吉野孝則

交通事故と保険   吉野孝則

 

結論

交通事故の際の保険診療は禁止するべき!!

 

 

 

このテーマを考えるにあたり当然のこととして、現在日本の債務は1000兆円を超えており予算の半分以上を社会保障費に費やしている。さらに財政法4条、5条があるにも関わらず日銀が買いオペとして80兆円分の国債を買い受ける形で借金は増え続けている。そして40年周期説から何かしらのトラブルで金利が1%でも上がろうものなら10兆円の利子を払うことが出来ず日本は破綻する可能性を孕んでいる。

これを前提に「交通事故と保険」に関して例題をもとに考えていく。

 

例題1

対向車線を走る車Aが急に反対の車線を走る車Bに近づいてきたため、危険を感じた車Bは車Aを避けるために急ハンドルを切ったところ、そこに偶然が飛び出してきて子供C(8歳or4歳)がけがをした。

 

・センターラインを越えて暴走→Bが急ハンドル

Cが飛び出し、認定された過失割合 A50%、B0%、C50%

Cは10万点分の怪我

 

治療費はいくら払うのか?

 

考え方

まずは民法がどうなっているかを考える必要がある。

日本の民法では損害に関してすべて民法709条をベースに解決することになっている。

民709条の要件

@  故意または過失

A  損害の発生

B  他人の権利又は法律上保護される利益

C  因果関係

D  責任能力(民712条)

これら満たすと損害賠償請求権が発生する。それぞれに細かい論点がありますが詳しくはwikiなり教科書で勉強してくださいw

 

請求できる損害は財産的損害と非財産的損害に分かれている。財産的損害は積極的損害と消極的損害(逸失利益)の請求が可能で、非財産的損害はいわゆる精神的損害というやつで民710条で請求可能となっている。

責任能力(民712条)は事理弁識能力の事であり6、7歳で備わると言われている。責任能力がなかった場合に民714条が監督義務者の責任を規定している。

 

民722条第1項にあるように損害賠償は完全賠償ではなく金銭賠償であり、2項に裁判所は過失相殺により損害賠償額を定めることが出来る。

 

ここまで民法の不法行為による損害賠償のルールであり、ここからはみ出す形で特殊不法行為の規定が続く。

この事例で大切なのは民719条の共同不法行為であり、1項が加害行為一体型、損害一体型、加害者不明型のケースをカバーしている(内田民法より)。

 

基本的にはこれらの条文を使って解決するわけだが、他にも使えそうな条文として民720条1項正当防衛、2項の緊急避難がある。

 

これが民法の損害賠償に関するルールで非常に良く出来ているわけですが問題があるのです。まず私的自治の原則を採用する民法で他人に損害賠償を請求するわけですから、証明責任が全て原告側にあり、証明が非常に困難になっています。仮に証明に成功して損害賠償請求権を獲得したとしても、被告に資力がなければ絵に描いた餅になってしまいます。

その上、現在は車の事故がとても多くて、いちいち訴訟をしていたら被害者の救済が困難になります。そこで登場するのが保険という考え方です。要は互助会なわけですが、医療保険の病気や怪我のように皆が死ぬまでに必ずお世話になるようなものは皆でお金を出し合いそのリスクを分散しようという考え方です。

保険に関しては被害者が入る損害保険と加害者が入る責任保険があります。

車に関しても、車を運転する人は事故を起こす可能性が高いわけですから、医療保険と同じようにそのリスクを分散させようと登場したのが自動車損害賠償保障法です。ま〜詳しくは自賠法を読んで頂ければ良いのですが、簡単に言うと車を運転する人は必ず自賠責に加入して、運行供用者(これも色々と論点あり)が他人の生命・身体に損害を加えた場合は損害を賠償する責任が発生する。

因みに保有者が車の管理を怠って他人がその車で事故を起こした場合は使用者責任と同じのりで責任が発生します。自賠法は特別法なので民法に優先します。

これとは別に社会保険があり医療保険などがその代表です。世間では事故に医療保険は使えないと誤解している人が多いですが、実際は・・・使えますww

ではどちらを使うのが得なのでしょうか?例題を考えていきましょう。

 

考え方

まずはAとBによりCに損害が発生しているので709条の要件を全て満たすように思います。ではAとBの行為は共同不法行為なのでしょうか?判例は関連共同性という言葉を使って説明しますが、現在の通説は客観的にみて共同性があればよいとする客観的関連共同性説をとっていますから、AとBの行為は共同不法行為となりCは因果関係の推定により証明責任が緩和されます。

そしてAB間の関係は不真正連帯債務とされます。

 

過失相殺について

民722条にあるように過失相殺されるわけですが、この場合に過失相殺能力が必要か?という話になります。当初は責任能力で良いとされたのですが責任能力とは何か?を巡って事理弁識能力となり、被害者の年齢という偶然によって加害者の損害額が変わるのはおかしいということから能力不要となりました。流石に能力不要となると「それはないでしょ!」という声が高まり、被害者だけでなく夫婦、親子、兄弟、恋人、被用者といった被害者側の過失として考えるようになりました。好意同乗のケースでは夫婦は財布が一つ+求償の簡略化ということから、親子の場合は監督義務者の責任から、被用者の場合は使用者責任から被害者側の過失として過失相殺されます。因みに恋人はされません。

過失相殺の逆に被害者が損害賠償の他に保険などによりお金の二重取りを防止するために損益相殺というものもあります。

さらに、持病を持っている人が事故にあった場合はどうなるのか?という被害者の素因という論点がありますが、これは判例で通常神の個体差の範囲内の体格・体質は減額事由にならないとされています。

過失相殺が分かったところで、例題について考えてみましょう。確かにAとBの共同不法行為なのですが、暴走したAを避けようとして事故を起こしてしまったBに責任を負わせるのは正義に適うのでしょうか?そこで登場するのが民720条の緊急避難です。この場合Bには緊急避難の成立が考えられますから、過失認定で0%となったと考えられます。その結果、A、Cともに50%の過失と認定されたのでしょう。因みに刑法の正当防衛は不正VS正、緊急避難は正VS正で、民法の緊急避難は物から生じた危難に対してその物を損傷させたときのみで刑法とは違っています。

 

ここから本丸である医療保険か!?自賠責か!?を考えていきましょう。

 

自賠責を先に使う場合

自賠責を使う場合は自由診療になりますから病院側が一点を自由に決めることが出来ます。判例と医師会により現在は一点20円くらいとなっています。その結果総医療費は200万円となります。

そして自賠責から自動車一台あたり無条件で120万円出ますから200万円−120万円=80万円となります。そしてそれを過失割合で等分してA、Cともに40万円ずつ負担することになります。因みに自賠責は被害者救済のためのものですから過失相殺はありません。この過失相殺は不法行為とはべつで、120万円が減額されないということです。あまりに酷い過失の場合は減額もされます。

 

医療保険を使う場合

医療保険を使う場合は保険診療になりますから一点10円と決まっています。その結果総医療費は100万円です。それを過失相殺してA、Cともに50万円ずつにします。Cは窓口で3割の15万円を負担し残り35万は医療保険が立て替えたのちに自賠責に求償されます。Aは50万円を第三者行為として求償します。

 

過失相殺

損益相殺

保険適用限度

一点単価

病院収入

Aの負担額

Cの負担額

保険支払額

自賠責

国交省

なし

責任保険

なし

人損のみ

120万円まで

人損のみ

20円

自由診療

200万円

40万円

40万円

120万円

医療保険

厚生省

あり

社会保険

あり

第三者行為

上限なし

3割負担

10円

保険診療

100万円

15万円

50万円

35万円

 

 

私見

被害者に過失がなければどちらを使おうと同じだが、過失がある場合は自由診療を選ぶと治療費が高くなるため損をするということになる。

この仕組みを知って思ったことは非常に分かり辛いということであった。しかし考えてみると医師の診療報酬は本来なら自由であるべきことと医療保険のリスクの分配を考えるとこうせざるを得ないことに気が付く。ただし、これを一般人が知らないことを良いことに病院側が自分達の利益の為に「医療保険は使えない」というのは非常に汚いやり口だとも感じた。実際病院が儲かれば、医師会は自民党の支持団体なわけだから献金などを考えれば自民党が自賠責を勧めるのは納得がいくところでもある。

もしも、被害者がこの仕組みを知っていて過失があるならば間違いなく医療保険を使うだろう。しかし考えなくてはいけないのは医療保険が社会保障費から出ているということだ。冒頭でも書いたように現在の日本の状況を考えるとこんなところで無駄に使って良いはずがない!!さらに考えると、自分の過失で事故を起こしているなら尚更皆の税金を使うべきではない!というのが自分意見である。

そもそも医療には金が掛かるものだし、それを保険と社会保障費という借金で賄っていることを考えれば、被害者に過失がある場合は当然のこと、加害者にだけ過失があるような場合でも、事故の当事者だけの責任を他人の税金で補填するべきではない!と考えます。

よって交通事故の場合は医療保険を使うべきではない!

 

参考文献

中江先生の頭

自分の頭

 

 

 

 

蓼原尚生

テーマ 交通事故と保険

学籍番号14J112019 氏名蓼原尚生

 

キーワード 自動車損害賠償責任保険自由診療第三者行為過失相殺責任能力好意同乗共同不法行為不真正連帯債務被害者側の過失緊急避難

(結論)自賠責といい、好意同乗といい、保険会社は安く抑えようとし過ぎだ

1.自動車損害賠償責任保険の論点と問題点

自動車損害賠償責任保険(略称自賠責保険)と言えば、2008年以来、9年ぶりに金融庁が4月の契約分から保険料を値下げすることを決まったが

この「自賠責保険」とは、「強制保険」に分類され、車の所有者と運転者が、必ず加入していなければならない保険で、未加入の場合は罰則がある。その目的は"被害者保護"であり、過失相殺による減額の適用も被害者の過失が7割未満では適用されない。また、賠償されるのは人身事故のみであり物損事故には適用されない。

その性格上、賠償されるのは最低限度の金額となっており、被害者の損害全てが賠償されるわけない。

「任意保険」とは、車の所有者もしくは運転者が加入するいわゆる「自動車損害保険」で、自賠責保険では賄えない被害者の損害を、加入者との契約の範囲内で賠償を行なうもの。しかし、保険会社も営利目的の会社である以上、その支払いには非常にシビアであり、過失相殺も厳格に適用され、後遺障害慰謝料や逸失利益について、被害者の方が何の努力もなしに納得できる支払いを必ずしも受けられるものではありません。交通事故の被害により後遺症が残ってしまい、後遺障害等級認定を受けるためには、自賠責保険会社に認定の申請をする必要がありである。認定の申請は「事前認定」と「被害者請求」がある。

「事前認定」とは、加害者が加入している任意保険会社が、後遺障害等級認定に必要な手続きを行なってくれるケースです。この場合被害者の方には、申請に必要な資料や書類を用意する負担が省けである。のでそのメリットは有るのですが、適正な等級認定が行われるようなアドバイス等は当然ですがありません。

「被害者請求」とは、被害者の方が、直接加害者が加盟している自賠責保険会社に等級認定の申請を行なう方法です。この方法の場合は被害者の方自らが申請に必要な資料や書類を用意する必要がありである。弁護士に依頼すれば、提出する資料や書類を精査して、適正な等級認定を受けやすくすることができである。

「事前認定」の場合は、等級認定が行われるだけですが、「被害者請求」の場合であれば、認定等級に応じた自賠責賠償額を先渡しで受け取ることができる(任意保険会社との示談成立を待たなくても良い)メリットがありである。

後遺障害等級認定は、損害保険料率算出機構が書面を定型的に判断し、等級認定を行ないである。従って「事前認定」であれ「被害者請求」であれ、提出する資料や書類が同じであれば、必ず同じ等級が認定されることになる。しかし後遺障害の中でも目に見えない後遺症(例えば脳高次機能障害等)の場合、ポイントを押さえた申請手続きが必要だ。また同じ後遺症でもいわゆる「むちうち症」と呼ばれるものは、等級認定されにくい傾向にありである。が、その症状や治療、検査所見次第で等級認定される場合もある。

保険会社に任せて、後々不利な状況になる前に、本当に適正な等級認定申請がされているかを、一度弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

また、弁護士に掛かる費用は「弁護士費用特約」を適用出来る場合もある。

損害賠償の金額はどのように決められるのだろうか?

