嶋野加奈子
「相続と遺言」
私は、自分が死んだあとのことも考え遺言を残すことが大切であると考えた。
1.
はじめに
もしも家族が死んだら、どんな問題が起こるだろうか。悲しい気持ち?それとも取り残された気持ち?しかし、そんな感情とは裏腹にドロドロとしたドラマチックな展開が起こることもある。それが「遺産相続」の問題である。今回は私が大好きなアニメ「魔法少女リリカルなのは」の登場人物を使って、遺産相続について私なりに考えてみることにした。
主な登場人物は3人で、ヴィヴィオはなのはの養子で親子関係がある。なのはとフェイトは恋人にきわめて近い友人ということにしておく。なのはは日本人、ヴィヴィオとフェイトはミッドチルダ(アニメに出てくる都市)の人である。3人はとても仲が良い関係であり、ヴィヴィオもフェイトを「フェイトママ」と慕っているが、フェイトだけは別に住んでいたとする。
2.
相続とは
人間が、生きていたころに所有していた財産は死んだあと、どうなるだろうか。家族がいれば、その財産は受け継ぐことができる。民法第882条によれば「相続は、死亡によって開始する。」とあり、死ぬことによって、持っていた財産は家族などに受け継がれ、これを相続という。死んでしまった人を「被相続人」、死んでしまった人の財産を相続する人を「相続人」と法律上ではいう。相続は必ずしも受け取る必要はなく、放棄をすることも可能(民法第915条)である。そもそも、相続自体、「遺族(残された家族)の生活保障のための制度」であるからだ。
相続人が一人であった場合は何も問題は起こらないように思うが、複数人いた場合、誰にどれくらいの遺産がいくか揉めてしまうことがある。遺言などで被相続人が、相続の割合について指定していた場合は遺言に沿って相続が行われるが、遺言がない場合は民法第900条の「法定相続分」によって相続が行われる。しかし、この条文は「親族間」の場合であり、遺言を残さない限り、愛人などに相続財産がいくことはない(特別縁故者:民法第958条の三になればもらえる)。
<法定相続分及び代襲相続の可否>代襲相続…被相続人の子が相続開始以前に死亡などによって相続権を失ったとき、その者の子が代襲して相続人となること(民法第887条)。
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|
妻 |
遺留分 |
代襲 |
子 |
1/2 |
1/2 |
1/2 |
◎ |
父母 |
1/3 |
2/3 |
1/3 |
× |
兄弟 |
1/4 |
3/4 |
0 |
○
一代のみ(民889条第3項) |
3.
遺言とは
相続関係で起こる争いでよくあるのが「遺言」の問題である。遺言とは法律上では「いごん」というが、「ゆいごん」と耳にするほうが多い。遺言によって与えられる財産を「遺贈」といい、遺言者の意思のみで成立する単独行為である。国語辞書の意味によれば「自分の死後の財産の処置などについて死ぬ前に言い残すこと」である(三省堂 現代新国語辞典第四版より)。つまり、「自分が死んだあとの財産は○○さん(家族以外の人)に○○%渡してほしい」などが遺言である。遺言は民法に定める方式に従わなければ効力は生じず(民法第960条)、15歳になれば遺言をすることができる(同法第961条)。また、遺言はいつでも撤回することができ(民法第1022条)、前の遺言と後の遺言で相違点が出たときは後の遺言で前の遺言が撤回されたとみなされる(同法第1023条)。遺言者が死んだあとには遺言が執行される必要があり、遺言を執行する者を遺言執行者という。遺言者は遺言執行者を指定することができる(民法第1006条)。遺言執行者がある場合において、民法第1013条で「相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」としており、遺言執行者は、相続人の代理人とみなされる(同法第1015条)。たとえば、遺言執行者(Aさん)がある場合の遺言で、遺言者は「Aさんに全額の財産を相続する」旨の遺言を残したとする。遺言者とAさんの間の子(Bさん)は法律上、相続人であるが、Aさんという遺言執行者がある以上、遺産をもらうことはできない。仮に、Bさんに借金があり、その債権者(C)がBさんの相続分となる財産を差し押さえ、対抗要件にあたるもの(不動産の場合であれば登記)をもっていたとしても、勝つことができないと判例では出されている。
4.
遺言に勝てない?
遺言執行者があった場合、登記をもつ債権者は勝つことができない。登記とはいったい何なのだろうか。不動産などの財産は不動産登記法に基づいて、登記を行わない限り「これは私の家です!!」ということはできず、これを対第三者対抗要件という(民法第177条)。簡単にいうと、所有権がどこにあるか?という証明のようなものである。登記がなされないと第三者に「私のもの」という主張をすることはできない。たとえば、マンションXがA→B→Cの順で譲渡されたとする。ここでマンションXの登記はAにあったとする。B(登記権利者)はA(登記義務者)に対して「登記をさせてほしい」と請求することができ、これを登記請求権という。しかし、第三者CがマンションXを購入した場合、Cは登記権利者になるが、登記はAのところにあるため、登記のないBはCの登記請求権を基礎づける物件がないため、Bは登記義務者とはなれない。
民法第177条によれば、「登記があれば第三者に対抗することができる」としている。しかし、実際に対抗しても勝てない代表例が「3.遺言とは」で語った遺言執行者のある場合の遺言である。
5.
