大沢仁

相続に関して残された者の為にも委任ではなく信託が良いと考える

 

1、信託とは

 信託とは、委託者が信託行為によってその信頼できる人(受託者)に対してお金や土地、建物などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産(信託財産)の管理・処分などをする制度のこと。信託はTrustfor the use of~)〜の為にというものでこの概念はヨーロッパ中世では既に成立していたものである。とても分かりやすかったのが授業での豊臣、徳川、前田家を例にした話だった。秀吉亡き後、秀頼を後継者にしたい秀吉と自分が天下人になろうとする家康、秀吉に意思を託された利家の三人を例にすると信託の基本的な仕組みが理解しやすい。

また、ここで重要になってくるのが英米法では信託は契約ではないということである。そもそも契約には約因が必要とされている。この約因Consideration)とは契約の一方の当事者が他方当事者に対してしてあげることに対して、してもらったほうの当事者が何らかの報酬や、これに代わるものを提供することをいう。英米法では契約が有効に成立するにはこの存在が必要とされている。よって、〜の為にという信託は契約にはならない。

 次に遺言信託についてである。遺言書において、信託を設定することを遺言信託という。具体的にいうと、「遺言者(=委託者)が、信頼できる個人又は法人(=受託者)に対して、自己の指定する財産(=信託財産)を自己が定める特定の目的(=信託目的)にしたがい管理・給付・処分等する旨を遺言書の中でお願い(規定)し、遺言者の死亡により発動する信託の形」と説明することができる。 なお、あくまで遺言であることには変わらないので、遺言としての形式を最低限具備している必要はあるが、公正証書遺言でも自筆証書遺言でも差支えはない。また、契約ではなく遺言なので、信頼できる個人又は法人が受託者として就任を承諾する意思があるかどうかは、遺言書の中では特に記載されない(遺言書上は、遺言者の意思に基づく一方的な規定となるが、実際は、受託者となる者に対して就任承諾の意思を確認しておく必要がある)。

 ここでとくに重要になると考えたのが受託者の存在であると考える。受託者とは、委託者から信託財産の移転を受け、信託目的に従って受益者のために信託財産の管理・処分などをする者をいう。しかし未成年者、成年被後見人および被保佐人は、受託者となることはできない。委託者の所有権も受託者へと移転する。また判断権の範囲はとても大きく受託者の判断で運用が可能になっている。これだけ見ると受託者の権限がとても強く、好き放題にできるのではないかと思ってしまうがそうではない。権限が大きい代わりに負う義務もとても大きい。例えば受託者は忠実義務として履行利益(例、転売利益)まで賠償しなければならない。さらに信託法は、忠実義務に関する一般規定を新設した上で、広く受託者・受益者間の利益相反行為を制限する規定を設けた。すなわち、信託法は、受託者は受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない旨を定め(30条)、その上で、受託者の利益相反行為の制限(31条)および競合行為の制限(32条)を定めた。信託法31条は、利益相反行為として、信託財産に属する財産を固有財産に帰属させ、または固有財産に属する財産を信託財産に帰属させることなど4つの類型を挙げている(同条2項各号)。また、競合行為の制限とは、受託者がその権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産またはその利害関係人の計算でしてはならないことをいう(321項)。

また受託者は善管注意義務や情報提供義務も負うことになる。なぜこのように受託者は厳しく信託法で義務を負うのか。それはこのように義務を負うことで信託の本質である「〜の為に」になるからだと考える。委託者は受益者の為に、受託者は受益者の為はもちろん、委託者の意思の為に義務を負っているのではないかと考える。

ここで私の考えは信託をするにあたって家族信託が良いと考える。理由として、信託銀行は、高額な資産(預金・有価証券等)しか信託として預かってくれず、現時点では不動産を信託財産として預かる信託銀行はほとんどない。相続や生前の財産管理で悩んでいる人の多くが不動産を所有しており、信託銀行がこれらのニーズに万全に応えることは難しいのが実情である。

その点、信託会社は様々な企業努力で、顧客のニーズに即した信託を提供できるようになりつつあるが、どうしても高額な信託報酬が発生し、資産家でないとハードルは高くなってしまう。そこで、親族が受託者となれば高額な信託報酬も発生せず、資産家に限らず誰でも気軽に財産管理と資産承継の仕組みを実現できる可能性がある。特に高額な信託報酬が発生しないというのは大きなメリットであると考える。また親族が受託者になることで信託銀行などに比べてその家族のことを理解しているので円滑な信託になると考える。