損害賠償の金額は「財産的損害」+「精神的損害」により決まりである。

「財産的損害」には、実際に掛った費用(怪我の治療費など)の他に休業補償や逸失利益などがありである。このうち、実際に掛った費用などは領収書等で証明できるため、比較的、保険会社も請求に応じて支払いをしてくれである。(もちろん争われるケースもある)

「精神的損害」に対しては、「慰謝料」が賠償金として支払われることになるこの「慰謝料」の算定方法には「3つの基準」が存在し。どの基準で計算するかによって受け取る賠償額も変わってきである。

その3つの基準とは「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判所基準」です。

通常「自賠責保険基準」<「任意保険基準」<「裁判所基準」で賠償額が大きくなる。

自賠責保険(共済)により定められている賠償金の基準額です。程度に応じて金額が詳細に定められていである。が、最低限の金額となっているため、実際の被害に対して妥当な賠償額とは言えません。

自賠責保険とは、前述の通り、原則として全ての自動車に加入が義務付けられている強制保険です。被害者保護を目的とした保険ですので、人身事故の被害者に対してのみ賠償金が支払われである。が上限が定められており、傷害(怪我)の場合は「治療関係費」+「休業損害」+「慰謝料」などの合計で限度額120万円、後遺障害の場合はその等級により「逸失利益」+「慰謝料」の合計で75万円〜4,000万円、死亡事故の場合は3,000万円までとなっている。

運転者が加入している自動車保険会社(任意保険会社)が被害者の方に提示する賠償金の基準額です。

任意保険による損害賠償金は自賠責保険とは別に支払われるのではなく、自賠責保険に上乗せされて支払われである。通常、自賠責保険はその車に対して加入する保険ですが、任意保険は運転者個人が加入する保険で、自賠責保険が適用されない物損事故や、自賠責保険の賠償金で足りない部分を補填するものとなっていである。

したがって極端にいうと、自賠責保険による賠償金の範囲内で示談が成立すれば、実質的に任意保険会社には賠償金の支払が発生しません。

そのため、一般的に任意保険基準による賠償額の提示は、自賠責保険基準に準じた金額である場合が多いのです。

自動車保険会社も企業である以上、賠償金額の支払いを少しでも抑えて会社の利益を追求するのは当たり前のことでしょう。しかし、そのために被害者の方が満足な賠償を受けられないということがあってはいけません。

 

もし、損害賠償について裁判で争った場合に、裁判所が判決で下すであろう賠償金額です。これまでの判例に照らして、ほとんどのケースでこの裁判所基準による賠償金額を算出することができである。

本来、この裁判所基準による賠償金額こそが妥当な金額であり、任意保険会社が自賠責保険による賠償額との差額を補填して、被害者の方に支払うべき金額なのです。つまり、裁判所基準が高いというのではなく、自賠責保険基準・任意保険基準が低すぎるのです。

保険会社は、できるだけ支払を少なくしたいと考えるため、裁判所基準を使いたがりません。

そのため、被害者が専門知識を持たずに加害者側保険会社と交渉を行えば、その賠償額はより自賠責保険基準・任意保険基準に近い金額で和解してしまい、不利な内容で示談に応じてしまう可能性がありである。。

しかしながら、被害者の方が福岡交通事故弁護士ネットに相談し依頼するだけで、保険会社も当然に裁判基準を承知していである。ので、特に争うような事案がない場合には、賠償金額を裁判所基準に合わせて示談に応じるケースが多くある。

2.自動車損害賠償責任保険と健康保険

 

この論点について興味深い資料があるので、こちらのブログをそのまま引用する。

 交通事故で負傷した時など、どんな保険に守られているのか、そして、その保険がどのように対応してくれるのかご存知ですか?わたしたちは、一般的には交通事故で負傷した場合に次のようにいくつもの保険にガードされている。

1.     医療保険(国民健康保険・健康保険組合・協会けんぽ・共済組合・後期高齢者医療など)

2.     労災保険

3.     相手側の自賠責保険

4.     相手側の自動車保険

5.     自分や家族の人身傷害補償保険

6.     政府保障事業(加害者が自賠責に入っていない場合)

7.     生命保険

8.     傷害保険

などにガードされている。

もちろん誰でもがこれら全部の保険に守られているということではありませんが、多くの人はかなりたくさんの保険で守られている。それゆえかえってその分複雑になってしまっている。

交通事故について

ところで、相手がいる場合の交通事故において、一筋縄にいかないのが「交通事故の損害賠償請求問題」なのです。

なぜ一筋縄にいかないのか・・・。

被害者側は、納得できるまで治療や十分な損害賠償を要求したいと考えである。一方の加害者や相手側保険会社など保険金を支払う側は、なるべく過失割合を減らし支払いを少なくしたいと考えである。

 

そして治療をする病院や診療所は、交通事故治療は保険診療よりも自由診療で治療をするのが正当であるという考えるところもあり、三者三様の考え方や利害関係が出てくるため厄介な問題になりがちです。交通事故は軽い傷害程度ならすんなりと示談成立になる確率は高いですが、見た目は治っていても痛みが継続する場合や後遺障害が残る場合、また過失割合などで、被害者側と加害者側との隔たりもあり、すんなりと示談にならないケースも出てくるという点だけは承知しておいてください。では、まずは、交通事故と健康保険の関係から見ていきましょう。交通事故で健康保険を使う場合は、必ず保険者(国保・協会けんぽ・健康保険組合など)へ届けをなるべく速やかに提出しなくてはいけません。これを第三者行為による届出といいである。

第三者による行為によって傷害を受けたのですから医療保険者は、治療費を加害者側に請求をする。この届出によって相手が特定でき請求することができるのです。ではなぜ、病院によっては「健康保険は使えない」と伝えるのでしょうか?

病院・治療院側の理由

病院や診療所で健康保険は使えないという理由について取りあげてみました。主に以下の3つが理由になりである。

健康保険が使えないという理由1

経営的視点から、自由診療にしている。健康保険での診療報酬は1点につき10円と決まっていである。が、自由診療の場合は1点あたり15円や20円というように値段は自由に決められている。ただし、交通事故の治療においては日本医師会・日本損害保険協会・自動車保険料率算定会の三者協議により、「自賠責保険診療費算定基準」が取りかわされたので、保険診療に比べ大幅な報酬設定にはしていません。この取り決めは、平成24年6月1日現在、全国46都道府県で導入され(ただし民間医療機関すべてがこの基準を導入しているわけではありません。)次のような内容になっている。

「自動車保険の診療費については、現行労災保険診療費算定基準に準拠し、薬剤等「モノ」についてはその単価を12円とし、その他の技術料についてはこれに20%を加算した額を上限とする」となっている。つまりは、保険治療よりも2割から約4割高ほどで設定されているということです。

 

ここでいう「モノ」というのは、注射や投薬、麻酔の薬剤料、画像診断の薬剤料・フィルム代等になりである。その他の技術料においては、初診料や入院基本料、手術料、入院時食事療養費などが技術料になる。ですので、繰り返しになるが現状では保険診療に比べて2割から約4割高ほどで設定されているということです。

健康保険が使えないという理由2

症状が極めて軽い場合は保険治療でも問題ないが、そうでない場合には、保険治療では限界があるいう理由からです。きちんと治してあげたいという心意気でやっている治療院や質が高い治療の提供を心がけている診療所では、おのずと自由診療が選択肢になるという理由からです。

使えないという理由3

そもそも健康保険は、加入者から保険料を集めて病気やケガをしたときになるべく負担なく治療が安心して受けられるための相互扶助を基本としているので、交通事故など第三者が負わした傷病は、加害者に負担させるべきものである。そのため、事業所での労働災害には労災保険が、加害者のある交通事故には自賠責保険が設定されているのです。そうであるから自由診療が妥当である。ただし、交通事故で被害者の過失が100%、或いはそれに近い場合や加害者が不詳の場合や、支払い能力がない場合には被害者救済のため、厚生労働省は健康保険を使用してもよいと認めているが、こういうケースを拡大解釈してなんでも健康保険を使うということは誤りである。

というのが医療機関側の主な理由3つです。

 

「交通事故と健康保険使用問題」は様々なホームページ上で「健康保険が使えない、使わせないところは儲け主義の病院」という内容で書かれているものが多いのですが、中には、儲け主義ということではなく、シッカリと治してあげたいということを重視しているところもある。から、短絡的にそのように考えるのは誤りともいえよう。

 いずれにしても患者側として困るのは、「保険会社からは健康保険を使ってください」と言われても、治療院からは断られるということで板挟みになるということです。この場合は、「第三者行為による傷病届を出したので健康保険でお願いしである。」と窓口で交渉してみる、それでもだめなら別の病院や治療院に替えるしかありません。では、ここで「健康保険を使うことにこだわる必要があるのかどうか」を考えてみましょう。

健康保険を使わなくても問題ないケース

使わなくても問題ないケースとは。

自分の過失が0で、相手が任意の自動車保険に加入している場合には、問題ありません。過失がなければ、過失相殺(かしつそうさい)といって引かれるものがなく、すべて相手側負担になりである。。自由診療でもまったく問題ありません。もちろん支払基準がありである。から何でもかんでも補償してくれるというものではありません。ただし相手が自賠責保険しか加入していない場合は健康保険を利用してください。

健康保険を使用したほうがいいケース

「人身傷害補償保険に入ってない、もしくは使えない」

「相手側が自賠責保険だけしか入っていない」

「過失割合でもめている」

「自分の過失のほうが大きい」

「治療・入院が長引きそうなとき」

という場合には健康保険を使うべきでしょう。

その理由とは、被害者側にも一定のメリットがあるからです。

自賠責保険では、傷害による損害の限度額は120万円と決まっていである。だからといって120万円を超えて治療をしてはいけないということではありませんが、金額が高い自由診療だと、ケガの程度によりである。が治療費だけでこの金額の大部分になってしまうことがある。そうなると、相手側が自賠責保険だけしか加入していない場合には、他に請求したい休業損害や慰謝料などは自賠責保険から受け取ることができないということになってしまう。その場合は直接相手に請求するしかありませんが、いくら交渉しても相手がなかなか支払ってくれないとなるとケガで痛い思いをしたうえに、精神的苦痛を受けたのではたまりません。ですから、このよう場合には健康保険を使って治療費の節約をしておけば自賠責保険の有効活用ができるということになる。。

※ 自賠責保険は重過失がある70%以上の場合に減額対象になる。が、それ以下では減額対象になりません。自賠責保険の補償は対象となるもので120万円を超えた場合に、任意一括払いならば任意保険の査定になり、過失がある場合は、自賠責部分を含めた損害賠償の元から対象になっている。しかしながら、その場合において、過失が7割未満であれば120万円を下回る場合においては120万円が支払われている。例えば、過失割合において相手60%で自分が40%という場合において、治療費が40万円・入通院慰謝料52万円・休業損害68万円などの損害認定額合計が160万円だとしである。

このケースで賠償額の計算は、過失相殺もありである。から、160万円×(1−0.4)=96万円になる。しかしながら、自賠責保険では被害者の過失が7割以上ある場合でないと減額はされませんから、損害保険料率算出機構の調査で問題がなければ120万円の支払いになる。

3.1.2から言いたいこと

以上の通り、自賠責保険では、保険会社側が交通事故被害者に補償金を支払う場合には、法律、それも悪法に抵触しない最低限度しか払いません。

現行では、もし仮に任意保険に入っていて自賠責保険未加入の場合は、自賠責の限度額までは自分で支払うということになっている。例えば、後遺障害による損害に対し、自賠責から支払われる限度額は「神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、常時介護を要する障害(第1級)4000万円ですが、自賠責は大抵の場合、後遺障害14級(75万円)または非該当としてきている。これが、もし、任意保険に入っていて自賠責保険未加入の加害者に対しては、最大4000万円まで自分で支払え、任意保険からはビタ一文も払いませんということになる。

とてもおかしな話だ。任意保険も自賠責保険も取り扱っているのは民間保険会社です。そして、繰り返すが、自賠責保険は強制保険である。これは厳しく言えば、自賠責保険は民間保険会社が強制保険に名を借りた金融商品詐欺だ

 