遺言と相続
「愛人に全額相続してほしい」という遺言で揉めるドラマが昼ドラなどでは定番であるように思うが、果たして「愛人に全財産を相続させること」は可能なのだろうか…。下記のような関係で、なのはが「自分の死後はフェイトちゃんに全額財産を相続してほしい」と遺言を残していたとする。ヴィヴィオは本当に何も相続できないのだろうか?
もちろん、そんなことはない。仮に恋人のような友人であるフェイトに相続がすべていってしまったら、遺族であるヴィヴィオは生活を営むことができなくなってしまう。しかし、遺言者であるなのはは「フェイトに相続分をあげたい」と思っている。そのくらい大切な人だとしよう。そこで出てくるのが遺留分である。たとえば、なのはが残した財産が6000万円だとしよう。遺言のとおりになればその6000万円はフェイトにいくことになる。しかし、そうなると困ってしまうのが、なのはの子であるヴィヴィオだ。ヴィヴィオとなのはには親子関係もあるし、法律上、相続人となることができる。それなのに…もらえずに生活ができなくなってしまったら困る…!でも、なのははフェイトにもあげたい…!両方にしあわせを分ける方法として遺留分を使おう!遺留分を使うとなると民法では第1028条が該当する。第1028条によると、兄弟姉妹以外の相続人は遺留分として財産がもらえると規定がされている。
一. 直系尊属のみが相続人である場合は被相続人財産の3分の1
二. 前号に掲げる場合以外の場合は被相続人財産の2分の1
つまり、この場合、フェイトは2分の1である3000万円がもらえ、ヴィヴィオは残り3000万円を相続することになる。「愛人(恋人?)に全額相続」は叶わないが、きちんと愛人にも相続財産がいくことになっている。遺言者の意思もきちんと反映されることになる。
しかし、世の中には次のような例も存在する。夫のAさんと本妻のBさん、そしてAさんの愛人のCさんの3人がいたとする。AさんとCさんは同居をしているが、AさんとBさんが法律上では夫婦である。Aさんが「死後の財産はCさんにあげたい(法定相続分は本妻にあげる)。」と遺言を残したとする。この場合、どうなるだろうか?愛人への遺言は「公序良俗違反(民法第90条)」にあたり、無効となってしまうのではないだろうか。この事件に対し最高裁は「Aさんの財産で生活を営んでいたのは本妻というよりむしろ、愛人Cのほうである。」とし、Aさん死後の生活保障を行わなければならないのはCさんの方である。」とし、愛人への遺言は公序良俗違反とはしなかった(昭和61年(オ)第946号:遺言無効確認等請求事件)。ちなみに、遺言で「愛人に遺族年金をあげたい」といった場合も、本妻と長年別居、愛人と長年同居し、愛人が遺言者の財産で生活を営んでいたことが認められれば、愛人は遺族年金をもらうことができる。相続などの民法は形質重視であり、戸籍上の記載者に渡されるという特徴があるが、年金などの社会保障法は実質重視であるため、愛人のような現在の同一生計者に年金はいくと考えられる。民法と社会保障法は似ている部分もあるが、何を重視して行われるか?という哲学が違う法律であるといえる。
では、次の場合はどうだろうか。なのはとフェイトは恋人関係であり、ヴィヴィオを含み、3年間同居をしている。
@
なのはは「預金(5000万円)はフェイトに与える」旨の遺言を残した。
A
フェイトは株がうまいので、5000万円あった預金は5億円になった。
B
しかし、フェイトは浪費家でもあったため、5億円あったお金は1億円になってしまった。
<5億円の内訳>
女性ホステスのバー |
大学学費 |
食費 |
預金…5000万円 |
<関係図>
なのはの子であるヴィヴィオはフェイトに対し、返還請求をすることができるだろうか?上記の表においてピンクで色がついている部分を現存利益といい、形が残っているものは返還しなければならないとなっている(民法第121条)。つまり、この事例の場合、大学の学費や食費は自分の「身」についているといえるため、現存利益に含まれる。生活費も現存利益に含まれるとされている(大判昭和7年10月26日民集11-1920[92])。しかし、ホストクラブなどで浪費したぶんについては現存利益に含まれず、返還する義務がないとしている。
6.
利益なおはなし
現存利益以外にも日本には利益に関する概念がある。人間が社会で生きていくために「契約」をすることなしで生きていくことはできない。私たちも日常的に「契約」を行って生きている。一番身近なのは「売買契約」である。もしも、ずっと欲しくて狙っていたものが手に入るかもしれない!実物を見て吟味もして「買おう!」とした。そのために、お金も多く使い、買ったあとのこともたくさん考えていた。しかし、このとき、売り主の人から「やっぱり売れません」といわれたらどうだろうか。ここで出てくるのが信頼利益と履行利益である。ひとつ、ある契約の様子を見てみたいと思う。
@
売主であるなのはは、100万円のシルクの布を、買主であるフェイトに売ろうとしていた。
A
フェイトは100万円で布を買うために現物を見るべく、交通費として50万円を使った。
B
そして、布を買おうとしたフェイトは買ったあとに第三者に転売をしようと思っていた。
C
しかし、事情により、なのははフェイトに布を売ることができなくなってしまった。
上記の流れのなかで、Aにあたる部分を信頼利益といい、Bにあたる部分を履行利益という。もう少し詳しく説明すると、信頼利益とは布を手に入れるために使ったお金(現物を見るために使った交通費など)のことであり、履行利益とは買った布を第三者に売ったときに手に入るはずのお金(主に転売益などをさす)のことをいう。このように、日本では実際につかった分の利益(=信頼利益)とまだ使っていないが未来に手に入るはずだった利益(=履行利益)のふたつの考えが存在しする。不履行によって損害が生じた場合は賠償の対象となる。
7.
