民の期待が高い。一方で、安全面などの課題が存在している。
このため、再生医療等製品については、安全性を確保しつつ、迅速な実用化が図られるよう、その特性(人の細胞等を用いることから個人差などを反映し、品質が不均一となること
)を踏まえた制度等を設けることが必要であるとされている。まだ対象症例が少ないことから、「条件付き」で承認し、その後、全例登録を行い、有効性と安全性をフォローアップし、最終的に条件付きを外すという、「オーファン・ドラッグに近い仕組み」が再生医療等製品に最も適しているとした。業界団体も、再生医療等製品のさまざまな特性を踏まえた仕組みを求め、「条件付き承認」段階からの保険償還を要望した細胞シート作成だけで1千数百円かかる上、その対象患者は心臓移植あるいは補助人工心臓の植込み手術の患者よりも多いと想定されることから、特別な医療ではなく、普遍的な医療にしていくためには価格を下げる必要性を指摘した。』(https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/263285/ 引用)
再生医療を保険外併用療養に加わったことで、日本での更なる医療観光分野の収益も見込めるのではないだろうか。上記の再生医療の姿勢は、先述の薬の認可にも通ずると思う。
4.最後に
現在、日本は世界第一位の長寿大国である。OECD加盟国中、18位という低い医療費でありながら、WHOでは健康達成度、健康寿命が第1位と評価されている。3割の自己負担で医療が受けられる国民皆保険制度、高齢者世帯の平均所得の約7割を占めており、高齢者世帯の6割以上が頼っている公的年金、国民皆年金制度がなければ、これらの評価は得られなかったであろう。また日本の医療は進化し続け、世界保健機関(WHO)、経済協力開発機構(OECD)の報告書で、総合世界一と評価されている。
それらの社会保障が成り立ってきたのは、支える財源があるからである。混合診療は有効に行われれば、日本の医療をさらに進化させ、救われる患者も大いに増えるであろう。しかし、間違った方法で行われれば、財源、医療の安全性、最低限度の医療の線引き、格差などの崩壊を誘発してしまう。現在は、混合診療がなされなくても、保険外医療費制度がある。私は、レポートを書くにあたり、今後は混合診療賛成の立場では、混合診療の条件設定の細分化を徹底してなすべきと考えたが、国民皆保険の崩壊を危惧する側面を持つ以上、混合診療を踏みとどまり、保険外医療費制度の拡大、未承認薬の承認体制を整えることもまた、良いと考え始めた。
今回は医療に偏った意見になってしまったが、社会保障的視点からも更なる考察が必要だと感じている。どちらになろうとも、社会保障の安定のため新たに切り込んで行かなければいけない。
参考文献
中江 章浩 社会保障のイノベーション 信山社
唐鎌 直義 脱貧困の社会保障 旬報社
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000060623.pdf
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3170/sbb31704/1954-20862
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/heiyou.html
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/263285/
http://kongoshinryo.jpn.org/static/misunderstanding.html
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/kosodate/josei/funin/top.html
http://www.waseda.jp/sem-fox/memb/06s/sekine/sekine2.html
http://www.med.or.jp/nichikara/kongouqa/appeal.html
谷内椋
経済学部経営学科 4年22組
11E222024 谷内椋
私の考え
混合診療は、憲法14条の法の下の平等に違反するのかどうかという点が
この問題を考える上で重要になってくると思うが、私は、混合診療には反対だ。
混合診療が示すもの
混合診療とは、「公的医療保険の対象となる診療と、保険外の診療を併用すること」
である。しかし、現在は保険診療と保険外診療を併用すると保険診療の分も保険が効かず
すべて自費で負担しなければならないが、混合診療を認めれば「保険診療の分については
患者は三割負担だけで済む」という声も聞こえる。この点だけで言えば聞こえがいいし、
私も素晴らしいことだと思います。しかし、それだけが混合診療と理解するのはいけないことだ。
混合診療の姿はそれだけではないと思います「再生医療や臓器移植など高度な医療の責任は持たな
ければいけない」という点も混合診療だと思います。
「風邪や腹痛などの軽度な病気や一部の薬は保険から外す」といった考えや「かかった医療費の
うち千円か二千円は、患者が支払い、残りの医療費の三割を改めて患者が負担する」という「千円
免責制度」もこの混合診療の範ちゅうに入るのではないだろうか。
さらに例えば「初診料は保険対象とするが、再診料を保険から外し、自由料金とすると、腕が
よい医者や、きちんと説明してくれる医者に患者が集まり、技術を磨くモチベーションが高まる
のではないか」と私は思いました。一つの医療機関が「午前中は保険診療、午後は自由診療」と
いう診療の仕方をするのも混合診療そのものである。
国民皆保険と混合診療
日本の医療制度では、国民は健康保険や社会保険などに加入し、毎月保険料を支払うかわりに
万一病気にかかったときには「いつでも・どこでも・誰もが」公平な医療を公平な負担で受けられ
万一高額な医療費となっていても支払いの限度額が決まっており、安心して医療を受けることが
出来ます。この制度を国民皆保険制度と言い、世界に誇れる医療制度です。
しかし、この制度にはでは診療の制限があり、国が有効だと認めた病気の薬や検査、治療にかかった
医療費は保険が認められますが、それ以外の新しい薬や治療法、またはまだ効果がはっきりしていない
治療などは保険診療で診療する事は認められていません。これは国民皆保険制度を守るルールですし、
診療を行う医師は保険医として登録され、このルールを守る義務があります。日本で認可されていない
海外での新しい治療や薬を行う事は原則出来ないということです。
だからと言って混合診療を拡大しても保険給付の縮小による患者の負担は拡大する。ここには国の
医療費負担削減の思惑も見え隠れするように思います。
医学の進歩による高度な治療技術の開発は難病患者にとって大きな希望となり、藁にもすがる
思いだと思います。ただし、先端的な医療が高額だからといって自由診療のまま保険を適用しなけ
れば、経済的理由によって新たな医療技術の恩恵を受けられない患者が出てきます。結果、症状が
重症化し、医療費拡大につながるし、医療格差の拡大にもつながると私は思います。
混合診療が禁止されてきた理由
混合診療が今まで禁止されてきた理由はいくつかありますが、最もよく引き合いに出されるのが、
保健医療機関に関する規則の中にある特殊療法を禁じる項目です。つまり、有効性や安全性の不確か
な医療を、保健医療機関で行ってはいけないということです。ただし、混合診療をはっきり禁止した
法律がないことは、裁判所も認めています。
このように原則禁止とはいえ例外もあり、厚生労働省の認めた先進医療や差額室料などは、2004年
から保険診療との併用・混在が認められるようになりました。これに当てはまる先進医療とは、厚生労
働省の先進医療会議で有効性や安全性を確認した技術のことです。
差額室料とは健康保険適用の範囲外で患者に請求される病室の費用のことです。または差額ベッド代と
もいいます。
政府の成長戦略と混合診療
政府の規制改革会議が成長戦略の中で、混合診療の全面解禁につながる改革を行おうとしています。
この改革は、日本の医療と医療保険に致命的な影響を及ぼしかねない。また、規制緩和という経済の
論理に偏った議論の中で決められていくことには強い懸念を抱かざるを得ない。
小泉構造改革では、首相が施政方針演説で解禁するとまで言及したが、国会などでの議論を経て、
将来の保険適用を前提に有効性や安全性が確認された先進医療などについて混合診療を認める保険外
併用療養費制度に再編成する形にとどまりました。
民主党政権でも行政刷新会議を中心に原則解禁が議論されましたが最終的にはそれにはいたりませんでした。また、TPPに加入すると混合診療の解禁が求められるとの声も聞かれましたが、政府は今日まで
原則禁止を守るという結果になっています。
現在、規制改革会議では患者と医師との合意があれば混合診療を幅広く認めることが検討されている。
しかし、医療についての専門知識を持たずに、切羽詰った状態に置かれた患者が、有効性や安全性が確認
されていない医療を受けることについて適切に判断できるか、私は疑問に感じますし、投げやりに感じて
なりません。
高額な保険外負担を強いられることにもなり、国民福祉の増進に資するものとは到底言えないと思うし、
本来保険で患者にあまねく提供できるようにすべき医療を保険外のままにとどめてしまう結果にもなりか
ねないと思います。生命や医療、労働、安全、環境、衛生などにかかる、社会的規制は、人間が人間とし
て生きていく上で不可欠な規制なのではないでしょうか。混合診療を全面解禁すると産業界にとっては発
展が大いに見込まれるかもしれませんが、無原則な規制緩和は国民福祉を損ねる危険性があると思います。
混合診療の禁止と例外的保険外診療
日本では、一連の診療行為において保険診療と自由診療を併用することは原則として認められていな
いということは何度も言ってきたことですが、例外的に保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣
の定める評価療養と選定医療につては、保険診察との併用が認められています。保険外併用療養費
とは、保険診察と保険外診療が例外的に認められる場合において、そこで発生した費用を給付する
制度のことをいいます。通常の治療と共通する部分(診察、検査、投薬、入院料等)の費用は、一般
の保険診療と同様に扱われ、その部分については一部負担を支払うこととなり、残りの額は保険外併用
療養費として医療保険から給付が行われることになる。
混合診療に対するさまざまな声
混合診療をめぐっては賛否両論、さまざまな声が聞かれるが具体的にどのような声があり、どのような
点が主な賛否を分けるのかを考えてみたいと思います。
最初に混合診療に賛成している経団連や患者団体のポイントはこのようなものです。@患者の自己負担
が減る。A医療技術の進歩につながる。B成長産業ができる。などだ。私は冒頭に言ったように混合
診療には反対なので果たして本当に自己負担が減り、これらの利点の裏にあるブラックな部分を蔑ろに
して考えていいのだろうかと思ってならないです。
では反対しているのは日本医師会や厚生労働省でそのポイントは@金持ち優遇の医療になる。A安全性
に問題あり。B保険財政の悪化。などだ。@の金持ち優遇の医療になるというのは国民皆保険の崩壊に
つながる大きな問題であり私は、これらの反対意見に賛成します。
また、日本医師会のホームページでは、社会保障を充実させることは国の社会的使命であることが
日本国憲法にも規定されていて、国が果たすべき責任を放棄し、お金の有無で健康や生命が左右されるこ
とがあってはならない。と述べています。
先進医療扱いなら自己負担が軽減
規制改革計画は「先進医療ハイウェイ構想」と銘打ち、外部機関を入れて評価の新体制をつくり、
先進医療のリストアップをもっと早く効果的に進めるというものです。
これまで未承認の抗がん剤を使うには、治験に参加するか、全額自己負担で治療費が高額になるのを
覚悟するしかありませんでした。例えるなら、1ヶ月分60万円の未承認薬を使い、併せて一般的な医
療を30万円分受けたとすると患者の負担は90万円。未承認薬が先進医療に収集されれば、一般的な
医療の30万円分に健康保険が適用されて9万円となり、自己負担額は69万円に減るということです。
これは患者に負担が軽減し、とてもよいことだと思います。
医療観光を考える
医療観光は今ホットな話題で、海外の観光客に日本の最先端医療を受診させる「観光」企画のこと
です。2008年で年間6000万人が医療観光していて、産業化することで日本の外資獲得手段の一つにも
なりえる。中でも中国の富裕層の需要はすごい。近年、中国人の日本への観光客が大幅に増大している。
彼らにとって日本はやはり安心・安全という概念が強く、自国より進んだ技術をもつ日本の医療を信頼し
ている。また、一回の診療に高額の医療費を払ってくれるので、それによって地域振興、税収アップが
見込める。それに医療機器を使う人が増え、医療コストダウンにもつながる。市場規模は年々増加し、
観光としての医療は、崩壊寸前の地域医療の救世主として期待されている。しかし、その裏で医師不足
は、改善しなくてはならない大きな問題だと思いました。
医師不足を改善するには自治体の協力や首都圏との医療的格差を縮める必要が出てくると思います。
田舎だからと言って都会よりも医療のレベルが落ってしまわぬように地方にも最先端医療を普及
させることにより医師にも魅力を感じてもらえるのではないだろうか。と私は思いました。医師
不足の改善こそが医療観光によって得られる利益を拡大させ、地方への地域振興や観光収入の増大
につながってくると思います。
※出典
Wikipedia
日本医師会HP
経団連HP
WEBNOTE
熊田 暉
混合診療の全面解禁に反対!
1 そもそも混合診療とは?
まず医療には「保険がきく」ものと「保険がきかない」ものがあります。
保険がきくもの、つまり健康保険でまかなえるものを「保険診療」といい、保険者または国が保険分を支払ってくれるため私たちは少しの負担で済みます。
そして、自然分娩での出産や美容整形など「保険がきかない」ものは「自由診療」とよばれ、その料金は医療機関が自由に決めてよいことになっており、保険がきかないため全額、患者の自己負担になってしまいます。
1つの病気の治療に、保険診療と自由診療の医療サービスを併用するものを「混合診療」と呼びます。
例えば「Aの治療部分は保険でまかない、Bの治療部分は保険がきかない治療なので自費で支払う」というように、保険負担と自費負担が混在していることをいいます。
しかしこの混合診療は現在日本では禁止されています。
そのため、保険のきかない治療を受けるときには、検査や診察料など本来は保険がきく部分も含めてすべてが自由診療扱いとなり、全額自己負担しなければならないのです。
このことを「混合診療の禁止」といいます。
この「混合診療の禁止」とは、一見すると融通のきかない制度のように思えますが、これは「平等な医療を受ける機会を保証した国民皆保険制度の趣旨に反する」というのが理由であり、実際に混合診療をやったために、保険医療機関の承認を取り消された病院もあるのです。
保険負担と自費負担が混在していてもいいのではないか?と思う人もいるかもしれませんが、ではなぜ混合診療は禁止されているのでしょうか?