4.授業の復習

次に「共同不法行為の場合の自賠責保険の慰謝料について」説明したいが、この論点に入る前にいくつか不法行為について整理をしておく。授業の復習も兼ねて、基本的な法律用語をまとめておく。民法709条に一般不法行為を定められている。これは不法行為の総則的規定となる。一般不法行為の成立要件は以下の5つである。@不法行為者(加害者のこと)に故意または過失があることA不法行為者の行為に違法性があることB被害者に損害が発生したことC不法行為者の行為と被害者の損害に因果関係があることD不法行為者に責任能力があることとなる。

加害者に賠償責任を負わせるためには、行為者の責任能力(責任弁式能力)が必要であり、これが認められない者は自らが不法行為に基づく損害賠償責任は負わない。この責任能力とは、自己の行為が法律上何らかの責任が生じることを認識し得る能力をいい、通常1213程度で認められる。

 

 7122項に過失相殺が定められている。これは損害額を決定する際に、被害者にも過失があればこれを考慮することであり、民法418条の債務不履行の過失相殺と違い、被害者側に過失あっても、損害額をゼロにすることができず、裁量的となる。そして、過失相殺が認められるためには、被害者にも注意義務違反が認められる必要があるから、そのような注意をする能力がない被害者との間では過失相殺をすることができない。このように、被害者として過失相殺されることのできる能力を過失相殺能力といい、損害の発生を避けるのに必要な注意をする能力(事理弁識能力)がこれにあたる。この能力は通常の56歳程度で認められるとされている。最後の授業でやったCさんは8歳としたならば、この過失相殺が適用されるだろう。逆にCさんが4歳ならば、この過失相殺が適用なし。この場合、被害者側の過失が問題となっていくだろう。

被害者側の過失

 被害者側の過失とは、たとえばこの事例での4歳の幼児Cさんが親がふと目を離した隙に車道に飛び出して自動車にはねられた場合のように、過失相殺のない者との間では加害者は損害の全額を賠償しなければならないことになるが、これでは、損害の実質的公平な負担という不法行為の趣旨に反する。そこで、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失(幼児の親の不注意)によって損害が発生した場合には、これを「被害者側の過失」として過失相殺の適用が認められる。(最判昭42627日)

 

・民法と刑法の緊急避難と正当防衛の違い

緊急避難 他人の不法行為に対し自己または第三者の権利または法律上保護される利益を防衛するためやむをえずに加害行為をなした者は損害賠償の責任を負わないこれを正当防衛という。この場合に被害者から不法行為をなした者に対する損害賠償の請求はできる。(7201項但し下記)

 また、他人の物より生じた急迫の危機を避けるためその物を損傷した場合を緊急避難といい、正当防衛と同様加害者は損害賠償責任を免れる。(民法7202項)これらの「民法上」の正当防衛・緊急避難は「刑法上」の正当防衛・緊急避難とは大きく異なり、刑法上の正当防衛は、自己または第三者に対して権利侵害を行った者に対する加害行為を指す(いわゆる正対不正の関係)のに対し、民法上では不法行為以外の第三者に対する場合も含む。また、刑法上の緊急避難は自己または第三者への侵害行為者以外の者への加害行為を指すが、民法上の緊急避難はあくまで他人所有の物による自己または第三者の権利侵害状態を回避するためにその物を侵害した場合である。

(図を入れる 民刑の正当防衛・緊急避難の対比)

 ・共同不法行為

 共同不法行為とは719条の条文の通り、数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときに、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負うことである。この共同不法行為には、大きく3つのパターンがあり、7191項前段の「狭義の共同不法行為」、7191項後段の「加害者不明の共同不法行為」、7192項の「教唆・幇助」の3つである。自動車損害賠償責任保険が関わる交通事故では、7191項前段の狭義の共同不法行為が該当する。なぜなら、この狭義の共同不法行為の要件では、共同行為者の意思の通謀などの主観的共同関係は不要と考え(客観的な共同関係であれば足りる)、るのに対し、7191項後段の加害者不明の不法行為の要件では通説では、主観的共同関係が必要と考えるからだ。また、単純に加害者がAさんBさんと判明しているから尚更7191項後段の加害者不明の不法行為は考えにくい。また、7192項の教唆・幇助はこの事例では、教唆・幇助にあたる要素がないので、消去法で、7191項前段の狭義の共同不法行為で処理する。効果は加害者はそれぞれ被害者に対して全額損害賠償義務を負うので不真正連帯債務となる。

 

5.共同不法行為の場合の自賠責保険の慰謝料について

A車とB車の事故で、双方に過失が認められる場合に、どちらかの車に乗っていた同乗者が負傷した場合は、 双方の自賠責保険が使える場合がありである。。例えば、A車の過失が8割、B車の過失が2割である場合に、 B車に同乗していた人は、二台分の自賠責保険が使えるため、支払いを受けられる自賠責保険の保険金額の上限が2倍になる。 傷害については120万円の2倍の240万円、14級の後遺障害が残った場合は、75万円の2倍の150万円までが 支払いの対象になるのです。

他の損害額との兼ね合いもあるので一概にはいえませんが、支払われる慰謝料の上限も大きく上がろう。自賠責保険の慰謝料は入通院日数に比例しているために、 ケースによっては弁護士基準で計算した金額よりも、慰謝料の金額が多くなる場合も出てくるでしょう。 後遺障害による損害も、自賠責保険を受け取るだけで妥当といえるケースも多くなる。 妥当といえる場合は、自賠責保険以外に、任意保険会社に請求する余地は無いということになる。

よく誤解されることですが、支払いを受けられる上限の金額が二倍になるだけであって、通常のケースよりも、慰謝料が二倍で計算されるということではありません。 上限が120万円から240万円になっても、損害額が100万円しかなければ、どちらにしろ、受け取れる金額は100万円のみです。

共同不法行為の場合の任意保険(対人賠償)の慰謝料

自賠責保険ではなく、任意保険請求の場合は、もともと対人賠償保険の保険金額が高い(1億円とか無制限とか)のが普通ですので、上限額が増えてもあまり意味はないと思う。 誤解して質問される方が多いですが、同乗者に生じた損害について、双方の保険から全額を払ってもらえる(2倍になる)ということはありません。 二人の加害者に迷惑をかけられたのだから、慰謝料も二倍払ってもらう、ということはできません。あくまでも発生した損害額のみの請求しかできないのです。 ただし、搭乗者保険などは賠償請求とは別に支払われることとなる。

▼ 事例・判例

□ 信号のない交差点での出会い頭衝突事故で、タクシーの過失が4割、相手車の過失が6割の場合に、タクシー乗客がむち打ち症で第14級となり、 双方の自賠責保険より75万円ずつ合計150万円が支払われた事例がある。

6.好意同乗について保険会社の理不尽さについて

好意同乗」とは、同乗する人が、運転者の親族や友人であるといった理由で、無償で車に乗せてもらうことをいいである。別名「無償同乗」とも言う。

 好意同乗をしている際に運転者が単独の事故を起こし、これにより好意同乗者が怪我を負うなどの損害を受ける場合があるが、そのようなときに好意同乗者としては、運転者を加害者として損害賠償の請求を行うことになる。その際に好意(無償)で同乗していたことを理由に損害賠償の減額が考慮されることがあり、それを「好意(無償)同乗減額」と言う。実務上、保険会社は、好意同乗者にも過失を主張することが多く見受けられる。 しかし結論からいうと、保険会社の主張は不当であるケースが多い。一般論理からしても、ただ一緒に乗せていたというだけで、減額事由と疑問に思うのは当然である。にもかかわらず、 保険会社がこのように好意同乗減額を主張してくるのには理由がある。それは、古い裁判例において、実際に好意同乗減額が多く認められていたことが挙げられる。当時、好意同乗減額が認められていた主な理由としては、「好意同乗者にも倫理的素因があるとか、信義則に照らし全額の請求は許されないといった」説明がなされていた。要するに、「好意同乗者として無償で乗せてもらっていたにもかかわらず、いざ事故に遭ったときに、その損害の全額を加害者(運転者)に請求するのは信義則上許されない、それは公平に反する。」という論理であった。

それで、保険会社が好意同乗減額を主張してくる場合は、だいたいこうした古い判例を引き合いに出してくることが多いと考えられる。

しかし、今日の判例実務では、同乗していて事故に遭ってしまった好意同乗者については、単に好意同乗者であるという理由だけでは減額は行われなくなった。やはり、ただ乗せてもらっただけで過失認定というのは社会通念上認められなくなってきたということだろう。 ただし、好意同乗減額が一切行われなくなったというわけではない。平成に入ってからの多くの判例は好意同乗者について、好意同乗の事実だけで損害賠償額を減額することはしないものの、好意同乗者が事故発生の危険が増大するような状況を現出させたり、あるいは事故発生の危険が極めて高いような客観的事情が存在することを知りながらあえて同乗したなど、好意同乗者に事故の発生につき責めに帰すべき事由がある場合に限って、減額を認めるようになっている。。今日の好意同乗者の扱いはこのようにして公平な救済を図っている。

しかし問題は、交渉実務において保険会社が、好意同乗者には何ら非難される要素がないケースでも減額を主張しているという点だ。

 そのような場合、被害者としては、保険会社から好意同乗減額が積極的に認められていた古い裁判例を見せられ、「裁判所がこのように判断していである。。」と言われれば「そういうものなのか。」と納得して示談してしまうケースもあり、仮に保険会社の主張に不服であっても、事実を知らなければ、法的な交渉に持って行くことは難しいだろう。現状の対策としては保険会社からそのような主張がなされた場合にはそれを鵜呑みにせず、まず、弁護士に相談することだろう。

 

出典)http://www.jiko-online.com/isya-kyoudou.htm

http://www.sonpo.or.jp/useful/insurance/jibai/

http://kinako1.com/hoken/jibaiseki09.html

http://jiko-fukuoka.net/insurance/

http://nakineirisuruna.blogspot.jp/

参照)http://www.kenpo.gr.jp/nssmkenpo/kon/accident.html

https://www.kakei.club/kenpo/koutsujiko.html

 

 

 

 

安藤拓海

 

交通事故と保険

14J107001 安藤 拓海

結論:交通事故だけでなく、保険は生活する上で欠かせないものである。

 

0交通事故の発生から保険金支払いまで

 まず、交通事故が発生したら、損害調査をし、示談(和解)交渉をする。示談が成立すると、被害者に保険金が支払われる。交通事故の発生から、被害者に保険金が支払われるまでの、大まかな流れはこのようになるが、保険と言っても自動車保険の場合には、大きく分けて2種類ある。

 

1.    自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と任意保険の違い

a.    自賠責保険

自賠責保険は、全ての車に加入が義務付けられている強制保険であり、この保険に入っていないと車を運転することが出来ないと法律で定められている。

事故相手(被害者)が怪我や死亡したという対人事故のみを補償する。

自賠責保険の補償限度額は、死亡時3000万円 怪我時120万円となっている。

b.    任意保険

 一方、任意保険は、加入の義務はないが、自賠責保険で補償しきれないところ、例えば対物事故や、自賠責保険の補償限度額を超えたところまでカバーすることが出来る。

両者は、加入義務の有無や、補償額の限度、補償範囲といったところに違いがある。

 

2被害者に過失がある場合

交通事故の損害賠償請求において被害者側の過失がある場合、過失相殺がなされる。もっとも、どのような被害者であっても過失相殺がなされるわけではなく、「過失相殺能力」がない被害者については、過失があっても、過失相殺はなされない。

そもそも、過失相殺とは、被害者にも過失がある場合には、その過失も斟酌して損害賠償額を決めるという制度である。被害者の過失も斟酌することによって,被害者・加害者間の公平を図ろうとするのが,過失相殺の目的である。

 

過失相殺における「過失」

過失相殺をするという以前に、そもそも加害者が不法行為責任を負うのは、民法709条が定めるとおり、その加害者に故意または「過失」がある場合である。交通事故損害賠償請求の場合には、基本的に、加害者に「過失」があるかどうかが問題となる。

この「過失」とは何かといえば、法的な注意義務に違反しているということである。法的な意味での注意義務違反がなければ、過失があるとはいえず、損害賠償責任も発生することはない。