 信託のまとめとしてメリットをあげると

 @包括的・・信託受託者が全体を指揮。これは先ほどあげた家族信託にすることでより全体を見渡せると考える。

 A能力制度に阻害されない・・本人(委託者)が認知症などになってしまった場合でも関係なく信託を進めることができる。

 B財産に対する防衛力が強い・・信託財産として別個のものになるため、本人が破産しても守られる。財産分別義務として破産隔離有。

 

2、reverse mortgageについて

 まずreverse mortgageリバースモーゲージ(ローン)とは、持ち家を担保としたローンの1つ。持ち家という資産を保有する高齢者世帯が、持ち家を手放すことなく、その資産価値を活かして金を借りるための手段。
一般的なリバースモーゲージローンの特長は以下のようになっている。

・高齢者世帯向けのローンであり、年齢制限で住宅ローンやカードローン等の借り入れができない人も利用可能。

・持ち家を担保に入れ、その持ち家の資産価値の範囲内で借り入れが可能。

・さまざまな使いみちに利用できる。

・存命中は毎月の元金返済がなく、ローン契約者が死亡した際に貸し手(銀行)が担保である持ち家を売却するなどして返済。

高齢者世帯でも、持ち家があれば現金を得ることができ、存命中の返済がいらないことから注目を集めている。最大の特徴は、返済の仕組みにある。生きている間に返済する義務がないからだ。亡くなった後、遺族などが手続きをして担保不動産を売却し、その代金で一括返済する。子どもがいない夫婦など死後に家は不要という世帯が、ゆとりある老後生活のために現金を借りるための商品といえる。

 総務省の調査によると、60歳以上のリタイア世帯の家計は平均で年71万円の赤字になっており、貯蓄を取り崩してしのいでいる。貯蓄額は平均2000万円足らず。蓄えが尽きることへの不安を抱える世帯は多い。住み続けながら家を現金化できるリバースモーゲージの需要はここにある。reverse mortgageのメリットはこのローンを借りた高齢者はもちろんだが何より国にとってのメリットが大きいと考える。現在日本の空き家軒数は平成25年度において約820万軒、空き家率が13,5%に上る。なぜ空き家が増えているのか。空き家はどんどん解体してしまえばいいと思うがそうはいかない。空き家になっていても解体されない、つまり滅失戸数が増えない原因は、特に個人所有であるとき顕著に現れる。1つは経済的な理由で、住宅がない土地では固定資産税が最大4.2倍に増えてしまうこと、解体のために費用を要する点。つまり、お金を使って解体したのに税金が上がるので、使っていなくても解体しようと考える人が少ないのは当然。

また、家の存在は所有者にとって経済的な価値以上に想いを含んでおり、解体をためらってしまう側面がある。 生活の拠点として長い間住み続けた住宅を壊してしまうことは、実家なら一層ためらいが大きいと考えても不思議ではない。かなりの高額で購入し、家族の思い出がある建物を解体したいと考える人はなかなかいないだろうと私は考える。

もう1つ深刻な問題があり、古い空き家では、現行の建築基準法施行以前に建てられ、再建築が認められない土地になっているケースがある。

 再建築できないのなら、解体してしまうと宅地としての用を足さず、放置するしかなくなっている空き家が存在する。そのような背景を考えたときにこのreverse mortgageはとても効果があると考える。しかし土地の価値が下落してしまったらなどのデメリットもあるのではないかと考える。

 

3、物権変動

 英米法にはrace type(登記で所有権の所在を決める)notice type(公信の原則)がある。race typeとは日本民法での177条、物権変動の対抗要件のことである。これは登記が対抗要件の条文。notice typeとは善意取得を優先させるものである。

また権原証書(deed)物権変動を証する書面を登記する制度は、登記された証書に「優先権」を与えようとするものである。すなわち、後に登記された証書による譲渡は先に登録された証書による譲受人に対して主張することができず、登記を備えない証書による譲渡も同様である。これらは英米法における物権変動で重要な考え方である。大陸法では悪意でも登記した者が勝つ。であったりまたドイツ法では登記に公信力があるとされている。(形式主義)

 

4、まとめ

 日本の累積債務が1000兆円を超えた。これは明らかな赤字国債であり主な原因は社会保障であった。このままいくと日本の未来は危うい。そのための改善策として社会保障制度の効率化が必須だと考える。中でも信託、またreverse mortgageはとても重要になってくると考える。