ひとつの理由としては、混合診療が認められるようになってしまうと、今まで保険の適応だった治療が保険のきかないものに変更されたりすることが増えてくるおそれがあります。自由診療は全額自己負担ですので、自由診療の割合が増えてくると言うことは、患者の出費が増え、次第に「お金にゆとりのある人は高度な医療を受けることができ、そうでない人は自分の財力に見合った医療しか受けられない」ということになってしまう危険があると考えられているからです。
日本には「国民皆保険制度」があり、いつ、どこでも、誰でも、病気になったときに医療費を気にせず平等に医療が受けられる制度があり、この国民の安心の基盤になっている制度の崩壊を招いてしまうことが懸念されているのです。
しかし、例外的に混合診療が認められているものもあります。
これを保険外併用療養費制度といいます。
現在、患者さんのニーズの多様性に応えるために、保険で認められていない療養を受ける場合でも、一定の枠を満たした「選定療養(患者さんが選択できるサービス)」や「評価療養(将来保険適用になる可能性があるサービス)」であれば、保険診療に準じた保険給付が行われるようになりました。選定医療の例として時間外診療、差額室料などがあり、評価療養の例として臓器移植などの先進医療、治験などがあります。これを「保険外併用療養費」制度といいます。
私は混合診療が認められ、今まで保険適用だった治療が適用されなくなるのが怖いです。
重い病気にかかった時、今までは保険適用で払え、治せる病気だったのに、混合診療が解禁され自己負担額が増え払えず病気が治せなくなる事態になりかねないと思いました。
また、格差が広がりお金の有無で人の命が左右するような社会にならないでほしいです。
そのような防止策として国民皆保険があり、誰でも平等に医療が受けることができ、例外的に混合診療を認めているサービスがあるのだから、混合診療を全面解禁し国民皆保険を崩壊させずこのままの状態を維持するべきだと思いました。
2 混合診療の解禁は国民福祉を損ねる危うさを招く
現在、規制改革会議では患者と医師との合意があれば混合診療を幅広く認めることが検討されている。
もし混合診療が認められれば、日本で安全性、有効性が確認されていない医療や科学的な根拠が立証されていない医療が一般に施され、患者の利益に反するおそれがあります。
また、医療についての専門知識を持たず、切羽詰まった状態に置かれた患者が、安全性や有効性が確認されていない医療を受けることの是非を適切に判断できるでしょうか。
高額な保険外負担を強いられることにもなり、国民福祉の増進に資するものとは到底言えない。本来保険で患者にあまねく提供できるようにすべき医療を保険外のままにとどめてしまう結果にもなりかねません。
生命や医療、労働、安全、環境、衛生などにかかわる、いわゆる社会的規制は、人間が人間として生きていく上で不可欠な規制です。混合診療を全面解禁すると産業界にとっては世界が広がることになるだろうが、無原則な規制緩和は国民福祉を損ねる危険性をはらんでいます。
海外では認められて日本では認められていない医療は日本ではなにかしら理由があるから認められていないのではないかと思います。患者のためになるとは限らない医療のために患者が不当な負担をこうむってはならないと思います。そのためにも社会的規制は徹底するべきだと思います。
3 混合診療、医療観光に反対の日本医師会
日本医師会は混合診療に対して混合診療の導入は現物給付制度の否定に他ならないとしています。そして、現物給付の否定は、公的医療保険給付の縮小をもたらし、必ずや患者負担の増大につながります。
患者負担の増大は、受診者の経済力格差による医療の差別化を派生させる。わが国が国民皆保険体制という優れたシステムの中で守り続けてきた公平性、平等性は、現物給付制度の崩壊とともに終焉を告げることになります。
日本国憲法を引用するまでもなく、社会保障を通じて国民の生命・健康をより高いレベルで守るのは国の社会的使命です。
この使命を果たすためには、現物給付制度下における国民皆保険体制の堅持は、必要不可欠の条件です。
そもそも医療ニーズ発生の不確実性を、保険という社会システムでカバーするのが社会保障のひとつの目的です。患者負担とは、傷病により医療機関等を受診したときに発生するものであり、現状以上の負担増は、リスク回避という視点からも社会保障システムとしての公的医療保険の存在意義をも問うことになります。
医療費の対GDP国際比較からみても、わが国の医療費水準は先進諸国の中でも決して高いわけではありません。
その中で、国民医療費の財源負担構成に占める家計負担の割合(保険料の被保険者負担+患者負担)は、約45%にも達している。さらに2002年10月施行の健康保険法等の一部改正によって、患者負担割合が引上げられ、家計負担割合は50%近くに達することが予想されます。
このような現状において混合診療を容認すれば、家計負担割合が財源の半分以上を占めることになりかねない。果たして、社会保障としての適切な費用負担配分と言えるのでしょうか。
以上のような状況を勘案すれば、現状において混合診療を容認する合理的な理由はないと結論付けられます。
また、医療観光に対しても反対の意見を述べています。
そもそも医療観光とは一般に医療行為を受ける目的で海外に渡航することをいいます。
日本では国民は誰でも治療費の一部負担で医療が受けられる国民皆保険が維持されている。安全で普遍性のある医療は保険の対象にするという考えで、保険外診療(自由診療)との併用、混合診療は原則禁止されている。
混合診療の場合は全額が自費となる。外国人患者は自由診療となり、必然、医療観光の対象も富裕層となる。その受け入れ促進を機に、日本人の富裕層も含めて医療にアクセスできる格差が拡大すると懸念しているのだ。
また、外国人患者の受け入れに旅行会社やコーディネーターなど営利企業が関与することへの批判もある。
医療観光は、所得の多寡で受けられる医療に差が出る混合診療の全面解禁につながる可能性があり、国民皆保険の空洞化や地域医療の弱体化を招く恐れもある。デメリットの方が大きいと述べています。
私は混合診療を全面解禁したら1〜2年ぐらいは日本の医療の発展として支持されるかもしれないと思います。実際に混合診療に対する意識調査をしたところ半数以上の病院などの医師が賛成しています。しかし、10年後も果たして支持されているのでしょうか。混合診療のせいで負担額が増え患者の享受するメリットが低くなるのではないかと思います。目の前のこと考えるのも大事ですがもっと先のことも考えながら日本の医療の発展に導いてほしいです。
また医療観光に対しても、混合診療の全面解禁につながる可能性を秘め結局は富裕層の人たちにはメリットがあるが貧しい人たちにはデメリットが多いのでその分何かで補える制度を作らない限り私は反対です。
4 混合診療、原則大病院100カ所で 再生医療も対象
厚生労働省は保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」拡充の具体案を示しました。原則として全国約100カ所の大病院で実施し、中小病院や診療所は患者を紹介するのが主な役割になります。
混合診療を拡充する仕組みは「患者申し出療養(仮称)」と呼ばれ、患者が希望すれば、抗がん剤など未承認の新薬や医療機器を幅広く使えるようにする。対象になった薬や機器は検査や処置、入院費など保険診療との併用が認められ、患者は今より軽い負担で先端医療を受診できる。
混合診療を実施する薬や機器は原則として東大病院など15カ所ある臨床研究中核病院か、大学病院など86カ所の特定機能病院で受診します。他の医療機関に道を開く仕組みもあるが、臨床研究中核病院が協力医療機関として申請し、厚労省の専門家会議が承認しなければ実施できません。
厚労相と行政改革相が合意した改革案は「できるだけ患者に身近な医療機関で迅速に受診できるようにする」と明記。診療所も含め最大千カ所超で実施される可能性も見込まれていた。厚労省案だと100病院以外に広げる治療内容は最終的に同省の判断になるので、抗がん剤などは「リスクが高い」と外れる公算が大きい。
今回の案では中小病院や診療所は患者からの相談に応じ、大病院への申し出を支援する役割を担うとしました。患者に身近な診療所などは相談窓口としての位置付けにとどまる可能性が出てきました。
中医協は、患者らの細胞を使って体の組織を修復する再生医療製品を混合診療の対象に新たに加えることを了承しました。診療を通じて安全性や効果が認められた再生医療製品は、健康保険が適用されるようになります。
私は混合診療の全面開禁には反対ですが、すべての病院が混合診療禁止にするのもおかしいと思います。世の中イレギュラーなことばかり起きていますから100カ所というのが多いのか、少ないのかはまだ分かりませんが少しぐらいは混合医療を実施してもいいかなと思います。
5 まとめ
混合診療についていろいろなこと学び、最初は混合診療なんて負担額が増えて安全かわからない医療を施しデメリットが多いから反対でした。しかし勉強していくうちに混合診療にもメリットがいっぱいあることに気づき、憲法14条の法の下の平等にも違反しないように平等に保とうとしているので、おそらくあと何年かで全面解禁されると思います。そこではたして解禁した後どのような医療制度になっていくか楽しみです。
参考資料
日本医師会のホームページ
厚生労働省
日経経済新聞
伊藤和也
「混合診療は憲法14条違反であり、日本の医療を壊滅させる危険性がある。」
・混合診療
現在の日本における保険制度では、平等な医療を提供するために、範囲外の診療費を徴収することを禁止している。このため、範囲外の診療費を徴収する場合には健康保険が適用されず、全額自己負担となる。即ち、保険診療と自由診療の併用は原則的に認められていない。今日議論になっている「混合診療」とは、健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、範囲外の分を患者さんが医療機関に支払うというもので、規制改革・民間開放推進会議では、「患者本位の医療」を実現する観点から、通常の保険内診療分の保険による費用負担を認めるよう、解禁することを強く求めている。
・.特定療養費制度
一方現在、高度先進医療(安全性・有効性が確立されているが、その実施については未だに一般に普及するには到っていない技術。再生医療や臓器移植など)、選定療養(差額室料など。医薬品の治験や、薬事法承認後、薬価収載前の医薬品に係る診療、抗がん剤などいわゆる適応外の診療なども含まれる)ついては、特定療養費として保険診療と自由診療の併用を認める制度がある。しかし、その適用範囲は、公的保険カバー範囲全体から見ると厳しく限定されており、ただ、高度先進医療については、人員面や体制、専門委員会の設置などの施設基準が厳しく、大学など医療機関しか申請できず、また保険薬局についても、施設基準を満たす薬局のみしか、特定療養費を算定することができない。
・国民皆保険と混合診療の関係
混合診療解禁は、短期的に見れば、患者に一定の利益をもたらす。 しかし、混合診療解禁により、確実に、保険診療削減圧力が強まり、保険診療充実圧力は弱まる。 よって、長期的には、国民皆保険制度は崩壊する。ほぼ抜け殻状態で制度を存続させることをもって「国民皆保険制度は崩壊しない」と言う者もいるが、それは大きな間違いである。 形だけの制度が残っても、その本来の目的を達成できないのでは、実質的には崩壊している。国民皆保険制度は、国民が健康に生存する権利を守る制度である。 すなわち、貧富の差に関わらずに必要な治療を受けられるようにする制度である。 国民皆保険制度の目的は、金がないために必要な治療が受けられなくなる事態を防ぐことである。 ただし、治療その物を受けられても、その後の生活が破綻するようでは、健康に生存する権利を守れたとは言えない。 言い替えれば、健康に生存する権利を守れるギリギリまで貧乏人に金銭的負担を求めても、国民皆保険制度の目的は達成可能である。 つまり、国民皆保険制度の目的は、所得再分配ではない。 国民皆保険制度の目的は、格差を是正することでもなければ、貧乏人に豊かな暮らしをもたらすことでもない。 もちろん、健康に生存する権利を守れるギリギリまでの底上げは必要となるが、それ以上の底上げも格差是正も必要がない。 国民皆保険制度としては、ただ、国民の健康に生存する権利さえ守れれば良いのだ。 といっても、所得再分配の必要性を否定しているわけではない。 所得再分配は別の制度によって行なうべきことであって、国民皆保険制度の役割ではないのである。健康に生存することができれば、どんなに貧しい暮らしを強いられても、国民皆保険制度は目的を達成できている。 しかし、どんなに豊かな暮らしを送れたとしても、健康に生存する権利が脅かされるのでは、目的を達成できていない。 つまり、国民の健康に生存する権利が守れないなら、国民皆保険制度は崩壊しているのである。 国民皆保険制度が国民の健康に生存する権利を守れなくなっても形だけ制度が残っていれば「崩壊ではない」と言い張るのは詭弁である。
・社会的規制について
現在、規制改革会議では患者と医師との合意があれば混合診療を幅広く認めることが検討されている。だが、医療についての専門知識を持たず、切羽詰まった状態に置かれた患者が、安全性や有効性が確認されていない医療を受けることの是非を適切に判断できるだろうか。高額な保険外負担を強いられることにもなり、国民福祉の増進に資するものとは到底言えない。本来保険で患者にあまねく提供できるようにすべき医療を保険外のままにとどめてしまう結果にもなりかねない。生命や医療、労働、安全、環境、衛生などにかかわる、いわゆる社会的規制は、人間が人間として生きていく上で不可欠な規制である。混合診療を全面解禁すると産業界にとっては世界が広がることになるだろうが、無原則な規制緩和は国民福祉を損ねる危険性をはらんでいる。