そうすると、過失相殺における「過失」も注意義務違反という意味であり、被害者に注意義務違反がない限りは、過失相殺がなされないようにも思える。

しかし、実際にはそうではなく、過失相殺とはあくまで損害を公平に分担しようということが第一次的な目的であることから、過失相殺における「過失」は、法的注意義務違反というほどに厳密なものではなく、一般的な落ち度や不注意といった程度のもので足りると解されている。

 

・過失相殺能力の程度

真正過失があると認められると、不法行為責任を負うこととなる。もっとも、自己の行為の責任すら理解できない者に対し法的責任を負わせることは、過失責任の原理に反する。

そのため、未成年者や精神上の障害がある者など、行為者に責任を弁識する能力(責任能力)が無い場合には、その行為者は不法行為責任を負わないとされている(民法712条、713)

しかし、過失相殺における自己過失については、その行為者に責任能力があることまでは必要ではなく、事理を弁識する能力があれば足りると解されている。

事理弁識能力とは、自分の行為の意味、つまり自分がその行為をするとどのような結果が生じるのかということを理解できる程度の能力ということである。

そこで、事理弁識能力は、何歳くらいから備わっていると言えるのかということが問題となるが、一般的には、小学校入学時前後であれば,事理弁識能力はあると解されることが多い。

 

最高裁判例は,古くは責任能力が必要であるとしていたが(最三小判昭和31720)、その後判例が変更され、上記のとおり、事理弁識能力で足りるというように判断されている(大判昭和39624)

 

好意同乗者の場合

他にも、過失相殺の規定を適用して、交通事故の発生などについての同乗者の帰責性を割合的に把握し、それを損害賠償額に乗じることによって、好意同乗減額を行っている。

好意同乗減額の例として、運転手Aさんと同乗者Bさんが車に乗っているときに交通事故を起こしてしまい、その交通事故の原因の1つにBさんが運転を妨害したという事実があった。

その際に、Bさんの帰責性の割合が20パーセント認められると、Aさんが支払う損害賠償額が20パーセント減額されることになるということである。

 

3加害者が複数いる場合

 交通事故が起きたときに、複数の加害者が関連して1つの不法行為を構成した場合が共同不法行為に当たる(民法719条)。

共同不法行為者は、生じた損害全額を各自が連帯して責任を負う。

共同不法行為者は、それぞれの責任割合にかかわらず、被害者に対してそれぞれ損害の全額を賠償する義務を負う。被害者はその全員に順次または同時に損害賠償の請求をすることができ、その中の一人が損害額全額の賠償をした場合には、他の全員の責任が免れる(不真正連帯債務)

 

4 具体例

センターラインを越えてきた対向車(A)を避けようとして急ハンドルを切った車(B)が飛び出してきた歩行者(C)を轢いて怪我を負わせてしまった場合、誰にどんな賠償を求め、どの保険を使うことができるか。

認定された過失割合はA50% B0% C50%

Cは、10万点分の怪我を負ったとする。

 本件の場合、Aは、Cを直接轢いたわけではないが、Aがセンターラインを超えて運転していなければ、BCを轢いてしまうことはなかったため、Aには責任が生じる。

 続いてBの場合、Cに直接怪我を負わせているのはBであるのになぜ、B1円たりとも払わないのかとても不思議に感じた。

しかし、本件ではBに刑法における緊急避難(刑法第37)が認められるため、Cに直接怪我をさせたにも関わらず責任を問われないのである。刑法における緊急避難は、人や物から生じた現在の危難に対して、自己または第三者の権利や利益(生命、身体、自由、または財産など)を守るため、他の手段が無いためにやむを得ず他人やその財産に危害を加えたとしても、やむを得ずに生じさせてしまった損害よりも避けようとした損害の方が大きい場合には犯罪は成立しないという制度であり、Bはこれに当てはまるため、責任を問われない。

 そして、Cは車に轢かれている被害者ではあるが、道に飛び出して、自ら自分が車に轢かれるという状況を作り出してしまったために、C被害者側の過失が認められ、Cも責任を負うこととなる。

Cは怪我を負い、病院に行った際に、どちらの保険を使うか選択することが出来る。この際にCが使うことが出来るのは、自賠責保険か、医療保険となる。以下の表は、それぞれの保険を使った時に、治療にかかる医療費、保険で賄える金額、ACの負担金額を表している。

 

医療費

保険負担

運転者(A)負担

歩行者(C)負担

自賠責を先に使った場合

200万円

120万円

40万円

40万円

医療保険を先に使った場合

100万円

35万円

50万円

(第三者行為として求償)

15万円

(3割負担として30万円支払い半分をAに求償)

 

自賠責保険を先に使った場合:自賠責保険は自由診療であるため、医療費の1点当たりの単価が20円となっているため、医療費は200万円となる。そして、上でも述べた通り自賠責保険の保険負担は120万円までとなっている。そこで残った80万円を、過失割合が50%50%ACで分配して40万円ずつ負担するという形となる。

 

医療保険を先に使った場合:医療保険は保険診療であり、医療費の1点当たりの単価が10円と定められている。そのため医療費は100万円である。まず、Cは病院へ行き、100万円の3割負担である30万円を支払う。そしてその半分の15万円をAに求償し負担額は15万円となる。

 

5 病院VS被害者(受傷者)

 交通事故で怪我をして病院にいったとき、「交通事故では健康保険は使えない」とか「自賠責の限度額120万円までは健康保険は使えない」と、言われる場合がある(法律違反)

結論から言うと、交通事故で健康保険が使えないというのは真っ赤なうそである。

なぜ、病院がそういった嘘をつくのかというと、健康保険を使わない自由診療の場合では、保険診療と2〜3倍ほど診療代に差が出るからである。通常、診療報酬というのは、その医療行為によって点数が決められていて、その点数の合計に単価を掛けて計算される。

健康保険の場合では、110円と単価が決まっていて、それ以上の請求をすることは出来ない。

しかし、自由診療の場合は、単価を自由に決めることができるので、130円でもいいわけである。病院にもよるが、150円のところもある。

なので、病院側は経営上の理由からあまり儲からない健康保険ではなく、自由診療で病院からするととても美味しい話なので自賠責保険を患者に使わせたいのである。このことには、十分な注意が必要だ。

 

6 まとめ

ほとんどの人が、まさか自分が事故に巻き込まれるわけがないと思っているだろう。しかし、誰しもが、交通事故の被害者もしくは加害者になる可能性がある。その気の緩みが事故を引き起こし、事故後の対応もせずに加害者が逃げてしまうというようなことが起こるのだと私は思う。

11人が、しっかりと当事者意識を持つことで、悲惨な事故も減り、病院に医療費をぼったくられる、などといったこともなくなるだろう。

社会を支えている1番の土台である安心を作っているものの中の1つに保険があると私は思う。保険がなければ、人々が活躍する社会が創れないと言っても過言ではない。

自動車保険があるから、法律の範囲内なら好きなように車を運転できるのであって、もし自動車保険がなければ、車を運転する人は激減する。そして、生活の利便性や充実度が低下するだろう。今回は自動車事故の保険についてのレポートだったが、自動車保険に限らず、何事においても保険は、人生を豊かにする上で大事なものの1つなのかもしれない。

 

<出典・参考文献>

・中江ゼミ講義

www.koutuujikobengo.jp

www.gohda-office.co.jp

www.aioinissaydowa.co.jp

 

 

 

宮川輝

帝京大学法学部

中江先生

 

 

お世話になっております。

帝京大学法学部 中江先生ゼミナール3年の宮川です。

後期のレポート提出です。

 

 

「交通事故と保険」

 

結論は本件の負傷者Cは健康保険を使用し、A50万円、C15万円支払う。

 

本件は交通事故と保険に関する内容である。本件は見通しの良い片側1車線の道路で交通事故が発生した。車Aがセンターラインを超えて走行してきたため、対向車線を走行していた車Bが急ハンドルを切った。その結果、車Bが歩行者Cに接触した。この交通事故により歩行者Cは10万円点分の怪我を負った。自動車損害賠償責任保険では200万円、健康保険では100万円の怪我に相当する。しかし、CBと接触する前に車道に飛び出してしまった。この事故の過失割合はA:50%、B:0%、C:50%と認定された。本件の場合、治療費は誰がいくら払うのかが争点である。

 

前提条件として車を所有する者は自動車損害賠償責任保険(自賠責)に加入しなければならない。

自動車を所有している者は必ず加入しなければならない保険が、自動車損害賠償責任保険(自賠責)である。賠償責任、人身傷害補償、搭乗者傷害及び車両の4種類がある。なかでも、自動車事故による人身損害の賠償を目的とする保険が重要である。我が国では被害者の救済を強化するため、人身損害の賠償システムが強制保険と任意保険となっている。

 

被害者にとって最も有利なのは健康保険を利用することである。

原則、被害者が交通事故によって負傷した場合、その怪我を治療するための支出した治療費、入院費は必要かつ相当な範囲で実費金額が認められる。ただし、過剰診療や高額診療の場合は否定されることがある。交通事故であっても、健康保険による診療は可能である。むしろ原則的取扱いとすることが、損保会社および被害者双方にとっても好ましいことが多い。ところが、医療機関のためのガイドラインと患者対応のノウハウを掲げる本は「交通事故診療はあくまでも、被害者(患者)と医師との直接契約による自由診療である」と述べている。しかし、このような立場にはやや疑問がある。仮に自由診療を原則とすれば、結果として、自動車損害賠償責任保険の傷害保険金の大部分が治療費に充当されかねず、患者である被害者の利益に反することになるからである。また、このガイドラインでは、健康保険による治療の場合は、「使用できる薬剤の種類・量、リハビリの回数などに制約があります」と述べており、あたかも健康保険を使って治療を受けた場合は、自動車損害賠償責任保険を使って治療を受けた場合よりも、医療の質が低下するおそれが大きいかのような表現をしている。突然の交通事故に遭って、不安な心理状態に陥っている被害者に対し、医療機関がことさら不安感を煽ることによって、より利益の多い自由診療に誘導しようとする見解には疑問がある。なお、自由診療による場合、医療機関は事故被害者である患者に対し、医療費に関する請求・受領の委任状を作成してもらい、直接、自動車損害賠償責任保険に対して被害者請求することになる。C3割負担(窓口負担)として、30万円支払い、その半分をAに求債する。ACからの求債として第三者行為として50万円を支払うことになると考える。

 

健康保険のほうが被害者の負担が少ない

自動車損害賠償責任保険の傷害の保険金額は120万円。治療が長期化するとたりなくなる可能性もある。治療費や生活費などに困った場合は、保険会社に相談すると内払いしてもらえる。なお、被害者の過失が大きいときは健康保険を使用した方が良い。健康保険による治療のほうが、低額なので被害者の負担が少なくて済む。自動車損害賠償責任保険よりも健康保険を使用する方が市会社にとっては有利と考える。

本件の場合、過失割合が50%、50%である。交通事故による治療を自由診療(自賠責)ですると、保険診療(健康保険)よりも高額の医療費が発生する。自由診療では200万円、保険診療では100万円分の怪我であるため、見ての通り保険診療の方がかかる医療費が少ないことが分かる。今回の過失割合では被害者が負担すべき額は、自由診療では100万円、保険診療では50万円となる。その上保険診療の場合、健康保険で負担してくれる分もあるので、被害者にとって有利となるのは健康保険での治療である。

通常は、交通事故による負傷者に対しては、まず自動車損額賠償責任保険(最高限度額:120万円)を使い、それを使い切った後は健康保険を使うが、法律に定められている訳ではない。被害者が初めから健康保険を使いたいと言えば、使用することが可能である。

 

相手方に対して損害賠償請求をすることができる

財産的損害には積極的損害と消極的損害に分けることができる。本件の被害者は4歳もしくは8歳という設定なので、積極的損害が該当すると考えられる。積極的存在は、例えば治療費のように事故によって支出を余儀なくされた損害をいう。そのため、この損害を補うために、自動車損害賠償責任保険や健康保険が存在する。一方で、非財産的損害は精神的損害のことであり、事故によって精神的・肉体的に苦痛を受けたことによる損害であり、本件にも該当する。原則的に交通事故がなかったならば存在したであろう被害者の状態と、現実の被害者の状態との差である。例えば交通事故による傷害を治すために3万円を治療費として支出した場合は、仮に事故に遭っていなければ、治療費は発生していなかったはずであり、その差額である3万円が損害となる。以上のことから車Aに対して損害賠償請求をすることができる。