また現在の日本では終活ブームがささやかれているが自分の死後、受益者(親族)の為を思って受託者に意思を託すというのは素晴らしいことだと考える。委任ではなく信託にすることで特に財産分別義務により仮に破産したとしても信託財産は守られるという点が私が信託に魅力を感じた大きな理由である。

 

出典

 信託協会www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/

 三井住友銀行www.smbc.co.jp/kojin/reverse-mortgage/

 NIKEEI STYLE style.nikkei.com/.../DGXMZO85669910U5A410C1945M01

  授業ノート

 

 

 

伊藤大貴

法学部4年 13J104001 伊藤 大貴

英米法U テーマ相続と遺言

 

【結論】英米法の相続の考えを取り入れた法制度を作るべきだと思います。

 

1.【日本の借金1千兆円】

国債や借入金など「国の借金」の残高が一千兆円を超え、大きな社会問題となっています。人口の少子高齢化に伴い、社会保障には今後も巨額の費用がかかります。

国の行うさまざまな事業にはとにかくお金がかかるので、借金をせざるを得ない、国債

を発行せざるを得ない状況があります(赤字国債)。

国の収入は税収で年約4050兆円で、それに対して今までの借金額は一千兆円超。国は

大借金の原因として、以下の要因を挙げています。

 

【歳出面】
@急速な高齢化の進展による社会保障関係費の増加
Aバブル崩壊以降の景気対策に伴う公共事業関係費の増加

【歳入面】
@バブル崩壊
Aリーマンショック等による景気後退
B減税による税収の落ち込み

 

国は、現在景気対策と称し、野放図な公共事業費の積み上げをしていますが、考え直す必要があります。また、社会保障においても医療・介護の予防にさらに徹底的に取り組む必要があると思います。

2. 【終活ブームから信託へ】

人が死亡した場合、相続問題が発生します。相続とは、狭い意味では、人が死亡した場合に、その死者と一定の親族関係にある者が財産上の法律関係を当然に、かつ包括的に承継することを言います。民法上、相続は、死亡によって開始するとの規定が設けられています。相続開始は、人が死亡した瞬間であり、被相続人の財産は、その死亡と同時に相続人に移転します。また、死亡と同時の権利の承継であるため、その時に生存しているものだけが相続人になれます。

 

AP通信によると、『終活』とは、「人生の終わりのための活動」の略で、自らの人生の終

わりを迎える準備することを指します。同記事によれば、日本社会において、自身の葬儀や死後の事務手続きを準備している60代・70代の高齢者が増加しているそうです。本屋さんに行くと、遺言の書き方のハウ・ツー本がベストセラーになっていたり、「終活セミナー」

が盛んに行われています。また、「生前葬」や、故人の灰を木の根元に埋める「樹木葬」

等といった新しい葬儀スタイルが少しずつ広まってきています。今までのように親族や

先祖のことを考える葬儀から、故人の意向を重んじる葬儀に変わってきていると感じます。

 

この終活ブームで多くの日本人が、アメリカのように「自分の人生の最後は、自分の意思をしっかり表明することが大切だ」と考えるようになり、遺言信託に注目が集まっています。アメリカでは個人の意思を何よりも尊重するため、日本のように遺言から財産を取り返す「遺留分」がありません。その為、遺言通りに財産の分配が行われます。

 

遺言信託とは、遺言者の財産を信託会社に移転し、その財産を管理・運用してもらう制度です。つまり、幼い子供など、管理能力に乏しい者が、近い将来相続人になることを考えた遺言者が、信託銀行に相続財産を委託し、その財産を管理・運用して得られた収益を相続人に交付することで、遺言者の死後も相続人が安定した生活を送れるような仕組になっているということです。

信託は、委託者・受託者間の契約により設定されることが多いのですが、遺言によっても設定ができます(信託法32号)。遺言の記載事項は、遺言者の財産のうち、全部または一部を信託する旨、その目的、管理処分方法、受益者、受託者、信託報酬の額または算定方法などで、契約による信託とほぼ同じです。遺言者が信託の目的・管理処分方法・受託者の権限を自由に定めることができます。

信託のメリットとしては、弁護士とは異なり、信託会社という組織に依頼するため、遺言書の管理や執行が数十年先になっても比較的安心(依頼した弁護士が途中で亡くなるといった心配がない)であることや、不動産の活用方法や資産運用の相談をはじめ、税金対策など、トータル面での専門的アドバイスが受けられる点です。デメリットとしては、コストがかかることが挙げられます。