・保険外併用療養費制度について
日本では、一連の診療行為において保険診療と自由診療を併用することは原則として認められていない。 したがって、一連の診療行為の一部に、保険が適用されない保険外診療があると、保険が適用される診療も含め、すべての診療行為が自由診療とみなされ、医療費全額が自己負担となる。 ただし、例外的に保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める評価療養と選定医療については、保険診療との併用が認められている。 保険外併用療養費とは、保険診療と保険外診療が例外的に認められる場合において、そこで発生した費用を給付する制度をいう。 通常の治療と共通する部分の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、その部分については一部負担金を支払うこととなり、残りの額は保険外併用療養費として医療保険から給付が行われることになる。保険外併用療養費制度は、混合診療の禁止という日本の医療保険制度の原則の例外的な制度と位置づけられる。保険外併用療養費制度の趣旨は、国民の医療サービスの選択肢を広げ、利便性を向上するという点にあり、いわば「規制緩和」の流れの一つである。 ただし、このことは逆にいえば、患者にとっては規制のない自由市場で医療を受けるようになることを意味する。 したがって、患者自身で医療行為の安全性や有効性に関する情報を得て、適切な医療サービスを選択するという姿勢が個々人に要求されることになる。
・日本医師会の混合診療に対する姿勢
社会保障を充実させることは、国の社会的使命であることが日本国憲法にも規定されています。国が果たすべき責任を放棄し、お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあってはなりません。医療は、教育などと同様に「社会的共通資本」であるという考え方を私たちは持っています。医療が、国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強く持つものだからこそ、すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境でなければなりません。健康保険の範囲内の医療では満足できず、さらにお金を払って、もっと違う医療を受けたいというひとは確かにいるかもしれません。しかし、「より良い医療を受けたい」という願いは、「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきです。混合診療の問題を語るときには、「自分だけが満足したい」という発想ではなく、常に「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければならないと考えます。混合診療は、このような考え方に真っ向から対立するものだからこそ、私たちは強く反対するのです。と以上のように日本医師会は混合診療に対して反対の意思を示している。
・医療観光について
医療観光とは、居住国とは異なる国や地域を訪ねて医療サービスを受けることである。
50以上の国が、自国産業の一つに医療観光があると報告している。医療観光は成長市場として注目され、経済産業省や観光庁が調査を始めた。 医療関係業界も注目し、東証一部上場企業シップヘルスケアホールディングス株式会社のグループ企業の株式会社札幌メディカルコーポレーションは、メディカルツーリズム・ジャパン株式会社を設立し、健康診断・治療の医療コーディネートを始めている。日本政策投資銀行によれば、2020 年時点の潜在需要として年間43万人程度の需要が潜在的にあるとみられる。観光を含む市場規模は約5,500億円、経済波及効果は約2,800億円と試算されている。
・混合診療解禁の問題点
1.先進医療の多くが公的保険対象外の部分に含まれるようになり、低所得者は時代遅れの医療しか受けられなくなる。良いサービスは利用したい人が自分のお金で購入する、というのは市場原理の基本であり、それ自体が間違っているわけではない。ここは先読みが求められる論点なのである。現在は良く効く薬が保険適用になっているので、医師の指示さえあれば多くの市民がある程度の負担で薬を処方してもらうことができる。しかし混合診療が解禁されるとどういうことになるのか。 製薬会社は新薬を自由診療分の側に分類してもらって、「言い値」で売ったほうが明らかに利益につながる。そのため、日進月歩する医療の中で、旧来の薬だけが公的な保険適用になり、新薬は売り手側の製薬会社が保険適用を求めないまま、その意向により操作されてどんどん高値がつけられ、低所得者には手が出ないものになってしまう。すなわち、資力を持つ富裕層だけが先端医療を受けられ、低所得者は効果が薄い時代遅れの医療しか受けられないという事態を招き、国民皆保険制度がもたらしたレベルの健康生活を、根底から覆すものになってしまうだろう。
2.低所得者の側に、治癒しない疾患に対する保険料負担が生じる。医療には治す、痛みを緩和させる、現状を維持する、予防するなど、さまざまな目的の医療があるが、本源的な部分に立ち返れば、「病気を治す」ことが医療の最大の目的である。従って、最初から「治癒しない」のであれば、費用を負担する必要がないことは理の当然である。ところが混合診療が解禁されてしまうと、公的保険が「民間保険を併用すれば治せる」人たちのために利用されるので、民間保険に加入する資力を持たない人は、「どだい自分の場合はお金をかけられないので治せない」病気と同じ病気にかかったのに「民間保険を併用すれば治せる」富裕層の人たちが、その病気を治そうと公的保険の部分の給付を受けるために、苦しい家計の中から公的保険の保険料負担を強いられるという、全く理不尽な結果になりかねない。
3.民間保険の保険料負担に逆進現象が発生する。公的な医療保険は、所得の低い人ほど保険料負担が少ない、いわゆる累進性の考え方に基づいて組み立てられている。ところが混合診療が解禁されてしまうと、公的な保険と民間保険とを併用しようとする市民が急増することで、民間保険の側では一定の顧客数を確保することが可能になる。その場合、福利厚生が恵まれている大企業・大組織の社員などの側に、保険業者側から顧客人数のスケールメリットによる割引がつけられる可能性が高く、バックのない個人の零細顧客がそのような割引の恩恵を受けられない可能性が高いため、経済的に困らない富裕層の人たちのほうが負担する民間保険の保険料が安くて済むという逆進現象が起こってしまう危険性が高い。
4.このほかに、日本医師会が指摘している、保険外診療の安全性が担保されないという懸念も軽視できない。製薬会社や民間企業経営の医療システム等が過当競争に突入すれば、当然起こり得る問題である。
5.介護についても医療と不可分な部分が少なくないので、連動して同様の仕組みが促進される恐れがある。介護は医療と異なり、介護保険があっても基本的には混合介護である。すなわち、保険給付で受けられる介護は要介護度によって限度額が決められているが、はみ出した分について自費で介護サービスを購入しても、保険給付が認められなくなるわけではない。しかしながら、介護保険で給付される部分の範囲が縮小されれば、上に掲げた混合診療と同様な問題が広がることは大いに懸念される。2009年4月の要介護認定の一部項目判定解釈の改悪は、要介護度を低く認定させるという政策サイドの露骨な意図が歴然としており、まさに混合診療容認と同じ方向で、混合介護のうち公的部分の縮小効果を狙ったものと言わざるを得ない。
・考察、感想
今回混合診療についてレポートを書くにあたって混合診療や混合診療関する制度についてしらべたが、様々な問題が絡んでいることを知った。私は最初混合診療の概要について調べた時は賛成の立場をとっていたが深く様々なことを調べていくうちに反対の立場に変わっていった。改めて混合診療は憲法14条違反だという考えに至った。混合診療を解禁し認めてしまうと、富裕層、お金に余裕がある人々にとってはよいことかもしれないが、貧困層、お金がない人にとっては負担額が増えてしまうことになり、とても厳しい状況に陥ってしまうと考えられる。日本の世界に誇る国民皆保険制度が壊滅してしまう。また再生医療や臓器移植などの医療行為はまだ研究、治験が完全ではないという意見もあり、そのような先進医療を簡単に認めてしまうと日本の医療が壊滅してしまうという恐れもある。日本医師会も警鐘を鳴らしているようにとても危険なことだと考えられる。日本の医療を守るためにも、日本の人々を守るためにも混合診療は解禁してはならないし認めてはならないと考える。日本の富裕層の割合と貧困層、中層の割合を考えても富裕層に合わせて考えてはならないし、そもそも憲法14条は平等を示すものであり貧困層、中層の生活基準に合わせるべきだと考える。富裕層に合わせて考えてしまうと憲法14条は壊滅していくと考える。混合診療を認めることによって先進医療を受けやすくなることや難病治療を受けることが出来ることなどの利点を賛成の人々は掲げるが、その裏には先ほど述べたように悪い影響が起きるということが言える。一番良いことは富裕層と貧困層、中層がお互いに納得できる方法を見つけることだが、それはとても難しいことだと考えられる。そうすると割合で考える方法が一番良いと私は考える。先進医療や難病で混合診療を受けたい人たちには申し訳ないが全体のことを考えると混合診療を解禁し認める訳にはいかないと私は考える。今後も混合診療と憲法14条との問題は考えなければならないし、今後進展していく可能性もある。しかし現状を考えると私は混合診療に反対であるし、混合診療は憲法14条違反だと考える。
出典
OECD (2009-08-13). OECD Economic Surveys: Japan 2009 (Report). doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2009-en. ISBN 9789264054561.
•日本医師会医療政策会議 (2003年3月), “[混合診療]についての見解 〜わが国における医療のあるべき姿〜” (プレスリリース)
•全国保険医団体連合会「グラフでみるこれからの医療」、『月間保団連』第884巻、2006年。
清水修身
「私は混合診療解禁に賛成です。」
混合診療禁止は憲法14条違反
憲法14条は、すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
と記しています。そこで混合診療を見てみると、これが今の日本で禁止されているのが不思議で仕方ありません。そもそも混合診療とは、保険診療と保険適用外の自由診療を併用する
ことです。自由診療には、歯科矯正や美容整形、高度な医療、つまり臓器移植も含まれる。
私は、タイトルにもあるように解禁に賛成です。憲法14条では、法の下で平等が記載されており、国民は平等なのだ。しかし、今の日本の医療制度では、平等とは言えないのだろうか。例えば臓器移植をするとする。その場合には、もし混合診療が利用出来たなら、保険が適用される部分は保険で、その他の保険外は自己負担。ですが高度な医療が入るだけでその診療は全額自己負担になってしまう。これは平等なのかと思う。
すべての国民が加入する国民皆保険。これは国民全員が加入するのは当たり前であり、その土台があって、それにプラスして高度な医療や美容整形などは自己負担にするのは当たり前だと思います。ですが、そうゆう診療が入っただけで、すべて自己負担は、おかしな話だと思います。
救いの手?保険外併用療養費制度
先で否定した混合医療の禁止。しかし、まったく禁止なわけでもない。
保険外併用療養費制度という制度がある。
これは例外的に保険外の診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める評価診療と選定医療については保険治療との併用が求められている制度だ。
通常の治療と共通する部分は、普段と同様の適用となるが、他は保険外併用医療費として医療保険から支払われる。私はこの制度には賛成ですが、内容をもう少し緩和するのが良いと思っています。この評価療養と言うのは、高度な先進医療などを指すのですが、その先進医療がインプラントや抗がん剤感受性試験など、私からして見ればこの医療も、もちろん大切ですが、他にも認定すべき医療もあるのではないかと考えます。
この制度の趣旨は国民の医療サービスの選択肢を広げ、利便性を向上するという点にあり、いわば「規制緩和」の流れの一つとされているのですが、利便性と言う言葉を使うなら先も述べたように、さらに規制緩和をし、臓器移植なども対象にするべきではないでしょうか。
日本医師会への不満
日本医師会は、混合診療を全面解禁して自由診療・保険外診療が拡大したり、営利企業が参入したりすると、将来的には国民皆保険が事実上崩壊すると主張しています。これに対しても私は反対です。そもそもなぜ崩壊するのか私の知識不足なのかもしれませんし、社会的規制があるのかもしれません。しかし、もし解禁しても土台は土台で継続し、他の自己負担診療は払う形ではだめなのでしょうか。
これから高齢化の進む日本。ますます医療への関心が高まるのが見えています。高度な医療もますます活用されると自分は思います。そこで営利企業の参入は好まない日本医師会は主張しています。営利企業の参戦と聞くとお金のためだけと感じますが、高技術を保有する日本企業が医療への参戦は、治療の進化に繋がるのではないでしょうか?