 

本件は緊急避難に該当するので多少の減額、もしくは賠償金を払わなくて済む可能性がある。

緊急避難は民法(720条)と刑法(37)で規定がある。民法の場合、他人の物から生じた急迫の危難を避けるため、その物を損傷する場合に当たる。例えば狂犬に襲われたため、その犬を撲殺した場合は成立する。刑法では「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない」と規定している。事故にふりかかった危難を避けるため、これを第3者に転嫁する行為(第三者行為)である。本件の場合も該当すると考えられる。車Bの運転手が車Aに対して急ハンドルを切り、避けていなかったら、ABも事故死していた可能性もあり、Cの傷害だけでは済まない大きな事故に発展していた可能性もある。そのため緊急避難に該当すると考えられる。

 

負傷者Cの親が監督義務を尽くしていれば親に責任はない

監督義務者がその義務を尽くしたことを立証できれば免除される。未成年者に責任能力がある場合に、果たして監督義務者にも責任が生ずるであろうか。未成年者に責任が認められたところで、通常は未成年者に賠償資金がないことが多く、被害者の保護に欠けることになる。もっとも、子供が誤って他人に損害を与えた場合、多くは親の監督に過失があると言われている。本件は誤って他人に損害を与えた訳ではない。また4歳児に関しては何をするか予想がつかないため、親が監督しなければならないと考えられる。4歳児は親がしっかり保護する必要があり、親の監督義務違反が認められる。8歳児に関しては小学校に入学済みであり、教育の一環で交通安全教室も行われているため、親の監督義務は認められないと考える。判例においても8歳児には責任能力を認めているため、親の責任はないと考える。

 

事故を起こした車Aが被用者ならば、使用者と不真正連帯債務が認められる。

使用者責任が成立すれば使用者(および使用者に代わって事業を監督する者)は損害賠償責任を負う。使用者と被用者の責任とは、不真正連帯債務の関係に立つ。被害者に300万円の損害賠償債務を負う場合、使用者が被害者に100万円支払えば、被用者にも効果が及び、200万円を支払うことになる。一方で、民法715条では被用者に損害賠償を支払った使用者から、不法行為である被用者に対する求債権の行使を認めている。

民法719条では共同不法行為を規定している。1項では「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」としている。複数人による不法行為が共同不法行為に該当すれば、共同不法行為者の各自が、発生した全損害について損害賠償責任を負担することになり、被害者救済が厚くなると考える。

共同不法行為ABが不法行為をしていなければ該当しない。また、A B共同不法行為が歩行者Cの損害との間に因果関係があれば良いと解している。また、共同不法行為者の各人は、被害者に対して連帯して全損害を賠償する責任を負う。この共同不法行為者の債務については、判例上、不真正連帯債務であると解している。

 

本件は過失相殺が認められたため、被害者Cにも過失割合が発生している。

交通事故による損害賠償請求においては、過失相殺が問題になっている。加害者が不注意によって交通事故を起こし、それによって被害者に損害を与えた場合であっても、被疑者にも事故発生に関する責任に一端が認められるのが過失相殺である。そのような場合に備え、民法7222項「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」とし、過失相殺について定めている。裁判所は、この条文を適用することによって、事故当事者間の利害を調整し、損害の公平な分担を図るために、損害賠償額を減額することができる。ここでいう過失相殺における「過失」とは単なる不注意である。

例えば、車を運転中に前方をよく見ていなかったAが、たまたま道路を横断中に歩行者Bをはねて怪我を負わせたとする。同人に怪我を負わせたが、他方、Bも道路へ急に飛び出したという不注意な行動があった。この場合、Bにも事故発生についての責任の一端はあることになるので、Aが負担すべき損害賠償責任は減ることになる。そこで過失相殺をする場合にも、その過失があるとされる行為者に、過失相殺をされるという不利益を負わせるだけの能力もなければならない。これを過失相殺能力という。

しかし上記のように公平な観点から過失相殺を行うためには、被害者は、少なくとも事理弁識能力を備えている必要があるとするのが最高裁の立場である。事理弁識能力は、自分の行為の意味、つまり自分がその行為をするとどのような結果が生じるのかということを理解できる程度の能力を指す。また一般に、小学校入学時前後であれば、事理弁識能力はあると解されることが多い。そのため本件でも過失割合が認められ、被害者Cの過失割合は50%としている。

 

事理弁識能力は4歳児には認められず、8歳児には認められる。

最高裁判決昭和39624日は、「民法7222項の過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかに斟酌するかの問題にすぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失を斟酌する場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わっていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わっていることを要しないものと解するのが相当である」としている。そのため未成年者や精神上の障害がある者など、行為者に責任を弁識する能力がない場合には、その不法行為責任を負わないとしている(民法712条、713条)。この判例では8歳児に事理弁識能力があると判断している。裁判所が過失相殺を行うか、また、行う場合にどの程度行うかは裁判官の自由裁量に任されている。本件も事理弁識能力を認め、8歳児の場合はそれがあると考える。判例に従うと4歳児には事理弁識能力はないと考える。

 

被害者側の過失が認められる場合は損害賠償を調整すべきである。

被害者本人だけではなく、被害者の保護者などに落ち度や不注意がある場合にも、過失相殺における過失があると斟酌して、損害賠償額を調整すべきとするのが、被害者側の過失である。判例のなかには、小学校入学より前の幼児などにも過失を認める判断をしたものもあるが、一般論から考えれば4歳には事理弁識能力はないと考えるのが妥当と考えられる。幼児が関係する交通事故などには、保護者などに落ち度や不注意がなかったのかということを加味して、監督義務者責任または、被害者側の過失を考慮し、それによって損害賠償額を調整すべきと考えられる。

 

好意同乗者に対しては損害賠償額が減額される場合がある。

無料で親切心あるいは好意から他人を自動車に好意同乗した者、同乗させてもらう者を好意同乗者という。損害賠償額の減額に関して問題がある。好意同乗減額が認められる場合に、判例上、損害の全体について減額する場合と、慰謝料額について減額する場合がある。名古屋地裁、平成19921日の判例では、A、が被害者Bを同乗させて自動車を運転中に、第Cの運転する2輪車と衝突事故を起こして好意同乗Bが負傷したが、事故前にAが飲酒していたことをBが知っていたことから、損害額の5%を減額すると判断した。

8歳は小学校に入学しており、交通安全教室も普及しており、事理弁識能力はあると考えられる。

 

 以上のことから、年齢や事理弁識能力、過失などによって損害賠償請求が減額される場合もある。また、交通事故が発生した場合は、自分の意思でどの保険を使用するか考えるべきである。結論的には本件の場合は健康保険を使用して治療に専念する事が、被害者Cにとって有利である。

以上。

 

参考文献:『交通事故 損害賠償の実務と判例』 宮嵜直己 大成出版社

    『交通事故の法律知識 全訂版』 自由国民社

 

 

 

小田彩乃

交通事故と保険

              14J110020  小田彩乃

キーワード:自動車損害賠償責任保険、自由診療、第三者行為、過失相殺、責任能力、好意同乗、共同不法行為、不真正連帯債務、被害者側の過失、緊急避難

 

初めに

交通事故と保険の関係は深い関係であるが最低限の補償があるものの公平ではないところがあった。

 

現代の必需品といえる自動車だが、教習所で勉強したであろう自動車損害賠償責任保険とは、自動車損害賠償保障法に基づく、強制的対人賠償責任保険である。ゆえに、自動車・バイク(二輪車・原付)を保有するときに必ず加入しなければならない強制力を持つ保険であり、自動車損害賠償責任保険に加入していないと法的に処罰がある。また、この保険は、被害者の保護を図ることにその趣旨があり、自動車等を運転することで、他人の生命・身体を害し、賠償責任を負担することによって、保有者及び運転者が被る損害を填補する責任保険で、損害保険に属する保険である。ただし、人身事故だけにしか対応しない。よって、任意自動車保険にも入っておかないと後々面倒なことに巻き込まれることになる。

交通事故など第三者による加害行為つまり第三者行為による怪我等では、保険証を使った保険診療を受けられないため、自由診療扱いの治療となる。本来は保険診療で診察だが、交通事故などの第三者行為によって怪我をした場合は保険証使っての診療するのができないのが自由診療になる。

自動車損害賠償責任保険だけでは被害者に重過失があったとしても過失相殺はできない。

 

自動車損害賠償責任保険・・・責任保険。被害者保護を目的のため、一般の民事損害賠償と同じの過失相殺はなし。被害者に重大な過失がある場合に限り、過失の程度に応じ損害賠償額が減額される。

 

被害者ひとりにつき

死亡    3000万円

後遺障害  75万円〜3000万円

傷害(死亡に至るまでも含む)

      120万円

 

任意保険・・・自動車の保有者等が自動車を所有し、使用、管理することにより他人の生命・身体を害し、または他人の財物を毀損して賠償責任を負担することによって被る損害や、偶然の事故によって自動車に生ずる物的損害填補するほか自動車の運行によって保有者等が身体に損害を受けた場合に一定の保険金を支払う任意的自動車保険

 

簡単に言うと死亡事故を起こしたAが被害者B(死亡)に対する賠償が1億円だとする。Aは強制保険である自動車損害賠償責任保険3000万円出るがその残りの7000万円は普通の一般家庭でも支払えない金額である。その時Aに任意的自動車保険入っていればその任意的自動車保険で残りの7000万円補うことだ。

 

過失相殺・・・不法行為の加害者は被害者に対し賠償責任を負わないといけないが不法行為が発生時に被害者側にも責任の一端があれば(例 被害者が車道で歩いていて自動車に轢かれた場合。)などの事情を斟酌するのが過失相殺。裁判所は損害賠償の額を定めるについて考慮し、減額することできる。(民法7222項)

 例えば、加害者が酒酔い運転によって事故が発生したとしても、被害者側も交通規制を守っていなかったとすれば過失相殺がなして、賠償額が軽減される。

責任能力・・・自己の行為によって他人に損害を与えるであろうと判断できる能力。賠償責任という法律的意味まで知っている必要はない。責任能力は個人差があるが12歳あたりから認定されている。民法712条で責任能力がない者の行為による損害が発生しても賠償責任を負わないとしている。民法714条で責任能力がない者の行為によって損害を受けた時は親権者など法律上の監督義務者に過失があったときは監督義務者に責任を問うことができるとしている。

責任能力のない幼児を1人で遊ばせておいて車にはねられたような場合、幼児自身の過失の問題にはできないが、親など親権者など監督者の過失が問題とされる。

過失相殺能力は責任能力が必要であったが最高裁判所の判決によって幼児(未成年者)の過失を考えるにあたって、未成年者に事理弁識能力があれば足りるとし、責任能力は不要としている。事理弁識能力とは、物事に対して良いか悪いかを判断する能力。要するに道路に飛び出したら自動車にひかれるから危ないという考えを判断する能力。

 

  不法行為 被害者の過失 1.賠償額の減額が可能

                 2.賠償責任の否定は不可

 

被害者側の過失は、被害者と身分上あるいは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失のことという。

 

   重大な過失による減額 

    

(1) 後遺障害又は死亡     (2)傷害

7割未満 (1)(2)共に減額なし

7割以上8割未満 (1)(2)共に2割減額

8割以上9割未満 (1)3割減額 (2)2割減額

9割以上10割未満(1)5割減額  (2)2割減額

 

引用元:http://soudanguide.sonpo.or.jp/car/q035.html

日本損害保険協会 損害保険QA くるまの保険 問35 交通事故対応等  

 

好意同乗とは、運転者の好意により、他人を同乗させること。友人などを好意的に同乗させて走行中に事故を起こし同乗者に損害を与えた場合にも運行供用者(運転者)は責任を負う。

だが、好意同乗者自身無償で自分の利益のために自動車に乗っているのであるため運転者と並び運行供用者としての側面がみられる。好意同乗者の所有者(運転者)に対する賠償請求はかなりの範囲で減額されるのが普通である。また、過失相殺の法理の類推適用によって減額されることもある。

 

 判例は好意同乗の妻や恋人・に対し、妻だけ過失相殺を認め、恋人には認めていない。

夫婦・・・最高裁平成19424日判決では内縁の夫婦は,婚姻の届けはしていないが,男女が相協力して夫婦としての共同生活を営んでいるものであり,身分上,生活関係上一体を成す関係(被害者側の過失)にあるとみることができるとしている。