家族信託とは、遺産を持つ方が自分の老後や介護等に必要な資金の管理・給付を行う際、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる家族の為の財産管理のことです。被相続人が家族や親族に遺産の管理を託すため、高額な報酬は発生しないのが特徴で、資産家の方を対象にしたものではなく、誰にでも気軽に利用できる仕組みです。

 

信託の場合は「受託者=信託銀行」となります。一方、家族信託は家族や親戚などの信頼できる知人に受託者になってもらおうというのが基本的な仕組みで、「受託者=家族」です。家族信託に登場する人物は「委託者」「受託者」「受益者」の3人です。

 

家族信託のメリットとして、

@ 後見制度に代わる柔軟な財産管理が実現できる

A 親の財産管理が容易に行える

B 遺言書ではできないことが可能

C 財産承継の順位づけが可能になる

D 家族信託には倒産隔離機能がある

E 教育資金の一括贈与が1500万円まで可能になる

F 不動産の共有問題・将来の共有相続への紛争予防に活用できる

G 二次相続が指定できる

が挙げられます。

 

次に家族信託のデメリットとしては、

@ 成年後見や遺言でないとできない事もある

A 受託者を誰にするかで揉める可能性がある

B 高い節税効果は期待できない

C 遺留分減殺請求の対象となる可能性がある     

が挙げられます。

 

次に信託と委任の違いについて説明します。

@ 注意義務=委任は善管注意義務(善良な管理者の注意義務)で良いのに対して、信託はそれより一段高い義務があります(prudent investor rule)。

A 忠実義務=委任は信頼利益で足りるのに対して、信託は、履行利益(転売・運用・利益まで含む)となっています。

B 財産分割義務=破産した場合、委任は、破産隔離がないので財産は守られませんが、信託の場合は、破産隔離があるので信託財産は守られます。

C 所有権の移転=委任は委任者が所有者なので移転しません。一方、信託の場合は、受託者が所有者になるため、所有権が移転します。

D 判断権の範囲=委任の場合、受任者は指示待ちなので判断権は少ないのに対し、信託の場合は、受託者は自己の判断で運用が可能なため大きくなります。

E 終了=委任は死亡・破産ですが、信託の場合は、信託目的の達成(clafin doctrine

   で終了となります。

 

この委任契約(民法643条)の他に、寄託契約(民法659条)というものがあります。

これは自分の財産に対するのと同じ注意をもって寄託物を保管するだけで良いという契約

です。

 

「信託」という概念は日本法にはあまり馴染みがありませんが、英米法では、法体系中において欠くことのできない要素です。

 

3.【相続による空き家問題】

日本では、空き家が820万戸(負の遺産)もあり、この空き家問題の一つに相続があります。相続しても古い家を活用できずに、そのまま空き家にしておくというケースが非常に多く、この問題の対策として、空き家対策特別措置法が平成27226日に施行されました(同年526日から完全施行)。

親が高齢になっても子供と同居する世帯は少なく、親が自ら子供に負担をかけないように、介護施設を利用する例がみられます。そうなると、高齢者比率が高まるにつれ、実家が空き家になっていきます。

建物がある土地は、土地の固定資産税が最大で1/6まで優遇される特例があります。 逆に考えると、解体するだけで土地の固定資産税が最大4.2倍に増えるので、空き家が古くなっても誰も解体しようとしません。また、中古住宅より新築が好まれるため、なかなか中古物件の需要がなく、エコの観点からも問題があります。

 

高齢社会へと向かう日本においては、年金を受け取れる年齢やその額、また介護保険料の増額なども検討されている中、介護費用の問題は非常に深刻です。十分な貯蓄や、年金の他に収入がある場合などを除いては、介護生活における金銭的な負担は相当なものだと思います。

上記に挙げた「空き家の増加」「介護費用の捻出」の問題を解決する方法の一つとして、reverse(逆) mortgage(死んだ質権)という新しい資産運用があります。居住不動産を抵当に入れて、介護費用を捻出できるというものです。質権とは違って、債務者が占有できるため、住み慣れた家で、今までと同じように過ごすことができるという点が、高齢者にとっては魅力的だと思います。リスクとしては、3つあります。