このように否定する事で、医師である自分たちの収入が減る事の懸念があるだけと思って私は納得出来ないです。確かに日本の医療制度を心配してこのような主張をしている医師もいると思いますが、様々な企業が参入する事で、医療技術の進歩になり、今日本で治療出来ない患者でもその病を治せる日が来るかもしれないと思います。
進化する医療、夢の再生医療
世界の医療では今、神経や骨などを人口的に作り、組織や臓器を修復する再生医療
日本でも骨髄幹細胞から血管や皮膚の再生などの臨床応用が始まっている。
最終的には組織そのものの再生を目指していると言う。
これからの医療は、再生医療が中心に回っていくと私は思います。先も記したように高齢化が進み、患者が増えると考えます。ES細胞がほぼすべての細胞に分化できるものが開発された。今後その細胞をより効率よくさらには効果を高めるのが日本の技術力だと私は思います。それには営利企業であろうが力を借りて、日本の医療技術の革新を進めるべきだと思いました。
さらに今では、治験と呼ばれる治療の臨床試験も大きく変化した。
医薬品または医療機器の製造販売には医薬品医療機器等法の承認を得るために行われる試験のこと。元々、承認を取得することが目的だったが、法改正により、企業の開発プロセスに乗る必要性がなくなり、医師でも実施可能となった。動物を使用した非臨床試験を行い、安全性を確認する。この治験の方法も少し問題だと思います。志願した健常者に対して実験を行うのだが、いくら志願者とは言え人体実験は、如何なものかと。確かに人体実験をしなければ、患者に対して投与するなどありえないが、別となる方法も模索したほうがいいかもしれない。いつしかの未来に医学が進歩し、そのような人体実験を行わずとも臨床試験を行える日が来ることを私は信じます。
今後の新しい産業となりうる医療業界
今現在は日本でも高度な医療を受けられます。ですが、米国の技術が進歩しているのは確実です。混合診療が禁止されている日本では、移植手術などは高額な金額がかかるので、同じ金額を支払うなら、より医療が進んだ米国へ渡った方がいいです。なので、よく日本人は米国へ渡り手術する話を聞きます。それを医療観光とも言います。先程も述べたとおり、安い手術代や投薬費、高度医療技術をなど自国では、不可能な診療、高価で手が出せない。その問題をかかえて渡航するものとされている。今では医療技術が日本より優れさらに医療費が安いインド、シンガポール、マレーシアなど多く選ばれている。整形技術は韓国がトップクラスとされている。そこで日本の話に戻してみる。
医療観光は成長市場として注目され、経済産業省や観光庁が調査を始めた。外国人患者の誘致に積極的な病院も出てきた。旅行業界も注目し、JTB、日本旅行、南海旅行はPET検診ツアーの販売を始め、JTBは医療観光を専門に手がける部署のジャパンメディカル&ヘルスツーリズムセンター(JMHC)を設立した。医療関係業界も注目し、東証一部上場企業シップヘルスケアホールディングス株式会社のグループ企業の株式会社札幌メディカルコーポレーションは、メディカルツーリズム・ジャパン株式会社 (当時はメディカルツーリズム北海道株式会社)を設立し、健康診断・治療の医療コーディネートを始めている。私は、これには大賛成です。このように海外の裕福な人、日本の高度医療技術を受けたい人を招き、日本の技術を体験してもらい、それが噂や国際的に評価され、また人がくる。このように日本の経済をさらに活性化してくれる産業が出てくるのは良いことだと思います。また、日本政策投資銀行によれば、2020 年時点の潜在需要として年間43万人程度の需要が潜在的にあるとされている。観光を含む市場規模は約5,500億円、経済波及効果は約2,800億円と試算されている。この金額を見たときに思ったのが、これに混合診療解禁で、日本人もさらに日本の医療技術を利用すれば、あの以上の金額が入ってくるのだと、思います。さらに利用者が増える事によって、ますます日本の医療技術が進歩し、世界最高峰のレベルに達するものだと思います。営利企業がダメとか、崩壊する懸念があるとか、確かに問題はたくさんありますが、こうゆう問題を解決し、今後の日本、医療を変えていくのは政府の役目のひとつでもあると考えています。
ここもおかしい日本の医療料金!
さて、ここまで様々な問題を取り上げて来ましたが、さらなる問題がありました。
それは差額室料と呼ばれる病室の費用です。これは保険適用の範囲外で患者に請求される病室の事です。差額ベッド代とも言われるものです。これは特別療養環境室といい、より良い医療を受けるための保険適用外のもの。確かにより良い医療を受けるにはお金がかかるのは当たり前。この差額ベッドには賛成でもあり、反対でもあると私は思いました。
なぜかと言いますと、この差額ベッドは病院の増収策のひとつになっていることだ。
国立大学の法人化に伴い増収の必要が課題となっている今、数年前に完成した入院病棟では、高額な差額ベッドを少なくし、手頃だが多く導入することで、増収を図っている。
しかし、いい一面もあると調べていくうちに思いました。
この差額ベッド、いわゆる特別療養環境室。これは患者の同意なくしては入室する事も出来ず、お金を取る事も出来ない。さらに、治療上で必要な場合も病院側は料金を求める事も出来ない。この他にも様々な緊急性の要する場面にもこれが適用される。
私はこの事は素晴らしいと思う。普通に考えたら、いくら緊急的な場面でもお金を取るものだと思う。しかし、そのような場合は無償でも人の命を救う。それは日本の医療のすばらしい一面だと考える。けれどこうゆう素晴らしい一面もありながら最初にあげた問題点、混合診療の禁止。ここまで様々な議題を取り上げてきたが、原点に立ち返りたい。
これからの日本の医療、理想な形
前項で述べた日本医療のすばらしい一面と混合診療禁止の一面。
世の中では、様々な意見が飛び交う中、一人の学生として、自分が思うままに意見をまとめたい。初めて講義で混合診療と言うワードを聞いたときに、まったくピンと来ませんでした。
そもそも今の日本の医療制度、保険制度に関心がなかったと言うことです。
普通に病院へ通い、診療を受ける。これが当たり前で、その先にある物に対しての考えを持つ機会がありませんでした。今回のレポートでは、たくさんの事に気づき、調べ学び、自分の意見を考え、まとめる事に有意義な時間でした。
参考資料
http://kokuho.k-solution.info/2009/02/post_27.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%BB%E9%A8%93#.E6.B2.BB.E9.A8.93.E3.81.AE.E6.B5.81.E3.82.8C.5B4.5D
https://kotobank.jp/word/%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8C%BB%E7%99%82-185299
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E7%99%82%E8%A6%B3%E5%85%89
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%AE%E9%A1%8D%E5%AE%A4%E6%96%99
外川大希
・はじまり
私自身は混合医療に賛成である。その理由は自分が患者になったときのことを考えるとやはり心配なのは経済的な面であり自己負担が少なくなる混合医療は評価せざるを得ない。また、医療技術の進歩にもつながり、成長産業ができるというメリットがある。
・混合医療とは
そもそも混合医療とは保険診療と、私費による自由診療とを組み合わせること。日本では原則として禁止されているが、例外として特定療養費制度が設けられ、差額ベッドなどの選定療養と、大学病院など特定の医療機関で行う高度先進医療が認められている。政府の規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)や経済界の強い主張を受け、2004年12月、混合診療の大幅な拡大が決まった。しかし、全面解禁は見送られ、混合診療の対象となる医療技術を安全性に配慮した上で「例外」として個別に認める、現行の仕組みの延長線上での拡大となった。拡大により従来の選定療養と高度先進医療に加え、(1)国内未承認薬が治験の対象となれば混合診療が認められるようにし、欧米で承認された薬は自動的に治験の対象として早期に治験の可否の結論を出す、(2)必ずしも高度でない先進技術にも適用し、2000程度の医療機関で実施できるようにする、(3)ピロリ菌除去など一定回数を超えると保険が利かなくなり保険対象の費用も含めて全額自己負担となる診療は、回数を限定して混合診療を認める、などが決まった。というものである。またなかには患者らの細胞を使って体の組織を修復する再生医療も混合医療に含めるという方向を定める流れもある。また拡大案の中には他に治療手段がない患者が未承認の薬を混合診療で使える制度(日本版コンパッショネートユース)も15年度から本格導入する。現在未承認薬は薬の有効性を調べる治験でのみ混合診療が認められ、薬以外の入院費などは保険を使える。ただ、治験は年齢などで制限があり、対象に入れない人もいる。治験対象外の患者が未承認薬を使うと保険診療部分も含めて患者が全額負担しなくてはならない。新制度では治験対象外の患者も未承認薬を保険診療と併用できる。とういうものもある。
・混合医療についての私の考察
私自身は臓器移植など一刻の猶予がないものやそのもの自体に莫大なお金がかかるものなどに限っては患者自身の負担を少しでも減らすことが生存権や社会権を守ることにつながるのではないかと考える。また、自由診療と比べるとかなりの額が負担から減らされており、もし自由診療が浸透しきっていると医療の発達を阻害する要因になりかねない。やはり患者本位であることが今の医療環境には求められているのではないか。実際現時点では混合医療に反対の色を強く示す日本医師会だが、差額室料(入院時の個室代)に関してはそれが認められている。ここで私が疑問に思うことは何故差額室料なら認められているかという点だ。理由を調べてみるとまず、高度先進医療は、有効性や普遍性が認められるものは、すべて保険適用するのが筋でありそして、より多くの患者さんが高度の医療を保険で受けられるようにすべきだという考えが根本にあるらしい。しかし差額ベッドなどのアメニティに関するものは、そもそも診療行為ではない。したがって、その部分で患者さんから費用を徴収しても「混合診療」には該当しないと整理すべきだ。というものだ。しかしこの考え方では病院のシステムをより複雑にしてしまうだけではないのか。現に一般の人の中に病院の料金システムを理解してい る人は少ないだろう。この手術を行ったからいくらなど規準がなければ相場もわからない。そんな中でさらにややこしくしてしまう結果になりかねない。料金の明確化と情報の公開を行うためにも混合医療の統一をはかるべきだと私は考える。
・混合医療のデメリットを受けての考察
しかし混合医療にはデメリットも存在する。90年代以来の医療関連制度の改変により、日本の平等な医療制度はすでに瀕死の状態です。菅直人政権が発足して以降、TPPへの参加がにわかにいわれるようになりましたが、その実態は知られないままTPP参加、開国という言葉が呪文のようにいわれています。しかし、すでに明らかになってきているように、TPPは公汎な分野にわたる協定であり、その中には医療制度が含まれます。今日はTPPの医療制度への影響について述べます。混合診療の解禁が迫られたのはTPPが初めてではありません。鳩山政権以前は、米国による年次改革要望書で医療分野を米国企業の都合のよいように改変するため事細かな要求が毎年出されていました。それをうけた規制改革会議が混合診療の解禁と株式会社参入を画策してきましたが、何とか押しとどめて来たというのが最近の歴史です。今回のTPP参加について日本医師会は「混合診療を全面解禁すれば、診療報酬によらない自由価格の医療市場が拡大する。これは外資を含む民間資本に対し、魅力的かつ大きな市場が開放されることを意味する。公的医療保険の給付範囲が縮小され、社会保障が後退する。」と述べています。日本医師会は国民皆保険が崩壊すると懸念しているが、既に日本の医療制度・国民皆保険は瀕死の状態。非正規雇用増加で、健康保険料が払えずに病院にかかれない若者が増加しています。06で70万人程度が無保険、2割の国民が無保険になる可能性と指摘されています。正確な実態の把握が急務です。日本が先進国では稀なほど便利で質のよい医療が受けられる国であるということが忘れられています。例えば、お腹が痛くなって消化器専門医を受診したくなったとします。日本では、長くて数時間まてば専門医に治療してもらえます。欧米では、公的保険制度では一般医以外を直接受診出来ない事が普通です。うまく一般医を納得させられて、専門医を予約できたとして、(どんなに今調子が悪くても)専門医に診てもらえるのは大抵早くて2週間後。ある人は、最近、腹痛 で度々一般医を受診していたが放置され、もちろん専門医受診の機会はないうちに虫垂が破裂、腹膜炎になり結局救急で緊急手術しました。日本では考えられないのですが、緊急入院しても医者や看護婦がすぐに病室に来てくれるとは限らないそうです。その人は、たまたま危篤になる前に医者が来てくれたので緊急手術にまわしてもらえて命拾いしたので運がよかったと思うとのこと。病院の中まで医療過疎地だということを改めて認識しました。一方で、高額の民間医療保険にはいっている人や金持ちは、プライベートの病院を受診できます。ここは完全予約制で、待ち時間なく、専門医に30分ほどかけてゆっくり診察してもらえます。こういう病院は初診料だけで最低1−3万円はかかるので、庶民が受診す ることは不可能。これが医療格差の実態です。また、必然、医療観光の対象も富裕層となる。その受け入れ促進を機に、日本人の富裕層も含めて医療にアクセスできる格差が拡大すると懸念しているのだ。TPPに含まれる、混合診療と医療への株式会社参入の解禁は、日本の平等で良質な医療システムの息の根を止めるためのもの、と言って過言ではないと思います。この結末は、高額な医療費・保険費用と医療格差です。そして、この改変で確実に得をするのは、外資の民間健康保険会社でしょう。TPPにより日本の国民皆保険制度が終焉の危機です。「崩壊」の危機ではなく「終焉」の危機であることに注意してください。既に日本の平等な医療制度は瀕死の状態。