恋人・・・最高裁平成999日判決では婚姻していたわけでも,同居していたわけでもない場合、過失相殺において運転者および過失が被害者側の過失認められるために必要な身分上,生活関係上の一体関係(被害者側の過失)があるとはいえないとし認められていない。

 

  1. 数人が共同不法行為によって他人に損害を加えたとき
  2. 共同不法行為者のうち誰かが損害賠償を加えたか知りえないとき
  3. 教唆者及び幇助者は、共同不法行為であって、各自連帯して賠償責任を負担する。

共同不法行為(民法719条)

 

123の場合においても行為者のそれぞれに不法行為成立の一般的要件「故意」「過失」「違法性」「責任能力」「損害発生」との因果関係が備わっていることが必要。

例 甲の運転する自動車が交差点で信号無視して暴走したため、乙の運転する自動車がこれを避けようとしてハンドルを切りそこない、歩道を通行中の人をはねた場合、甲と乙の共同関係が存在する。そして甲と乙の過失割合が82であっても両者は共同不法行為者として連帯して賠償しなければならない。

 

共同不法行為の効果は各共同行為者の過失の大小にかかわらず、連帯債務であり1000万円の損害賠償とすれば各自が被害者に1000万円全額の支払義務を負い、そのうち1人が弁済すればその限度でほかの債務者の債務も消滅する。

過失の割合は、単に各共同不法行為者の内部的な負担部分を決めるだけである

先の例からすると乙が被害者に1000万円支払えば、甲に対し800万円求償できる。

なお共同不法行為の効果を連帯債務ではなく、不真正連帯債務と解する学説も有力だが、各自損害賠償権利者に対して全額を支払わねばならない義務を負担する点では変わらない。

 

交通事故の場合において、負傷を負わせた車が2台以上ある場合、多重事故などが共同不法行為に該当。多重事故の場合、被害者は、それぞれの加害者の自賠責保険に対して請求が可能。加害者の台数分、自賠責保険の支払限度額が2倍や3倍等になる。

 

被用者乙が仕事中に第三者に負傷させたとき、乙は不法行為等による20万円の損害賠償債務を負担するが、使用者甲も民法715条に基づいて損害賠償を負担する義務がある。それが不真正連帯債務という。簡単に言うと、不真正連帯債務は、債権者が1人又は数人に対して同時又は順次に全部又は一部を自由に請求することができる点で連帯債務と同様となる。

 

緊急避難とは急迫な危難を避けるためにやむを得ず行う行為。違法性阻却事由の一つ。自己または他人の生命、身体、自由、財産に対する差し迫った、つまり現在の危難を避けるためにやむを得ず行った行為で、その行為から生じた害が避けんとした害の程度を超えない場合に認められる。(刑法37条)

 

刑法での緊急避難

  1. 正対正の関係
  2. 他に取るべき方法のない場合でなければならない
  3. 法益を比較し、避け得た害の方が加えた害より大きくなければならない

 

道幅いっぱいの自動車を避けようとして沿道の家に立ち入った場合、生命・身体の危険と住居の安全と比較し緊急避難が許され、住居侵入にはならないのは一例。

民法7202項の緊急避難は他人の物により生じた急迫の危機を避けるためその物を毀損することで、違法性はなく、賠償責任は生じない。物の反撃行為を指す。民法と刑法の緊急避難は概念が違うので気を付けること。

 

まとめ 

 自動車等の運転には、いくら運転者本人が気をつけていたとしても危険がつきまとうものである。例えば、道路に子供が飛び出してきて交通事故を発生させてしまう、あるいは、対向車がセンターラインを超え走行してきたので、命の危機に迫ったため避けた先に人がいたらどうなるのかなど、第三者の行動を予測できないのが自動車や自転車も同じだ。交通事故を起こさないように気をつけているが、いつ何が起きるのかわからないのが交通事故であるから、万が一の場合に備えるために保険を掛けておいたほうがいいと思う。なぜならば、強制保険である自動車損害賠償責任保険だけでは、人身事故のみの補償であり、対物事故には補償されない。これだけでは何かあったときにはどうにもならないので、任意自動車保険にも加入しておくことが望ましいと思う。

 また、交通事故など第三者行為による怪我では、保険証を使用しての保険診療を受けられないことから、自由診療となり、治療費が全額個人負担となる。

 過失相殺は事故時に被害者にも過失がある場合によって減額する。過失相殺能力は幼児などの未成年者の責任能力がなくても事理弁識能力があれば足りる。

好意同乗とは運転手の好意によって同乗すること。事故時に好意同乗者の過失相殺が認められるのは身分上,生活関係上の一体関係(被害者側の過失)である妻(夫婦・内縁の夫婦)のみ。友人と恋人は認められない。

 親密な友人関係でも好意で同乗運転し、そこで事故が起きても過失相殺にならないのはいいかがなものか。公平にできないのかと思う。友人や恋人とのドライブが気軽にできないことになってしまうであろう。だが、今は任意自動車保険には搭乗者傷害特約というものがあり、被害者側の過失で認められなかった恋人や友人など補償する保険がある。

 今は飛び出しなど歩行者や自転車の交通規範を無視の行動が目にかかる。自動車の運転手も歩行者も自転車の運転手も気を付けて事故が起きないようにするのが一番だと思う。

 

 

参考文献・出典(引用元は文章中に書いてある。)

図解による法律用語辞典

 

交通事故 示談交渉センター

http://www.sase-office.jp/article/14639798.html

家計のポータルサイトで保険について賢くなろう 

〜共同不法行為ってどういう意味なの?〜

https://www.kakei.club/jibaiseki/fuhoukoui.html

弁護士ドットコム 不真正連帯債務

https://www.bengo4.com/shakkin/1036/d_6972/

交通事故の弁護士相談ブログ 

〜交通事故による被害者側の過失とは?〜

http://www.jikosos.net/blog/?p=38

交通事故・損害賠償請求ネット相談室

〜交通事故における過失相殺〜

http://www.koutuujikobengo.jp/kouidoujougengaku/

 

 

 

 

島田洋輝

交通事故と保険

       

       14J118017 島田 洋輝

 

・結論

交通事故は、加害者、被害者、病院の三者三様の考えや利害関係が出てくるため厄介な問題になりがちである

 

 

1・交通事故における加害者と被害者

 

 交通事故がなぜ起きてしまったのかを調べた時、必ずしも加害者だけが悪いとは限らないのではないかと考えられるケースがあります。交通事故を好き好んで起こす人はいないと考えられ、たいていの場合は加害者の過失によって引き起こされます。

 例えば自動車の運転者が、ちょっとしたわき見でブレーキやハンドル操作が遅れるとか、アクセルとブレーキを踏み間違えるといった操作ミスが過失とされます。あるいは一時停止を無視したり、赤信号になったにも関わらず無理やり交差点に進入したりするなど、交通規則の無視も過失です。交通事故統計によると、死亡事故における事故当事者の法令違反は、漫然運転、運転操作不適、脇見運転、安全不確認といった安全運転義務違反が上位を占めています。

 多くの場合、以上のような過失や違反が原因で交通事故は発生し、過失や違反を犯した方が加害者になると思われがちです。しかし交通事故は自動車の運転者の過失だけで発生するわけではありません。自動車と歩行者の事故の場合、歩行者がいきなり道路に飛び出すといった、歩行者にも事故の責任があると考えられることもあります。

 また自動車同士の事故だと、双方に操作ミスやルール違反があって、どちらが加害者でどちらが被害者なのか、わからなくなるケースもあるのです。そういった場合に、事故当事者の責任の割合を示すものが「過失割合」と呼ばれるもので、この割合を適用して損害賠償金が減額されることを「過失相殺」と言います。

 

次に、被害者の利益に反する言動をする可能性がある人は、誰でしょうか。被害者の立場からは「誰にお金(賠償や保険金)を請求できるか」、逆の見方で、「誰が財布を痛めて被害者にお金を支払わねばならないか」という点を考えると分かると思います。被害者の利益に反する言動をする可能性があるのは、加害者、運行供用者、加害者の使用者、加害者加入の自賠責保険会社・任意保険会社、被害者加入の任意保険会社、国(労災、政府保障事業、道路の管理者)です。上記の表のうちのほとんどが、それに該当します。被害者加入の任意保険まで入っている理由は、仮に加害者が任意保険に入っていない場合などに、無保険車傷害条項に基づいて、被害者契約の任意保険会社に請求する場合があるからです。国(労災)は、後遺障害等級の認定の時点で、被害者の想定していた等級より低い等級を認定して対立する可能性があります。また、国(政府保障事業)は、ひき逃げの際に保険金を請求することになるため、被害者と対立する可能性があります。さらに、国などの道路の管理者については、「道路に穴が開いていた」といった不備が原因の事故であった場合、被害者は国家賠償を請求することになるため、対立する可能性があります。

 

 

 

2・例題から考える交通事故

 例題:Aがセンターラインを越えて対向車線にはみ出てきたので、Bは急ハンドルをした。ちょうどその時子供(4歳)のCが飛び出してきてBCと接触事故を起こしてしまった。

 

 Aは過失を犯しセンターラインを越えそのせいでBCと接触をしてCはケガをしまったから、これはAに対して不法行為があると考えた。Bは、急ハンドルをしCに接触。すなわち緊急避難という形になる。Cは飛び出してBに損害をあたえてしまったので被害者側の過失があると考える。この子供に責任能力があるのかないのか。刑法上では14歳未満には責任能力は無いとしている。また意思能力は7歳からあるとされている。つまり、この例題からいうとCには責任能力も意思能力もないということになる。よって子供の監視を怠ったCの親が責任を取ることになる。

 これは、複数人が関与している問題なので共同不法行為になる。共同不法行為とは、複数の人間の関与により、権利侵害の結果を発生させる現象のこと。またはそのような結果を発生させた行為。またはそのような行為に対する民事上の責任(不法行為責任)の発生要件と主観的・客観的範囲を定めた私法上の制度。

 この場合、損害賠償債務は不真正連帯債務になります。

 また好意同乗によって事故にあって隣に乗っている人がけがをした場合損害賠償を請求することができる。

 

 

3・被害者側の過失と事故

被害者側の過失を考えると、交通事故における被害者側の過失とは、被害者と身分上あるいは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失のことです。このような関係にある者に過失があった場合は、被害者に過失があったと同様に考え、過失相殺されます。これは、飛び出しのように被害者自身に過失があった場合に、たとえば3対7、というように損害賠償額から引かれる「過失相殺」とは異なり、被害者本人でない者の過失に基づき損害賠償額が差し引かれるものです。たとえば、夫が運転し、妻が同乗していた自動車で、夫の不注意で第三者の運転する自動車と衝突し、妻が負傷した場合、妻が第三者に損害賠償を請求したときには、夫の過失についても考慮され、妻の損害賠償額が減額されることになります。仮に妻が第三者に損害賠償額全額を請求して支払いを受けたとしても、第三者は夫に対して過失割合に応じた支払いを求償することになりますので、二度手間になります。そこで、夫婦のように、家計をともにし、生活関係上一体をなす関係にある場合には、被害者側の過失として過失相殺をし、公平で合理的な解決を図れるようにしたものです。「被害者側」に含まれる関係として、夫婦、未成年の子どもと親、同居している兄弟が挙げられます。交際中の男女については、裁判例をみると、婚約中で近いうちに結婚する予定であった男女については、同居の事実があるわけではないから、被害者側には含まれないとしていますが(最高裁平成9年9月9日判決)、内縁関係にある男女については、夫婦としても共同生活を営んでおり、身分上、生活関係上一体をなす関係にあるとして、被害者側に含まれるとしています(最高裁平成19年4月24日判決)。また、親族等の関係がなくても、会社の代表取締役が、業務のために従業員に自動車を運転させ、代表取締役が負傷した場合、運転者である従業員の過失を被害者側の過失とした裁判例もあります(東京地裁昭和61年5月27日判決)。

 

4・保険

 