私見〜争族と相続〜
これまで、こうして相続と遺言についてみてきた。遺言があることによって、相続問題が平和に済めばいい。しかし、遺言を残したことにより、また家族内で争いが起こることがあるのもまた事実である。しかし、遺言を残すといっても法律を知らない人間には難しい行為である。口頭だけでいいの?それとも、何か残さないといけないの?そんなときに助けてくれるのが信託である。最近、TVCMなどで「○○銀行が相続の信託を始めました。」というのをよく見る。信託とは、委託者(遺言などの保管を依頼する人)が、受託者(遺言などの保管を行う人)に財産の管理や処分などを依頼し、受託者は委託者が依頼した信託目的(遺言の執行など)を受益者(相続人など)に対して行うことをいう。「○○信託銀行」などという看板をまちで目にするが、これは銀行が受託者となり、遺言の執行などを行ってくれるということだ。遺言などについて詳しくわからない人間には助かるシステムかもしれない。
遺言信託を行った際に一番のメリットは銀行などの法人が遺言執行者となるため、家族内で遺言執行者が出てくるよりも相続人間で揉め事が起こりにくいといえる。また、遺言を受託者が保管をしてくれるため、捨てられるといったことがなく、遺言が確実に執行されるといえる点だ。しかし、民法第1013条によれば、遺言執行者がいる場合、「相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」とあり、判例のように債権者が貸した分のお金を取り戻すことができなってしまう。信託により、受託者が遺言執行者になった場合、貸した分のお金を取り戻すことができず、債権者が不利な立場になる可能性が高くなるように思う。私としては、遺言が確実に執行されるという面においても信託は良い方法であると思うが、お金を貸し、遺言者やその他の相続人の生活を支えた債権者が貸したお金を返してもらえない事態が起こるのは正義に反し、さみしいように思う。
私が今回、考えた結論は最初に述べたように「自分が死んだあとのことも考え遺言を残すことが大切である」ということだった。こう考えた理由の根源は「家族の形の在り方」に通ずるものからきている。個人の意思が尊重され、私たちはこの世の中で生きている。売買契約もそうだ。「買います!」「売ります!」で成り立っている。日常生活が「意思」というもので成り立っているのであれば、生命が続き、生きている間だけでなく、最期の最後にお願いをきいてほしいように思う。たしかに、死んでしまって生命が尽きれば言葉もきけない、声も聞こえない。それこそ「意思疎通」ができなくなってしまう。動けなくなった私の意思をどうやってかなえてもらうか?これこそが、最期の最後のお願いのかなえかたなのではないだろうか。
「意思」を最期の最後まで尊重することは必要だと述べた。法的にも実施される方法が「遺言」である。ある意味、死んだ後に残る「意思の痕跡」なのかもしれない。
時代は変容し、家族の在り方も変わっているように思う。「血のつながり」を大切にしてきた民法でさえ、第900条4号で非嫡出子も全血の子と相続分が同じになる時代だ。この条文を読むと「血のつながりだけが家族でない」ということを教えてくれる。このように、家族の在り方が変わる時代、私はある家族の在り方について、はたまた恋人の在り方について考えている。今回、なぜ「リリカルなのは」シリーズの登場人物をレポートに出したか?それは、家族と、恋人の在り方を教えてくれたアニメであると私が思ったからである。養子であって、ふたりのママで生活をしていくことは本当にダメなことなのだろうか。異性愛主義が浸透した世の中であるからこそ、もちろん少数派ではあるが、社会が認めてもいい家族の在り方であるように思う。きっと、男女の夫婦の子どもとは違ったことを教えてもらえるだろう。
恋人の在り方も、同じように思う。同性の恋人を受け入れることが今の社会にはまだまだ必要であるように思う。私は以前、こんな話を聞いたことがある。「恋人の最期を看取れなかった―…。」なんて、悲しいことなのだろう。このカップルは同性カップルであった。「同性」ということだけでなぜ、偏見をもたれ、受け入れてもらえないのだろうか。飼っている動物でさえ、最期を看取ることはできるし、それこそ友人である人が看取る場合もあるかもしれない。そして、この話にはもうひとつ、悲しいことがあった。遺品や財産はもらうことができなかった、という結末だ。亡くなった恋人は、残った相手にきっと、自分の生きた証(=遺品)を受け取ってほしかっただろう。きっと、私なら受け取ってほしいと思うだろう。私が死んだ恋人の相手だったら受け取りたいと思う。
遺言は財産を自分の思うとおりに分けてもらう契約書ではなく、自分の生きた証を、大切な誰かに受け取ってもらう契約書なのかもしれない―…。
8.