医師会はこれまで業界利益団体としてマスコミにネガティブキャンペーンを受け続けてきましたが、国民の立場で皆保険を守ろうとしています。これまでも医療規制緩和の議論と並行して、医療の些末な問題が大きくとりあげられてきました。ここでもマスコミの情報操作に惑わされて国民にとって誰が味方であり、誰が敵であるか、を誤ってはいけません。医療に問題が山積していることは、現場ではたらく医療従事者は重々承知です。これまでの医療における法的・社会システム上の問題は大きくなるばかりでしたが、医療関係者が皺寄 せをうけても現場の努力で吸収して破綻を避けてきました。しかし、医療崩壊が進む中、現場にはもはや衝撃を吸収する余力はありません。また、上に述べたように皆保険制度が実質的に破綻しはじめていることは、社会全体のセーフティネットの問題と大きく関わっています。ここにも余裕があるはずはなく、日々状況は深刻になっていると思われます。人的にも経済的にも破綻は既に近いのです。今議論すべきなのは、逆であって、どのようにしてこの医療崩壊を食い止めるかという議論であり、実際にこのシステムを守るための方策作りです。TPPを推進するひとたち、以前より規制改革会議などで混合診療の解禁と株式会社参入を求めて来たひとたちは、欧米にこうした医療格差が存在することを知っているはずです。知っているからこそ、日本の平等な公的医療制度が「ビジネスチャンス」に見えるのです。それを利用して金儲けができることを知っているのです。医療関係者で推進するひとは、実情を知っているからこそ、欧米の医療関係者と同じようなレベルで金儲けがしたくてたまらないのでしょう。人は、このような人たちを新自由主義者と呼びます。しかしそれだけでは実態は分からない。私が重大な問題と感じているのは、主義でいえるような政治的立場ではないです。欧米の実情を知っていて、負の側面については何も言わずに、都 合の悪い情報を隠して、あたかも日本の医療を改革してよくするかのような錯覚を与えながら、国民を騙して制度改悪をしようとする姿勢です。これには強い憤りを感じます。本当にためになるものならばオープンに議論すべきであり、それで困る事等何もないはずです。それが出来ないという事は、やましいことがあるからにほかならないと思います。今後大きく動いて行く政局の陰に隠れてTPP(あるいは類似の条約・協定)を結び制度改悪を行われる危険性は当面続くと思います。国民の絶え間ない監視、関心をもち議論をし続けていくことが重要な課題だと思います。保険外併用療養費制度の趣旨は、国民の医療サービスの選択肢を広げ、利便性を向上するという点にあり、いわば社会規制の緩和の流れの一つです。ただし、このことは逆にいえば、患者にとっては規制のない自由市場で医療を受けるようになることを意味します。したがって、患者自身で医療行為の安全性や有効性に関する情報を得て、適切な医療サービスを選択するという姿勢が個々人に要求されることになります。
私自身、教育学部なのでこのような分野に触れることはあまりなかったので先生の授業を15回受け、自分の見聞を広めることができました。短い間でしたがお世話になりました。
出典
コトバンク混合医療
ウィキペディア
厚生労働省ホームページ
齋藤将志
私は混合診療解禁には反対である。以下、段落ごとに理由を記述する。
混合診療の恩恵を受ける層が限定的
簡単に考えれば、混合診療は高い金をかけずに自由診療、つまり保険外診療を受けられる夢のような制度だ。混合診療が解禁されれば保険診療の枠をこえ、自由診療を安く受けられる。混合診療が解禁されなければ、保健診療の枠をこえ、自由診療となってしまったときの医療費が全額負担となってしまう。これだけ聞けば混合診療制度はずいぶんといいもののように聞こえる。しかし、いざ混合診療制度が解禁されたとき、その恩恵を受けられる人達はどれだけいるだろうか。混合診療が解禁されて直ぐは、多くの患者が利益を被るだろう。だが、混合診療が解禁されるようになると、保健内診療の枠が狭まるおそれがあるのだ。つまり、これまで保険内として受けることの出来ていた治療が、保険外となってしまう。「混合診療であれば、何とかお金が出せる」という人と、「混合診療であっても難しい、保険診療枠の医療しか受ける余裕がない」という人の間で医療格差が広がってしまうのだ。こうなってしまえば、もともと保険内診療しか受ける余裕のない人達には何の利益もないどころか、かえって保険内の幅が狭まって不利益を被ってしまう。「大金持ちあるいは、大金持ちではないが中流以上の定常的収入がある人。治療のために切り崩す貯金があって、かつ、貯金の大幅減を妥協できる人。担保等の借金ができる条件が整っていて、かつ、治療のために多額の借金を背負うことを厭わない人。これらに該当しない人にとっては、混合診療は何の恩恵ももたらさない。また、貯金の切り崩しや借金を必要とする人にとっては、混合診療で一定の恩恵を受けても、治療を受けられる期間に制限が生じる。その治療を持続させることが難しいというわけである。アメリカでは、低収入の世帯が通常の診療を受ける際に、加入している社会保険だけではまかなえず、所有している土地や家財を処分してもなお必要な医療が受けられず、最終的に、自己破産に至った現状が報道された。混合診療を推進する立場の規制改革、民間開放推進会議では、保険診療が縮小された制度を「本来目指すべき制度」としている。保険診療の枠は縮小されるとみて間違いないだろう。
国民皆保険の崩壊
日本は国民皆保険で、国が認めた良質な治療が安く受けられ、新しい治療も健康保険に随時、取り入れられている。しかし、混合診療が拡大していくと、健康保険がわざわざ最先端の医療を取り入れなくなり、健康保険の質を保つのが難しくなるの。TPPなどでも同様の議論が出ていて、反対派は、国民皆保険の質が低下し、崩れることを懸念している。健康保険、つまりは保険診療の枠が縮小されれば、国民階保険は崩壊するだろう。国民皆保険制度は、国民が健康に生存する権利を守る制度である。つまり、貧富の差に関わらずに必要な治療を受けられるようにする制度である。国民皆保険制度の目的は、お金がないために必要な治療が受けられなくなる事態を防ぐことである。ただし、治療その物を受けられても、その後の生活が破綻するようでは、健康に生存する権利を守れたとは言えない。要は、貯金の切り崩しや借金を必要とする人にとっては、混合診療で一定の恩恵を受けても、治療を受けられる期間に制限が生じるということである。健康に生存する権利が脅かされるのでは、目的を達成できていない。つまり、国民の健康に生存する権利が守れないなら、国民皆保険制度は崩壊しているのである。
国民階保険の必要性
国民皆保険制度では、保険料は被保険者の健康ではなく、所得で決まる。所得の低い人は安い保険料、所得の高い人は高い保険料。国民皆保険制度は、所得の再分配という役割も果たしている。そのため、保険適応になっていない先端医療は無理であっても、ある程度の質の医療を所得の低い人でも受けられる。また、国民階保険は最低限度の医療の質を保つことにも役立っている。医療機関は患者から自己負担分の診療報酬、たとえば3割を受け取ったとして、残りの7割は保険者に請求する。保険者は、ただ請求されるがまま支払うわけではなく、正当な請求かどうか審査する。あまりにいい加減な診療を行っていると、審査に引っかかって、もらえるはずの診療報酬をもらえなくなる。すなわち、国民皆保険制度は最低限の医療の質を保つことにも役立つ。もちろん、国民皆保険制度にもデメリットは存在する。よく言われているのが、新しい医療への対応である。政府が保険診療の範囲を決めるものゆえに根拠はあるのだが、海外では普通になされている医療が日本の保険診療ではできなかったりする。医療の値段のつけようによって全体の医療を誘導することができるのも、うまく使えばメリットにはなるが、いまのところデメリットのほうが大きいだろう。小児科医や産科医が足りなくなることを予測できれば、小児科や産科領域に手厚く診療報酬を配分することである程度の効果は見込めただろうが、後手に回っているのが実情である。いろいろ挙げればきりがないが、それでも前述したようなメリット、必要性もあり、十分な効果を発揮しているため、簡単に崩壊させていいものでは断じてないはずだ。
民間がん保険の危機
混合診療をめぐる話し合いでは、がん患者について話されることが多い。現在は固形がんに対する化学療法が進歩し、保険診療内でもそれなりの治療を受けることが可能であるが、それでも、保険診療内で可能な治療がなく、対症療法のみ行うという場合が生じうる。保険診療の枠の中にない先進医療を受けるために、混合治療は必要であると話される。しかし、混合診療が解禁されれば、民間の保険会社が大打撃を受けてしまうのではないだろうか。今回の例で言えば、テレビのコマーシャルでよく見かけるがん保険の会社だ。ああいったがん保険の会社は混合診療が認められていないがためにあるようなものだろう。民間のがん保険や医療保険は、健康保険が適用されない先進医療、つまりは自由診療も保障するタイプがあり、また増えている。こうした保険に加入しておくと、いざというときに費用の心配をすることなく、結果として多くの治療法を選択できるという仕組みである。しかし、混合診療が全面解禁されてしまえば、こういった保険会社はもうからなくなってしまうのではないだろうか。保険会社の人は露頭に迷い、結果として日本国内のデフレーションも加速してしまうのではないだろうか。もちろん、高度な医療サービスを提供しようとしている事業者や保険会社などは、混合診療の拡大を強く求めているだろう。民間がん保険会社に関しては、このようなことを私は疑問に思った。
日本国憲法14条について
法の下の平等、貴族の禁止、栄典について規定しており、平等権に関して規定する条文とも言われている。「1.すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。2.華族その他の貴族の制度は、これを認めない。3.栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。」というのが日本国憲法第14条の条文である。前述した医療格差が広がってしまえば、経済的差別へと繋がってしまうのではないだろうか。日本医師会も、お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあってはならない。医療は、教育などと同様に「社会的共通資本」という考えであり、医療が国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強く持つものだからこそ、すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境でなければならないとしている。日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」にも反すると私は考えている。
保険財政悪化
保険医療の内容で一定水準の医療効果が確保されている。混合診療を解禁すると、根拠や効果に乏しい保険外治療により患者に悪影響を及ぼしかねない。また、保険外の検査や投薬を受けられるのは、極少数の人間だけであるため、効果的な治療が行えない可能性もある。よって、保険給付額は減少しない。保険財政が悪化してしまう。解禁してしまうと医療の質が保てなくなり、また、悪用する医療業者が急増し、安く治療を受けられるということになるので、今以上に、医療詐欺、医療事故被害者が増えるだろう。
現状の混合診療
しかし、現状でもある程度は混合診療が行われている。現在の制度の中で認められている混合診療を保険外併用療養費と言い、主な例として差額ベッドがある。本来は差額室料ということで保険適用の範囲外で患者に請求される病室の費用であるが、この費用に関しては混合診療として認められている。保険外併用医療制度というもので医薬品の治験に係る診療もまた例外である。また、とある病院で癌に対する標準医療を保険診療で受け、別のところで自由診療を受けることは可能であるらしい。混合診療は最初に記述したが、夢のような制度だ。しかし、私が言いたいのは、現状である程度の混合診療が行われているからといって、混合診療を全面解禁してもいいことにはならないということである。混合診療解禁によって同一の医療機関で保険診療と自由診療が併用可能になる。
混合診療のメリット
メリットは、同一の医療機関のほうが情報を共有しやすいことである。例えば、別のところで行われた治療内容をとある病院の医師が知らない、などということが起こりにくくなる。また、混合診療は再生医療も適用対象としていることから、賛成する声もやはり多くなる。これまでの臓器移植では、移植適合性などの困難を抱えており、臓器の培養などが可能とされている再生医療には大きな期待が寄せられている。混合診療が解禁されれば、こういった医療技術の発展も期待できる。確かに、混合診療に賛成したい気持ちも理解できる。しかし、こういった医療行為には、宗教的、思想的立場から批難されてしまうなど、モラル上の問題で社会的規制も生じている。
海外へ目を向ける
自国では医療費、医療技術などの問題で治療が難しい場合には、医療観光として海外へ行くのも1つの手である。海外では手術代が安かったり、自国では買えない薬が買えたりする。我が国日本も渡航先としてアピールもしており、また、我が国では望めない治療を求めて海外へ出る人も少なくない。混合診療が解禁されていない現状の代案としては、安い医療費での治療を求め、医療観光という手も場合としては有効だろう。
今後の課題について
現状の制度でも、同一医療機関で混合診療可能な場合もある。厚生労働大臣が定めた先進医療は、有効性及び安全性を確保する観点から、医療技術ごとに一定の施設基準を設定し、施設基準に該当する保険医療機関は届出により保険診療との併用ができる。混合診療は原則禁止しつつ、先進医療の枠を拡大して患者の選択肢を可能な限り確保しつつ、有効性、安全性が確認され次第保険適応とする制度が妥当な妥協点ではないかと私は考える。「医療保険は、国民の支払う保険料と公的負担を財源として給付されるものであり、どの範囲の医療を保険の対象とするかの問題は、保険に関する政策の在り方として混合診療の問題とは別にそれ自体独立して決定すべきである」と混合診療を推進する規制改革、民間開放推進会議では言われたそうだが、そのすべきことが実施される見込みがないから問題なのである。
参考文献
混合診療、原則大病院100カ所で 再生医療も対象
2014/11/5 22:05 日本経済新聞
混合診療ってなに?