「交通事故では健康保険は使えない」ということをよく耳にしますが、なんら問題なく健康保険を使用して治療を受けることはできます。ただし病院や整骨院や接骨院などの治療院によっては「使えません」「自由診療で」と受付窓口で言われたり、ホームページにもハッキリと書いてお断りしているところもあります。でもこれは法に違反しているわけではありません。交通事故で健康保険を使う場合は、必ず保険者(国保・協会けんぽ・健康保険組合など)へ届けをなるべく速やかに提出しなくてはいけません。これを第三者行為による届出といいます。
第三者による行為によって傷害を受けたのですから医療保険者は、治療費を加害者側に請求をします。この届出によって相手が特定でき請求することができるのです。

病院や診療所で健康保険は使えないという理由について取りあげてみました。主に以下の3つが理由になります。

@営的視点から、自由診療にしている。健康保険での診療報酬は1点につき10円と決まっていますが、自由診療の場合は1点あたり15円や20円というように値段は自由に決められます。ただし、交通事故の治療においては日本医師会・日本損害保険協会・自動車保険料率算定会の三者協議により、「自賠責保険診療費算定基準」が取りかわされたので、保険診療に比べ大幅な報酬設定にはしていません。この取り決めは、平成24年6月1日現在、全国46都道府県で導入され(ただし民間医療機関すべてがこの基準を導入しているわけではありません。)次のような内容になっています。

 「自動車保険の診療費については、現行労災保険診療費算定基準に準拠し、薬剤等「モノ」についてはその単価を12円とし、その他の技術料についてはこれに20%を加算した額を上限とする」となっています。つまりは、保険治療よりも2割から約4割高ほどで設定されているということです。ここでいう「モノ」というのは、注射や投薬、麻酔の薬剤料、画像診断の薬剤料・フィルム代等になります。その他の技術料においては、初診料や入院基本料、手術料、入院時食事療養費などが技術料になります。

A症状が極めて軽い場合は保険治療でも問題ないが、そうでない場合には、保険治療では限界があるいう理由からです。きちんと治してあげたいという心意気でやっている治療院や質の高い治療を提供を心がけている診療所では、おのずと自由診療が選択肢になるという理由からです。

Bそもそも健康保険は、加入者から保険料を集めて病気やケガをしたときになるべく負担なく治療が安心して受けられるための相互扶助を基本としているので、交通事故など第三者が負わした傷病は、加害者に負担させるべきものである。そのため、事業所での労働災害には労災保険が、加害者のある交通事故には自動車損害賠償責任保険(自賠責)が設定されているのです。そうであるから自由診療が妥当である。ただし、交通事故で被害者の過失が100%、或いはそれに近い場合や加害者が不詳だったり、支払い能力がない場合には被害者救済のため、厚生労働省は健康保険を使用してもよいと認めているが、こういうケースを拡大解釈してなんでも健康保険を使うということは誤りである。というのが医療機関側の主な理由3つです。

「交通事故と健康保険使用問題」は様々なホームページ上で「健康保険が使えない、使わせないところは儲け主義の病院」という内容で書かれているものが多いのですが、中には、儲け主義ということではなく、シッカリと治してあげたいということを重視しているところもありますから、短絡的にそのように考えるのは誤りともいえます。いずれにしても患者側として困るのは、「保険会社からは健康保険を使ってください」と言われても、治療院からは断られるということで板挟みになるということです。この場合は、「第三者行為による傷病届を出したので健康保険でお願いします」と窓口で交渉してみる、それでもだめなら別の病院や治療院に替えるしかありません。

 

このようにやっかいな問題に巻き込まれないように交通事故には十分に注意して生活していきたいと思う。

 

出典

https://www.jicobengo.com/negligence-percentage/comparative-fault.html

過失相殺

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B1%E5%90%8C%E4%B8%8D%E6%B3%95%E8%A1%8C%E7%82%BA

共同不法行為

https://www.kakei.club/kenpo/koutsujiko.html

第三者行為、保険

 

 

 

 

 

沼田凌成

交通事故と保険

14J115010 沼田 凌成

 

結論 国土交通省と厚生労働省は協力体制をとるべきである

 

1、保険について

保険の話をするうえでまず考えなければならないことは厚生労働省である。テーマにある保険は交通事故が起きた際の保障であると考える。

交通事故が起きた場合に使用できる保険は医療保険と自動車損害賠償責任保険がある。

自動車損害賠償責任保険は、自動車および原動機付自転車を使用する際、全ての運転者への加入が義務づけられている損害保険である。略称自賠責保険。公道で走行する際に、加入が義務付けられていることから、俗に「強制保険」といわれる。

医療保険は国民皆保険である。厚生労働省は日本の国民皆保険制度を国民全員を公的医療保険で保障。医療機関を自由に選べる。(フリーアクセス)安い医療費で高度な医療。社会保険方式を基本としつつ、皆保険を維持するため、公費を投入。といっています。

本当に国民全員をしっかりと保障できているのかすごく疑問が残ります。

保険診療とは、貧富の差がなく全ての国民が平等な医療が受けられる様になりました。これは診療に対する医師への報酬額が決められており、患者さんはそれぞれ加入している保険(国民保険、社会保険など)から何割かの負担額を支払うというものです。この為、保険診療を受ける限り、どこの病院や診療所に行っても同じ金額で同じ診療を受けられるという「安心」があり、経済的負担が少ないため気軽に医療を受けられる様になりました。

 

しかし保険診療には「保険が利く範囲」があり、病気ごとに検査内容や使用できる薬などが決まっています。自由競争の規制、政府の医療への干渉、それによる医療の質の低下、患者の選択の自由の制限などの弊害もあります。診療報酬の組み立てが「出来高払い」であるため、「薬漬け」や「不用な検査」を行う医者ほど収入が上がり、良心的で診断の正しい医師は淘汰されるという傾向もあります。

 

カゼや胃腸炎のように治りやすい病気や、確実に治る治療法が確立されている場合には、保険診療は非常に恩恵のある診療と言えます。しかし、通常の医療(西洋医学)で治らないような病気に対しては、診療内容に大きな制約が加えられている保険診療は、必ずしも最良の医療が受けられるとは限りません。といっている人もいます。個人的にもの意見に賛成です。

テーマにある交通事故の場合は第三者行為になるため届け出がなければいけないというのも少し疑問が残るところです。

保険診療のほかにあるのが自由診療です。単純にいえば保険が効かない診療です。

国民全員の保障をするのであれば保険の範囲を広め保険が効かない範囲をなくすことが真の社会保障だと考えます。それが無理であるのであれば混合診療を認めるべきだと思います。

2、交通事故について

交通事故とは道路交通法によると道路における車両等(自動車、原動機付自転車、自転車などの軽車両、トロリーバス、路面電車)の交通に起因する人の死傷又は物の損壊(道路交通法第67条第2項)とある。交通事故は不法行為です。

交通事故における損害賠償請求も,法律的には,この不法行為責任の追求ということになります。交通事故という不法行為を起こした加害者に対する法的責任の追求ということです。

これが認められているのは被害者の救済だと思います。

交通事故に加害者と被害者が存在します、交通事故は故意に起こしていない限り過失となります。過失であるというのはどのようのことか常に加害者のみが全責任を負担すべきほどに落ち度があるとはいえない場合があり得ます。例えば,被害者側にも不注意や落ち度があるつまり被害者側の過失がある場合です。そのような場合にまで,加害者に損害に対する全責任を負担させるのは公平ではありません。

そこで,そのような当事者間の事情や不法行為の内容等に基づいて,どちらにどれだけの責任を負担させるのが妥当なのかを調整することが,不法行為制度の趣旨ないし理念なのです。記している不法行為制度の理念の最も象徴的といえる制度が,過失相殺という制度です。民法722条2項により,「被害者に過失があったときは,裁判所は,これを考慮して,損害賠償の額を定めることができる。」として,過失相殺を定めています。

過失相殺とは,被害者に過失があった場合に,それを斟酌して,損害賠償額を調整するということです。調整するとは,要するに,その過失の程度に応じて,損害賠償額を減額するということです。

この過失相殺は,被害者の過失と加害者の過失とを割合的に把握して,それに応じて損害賠償額の調整をしていくことになります。

ただし,ここでいう「過失」とは,民法709条に定める「過失」とは異なります。民法709条等の定める「過失」は法的な注意義務違反ですが,過失相殺にいう「過失」は,そこまで厳密なものではなく,一般的な落ち度とか不注意とかいった程度のもので足りると考えられています。

なお,民法709条等の法的注意義務違反という意味での過失を「真正過失」といい,過失相殺における過失を「自己過失」といって区別する場合もあります。

過失相殺の大きな問題の1つとして「過失相殺能力」の問題があります。

すなわち,被害者の過失が過失相殺の対象となるとしても,被害者が未成年者であったなど一般的に法的責任を負担しないような年齢や状況にあった場合にまでも過失相殺がなされるのかという問題です。

この点については,被害者側に事理弁識能力があれば,被害者の過失を斟酌した過失相殺が可能であるとするのが判例の考え方です。責任能力は必要ないと解釈できます。

事理弁識能力がない人の過失相殺能力はどうなるというのはその保護者等に真正過失または落ち度や不注意がなかったのかということを加味して,監督義務者責任または被害者側の過失を考慮し,それによって損害賠償額を調整すべきであると考える。

過失相殺の類推適用をされている好意同乗による減額が理論的にはあまり考えられないというか法的に考えてるようには考えられない。ただの親切心だと思う。私情を持ち込むのはどうかと思う。

 

3、交通事故と保険について

授業内で取り扱った例で交通事故と保険について見ていきたい。Aの運転していた車(以降甲)が暴走してセンターラインを超えた。対向車線を走っていたBの運転する車(以降乙)がこの甲を避けようと急ハンドルをした。その際に乙の目の前に子供(以降C)が飛び出してきてCは治療費10万点分のケガをしたという内容のものである。このCは年齢が4歳か8歳かの場合も考えるものとする。

授業ではA、B、C,の過失割合がA50B0C50としていたのでそれをそのまま考えていく。

交通事故なので過失のあるAの自賠責保険、Cの医療保険から治療費の支払いが行われると考えられる。

過失から考えるとAは5万点分、同様にCも5万点分の治療費を負担すべきである。

医療現場では旧自賠責の一点単価20円を採用しているところもあります。自賠責保険をつかい病院に行くのは自由診療となるので病院側は好きに単価を決めれることになります。これはすごくおかしい。健康保険を使わない治療の場合は「自由診療」と言って医療費が自由に設定できます。逆に言えば、健康保険を使用した場合は、決められた医療報酬しか請求することができません。そう、病院は健康保険や労災保険を使うよりも自由診療のほうが、自由に医療費の設定ができるので儲かるのです。

こういった理由から、病院や整骨院では、その治療に対して健康保険を適用する事を拒否するのです。

儲けのカラクリはこうです。病院での治療の場合、医療行為に対して点数が決められています。病院はその点数を変えることはできません。

そして、治療後に合計された点数に10円をかけるのが健康保険で12円をかけるのが労災保険(点数計算方法が少し違う)です。この単価は変えることができません。

医療単価が100点ならば治療代は健康保険で1000円、労災保険で1200円になります。ところが、自由診療の場合には、1点単価が20円であろうと30円であろうと「自由診療」なので単価設定は自由なのです。

ただ、交通事故で一般的に言う「自由診療」には二つあり、上記の報酬点数あたりの単価が上がるパターンと、報酬点数の計上方法を労災基準に従った自由診療の2つがあります。労災に従うパターンを自賠責診療報酬基準といいます。自賠責診療報酬基準は、合計点数そのものが健康保険に比べて高くなるので、これに単価を×20円とすることはありません。昔、交通事故をあまり扱わない町の小さな眼科が労災基準で出した点数に、さらに30円を掛けていましたが、さすがに保険会社は、計算し直すように病院へ伝えていました。

 

なお、自賠責診療報酬基準の採用については、平成2310月の岡山県の合意があったのを最後に平成25年時点では46の都道府県医師会と損保との間で「基準案は労災保険診療費算定基準に準拠する」という合意がなされています。ただし、医師に対する拘束力はありません。

上記でA,C5万点ずつといいましたが自賠責保険の支払については前述したとおり金額は変わっていきます。Cの医療保険5万点分は1点10円になるので50万円の価値でこれは変わりはありません。ここで格差ができるのはおかしい。

自賠責保険で治療をした場合自由診療となりC自身の医療保険は混合診療になってしまうため使えなくなる。制度を変えるべきだ。

保険の視点だけではなく交通事故の視点でもみていこうと思う。この事故のでの過失は授業のままとりあつかっていくといいましたが少し突っ込みたいの突っ込ませてもらいます。