まとめ
したがって、私は自分が死んだあとのことも考え遺言を残すことが大切であると考える。自分の死後の、自分だけの「エゴ」ではなく、残された相手のためにも―…。
【参考文献など】
・『ポケット六法 平成29年度版』 編集代表山口厚、山下友信 有斐閣 2016年 民法の項目
・『民法T 第4版 総則・物権総論』 内田貴著 東京大学出版会 2016年 122、123、442、443頁
・『民法W 補訂版 親族・相続』 内田貴著 東京大学出版会 2014年
・『民法概論B 債権総論 第2版』 川井健著 有斐閣 2005年 98、99頁
・『民法判例百選T 総則・物権 第7版』 潮見佳男、道垣内弘人編 有斐閣 2015年 26頁
・『民法判例百選V 親族・相続』 水野紀子、大村敦志編 有斐閣 2015年 150、178頁
・信託協会ホームページ 「信託のしくみ」http://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trust01_01.html
・魔法少女リリカルなのはシリーズ…イラストはすべて自作です!
渡辺和暉
1結論
遺言を作成すること、また相続する際に遺言に沿って行うことを義務化すべきである。
2はじめに
上記のような結論に至った理由は3つある。
1、現在の日本では相続の際の相続争いをするにあたっての人的コストがあまりにも高く、また多くの相続によるトラブルを減らすため。
2、法で定められた法定相続分では、本人の意に沿わない相続分になりかねないため、遺言者によるはっきりとした意思で相続分を決定するため。
3、遺言を残す際に、家族や関わりのある人間関係を見つめ直すことで、自分が生きているうちにすべきこと、死んでしまってからのことを考えるいい機会になるため。
3相続争いの現状と原因
現在の日本において、相続の際に起きる相続争いは調停事件が約1万件、審判事件は約2千件あり、死亡者数の約1%にのぼる人々が相続に関して争っている。また顕在化していないものも含めればこの何倍もの数字になる。ここでは相続争いが起きるのか、その原因をいくつか挙げて見ていく。
まず一つめは、相続争いの原因のほとんどを占める「お金」の問題が挙げられる。時としてお金は人の性格を変えてしまうほど恐ろしいものであり、見えない魔力がある。そんなお金が相続財産の場合、被相続人で分けるとなるとそれぞれの欲によって争いが起こることがある。しかしお金であることによってうまく分けられるというメリットもある。一方で、相続財産の争いが起こるのは、「不動産」が相続財産に含まれている場合が実務上一番多いと言われている。お金と違い分けることが難しい場合が多い不動産は、その物件の所有権や登記、登記請求権の問題も関わってくる。登記請求権とは、取引の相手方などに対して、登記をしてくれと請求する権利のこと。また、民法第百七十七条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」などといった点で争いの原因になることも多い。
二つめは、両親が離婚、再婚養子縁組、愛人や愛人の子供がいるなど、家庭環境が複雑な場合には、相続人の意見がまとまらない可能性が高いため争いになることがある。この場合、ほとんど面識がない人々が遺産分割協議をする必要がある場合には争いになることが多い。特に愛人に関しては、正式な遺言がない場合、相続人には含まれないため複雑な場合が多く、遺言がある場合においても愛人への相続分や家族などの相続人への遺留分に関しての争いが起きることが多い。
三つめは、相続人同士のコミュニケーション不足で、争いが発生するケースである。例えば、相続人が二人(長男、次男)だった場合、どのように財産を分け合うかを決める遺産分割協議を行う際に、どちらか一方が主導権を握ることが多いのですが、実務上長男が主導権を握ることが多いため、次男が長男に不満を持つことが多く、争いに発展する場合がある。また子の間の問題だけでなく、本妻と子、本妻と兄弟において不仲であったり、譲り合えない状況の場合に多い。また相続人以外(相続人の配偶者など)が口を挟んでくれことによって争いになることもある。
このように相続争いが起こる原因は様々で、上記の三つのいずれにも当てはまらない場合も多い。むしろ上記の三つの原因はよくあるケースであり、さらに複雑で難解なものが多くあるため、相続争いの件数はなかなか減少せず、またその争いを解決するために、調停や裁判が行われ多大なコストが払われている。
4相続争いを防ぐためには
先に述べたような相続争いは、様々な原因が絡んで起こっている。ここでは、相続争いが起こる原因をもとに、その争いを未然に防ぐにはどうしたらいいか、できるだけコストをかけずに円滑な相続分割を行うことについて述べる。
一つめは、相続手続きを弁護士に代理人として依頼するという方法がある。まず、特定の誰かの代理人になれるのは弁護士の先生のみであり、弁護士以外のものが、遺産分割の交渉や調停などにおいて代理人となる事は出来ない。しかし弁護士の先生は、相続人全員から遺産分割がうまくいかないので相談に乗ってほしいと依頼してもそれは不可能であり、双方代理の禁止といい利害関係のある両者の代理人になる事は法律で禁じられているため、個人の依頼にのみ可能な方法である。しかしながら法律の専門家であるため、交渉や調停において頼りになる事は間違いない。弁護士に依頼するのはコスト面では適切ではないのではないかと考えがちだが、報酬の自由化により弁護士報酬は依頼する弁護士によって違ってくるため、つまりかかるコストは弁護士次第である。