再生医学 ウィキペディア
移植(医療) ウィキペディア
医療観光 ウィキペディア
差額室料 ウィキペディア
混合診療のメリットとデメリット
須郷ひかる
わたしは混合診療について反対である。一見、低所得者にもよりよい医療を受ける余地を与えられるように見えるが、混合診療を認めることによって、憲法14条、法の下の平等を崩す事態が起こるのだ。以下に6点、理由を挙げる。
・国民皆保険制度の崩壊
混合診療解禁は、短期的に見れば、患者に一定の利益をもたらす。 しかし、混合診療解禁により、確実に、保険診療削減圧力が強まり、保険診療充実圧力は弱まる。 よって、長期的には、国民皆保険制度は崩壊する。国民皆保険は、原則としてすべての国民が公的医療保険に加入する制度であり、医療費の負担を軽減することにより、国民に医療を受ける機会を平等に保障することが目的である。この平等とは、医療の機会の平等であって、利益再分配による利益の平等を指すわけではない。
そして、混合診療を解禁すると、この診療を受ける機会の平等も、利益の平等も損なわれることになるだろう。「混合診療」とは、健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、範囲外の分(自由診療分)を患者さんが医療機関に支払うというものだ。低所得者が、高度な医療に手を伸ばせるようにはなるが、言ってしまえばお金持ちの人は「お得」になるだけなのだ。そうすると、今までお金持ちが払っていた金額のぶんは国家予算から支払われることになる。結果として、国の支出が増加し日本が財政難になってしまうのだ。
診療を受ける機会の平等とは、金がないために必要な治療が受けられなくなる事態を防ぐものである。ただし、治療その物を受けられても、その後の生活が破綻するようでは、健康に生存する権利を守れたとは言えない。 言い替えれば、健康に生存する権利を守れるギリギリまで貧乏人に金銭的負担を求めても、国民皆保険制度の目的は達成可能である。
・医療のビジネス化に伴う質の低下
混合診療を認めると、医療がビジネス化する可能性が大きい。自由診療分は病院の好きなように料金設定できる。今は、自費で払う、といっても日本の病院はたいてい良心的なので保険診療分程度の料金しか要求されない。つまり、いわゆる10割負担の料金。本来は保険を使わなければ何割などというものはなく、いくらでも要求して良いのだ。だから自由診療では、例えば同じ手術を受けるにしても一方では10万円、他方では100万円、ということにもなり得る。もちろん、そこには執刀医の技術の違いや設備の違い、薬の違いもありうるだろう。
混合診療を認めることによって、自由診療に手が届きやすくなるのだが、そこには価格の不当な設定による高騰が起きる可能性もあるのだ。
・治験未実施の診療
ここで、治験に関する点から考察する。治験とは、「治療の臨床実験」のことであり、従来、承認を取得することが目的であったため企業主導で行われてきたが、法改正により必ずしも企業の開発プロセスに乗る必要はなく医師主導でも実施可能となった。動物を使用した非臨床試験(前臨床試験)により薬の候補物質もしくは医療機器の安全性および有効性を検討し、安全で有効な医薬品もしくは医療機器となりうることが期待される場合に行われる。つまり、あらゆる治療は治験をすることなしに実施されるのだ。
ここで混合診療を認めることになると、治験がされていない、安全性、有効性等が確認されていない医療が保険診療と併せ実施されてしまう可能性が高まる。そうすると、科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長するおそれがあるのだ。そうすると、より高度な医療を受けたいとする人たちに危険が迫る。
・美容整形などによる再生医療の保険適用
再生医療とは、損傷を受けた生体機能や幹細胞などを用いて復元させる医療である。そしてその技術は「美容整形」にも用いられているのである。
この分野の美容整形施術の多くは、病気の美容整形治療ではないため健康保険は適用されず、全額自己負担の自由診療(保険外診療)となる。保険で認められていない治療法(未認可の治療薬など)や、要医療状態以外に対する医療行為(通常の歯列矯正や美容整形など)では健康保険は利用できない。また、保険で認められている美容整形治療法であっても、保険を利用せずに美容整形治療することが可能である。これらの場合、診療報酬は医療機関の裁量で設定することができ、全額患者の自己負担となる。このような美容整形診療を自由診療(保険外診療)と呼ぶ。これは、対象疾患が先天的なものであるか、後天的なものであるかにかかわりはない。
たとえば、乳がんの腫瘍除去の後のインプラントの挿入や、交通事故によってできた瘢痕の美容整形形成手術などにおいても、原則として健康保険は適用されない。例外として、機能障害(例えば、眼瞼下垂)がある場合には、健康保険が適用される場合がある。
混合診療が認められると、この美容整形にも保険が適用されると言うことになる。
一連の美容整形医療行為の中で保険診療と自由診療が混在する混合診療は認められていない(2004年現在、解禁について政府内で検討中である)。法的には、診療の一部でも保険で未認可の美容整形医療行為が含まれていれば、それは自由診療として全額自己負担でなければならない。しかし医学は日進月歩であり、未認可であっても学問的には確立された美容整形治療法も存在するため、保険制度とつじつまを合わすため、架空の病名をレセプトに記載する「レセプト病名」という行為が半ば常識となっているらしいのである。そうすると、国家予算、税金は人々の美容のために使われることになるのだ。
数ある社会問題のうち、国家予算の使い道は数え切れないほど存在する。そのような状況の中、美容整形に予算が使われるとしたら、社会的規制もかかることだろう。
・日本医師会の主張
公益社団法人日本医師会(英称:Japan Medical Association、英略称:JMA)は、日本の医師を会員とする公益法人、医師会の全国団体である。世界医師会に認められた日本で唯一の医師個人資格で加入する団体である。この日本医師会は混合診療に反対の立場を示している。ホームページに掲載された理由は以下の通りである。
「社会保障を充実させることは、国の社会的使命であることが日本国憲法にも規定されています。国が果たすべき責任を放棄し、お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあってはなりません。医療は、教育などと同様に「社会的共通資本」であるという考え方を私たちは持っています。医療が、国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強く持つものだからこそ、すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境でなければなりません。健康保険の範囲内の医療では満足できず、さらにお金を払って、もっと違う医療を受けたいというひとは確かにいるかもしれません。しかし、「より良い医療を受けたい」という願いは、「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきです。混合診療の問題を語るときには、「自分だけが満足したい」という発想ではなく、常に「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければならないと考えます。混合診療は、このような考え方に真っ向から対立するものだからこそ、私たちは強く反対するのです。」
・混合診療に変わるもの
現在日本では、一連の診療行為において保険診療と自由診療を併用することは原則として認められていない(混合診療の禁止)。したがって、一連の診療行為の一部に、保険が適用されない保険外診療があると、保険が適用される診療も含め、すべての診療行為が自由診療とみなされ、医療費全額が自己負担となる。ただし、例外的に保険外診療を受ける場合でも、厚生労働大臣の定める評価療養と選定医療については、保険診療との併用が認められているのだ。保険外併用療養費制度とは、保険診療と保険外診療が例外的に認められる場合において、そこで発生した費用を給付する制度をいう。 通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、その部分については一部負担金を支払うこととなり、残りの額は保険外併用療養費として医療保険から給付が行われることになる。現在この制度が適用されている内容は評価療養(保険導入のための評価を行うもの)と選定療養(保険導入を前提としないも)がある。評価療養の7種類は、先進医療、医薬品の治験に係る診療 医療機器の治験に係る診療、薬事法承認後で保険収載前の医薬品の使用、薬事法承認後で保険収載前の医療機器の使用、適応外の医薬品の使用、適応外の医療機器の使用である。選定療養の10種類は特別の療養環境(差額室料)、歯科の金合金等、金属床総義歯、予約診療、時間外診療、大病院の初診、小児う触の指導管理、大病院の再診、180日以上の入院、制限回数を超える医療行為である。なお、小腸を除く臓器移植は保険が適用されている。
混合診療を認めるには、さまざまな壁があることをこのレポートで論じてきた。しかし、現在、混合診療までには及ばないが、この保険外併用療養費制度というものがあるのだ。この制度はすでに施行されているもので、さまざまな規制もあり、実用的である。つまり、混合診療まで踏み切らなくても、この現行の保険外併用療養費制度の規制緩和を行い、より日本の医療制度を発展させていけばいいのではないだろうか。保険外併用療養費制度の趣旨は、国民の医療サービスの選択肢を広げ、利便性を向上するという点にあり、いわば「規制緩和」の流れの一つです。 ただし、このことは逆にいえば、患者にとっては規制のない自由市場で医療を受けるようになることを意味します。 したがって、患者自身で医療行為の安全性や有効性に関する情報を得て、適切な医療サービスを選択するという姿勢が個々人に要求されることになります。 混合診療に関しても、同じことが言えるが、無理に新しいものを作って、勢いをつけるよりも、徐々に実施の幅を広げ、問題のない制度であるように、細やかな規制をつくったり(医療観光に関してなど)しながら、慎重に実施していくことが、人間の命を左右する、「医療」の分野では重要なのではないだろうか。何よりも、国民の命を第一に決定してほしいものである。
【参考文献】
・弁護士川村真文の視点
http://kmasafu.moe-nifty.com/blog/
・アポネットR研究会
http://kmasafu.moe-nifty.com/blog/
・患者本位の混合診療を考える会
http://kongoshinryo.jpn.org/static/
http://kongoshinryo.jpn.org/static/collapse_universal.html
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20111115
五十嵐宏明
憲法14条に基づき、混合診療は日本でも解禁するべきだと考えます。
私は授業のときに先生に聞かれたときは、混合診療禁止に賛成でした。しかし、調べていくうちにどちらが本当に日本にとってプラスになるのか、調べれば調べるほど様々な意見があり、迷ってしまいました。そこで、私自身が患者という立場になって考えたときに、混合診療は解禁するべきだと考えました。
混合診療とは、健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、範囲外の分を患者さん自身が費用を支払うことで、費用が混合すること。解禁することによって患者さんの自己負担が減るので良いと思う。さらに海外で認められているのに、日本では認められていない治療や薬も、その部分さえ自己負担すれば健康保険と併用して使えるというメリットがある。
一部例外的に混合診療が認められている保険外併用療養費制度というも があり、保険外併用療養費制度とは保険診療と保険外診療が例外的に認められる場合において、そこで発生した費用を給付する制度のことをいう。通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、その部分については一部負担金を支払うこととなり、残りの額は保険外併用療養費として医療保険から給付が行われることになります。保険外併用療養費の制度は、混合診療の禁止という日本の医療保険制度の原則の例外的な制度と位置づけられます。保険外併用療養費制度の趣旨は、国民の医療サービスの選択肢を広げ、利便性を向上するという点にあり、いわば「規制緩和」の流れの一つです。ただし、このことは逆にいえば、患者にとっては規制のない自由 市場で医療を受けるようになることを意味します。したがって、患者自身で医療行為の安全性や有効性に関する情報を得て、適切な医療サービスを選択するという姿勢が個々人に要求されることになります。この制度の対象を徐々に拡充して再生医療や新しい技術を使った医療機器などを、この制度の対象に加えていけばいいと思う。他に治療手段がない患者が未承認の薬を混合診療で使える制度(日本版コンパッショネートユース)も15年度から本格導入する。今現在未承認薬は薬の有効性を調べる治験でのみ混合診療が認められ、薬以外の入院費などは保険を使える。ただ、治験は年齢などで制限があり、対象に入れない人もいる。治験対象外の患者が未承認薬を使うと保険診療部分も含めて患者が全額負担しなくてはならない。新制度では治験対象外の患者も未承認薬を保険診療と併用できる。憲法14条は平等を記している憲法なので、このような制度ができるのはとてもいいことだと思う。混合診療が認められている制度がいくつかあるので、いきなり混合診療解禁するのではなく、徐々にこのような制度増やしていき、混合診療解禁につなげていけばいいと思います。
臓器移植とは、重い病気や事故などにより臓器の機能が低下し、移植でしか治療できない方と死後に臓器を提供してもいいという方を結ぶ医療で、善意による臓器の提供がなければ成り立たない医療です。日本で臓器の提供を待っている方は、およそ13,000人です。それに対して移植を受けられる方は、年間およそ300人です。これまで腎臓移植と生体肝移植のみに保険が適用されており、心臓移植、脳死肺移植、脳死肝臓移植、膵臓移植に 高度先進医療が適用されていましたが、平成18年4月1日よりこれらの臓器移植に保険が適用されました。また、心肺同時移植、膵腎同時移植にも保険が適用されました。近年では医療観光が注目されています。医療観光とは、医療と観光を目的に他国を訪れること。医療といっても、がん治療などの高度医療から美容整形や健康診断まで幅広い。主に安い手術代や投薬費、高度医療技術、臓器移植、整形手術、健康診断など、自国では不可能、高価、求めている結果が得られない医療を受けることを求めて、先進工業国の患者や途上国の富裕層患者などが他国へ渡航するものが中心である。渡航先には医療技術が優れ医療費が安いインドをはじめ、シンガポール、タイ、マレーシア、メキシコなどが多く選ばれている。また、整形手術や歯科医療などで訪問する観光客の多い韓国も各国の富裕層などへ高度医療を売りこもうとしているなど、多くの国が医療観光への参入を目指している。日本は、高度医療技術、カントリーリスクが低いなどの観光魅力度をアピールしている。しかし日本はインドなどとは違い医療費も高く、医療技術もあまり高いというわけでもないので、臓器移植などの高 度の手術などは、アメリカや、インド、シンガポール、などに行かれている現状なので、だからこそ日本で混合診療を解禁してたくさん日本で高度な手術などをしていけば、海外からも人が来るし、日本の技術も上がっていくと思います。医療観光に訪れる患者は長くその国に滞在するほか、その見舞客も訪問することもあるため、ホテルや観光地などの分野へも恩恵が大きい。そのため外貨獲得や、医療機器の需要が増えることによる量産化によるコストダウンにもつながる。