Cの飛び出しについてまず一点、親は何をしているのか、この場合は親の責任が大きく問われると思う。

4歳である場合、Cの過失はなくなるためBが100%悪いのかはたまたAとBの共同不法行為になるのか。Bが100%悪くなる場合はAに対して緊急避難が適用されていると考えられる。共同不法行為になる場合はAにも過失がある場合と考えるがBにいくばくか良心があるのであれば全額負担して不真正連帯債務にすべきだと考える。

 

交通事故と保険では自賠責保険と医療保険が一番とネックになると考えています。本当に国民のことをかんがるのならば厚生労働省よ国土交通省は手を取り合いこの問題に着手すべきだと思う。

 

参考文献

https://jico-pro.com/columns/11/

http://www.koutuujikobengo.jp/higaishagawa/

http://www.1ginzaclinic.com/drugs/mininka/prescription.html

厚労省HP

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/

http://shirobon.net/bbs/bbs_dtl.php?qid=17532&bbs_cd=other

http://www.senryaku.info/sen-249

ポケット六法

民法TU内田貴

 

 

 

太田英里

14J107011 太田英里   (5048文字)

【交通事故と保険】

 

交通事故は身体的にも経済的にも大変恐ろしいものです。なぜなら、相手に怪我を負わせ最悪死に至らしめる行為ということに留まらず、自身の経済的損失にもつながるからです。交通事故は民法709条に定める不法行為にあたる可能性が高いためです。そのときどうしたらいいか、交通事故と保険の関係と保険の種類についてまとめます。

 不法行為とは、自己の不注意等が原因となり相手方に何らかの損害を負わせる行為を指します。不法行為法では不法行為の要件や加害側の賠償ついて定めています。埋め合わせについては2つ説がありますが、差額説が有力とされています。そのため、不法行為に当たった場合には、被害者が本来失っていなかった財産・被害者が本来得ていたはずの利益のふたつについて加害者に損害賠償請求をなすことができます。そうなると加害者はかなりの額を支払うことになり、払いきることができないと被害者側はさらに損を受けることになります。そこで、保険というサービスがあります。保険にも様々な種類がありそれぞれかなりの違いがあります。どのようなとき、どのように解決すべきなのかを考えていきたいと思います。

 

 【不法行為の要件】

 不法行為の要件については民法709条によっておおまかに4つほどあると考えられています。「損害の発生」「権利侵害」「故意過失」「因果関係」です。交通事故においてケガ人が出たもしくは物が壊れた等した場合、損害の発生と権利侵害が発生したことに関してほぼ問題ないと思われます。因果関係は原因と結果が「あれなければこれなし」の関係になっていることです。因果関係が問題となる多くの場合は交通事故があってから時間がたってなんらかの症状が出た場合などになります。

 交通事故で最も重要になると思われるのが「故意過失」です。日本は原則的に過失責任主義をとっているため、不法行為法では故意のみならず過失までも要件に含んでいます。故意はあった時点で事故を装った刑事犯になると思うのでそもそも事故と呼べるのだろうかとも思いますが、交通事故の過失の存在は証明が難しいです。なぜなら、「ついうっかりしていた」「こうなると思っていなかった」というのはすべて当人の心の中の話だからです。ただ、誰がどのくらいわるかったかの過失割合に関しては経験則等から警察介入なり当人の話し合いで決めると思われるのではっきりとはわかりません。問題は、「誰に過失があったか」ではないでしょうか。

 過失の決定は注意義務違反と結果回避義務違反の二つの説にわかれます。注意義務違反は注意を怠っていないかどうかを見ています。結果回避義務違反は注意義務に加えて結果を回避したかどうかを見ています。注意していようが結果を回避しないのであれば意味がないため、交通事故の場合は結果回避義務違反の存在が過失になると思われます。また、結果回避義務の発生は予見可能性により、普通一般的に予見が可能である場合に発生するとされています。逆に、予見できないような事態の場合には過失にはならないと考えられます。

 具体的に過失が認定される場合を考えていきます。まず、車道を車で走っていたところを反対車線から来た車と接触してしまったような場合、原因によって割合は違うと思いますが双方に過失有となると思われます。歩行者と車が接触した場合、歩道に車が突っ込んでいったのであれば車のみに過失が認められると思いますが、歩行者側が信号無視をしていた場合や横断歩道でない箇所を無理やり渡ろうとしていた場合には歩行者にも過失有とされるはずです。車と人がぶつかる場合、たいてい人が被害者になるでしょう。しかし、その被害者が信号無視をしていたら車は一方的に過失を負うのは理不尽だとおもうはずです。そのため、被害者側の過失についても認めている。

 被害者側の過失については民法417,722条に定められている「過失相殺」が行われる。これは、被害者に過失があったときにその点を考慮して損害賠償額を定めるという規定です。不法行為における過失相殺は義務ではないですが、加害者の支払額を減額できる制度です。また、判例によると過失相殺における被害者は「被害者側」としていて、被害者の車に乗っていた別のだれかがけがをした時にも相殺できるとしています。

 

 不法行為の成立要件のおおきな4つには入っていないけど要件として認められている者があります。それが「責任」です。交通事故で飛び出してきた子供とぶつかってしまう可能性もあります。そのとき、もし大人が相手であれば相手方にも過失があるとして過失相殺できるとのことでした。でも、子供が相手だった場合はどうでしょう。不法行為法では責任能力のないものは責任を負えないから賠償責任がないとしています。責任能力のない状態は病気などでも考えられるとは思いますが、子供で言うところの14歳程度と考えておけばいいと思います。そもそも子供は無資力であると考えられるので請求しても意味がないことが多いですが、特に責任能力のない14歳程度の子供は責任がないから負わなくていいのです。

 なら子供はなんでもありか?というと、そうでもありません。責任能力のない子供の中でも特に事理弁識能力の伴っていないだいたい7歳程度までの子供の場合、親などの監督義務者に責任追及することができます。それが、民法714条に定める監督義務者の責任です。事理弁識能力のないような子供はしっかりと監視しておくべきだったのに義務を怠ったために損害をなしたのであれば監督義務者の義務違反だったと考えます。そのため、本人に代わって責任をとることになります。このとき、本人(子供)は完全に責任を取る必要がない状態です。また、責任能力のないとされている14歳程度の子供に関しても監督義務者の責任を問われる可能性があります。ただ、能力に関しても状況などによって個別に判断されるので一概にはいえません。事理弁識能力のない7歳程度の子供に適用されるものだと考えておいて大丈夫だと思います。

 

 他にも責任の免除の可能性として緊急避難があげられます。緊急避難はその名の通り緊急時の避難行動に関する内容で民法720条に定められています。これは他人の物から生じた急迫する事柄に対して不法行為に当たる行動をとることになっても免責されることです。しかし、刑法と民法では緊急避難に関して明確な違いがあります。刑法では人・物に対して使うことができますが、民法上での緊急避難は他人物に対してのみ発動できます。相手を怪我させてしまった場合には正当防衛の可能性のほうが高いと言えます。例えば、センターラインをはみ出して走行している対向車に気づき急ハンドルでよけた場合、その対向車に過失があることを認めたうえで、急ハンドルによりガードレールが破損していた場合にはその物に対しての損害賠償が免責される可能性があるということです。

 

 【同乗者がいた場合】

 交通事故を起こした車に同乗者がいた場合、怪我の保護や責任に関してはどのように判断されるのでしょうか。自動車で事故を起こした場合で同乗者が怪我をしたら、基本的には加害者の第三者行為によるものと判断されます。そのため、同乗者の怪我に対しても加害者側が負担することになります。このとき、必ず傷病届を健康保険組合に提出しなければなりません。

 第三者の怪我に被害者の過失が存在したら少し話が変わってきます。というのも、怪我を負った第三者に対して加害者側だけでなく被害者側の運転手に不法行為法が適用されるためです。民法719共同不法行為法によると、数人の不法行為によって損害を与えた場合は双方に損害賠償責任があるとしています。二人の運転手という複数人の手によって交通事故が起こり、第三者が怪我をしたのであれば共同不法行為にあたります。また、加害者が複数名いることから不真正連帯債務となります。共同不法行為を行った運転手二人はそれぞれが第三者の怪我に対して全額の支払い義務があると考えられます。そのため、第三者の怪我に関しては割合の話ではなくなります。また、怪我人は2倍受け取れるという話ではなく、不法行為者2名で合わせて怪我について全額支払った時点で賠償請求権は消滅します。

 しかし、そんな同乗者にも責任を問われる可能性があります。具体的には個別に判断されるようですが、家族や知人、お願いされて乗せた人物等を乗せている場合には好意同乗者減額をできます。わかりやすい例ですと、知人を乗せて走行中に知人が早く目的地に着きたいためにとばしてくれとお願いしてきて速度を上げたら事故を起こしてしまったときは、その知人にも責任があると考えられます。そのため、過失相殺が行われ知人の怪我に対して運転手が全額支払う必要がなくなります。しかし、同乗していればいいというものではありません。帰責性があるとされる場合は危険関与増幅型と危険承知型の二種類があります。先ほどの例は前者にあたります。一方危険承知型は飲酒運転や無免許運転を知っていて乗った場合になります。また、好意同乗者は無償同乗者とも呼ばれえることがありますが、同乗者の減額はタクシーなどの有償のものでもひどい場合には認められる可能性があるようです。

 

 保険の話

 以上のことを踏まえたうえで、実際に保険に入っていたらどうなるのかを考えていきます。一言保険と言ってもその種類は数多くおあります。しかし、今回の話で使う保険は大きく2つにわけることができます。自動車責任賠償保険(以下:自賠責)と医療保険です。自賠責は自動車損害補償法によって義務付けられている強制保険です。車などを運転する際に必ず入らなければなりません。支払い基準が定められていて、支払限度額が傷害、後遺症、死亡事故それぞれ違います。怪我を負わせた場合には最高120万、後遺症が残った場合には最高4000万、死亡事故の場合は3000万となっています。金額で定められているため、治療手段などは決まっておらず自由診療となります。ただ治すだけではなく自分に合った治療を選べるという点では魅力的だと思われます。

 しかし、自由診療は健康保険の適用外のものとなります。そのため自賠責での保障になるわけですが、過失割合によっては自身の支払わなければならない金額が多くなる可能性が十分にあります。健康保険適用内の治療は日本国内で確立された手段を用いた治療方法となります。そのため、最新の技術を受けることにはなりません。また、健康保険適用内の診療を受けていても、一部でも自由診療を受けることにしてしまうと混合診療となってしまい、こちらも健康保険を使うことができません。ただ、金額的にはかなり抑えられると考えられます。自賠責が金額で決まっているのに対して健康保険は知っているかとは思いますが3割負担です。また、治療を受けた際の支払金額は点数制で行われていますが、自賠責などを使用した場合には一点単価が定まっていないのに対して健康保険を使用した場合には一点単位10円と定まっています。そのため、不当な請求を免れることにつながります。

例えば、交通事故を起こしてABお互い過失割合50%だった・自賠責は120円だったとします。Aさんが10万点分の怪我をしたとき自賠責を利用すると200万円分の治療だったことになります。自賠責での怪我の最高額は120万なので 200万−120万=80万 となります。過失が50%なのでAとBはそれぞれ80万の半額の40万円分に関して支払わなければいけません。

 それに対して保険診療を受けると10万点分の怪我をした時の請求される額は100万円にとどまります。過失が50%なのでBは50万円を支払わなければなりません。しかし、被害者のAは自身の保険を使うことにより3割負担になるため15万円の支払いになります。これだけみても、自賠責と保険診療に金額の差がかなりあることがわかります。

 もちろん自賠責など保険を取り扱っている会社はなるべくお金を支出したくないでしょうから保険診療をすすめたいとおもいます。逆に、医療機関側は収入を少しでも多く得たいと思うため保険診療を嫌がる傾向にあるようです。交通事故を起こした際には不測の事態ということで考えがまとまらないことは多いかとは思います。しかし、そんな時こそ冷静に判断をして、事故の当事者での話し合いや警察を交えた現場検証が大切になってきます。決して安い額で収まるような内容ではないため、保険について詳しく知っておく必要はあると思います。