二つめは、遺言書を書くという方法である。法律上の手続きで行う遺言とは、被相続人が自分の財産を相続人等の誰にどのように遺産を残すかの意思を定めることを言い、遺言は法的文書で、遺書は法律上の効果とは関係なく自由に想いを綴るものである。この遺言書があれば争いは起こらなかったというケースは多く、それだけ相続人たちの相続分割において、本人の意思を尊重して分けるという事は倫理的にも、効率的にも適切であると考えられる。先も述べたように、遺言が相続争いの防止に効果を発揮するのは、法的に正式な形式で作成された遺言のみであり、相続人はその内容に従うしかない。遺言さえあれば相続人は遺産分割協議による話し合いを経ることなく、相続の手続きを進めることが可能である。しかし遺言の内容によっては、「相続人の1人に全ての財産を遺贈する」「本妻や子には相続させず、内縁の妻(愛人)に全財産を遺贈する」などといった内容など、遺留分の侵害があると思われる場合などは、相続人がその内容に不服があり、侵害された分の遺留分の補償を遺留分を侵害して財産を取得した相続人に対して遺留分減殺請求を行うケースも存在する。そもそも遺留分を侵害しない遺言内容にすべきではあるが、法定相続割合の1/2は相続人が最低限受け取れるという権利があるため、全てが遺言の通りになるとは限らない。また遺言にしたがって相続手続きを進めて行く場合は、遺言執行者を選任しなければならない。遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実現させるために必要な手続きなどを行う人の事である。遺言執行者は各相続人の代表として、被相続人の死後の遺産分割における財産目録の作成や、預貯金の管理、不動産の相続登記の手続きなど、遺言の執行に必要なすべての行為を行う権限を有し、特に子供の認知や相続廃除を行う場合は、遺言執行者が必ず必要になる。また遺言執行者は相続人の中からではなく、被相続人が遺書の内容の中に遺言執行者として信託銀行を選任している場合に限って信託銀行に代理人としてなってもらうことも可能である。この場合、信託銀行の担当者が法律のプロかというとそうでは無く、一般の会社員のため信頼度の高い組織であることは間違いないが、法律のプロ(弁護士)に依頼する場合の3〜4倍の費用になることが多いためコスト面でのメリットは少ない。
4遺言により愛人へ遺贈する場合に生じる問題
相続争いを防ぐとは別の意味でも遺書を残すことにはメリットがある。それは法定相続人に含まれない人々にも遺産を相続させることができるという点である。既に述べたことの中にもあるように、正式な手続きによって書かれた遺言によって被相続人の孫、子の配偶者や内縁の妻といった法定相続人には含まれない人々にも被相続人の意思を実現させることも可能である。
例えば、本妻がいるにも関わらず、愛人に財産を全て与えるという旨の遺言を条件に愛人と同居し、一緒に暮らしていた場合、被相続人の死後相続の問題にはなるが、その際全て愛人のものになるかというとそうではない。先にも述べたように、民法には相続人に対して遺留分というものがあることは決まっているため、遺言の内容をそのまま相続させるわけにはいかなくなる。しかし愛人にしてみれば、遺産を全てもらうことを条件に同居し交際していたため、もらうはずだった財産が発生する。そのために愛人がコストを払っていて、その後利益を得ていた場合、それを履行利益といい、それまでに愛人が払ったコストを信頼利益という。この二つを補填するために遺産から支払うのかどうかはそのケースによって変わる。また、遺言にあったとおりに、遺産を愛人に相続させ、相続人たちには遺留分のみとなった場合に、仮に相続人がなにか不利益を被ってしまった場合、愛人は相続人に対してその不利益分を返還する義務を課せられる。その際に愛人が得た財産の中から現在存在する利益を現存利益といい、この現存利益のみ返還すれば良いとされている。民法第703条ではこれを現存利益の返還義務としている。
このように、遺言により愛人に財産が相続される場合においては様々な問題が生じる可能性があるが、被相続人がそれでも愛人に相続させたいと遺言書を作成することで、可能な範囲内での遺贈はできるということになる。
5遺言書を書くということ
遺言書は単に、誰にいくら相続させ、誰に何を遺贈する。という意思を表したものではなく、遺言を書く人にとって自分の人生を振り返ること、自分がこれから亡くなってしまった時に、家族や関わりのある人々にとって、どう残したいか、どう使って欲しいのかを改めて考えるいい機会であり、また自分が生きてきた生き様を振り返るいい機会である。遺言書を書くということは単に、相続争いをさせないための文章ではなく、自分の死後に妻や子や愛人、孫などに伝えたいメッセージを伝えるための手段であり、遺言書を書いた本人の死後、そのメッセージを受け取った人々の心の支えになりうるものであると考える。
6遺言書作成の義務化
これまで述べた相続争いの原因や遺言を書いた場合のメリット、生じる問題について全て踏まえた上で、私は生きているうちに遺言書を作成することを義務化すべきだと思う。遺言書作成にあたっては、もちろんしっかりとした手続きを踏まえ、法的にも後々問題にならないような遺言書を一人一人が作成すべきである。また遺言を残すことで生きていることのありがたみを知り、自分が亡くなってからの家族や周りの人々のことを考えることで、家族にかかる負担を抑え、自分が亡くなることで争いが起きるなどということは絶対に避けるべきであるし、避けるためにできることをすべきであると考える。
参考文献
『ポケット六法 平成28年度版』編集代表 山下友信、山口厚 有斐閣 2015年