差額室料とは、健康保険適用の範囲外で患者に請求される病室の費用のことをいう。差額ベッド代ともいう。差額室料を要する病室を特別療養環境室(通称「特別室」)といい、より良い医療を受けるための健康保険適用外の費を特別の料金という。差額室料も特別の料金の一種である。このように混合診療は原則的に認められていないが差額室料や先進医療に限定されて適用が認められたりしているので解禁してみるのもいいと思う。限定的に認められているものと認められていないものがあると、お金持ちのほうが有利になってしまうので、憲法14条で平等と言っているので限定的にするのであれば、混合診療を解禁して平等にするべきだと私は思います。混合診療を解禁した場合のメリットは、自由診療とは違い、公的保険が使える治療と使えない治療を併用して受けられることにより、全額負担にならないこと。自由診療だと料金などは医療機関が自由に決めてよいことになっていて、病院なども慎重に選択しなければいけなくなり、保険もきかないので全額、患者の自己負担になり、お金がある人はいいが、お金がない人にはかわいそうだと思う。「保険が効かない」ものが自由(自費)診療です。例えば、美容整形は病気の治療ではないので、保険では認められません。歯科での歯の詰め物は、保険で認められているものより良い材質のものを使う場合も自費になります。保険診療では必要最低限の診療を受ける権利のようなもので、人より良い医療を受ける事は制限されているのです。漢方治療の多くは保険で行えますが、病名ごとに使える漢方薬が保険診療では制限されているため、各個人の体質や病気の状 態に合わせたきめの細かい診療を行なおうとすると保険診療は馴染みません。そのため漢方診療を専門に行っている所は自費診療が多くなっています。日本で未認可の医薬品や、保険適応疾患以外の医薬品の使用も、自由診療なら可能になります。メリットとしては他に、海外では一般的に使われているが、日本では未承認である薬や治療法を、今以上に利用しやすくなることや、持病のある人など、健康上の理由で新たな保険に入れない人のための商品が増え、選択肢が広がり、公的保険の財源の一つである税金投入が少なくなるなどのメリットもあるが、反対にデメリットもある。医療格差が広がり、安全性や有効性が十分に確認できていない薬や治療法を利用する人が増えてしまう。などのデメリットもあるの です。日本医師会は解禁に反対していて上記に書いてあるようなデメリットも考えていると思うが、一番の反対理由としては、混合診療の解禁=国民皆保険の崩壊にあると思います。国民皆保険とはすべての国民をなんらかの医療保険に加入させる制度。医療保険の加入者が保険料を出し合い、病気やけがの場合に安心して医療が受けられるようにする相互扶助の精神に基づく。日本では 1961年に国民健康保険法(昭和33年法律192号)が改正され、国民皆保険体制が確立された。しかしなぜ、混合診療の解禁=国民皆保険の崩壊につながるのかは疑問です。確かに混合診療が認められれば、保険適用外の高度医療をより受けやすくなり、その利用者は増えて、どちらかといえばお金に余裕のある人が高度医療を利用しやすくなる傾向があるが、お金に余裕があったとしても国民皆保険制度から離脱するわけではないし、国民皆保険制度はほぼ強制加入なわけですから、お金持ちが高度医療を利用しようがしまいが、国民皆保険制度の財政状況を危うくするような心配があるとは思えないです。
日本全体の生産性向上を目的に、経済的規制,社会的規制の両面において根本的な見直しがなされている。先生が授業で言っていたように命、安全を考えるのが社会的規制で、効率を考えるのが経済的規制であると思う。医療のように公共価値が強く求められる分野では、経済的規制の緩和に対して社会的規制の強化のバランスが重要である。規制緩和の進む創薬や医療の現場において、さまざまなひずみはあるものの、社会的規制に従事する薬剤師の役割が期待される。一方で、規制緩和による経済格差は、国民の健康格差を助長するとも指摘され、社会全体の取り組みが期待される。規制の緩和、撤廃に対しては,市場原理、自己責任原則の徹底、競争の基本ルール遵守、ルール遵守の監査、確認が重要であり、特に情報開示の徹底が必要である。命、安全を考えるのが社会的規制なのであれば、混合診療を解禁して自己負担も最低限度に抑えられるし、なにより命という面で助かる確率も上がると思う。
この先、混合診療を解禁するのか、それともこのまま混合診療禁止のままなのかはわからないが、この先の日本にとってとても大事な問題になってくると思うのでしっかり考えて最良な選択をしてほしいです。
https://kotobank.jp/word/%E6%B7%B7%E5%90%88%E8%A8%BA%E7%99%82-182649
http://tatujin.net/jiyuutokongou.html
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0304F_T00C14A6EE8000/
https://kotobank.jp/word/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%9A%86%E4%BF%9D%E9%99%BA-154940
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E7%99%82%E8%A6%B3%E5%85%89
https://www.iyaku-j.com/iyakuj/system/dc8/index.php?trgid=9968
http://kokuho.k-solution.info/2009/02/post_27.html
http://www.1ginzaclinic.com/drugs/mininka/prescription.html
https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E7%94%B1%E8%A8%BA%E7%99%82-527015
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%AE%E9%A1%8D%E5%AE%A4%E6%96%99
私は、混合診療について反対である。
【治療費が不正当なものになる恐れがある】
現在の医療制度だと、国民は保険料を国に収め、国民皆保険に入っている。よって、医療機関に払う料金は年齢別で1〜3割である。これは、国が治療や薬の安全性をしっかり確かめた上で、保険適用できる範囲を決めている。しかし、混合診療が認められてしまうと、安全性も高く、効果もあるような治療や薬が、公的保険で取り扱えるようにする手続きの手間が面倒なために、自由診療のままになってしまうケースが増える可能性がある。また、保険の財源不足を理由に、現在では公的保険で受けられる治療、使える薬も、自由診療として扱われる可能性がある。このように、混合治療の範囲が拡大すると、治療費が正当なものにするということ自体が困難になる恐れがあるのである。
また、今のままでは自由診療と保険適用診療を受けた際、本来は保険適用の治療費まで、患者が負担することになっている。もし混合治療が拡大すれば、自由診療の割合が増えるであろう。その場合、医療保険の「先進医療特約」などの保険料が値上がりするであろう。それにともなって、保険料全体が値上がりし、結果的に消費者である国民を苦しめてしまうことになる。
【医療の質と安全性が下がる】
日本では、再生医療や、臓器移植の一部は保険適用外で、自由診療になっているのである。臓器移植の保険適用外なのは、小腸である。国民皆保険で可能になる治療や薬は、治験で何度も安全性と効果を確認した後、承認期間がいろいろと審査して、やっと許可が下りたものである。よって、薬や治療が開発されてから、実際にその治療や薬を必要としている患者が使用できるようになるまでは、かなりの時間がかかってしまう。その長い許可がおりるまでの過程で、新しい治療や薬を待ちわびている患者の容態は確実に変化していく。日本での認可が遅くて、待ちきれない場合には、その患者自身が海外に渡り、治療を受けるケースもある。実際、日本では認可されていなくても、海外では普通に使用されている治療法や薬がたくさんあるのである。例えば、幼い子どもが臓器移植をするしか生きるすべがないにも関わらず、海外の病院の高額な治療費を払い、なおかつ家族でその国に長期間滞在しなければならないようなケースがある。その場合、必死に募金を呼びかけて資金を工面し、海外で手術を行なって元気になって帰ってきた、というニュースがいくつかテレビで紹介されていたりする。
また、自分や自分の周りの大切な人が、一刻を争うような病状で、助かる方法がまだ安全性が確立されていない治療方法しかなかったとしたらどうであろうか。ほかの保険適用の治療では行っても意味がなく、そのまま死を待つだけになってしまったら、多くの人は藁にもすがる思いで少しでも生き延びることができる可能性のある治療を受けたいと思うのではないであろうか。その治療法が確実に安全だと言えなくても、死を待って何もせずにいるよりは、その可能性にかけてみたいと思うはずである。
以上のようなことを考えた場合、安全性は不確かであっても、日本ですべての治療が行えれば良いのにと考える人が出てくるであろう。しかし、手続きに時間がかかっても面倒でも、医療は安全性と質が大切であり、それを守るためには仕方のないことである。海外では認可されているから安心だ、というのは短絡的な考えである。同じ人間であっても、世界の人種はたくさんあって、生きている環境も人間の体質もそれぞれである。よって、その国民の体質に合った薬、治療があるはずである。日本の場合、日本国民に合った治療。薬か、安全か、効果はあるか、などといったことを国がくまなくチェックしてくれているのである。それを、混合治療で治療ならなんでもあり、というような状況になってしまったら、日本の医療機関の安全性が脅かされ、質が落ちてしまうことが懸念される。
【医療が国民にとって不平等なものになる】
憲法14条「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」にあるように、国民は国のサポートを受ける機会が平等なはずである。しかし、混合治療によってお金がある人が多くの治療を受け、お金のない人は最低限の治療しか受けられない、という状況に陥る可能性がある。そのようになった場合、憲法14条にあるような”法の下の平等”は保たれているとは言えない。現在、自由診療でしか受けることができない治療、使えない薬も、それらの安全性と効果が確立され次第、どんどん保険適用にしていくべきである。しかし、混合治療が普及してしまうと、現在自由診療である治療や薬を使うケースが増え、そちらの方が医療機関にもお金が入るので、保険適用にすべき治療や薬が、なかなかそうならないことが懸念される。そうなると、お金のない人はいつまでたっても最新の治療が受けられない。そんな不平等な社会に、決してしてはいけないであろう。
【現場の意見も反対多数である】
日本医師会も、混合診療には反対している。日本医師会の見解では、現在の制度の中で認められている混合診療つまり保険外併用医療費制度は、以下のように認識されている。「(1)新しく高度な診断や治療で普及度が低い医療技術を指す「評価療養」、(2)入院時の個室や予約診察など、どちらかというと患者さんのアメニティ(快適性)に関わる「選定療養」、の2つに大別されます。 まず、高度先進医療は、有効性や普遍性が認められるものは、すべて保険適用するのが筋です。そして、より多くの患者さんが高度の医療を保険で受けられるようにすべきです。差額ベッドなどのアメニティに関するものは、そもそも診療行為ではありません。したがって、その部分で患者さんから費用を徴収しても「混合診療」には該当しないと整理すべきです。」(出典:日本医師会ホームページ)よって、差額室料
や差額ベッドの料金は、医療とは関係ないので切り離すべきだと考える。そもそも、病院は患者にとって快適な環境を用意しているはずである。しかし、入院している患者にはそれぞれの事情があり、精神的にも負担があるため、よりその患者の希望に沿った環境を整えることは、悪いことではない。そのより良い環境を、部屋やベッドで整える際に、患者がプラスで料金を払う自由はあっても良いし、それは差別にはならないであろう。
「社会保障を充実させることは、国の社会的使命であることが日本国憲法にも規定されています。国が果たすべき責任を放棄し、お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあってはなりません。医療は、教育などと同様に「社会的共通資本」であるという考え方を私たちは持っています。医療が、国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強く持つものだからこそ、すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境でなければなりません。健康保険の範囲内の医療では満足できず、さらにお金を払って、もっと違う医療を受けたいというひとは確かにいるかもしれません。しかし、「より良い医療を受けたい」という願いは、「同じ思いを持つほかのひとにも、同様により良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきです。混合診療の問題を語るときには、「自分だけが満足したい」という発想ではなく、常に「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければならないと考えます。混合診療は、このような考え方に真っ向から対立するものだからこそ、私たちは強く反対するのです。」(出典:日本医師会ホームページ)
このような、現場の意見は大いに尊重すべきである。確かに、個別の患者にスポットをあてたミクロな視点で見れば、保険適用の治療と、自由診療の治療を一緒に受けて、保険適用の部分はそのまま保険適用の額で支払える方が良いであろう。しかし、マクロの視点で社会全体の仕組み、今後の医療制度の変化について考えてみると、混合治療は問題が山積みであることに気付く。日本社会のためにも、マクロな視点で見て、混合治療の導入はやめるべきである。
【医療において、社会的規制は必要である。】
医療観光は昔からあるもだが、今日では韓国や中国から日本に医療観光で訪れる観光客が増えている。日本で受けられない治療を受けるために海外に行く例があるように、逆に外国人が日本に来て日本の医療機関を利用する場合があるのである。医療観光について、医療観光プロモーション推進連絡会は以下のような見解を示している。「“医療を求めて国境を越える外国人患者”を受け入れることは、「人間一人ひとりに着目し、生存・生活・尊厳に対する広範かつ深刻な脅威から人々を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現すること」を目指す『人間の安全保障』の理念に適うものであると言えます。自国では受けられない医療を、日本で受けることにより健康を回復し通常の生活を取り戻すことを求めて来る外国人を受け入れることは、我が国にとってより意義が大きいのではないでしょうか?」(出典:医療観光プロモーション推進連絡会ホームページ)
確かに、この考え方は一理あり、もっともである。外国人が日本にたくさん訪れれば、経済効果も期待できる。しかし、日本社会の現状を見たら、日本医療にそのような余裕はないはずである。地方での医師不足に加え、高齢化社会の日本では患者は増え続け、今でも病院のベッドはギリギリである。大きな病院では、連日たくさんの患者が訪れ、有名な先生ともなると診察を受けるのはとても大変である。このようなことを踏まえると、日本の医療が優れていて、海外の人々を助けることも大切ではあるが、日本の医療は日本国民が最優先で受けるべきである。医療観光の例を考えると浮かび上がってくるように、医療というのはそもそも、国民のことを第一に考えて存在すべきものである。