 @ 契約の満期を超えて長生きする。

 A 契約期間中に担保物件の評価価値が下がる。

 B 返済時に担保物件の売却価値が借り入れ残高を下回る(担保割れ)

 

アメリカなどでは、担保物件の価値の下落をヘッジする保険商品がありますが、日本にはありません。日本でもこのような保険商品があるとreverse mortgageを考えようと思う人が増えてくると思います。

 

4.【相続における物権変動について 日本と諸外国の違い】

 物権変動の基礎となる登記について日本と諸外国では異なります。

物権変動には、「意思主義」と「形式主義」という2つがあり、日本は、民法176条にて意思主義をとっています。また、民法177条により公示の原則が定められています。悪意でも登記をしたものが勝ちます。不動産に関しては、登記をしなければ第3者に対抗することができません。先に登記をした人が権利者となる制度です。速度で勝者を決めるのでレースになぞらえてrace typeと呼びます。

 

形式主義の代表的なのは、ドイツの登記制度であり、登記が物権変動の成立要件となっています。

 

一方、英米法では日本民法942項の類推である「悪意の者は善意でなければ登記があってもダメ!」という「善意でなければ保護しない」制度です。これをnotice typeと呼びます。日本法のように登記簿ではなく、「deed」とよばれる捺印証書を採用しています。日本法が大陸合理主義であるのに対し、英米法はイギリス経験主義です。

 

英米法の下では、契約をするには、「約因」と呼ばれるものが必要で、約因がないと契約は成立しないという考えがあります。つまり、約因とは価値の交換があることです。「私はあなたにこれをするから、あなたは私にこれをする」という交換条件が含まれるということです。それぞれ負担する義務が、対価関係になっているような場合をいいます。

したがって、「贈与契約」のように一方のみが義務を負うような契約は、約因がないため、認められないということになります。(日本の場合は口頭による贈与契約も有効)

ただし、信託では、契約の成立において、約因は不要です。

 

このように英米法は、日本法とは大きな考え方の違いがありますが、利益相反においても異なります。利益相反とは、ある行為により、一方の利益になると同時に、他方への不利益になることです。

 

次のケースで考えてみます。

@ 画家であった父は遺言で知人のABを遺言執行者にした。父には、娘が一人いる。

A 父が亡くなった後、ABは協議をして父の残した絵の販売を手数料50%で絵の販売会社Cに依頼した。

B ACの会社の取締役である。

C 娘がABを提訴した。

 

上記のケースでは、Aは遺言執行人と同時にCの取締役であるということから、利益相反にあたり忠実義務違反とされました。忠実義務とは、取締役の会社に対する責任を示した商法上の規定です。取締役は法令・定款規定と株主総会会議を遵守し、会社のため忠実に責務を果たす義務がある、という規定(商法第254条の3)です。

では、Bはどうかというと、BCという会社とは何の関係もありませんが、同じ仲間であるAがやっていることを黙認したということで忠実義務違反となりました。

英米法では、遺言執行者は、受託者となり、忠実義務が課せられ、履行利益を賠償しなければいけないとされています。

 

一方、日本法では利益相反に関しては、民法108条で「相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人になることはできない」とされているだけです。遺言執行者は、民法1015条にて「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす」とあり、善管注意義務があります。

信頼利益だけ賠償すればよいことになっています。

 

5.【今後の日本を考える】

今後、高齢者の増加と共に膨張が予想されるのは、医療・介護費です。年金改革も必要です。社会保障個人口座、マイナンバーなどで徹底した税収の確保が必要です。今、切り詰めなければ、将来私たち世代の負担がさらに増していくことになります。

社会保障の効率化の必要性からも、相続の際に英米法の「信託」という概念をもっと取り入れていく必要があると思います。

また、reverse mortgageという資産運用も積極的に取り入れて、相続による空き家を減らし、中古物件を増やして賃貸料を下げ、空き家問題を解決していかなければいけないと思います。

戦後、法制度が性善説という考え方で作られましたが、時代は変わってきています。情報革命が起き、人々の考え方、暮らし方も劇的に変化してきました。英米法の性悪説を参考にして今の時代に合った法制度を作る必要があると思います。

 

【参考文献】

@ウィキペディア

A中江ゼミ優秀答案

Bその他(法律)解決済み教えて!goo

Cアメリカの相続はどうなっているのか誰でもわかる相続ガイド

D英文条約一般条項の解説2(寺村総合法律事務所)

Ematome.naver.jp/odai/2141561241304660701

F授業のノート