相続情報ラボ ホームページ
http://so-labo.com/inheritance-dispute-1300
相続遺言相談センター ホームページ
https://ocean-souzoku.com/souzokutetsuduki/dairinin/
民法判例百V 親族・相続 水野紀子・大村敦志編 2015年
長尾大輝
【課題レポートタイトル:相続と遺言】
意見:2017年1月4日水曜日4限の授業内で取り扱った例題における現存利益に関し、現存利益とは、利益を得たからこそ生まれる支出を指すべきであると考える。
1,各概念について
根拠となりうる、各概念について把握する必要がある。
まず、大前提になる相続とは、被相続人が残した財産や様々な権利、義務を残された相続人が包括的に承継することを指し、被相続人が生前所有していた財産をその配偶者や子供、あるいは孫が受け継ぐことをいう。また、遺産を相続する人被相続人、遺産を受け取る人を相続人と呼ぶ。
相続には、様々な財産や権利が相続される。被相続人が生前所持していた増産や不動産、また債権債務も相続される物に含まれる。そして、相続された権利義務を第三者から守るためにも、対抗要件が民放上認められているものもある。特に不動産は問題となりやすいが、速やかに登記権利者は登記義務者に登記請求権を行使し、登記することで回避することができる。
次に、相続人に対する法定相続分について示す。法定相続分とは、被相続人が遺言により相続分を指定しない場合、また、第三者に相続分を定めることを委託しない場合に、民法の規定によって定められる相続分のこと。そして、法定相続には、それぞれ順位が付けられており、
・ 第1順位 子供と配偶者でそれぞれ1/2
・ 第2順位 直系尊族1/3と配偶者2/3
・ 第3順位 兄弟1/4と配偶者3/4
とされている。
以上のように被相続人が遺言で相続分を指定しなかった場合ではなく、指定した場合を遺贈という。遺贈とは、遺言により人に遺言者の財産を無償で贈与することであり、単独行為、契約により生じる死因贈与とは異なる。また、遺贈には種類があり、包括遺贈・特定遺贈・負担付遺贈の3つに部類分けされる。
遺産の全部または一部を割合を持って示し対象とする遺贈、つまり、「全財産を妻に遺贈する」という場合が包括遺贈にあたる。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つ。そのため、遺言者に借金などがある場合には、その消極財産も割合に応じて遺贈することになる。
特定遺贈は、具体的な特定財産を対象とした遺贈であり、借金などの消極財産は遺言による指定がない限り引き継ぐことはなくなる。
遺贈の種類3つ目は、負担付遺贈である。遺贈者が受遺者に対価とは言えないほどの義務を負担するよう求める場合を負担付遺贈という。受遺者は遺贈の目的価値を超えない限度において、負担した義務を履行しなければならないとされる。「妻を継続的に介護することを条件に財産を与える」というケースが、負担付遺贈に該当する具体例である。
そして、相続される割合を示した規定がもう一つ、遺留分制度である。遺留分とは被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に対して留保される相続財産の割合を示した制度である。例えば、死亡した夫Aには、本妻Bと愛人C。また、ABの子であるD。ACの子であるEがいて、AはCに全財産6000万円を与えるという遺言を残している。しかし、Bの家庭にも生活があることから、Bの生活保障が考慮された遺留分制度が適応され、Cに1/2である3000万円。残りの3000万円をBDEで分割。法定相続分より、Bに1500万円。残りの1500万円をDEで割り、それぞれ750万円ずつとなる。
このように、相続は数多くの規定が存在している。そんな複雑に入り組んだ相続は、厳正な手続きに基づきが行われるのであるが、その中で、相続執行者という者が必要になるケースがある。それは、特に子供の認知や相続廃除を行う場合は、遺言執行者が必ず必要になります。遺言執行者は、各相続人の代表として被相続人の死後の遺産分割における財産目録の作成や預貯金の管理、不動産の相続登記手続きなど、遺言の執行に必要なすべての行為を行う権限を有することになっている。遺言執行者は、成人した人なら基本的にどの人にも権利があり、また、銀行や弁護士、司法書士を選任し代理で行うこともできるとされている。
最後に、履行利益と信頼利益について触れておく。まず、第一に、履行利益とは、契約が完全に履行されたならば債権者が受けるであろう利益を指す。また、信頼利益とは、本来無効である契約を有効の物を信じたことによって受けた損害をいう。例えば、元本に対し、発生する利息、つまり、民法では5%、商法では6&の法定利率は、履行利益にも信頼利益にも該当する。利息を付した契約をすれば、契約成立によって初めて利益が発生し、無効な契約だった場合には元本はもちろん、利息も払う必要は無くなる。次に、契約日や交通費、登録免許税も両者ともに該当する。最後に、運用利益や転売利益などは履行利益になる。運用は所有する財産の資金を運用して利益を生み出すのであり、契約の締結をしてから初めて、利益を得る可能性が生まれるのである。
2,意見
私は、2017年1月4日水曜日5限の相続法第15回目の講義内で取り上げた判例における現存利益のあり方に疑問を持つ。
まず、授業内で取り上げられた具体例に関して整理する。