このように、日本の医療は日本人のための社会保障である。医療観光は、世界諸国と比べると日本は進んでいない。それは、上記のような理由で、日本が医療を国民のために発展させてきたからである。医療は、社会にとって重要で、国民が安心して暮らしていくために守られるべきものである。また、公正で平等であるべきである。つまり、国が医療における社会的規制を設けて、しっかり管理していかなければならないのである。よって、日本社会のことを最優先で考えるならば、混合治療の導入は控えるべきである。
(4292字)
【参考資料】
日本医師会ホームページhttp://www.med.or.jp/nichikara/kongouqa/index.html
厚生労働省ホームページhttp://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/heiyou.html
混合診療は憲法違反ではないと考え賛成である。
・混合診療の拡大案の内容
保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」拡充の具体案がある。原則として全国約100カ所の大病院で実施し、中小病院や診療所は患者を紹介するのが主な役割になる。診療所を含む「身近な医療機関」で受診できるようにする方針を掲げていたが、実質的には高度医療を担う中核病院にほぼ限られる公算が大きくなった。
中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)に提示し、了承を得た。今後、社会保障審議会(同)でも審議し、改革方針をまとめる。
混合診療を拡充する仕組みは「患者申し出療養(仮称)」と呼ばれ、患者が希望すれば、抗がん剤など未承認の新薬や医療機器を幅広く使えるようにする。対象になった薬や機器は検査や処置、入院費など保険診療との併用が認められ、患者は今より軽い負担で先端医療を受診できる。混合診療を実施する薬や機器は原則として東大病院など15カ所ある臨床研究中核病院か、大学病院など86カ所の特定機能病院で受診する。他の医療機関に道を開く仕組みもあるが、臨床研究中核病院が協力医療機関として申請し、厚労省の専門家会議が承認しなければ実施できない。
厚労相と行政改革相が合意した改革案は「できるだけ患者に身近な医療機関で迅速に受診できるようにする」と明記。診療所も含め最大千カ所超で実施される可能性も見込まれていた。厚労省案だと100病院以外に広げる治療内容は最終的に同省の判断になるので、抗がん剤などは「リスクが高い」と外れる公算が大きい。
今回の案では中小病院や診療所は患者からの相談に応じ、大病院への申し出を支援する役割を担うとした。患者に身近な診療所などは相談窓口としての位置付けにとどまる可能性が出てきた。
同日の中医協は、患者らの細胞を使って体の組織を修復する再生医療を混合診療の対象に新たに加えることを了承した。診療を通じて安全性や効果が認められた再生医療製品は、健康保険が適用されるようになる。
これまでに厚生労働省が決めた混合診療の拡大案は3つある。
第一に、現在は重粒子線治療や遺伝子診断など一部に例外的に混合診療を認めている「保険外併用療養費制度」の対象を拡充する。14年度中に専門の評価組織を立ち上げ、再生医療や新しい技術を使った医療機器などを評価し、この制度の対象に加える。
第二に、他に治療手段がない患者が未承認の薬を混合診療で使える制度(日本版コンパッショネートユース)も15年度から本格導入する。今は未承認薬は薬の有効性を調べる治験にでのみ混合診療が認められ、薬以外の入院費などは保険を使える。
ただ、治験は年齢などで制限があり、対象に入れない人もいる。治験対象外の患者が未承認薬を使うと保険診療部分も含めて患者が全額負担しなくてはならない。新制度では治験対象外の患者も未承認薬を保険診療と併用できる。
第三に、厚労省は治療効果があっても費用が高額過ぎる新薬・医療技術などを保険適用から外すことを検討する。これらの保険適用から外れた新薬などを患者が使いたい場合は混合診療で使えるようにする制度を16年度以降に新設することを目指す
・さまざまな反対意見
混合診療が解禁されると医療はどうなるのか、このことを考える上で、参考になるのは、歯科の差額徴収と差額室料の事例である。解禁論者は、「患者が治療法を幅広い選択から選べる」「未承認薬などの制約がなくなる」というが、果たしてそうであろうか。
歯科では、1976年まで20年以上、金合金や白金加金、金属床等を使用した歯冠修復、欠損補綴など広い分野にわたって、厚生省(当時)の通知によっていわゆる「差額徴収」(保険請求は保険適用のもので行い、それとの差額を徴収する)という混合診療が認められてきた。それでは、この混合診療の時代に、歯科の保険診療は拡充したであろうか。実態は逆である。
さらに、「選択の幅が広がった」と患者に喜ばれるどころか、70年代に入ると「高い治療費」「違法徴収」「悪徳歯科医師の横行」などと社会問題化し、とうとう1976年6月に厚生省が「原則的に廃止」する通知を出したのである。
差額ベッドは、1961年の皆保険成立以前からある歴史の長い混合診療である。この存在が、日本の療養環境改善の障害となってきた。1984年の特定療養費導入以降も、導入当初は個室・2人部屋で病床の2割という規定であったものが、現在では4人部屋まで認められ、一般病院では病床の5割まで可となっている。
規制緩和がこのように進む一方で、診療報酬の入院室料(現在は入院基本料に包括)は改善されず、低診療報酬の下で差額室料は、それを補い医療機関の経営を支えるものとなっているのが現実である。
以上のことからも明らかなように、混合診療が導入されると、その部分の保険給付(診療報酬)の改善は遠のき、保険外負担を前提にした体系ができてしまうというのが歴史の教訓である。
次に
混合診療解禁は、短期的に見れば、患者に一定の利益をもたらす。 しかし、混合診療解禁により、確実に、保険診療削減圧力が強まり、保険診療充実圧力は弱まる。 よって、長期的には、国民皆保険制度は崩壊する。
ほぼ抜け殻状態で制度を存続させることをもって「国民皆保険制度は崩壊しない」と言う者もいるが、それは大きな間違いである。 形だけの制度が残っても、その本来の目的を達成できないのでは、実質的には崩壊している。
国民皆保険制度は、国民が健康に生存する権利を守る制度である。 すなわち、貧富の差に関わらずに必要な治療を受けられるようにする制度である。 国民皆保険制度の目的は、金がないために必要な治療が受けられなくなる事態を防ぐことである。 ただし、治療その物を受けられても、その後の生活が破綻するようでは、健康に生存する権利を守れたとは言えない。 言い替えれば、健康に生存する権利を守れるギリギリまで貧乏人に金銭的負担を求めても、国民皆保険制度の目的は達成可能である。 つまり、国民皆保険制度の目的は、所得再分配ではない。 国民皆保険制度の目的は、格差を是正することでもなければ、貧乏人に豊かな暮らしをもたらすことでもない。 もちろん、健康に生存する権利を守れるギリギリまでの底上げは必要となるが、それ以上の底上げも格差是正も必要がない。 国民皆保険制度としては、ただ、国民の健康に生存する権利さえ守れれば良いのだ。 といっても、所得再分配の必要性を否定しているわけではない。 所得再分配は別の制度によって行なうべきことであって、国民皆保険制度の役割ではないのである。
健康に生存することができれば、どんなに貧しい暮らしを強いられても、国民皆保険制度は目的を達成できている。 しかし、どんなに豊かな暮らしを送れたとしても、健康に生存する権利が脅かされるのでは、目的を達成できていない。 つまり、国民の健康に生存する権利が守れないなら、国民皆保険制度は崩壊しているのである。 国民皆保険制度が国民の健康に生存する権利を守れなくなっても形だけ制度が残っていれば「崩壊ではない」と言い張るのは詭弁である。
最後に、医療観光が国の政策となり、一部の医療機関や地域で進められている。人間ドックや治療に外国人を誘客し、経済の活性化や国際貢献を目指すが、「混合診療の全面解禁や国民皆保険の崩壊につながる」との反対も根強い。医療を受ける私たちにどんな影響が及ぶのか、懸念材料も含めた議論が不足していると感じる。
医療観光は、一般に「医療行為を受ける目的で海外に渡航すること」を指す。2010年6月に閣議決定した「新成長戦略」に「外国人患者の受け入れ」を盛り込み、12年3月の「観光立国推進基本計画」では「医療と連携した観光の推進」を掲げる。
観光庁の担当者は「世界的に良質な医療を求めて他国に渡る渡航者が増える中、信頼できる渡航先として外国人患者の受け入れ体制整備が期待される」と訴えた。
だが、保険診療に関連して、日本医師会などは根本的に異議を唱える。
日本では国民は誰でも治療費の一部負担で医療が受けられる「国民皆保険」が維持されている。混合診療の場合は全額が自費となる。外国人患者は自由診療となり、必然、医療観光の対象も富裕層となる。その受け入れ促進を機に、日本人の富裕層も含めて医療にアクセスできる格差が拡大すると懸念しているのだ。
「医療観光は、所得の多寡で受けられる医療に差が出る混合診療の全面解禁につながる可能性があり、国民皆保険の空洞化や地域医療の弱体化を招く恐れもある。デメリットの方が大きい」。医療観光は外国人富裕層をターゲットとした一部の取り組みというイメージが強い。だが、一般市民と医療の関わりに影響が及んでくるなら、人ごとでは済まない。
・医師会が混合診療を反対する本当の理由
日本医師会は「混合診療を認めたら、金のある人だけが高度医療を受けられるようになって格差が広がる」と主張しているが、そんなことはありえない。必要な高度医療の多くは保険でカバーされており、自由診療で受けるのは海外で開発されたばかりの技術など特殊なものに限られる。自分の意思で保険外のサービスを受けることを禁止する理由はない。
医師会のもともとの理由は、混合診療で高度医療が認められると、開業医の市場が奪われることを恐れた為だった。しかし開業医のほとんどは保険外の高度医療なんかできないのだから、混合診療を解禁しても彼らのビジネスに影響はない。他方、混合診療を解禁する効果は明白だ。自由診療を受ける患者の負担が減り、新しい技術にチャレンジする総合病院が増えるだろう。小泉内閣のとき混合診療の解禁が打ち出されたのは、医療費を抑制するためだった。今後、日本が急速に高齢化する中で、老人医療費も激増する。これを抑制するためには、自己負担できる医療費は負担してもらい、本当に必要な医療だけに保険の対象を縮小しなければならない。それがまさに医師会の嫌がることなのだ。自由診療が増えると、社会主義でやってきた開業医の世界に競争が起こる、と彼らは恐れている。しかし「私たちの既得権である保険診療を守れ」とは言えないので、「格差が拡大する」などと弱者をだしに使っているのだ。
しかし混合診療なんてTPP協議の対象に入っていないし、それは「国民皆保険の崩壊」とは何の関係もない。一般の医師でさえ「医師会がなぜ混合診療に反対しているのかわからない」という。
・今認められている混合診療の例
医療費の高額化によって差別化がはじまるというのがある。高度医療は結果として高額医療であって、昔も今も受けられる人がいれば、受けられない人もいる。そして混合診療の禁止が医療費をとんでもない高額に引き上げている。
例えば歯科医にあっては混合診療が認められている。保険診療を受け付けない歯医者もいるが、多くは保険診療と自由診療を併用している。保険対応の部分入れ歯はクラスプだけだが、他にもコーヌス・テレスコープ、スマイルデンチャー、シリコーン、ホワイトクラスプ、アタッチメント義歯などがあって、すべて保険外だが、患者は懐具合と相談の上、適宜利用している。要するに、歯科医院の場合、患者はさまざまな治療を選択することが可能である。ところが、歯科医院以外の病院や診療所にあって自由診療を一部でも取り入れると、それ以外のすべての診療が保険の対象外となってとんでもない金額を請求される。「医療費の高額化による差別化」が行われているのは現在であって、TPP締結によって混合診療が自由化されると医療費は安くなり、ひとつひとつの治療は患者が納得した上で選択できるようになる。
歯科医はともかく、免疫療法のごとくそれしか治療法がない場合が困るのである。例えば大腸癌と膵臓癌の抗癌剤は同じ物だが、大腸に用いる場合は保険対応で、膵臓に用いる場合は保険外になる。免疫抑制剤は全身性エリテマトーデスには保険対応だが、臓器移植がもたらす拒絶反応の抑制に用いる場合は保険対応外となる。
現行法下で混合診療を受けようとすると、二つ以上の病院を往き来しなければならない。入院中にこの点滴は保険対応外すなわち自由診療ですがといわれると、直ちにA病院からB病院へ移り、そちらで点滴を済ませてA病院へ戻ることになる。すなわち、保険診療専門の病院と自由診療専門の病院とをわけて考えなければならない。そのようなことは現実には不可能に近い。一部の医師は内緒で混合診療を取り入れているらしい。そうでなければ臓器移植など端から不可能である。治療はおろか、生命を維持する上で健康保険外の治療が必要な患者は多くいる。そのひとたちにとってTPPは一刻も早く締結されなければならない。難病で苦しみ悩む人たちを健常者はなんと心得ているのだろうか。
次に、保険外併用療養費制度である。保険診療と保険外診療が例外的に認められる場合において、そこで発生した費用を給付する制度をいう。
先進医療では、高度な医療技術に関する費用は患者が全額負担し、入院基本料等の基本部分(療養の給付)の費用に関しては「保険外併用療養費」として医療保険で給付されるという、いわば「混合診療」が認められている。
保険外併用療養費制度は、混合診療の禁止という日本の医療保険制度の原則の例外的な制度と位置づけられる。
保険外併用療養費制度の趣旨は、国民の医療サービスの選択肢を広げ、利便性を向上するという点にあり、いわば「規制緩和」の流れの一つである。
ただし、このことは逆にいえば、患者にとっては規制のない自由市場で医療を受けるようになることを意味する。
したがって、患者自身で医療行為の安全性や有効性に関する情報を得て、適切な医療サービスを選択するという姿勢が個々人に要求されることになる。また、「評価療養」及び「選定療養」については、次のような取扱いが定められている。
1. 医療機関における掲示2. 患者の同意
3. 領収書の発行 である。
・憲法14条と賛成の理由
憲法14条は、1、すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。2、華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3、栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
というものである。反対意見は多数あるが、混合診療は皆に平等であり、社会的規制に基づいている。
参考文献:日本経済新聞
http://www.despera.com/bbs2/2013/07/tpp_4.html
http://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/dannwa/041105seisakukaisetu-2.html
http://kongoshinryo.jpn.org/static/collapse_universal.html
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51754488.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95%E7%AC%AC14%E6%9D%A1