(例) 本妻Aと夫Bがいて、Bには愛人のCがいる。Bの死後、「Cに全財産1億円を与える」との遺言に伴い、Cに1億円の相続がなされた。そこで、Cは履行利益を得るために、相続された1億円を運用し、9億円の運用利益を上げ、相続された1億円を10億円にまで拡張させた。そこで、Cはホストクラブで豪遊し5億円を支払い、残りは5億円となってしまた。そして、Aは、相続を受ける権利があると主張し、Cに対して返還請求をした。
というのが2017年1月4日4限の相続法第15回の講義内で取り上げられた例である。この問題を整理する。
本件では、「Cに全財産10億円を相続する」という遺言ではあるが、上記で述べたように、遺留分制度の対象になる。本妻Aにも相続を受ける権利が与えられているのである。それは、正式な届けを出し形式的にBと結婚となる者は、Aであり、Cとの交際、または、愛人契約は法律的に公序良俗違反に該当する。また、Aの生活保障も保証されなければならないため、Aにも遺留分の制度が認められ、相続されなければならないのである。上記の具体例を挙げ述べたように、「全財産を愛人に…」などと遺言に記載がある場合、本妻の家族と愛人で糖分の額を相続することとなる。つまり、1億円の半額、5000千万円を本妻の家族と愛人が手にすることになり、この例題においては本妻の家族にはA以外の人物が配置されていないため、AとCで5千万円ずつの分配となる。しかし、ここですでにCに相続されており、Cは1億円を運用し、履行利益9億円を生み、財産を10億円まで増大させた。しかし、ホストクラブで豪遊し、費用として5億円支払い、残りの財産は、5億円となった。さて、Aは返還請求ができるのか否か、また、いくら請求できるのか。ということである。
つまり、ここで問題とされるのは、返還請求が認められた場合、ホストクラブの費用は、返還請求の額に含まれるかどうか、ということである。
上記と重複するが、遺留分制度により、Aは、相続を受ける権利があり、相続財産のうちの半額を受けることができる。本件では、相続された1億円をCによって運用され、9億円の履行利益を上げたため、本件分割の対象になるものは、この次点における残っている財産である 10億円から算定される。
この時点で、私は、本件は不当利得に該当すると考える。
不当利得制度とは、不当利得は、民法の第4章、第703錠以下に記載がある。
民法第703条「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(「受益者」)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」
としている。また、悪意者の返還義務に関しては、
民法第 704条「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。」という規定をおいている。ここで、703錠に記載があった「その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」、つまり、現存利益について疑問を持つ。「その利益の損する限度」としており、現に存在する限度の利のことで、受けた財産または利益がそのままの形で残っていればその財産または利益、形を変えて残っていればその形を変えた財産または利益を指すとされている。しかし、私は、現存利益とは、不当利益によってからこそ可能になった支出を除いた利益だと解釈する。そこで、主に2017年1月4日第15回目の授業において取り上げられた選択肢を使用して検討する。
@ 預金
A 食費
B 大学授業料
C 大原等予備校学費
D ホストクラブ費
履行利益を得た総額10億円をこの5つの選択肢を置き、返還請求されたとする。
まず、@預金は銀行や郵便局といった金融機関にお金を預ける信託行為。よって、運用ではないため、いつでも引き出し可能であり、すぐに返還することができるものである。つまり、そのままの形で残っている利益になるため、現存利益になると考える。
次にAの食費は、形の有無にかかわらず、通常であれば、常にかかる費用ではあり、利益を得たからといい、食費に当てることはできるが、食費が生まれることはない。ちなみに、食費に当て外食に行くことなどはホストクラブ費用と同等であると考える。
Bの大学授業料もA同様、利益を得たからといって、授業料に当てることはできるが、相続をきっかけに授業料が発生するわけではない。在学中、常に払わなければならないものである。なので、現存利益に含まれる。ただし、利益を得たことにより通学が可能になったためである場合は、現存利益には含まれないと考える。
C大原等予備校学費は、大学とは別に通学するものあるが、相続を原因に発生する費用ではない。また、相続をきっかけに通学を開始した場合には、現存利益には含まれないとするべきである。
最後のDホストクラブ費用は、判例でも示される通り、現存利益には含まれない。もうすでに、形として残っていない。
ここまで@〜Dまで述べてきたが、なぜ、私は、形の有無ではなく、不当利得により生まれた費用を除いた利益とするかいしゃくをするべきと思うのか。
それは、それにより発生した支出は高価なものが多いはずである。この例でいえば、不当利得をきっかけに発生した支出は、通学を開始した大原等予備校や大学の授業料とホストクラブ費。どれも高額である。それぞれの資産に応じて、贅沢な支出をするということは、支出後に変換を請求されたとしても、学費や豪遊費は返済が困難を極めてしまう。そして、不当利得であり、善意の場合、本人には責任がない。
判例では、ホストクラブ費を除く@〜Cを現存利益としているが、私は、形の有無ではなく、不当利得をきっかけに発生した支出以外の利益とすべきだと考える。
以上
(参考文献)
https://ja.wikipedia.org/wiki/遺留分
https://ja.wikipedia.org/wiki/遺贈#.E5.8C.85.E6.8B.AC.E9.81.BA.E8.B4.88
https://souzoku-pro.info/columns/37/
https://ja.wikipedia.org/wiki/登記請求権
潮見 佳男『ライブラリ法学基本講義 債権各論II 契約法・事務管理・不 当利得〔第 2 版〕』(新世社、2009 年) 283 頁以下
http://nextmirai-os.blog.so-net.ne.jp/2015-04-14-1
字数/4488字
柏木勇人
柏木勇人
『相続と遺言』
遺言と相続についてこれに関する法のいくつかは見直しが必要であるものもあると考える。
1. 初めに
まず始めはテーマである遺言と相続について述べる。相続とは、被相続人が残した財産や様々な権利、義務を残された相続人が包括的に承継することを指し、亡くなった人(被相続人)の生前所有していた財産(遺産)をその配偶者(妻・夫)や子供、あるいは孫が受け継ぐことをいいます。遺産を相続する人を「被相続人」、遺産を受け取る人を「相続人」と呼びます。相続における注意すべき点は、遺産相続に関わる相続人が複数いる場合、全ての遺産は相続人全員の共有物となり、遺産分割が終わるまで、1人が勝手に遺産を処分することはできません。その際、遺産相続において、「相続人は誰で」、「遺産をどう相続するか」を相続人全員で、話し合って決めなければなりません。
遺言は法的にいうと、被相続人の最終の意思表示のことをいうと定義されます。
最終の意思表示といっても、いわゆる「遺書」のように,死の間際にした意思表示という意味ではなく、その遺言をした人(遺言者)が,その人の死に最も時間的に近接した時点でした意思表示という意味です。間際である必要はありません。
被相続人の最終の意思表示とは,要するに,自分の死後に生じることになる財産の処分等の法律行為に対しても,自分の意思表示の効力を及ぼすことができるということです。この遺言は、被相続人となる方(遺言者)が、相続にご自身の意思を反映させるためにとることができる唯一といってよい方法です。自分で築いてきた財産の帰趨を,ある程度,ご自身の遺志に沿った形で相続人に配分することができるというわけです。
また、遺言者の意思を遺せるというだけでなく、遺言をしておくことによって,相続人間での、不毛な骨肉の争い(いわゆる遺産争い)を予防しまたは最小限化させることができるという意味をもっています。その意味で,遺言は,被相続人にとって,ご自身の意思に基づいて遺産の相続をしてもらえるというメリットだけでなく、後に残される相続人にとっても,無用な争いを最小限化できるというメリットもあるのです。
遺言は遺言執行者がいる場合は遺言執行者に従う。遺言執行者とは遺言の内容を実現する者のことで、一般的に銀行や法律の専門家である弁護士、司法書士等や、一般の相続人も遺言執行者になれる為、遺言執行者には、特別な資格等は必要ありません。
遺言書を作成する際に、弁護士や司法書士へ遺言書作成を依頼して、あわせて遺言執行者に指定されることがよくあります。
遺言執行者は遺言書に書かれている内容に沿って具体的に実現していく人です。相続人の代理人として相続財産の管理、不動産の名義変更など各種手続きを行います。遺言執行者の選任方法は2種類。遺言書で遺言執行者を指定する場合と、家庭裁判所より選任されるケースがあります。
そして、遺言で遺言執行者を定める場合は、報酬額も遺言で指定することができます。また、家庭裁判所で遺言執行人を選任する際は、家庭裁判所が報酬を決める場合もあります。遺言書の内容を実行することを「遺言の執行」といいます。遺言執行者は、法的な権限を持つことになります。遺言書によるこの認知の届出や、相続人の廃除及び取り消しの請求は遺言執行者でなければできません。
2,遺言の限界
「自分が亡くなったら全財産を妻に相続させ、自分の次に妻が亡くなった時には3人の子のうち確実に長男に当該財産を引き継がせたい。」というような方がいます。しかし、そのような内容の遺言書を残しても意味がない。
何故なら、遺言では、自分が亡くなった時の財産の承継先を指定することはできても、その後(二次相続以降)の指定はできないから。従って、前述の遺言の「自分が亡くなったら妻へ」という部分は法的に有効ですが、「自分の次に妻が亡くなった時は長男へ」という部分は無効です。妻が誰に相続させるかは妻の自由。これが遺言の限界です。このように、遺言では先々の財産承継についての指定ができません。
ところが、信託という制度を活用すれば可能です。このような信託を、特に「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」と呼びます。
後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは、「受益者の死亡により、順次他の者が受益権を取得する旨の定めのある信託」です。例えば、自分の財産を信託財産として『委託者兼受益者:自分,受託者:長男』とする信託契約を長男と結びます。そして、その契約の中で、自分が亡くなった後は妻が受益者となり受託者である長男から生活費や医療費の給付を受けるようにし、次に妻が亡くなった時にはこの信託を終了して残余財産を全て長男に承継させる旨を予め決めておきます。
受益権の承継者を何代か先まで指定しておくということは、実質的には財産の承継者を何代か先まで指定しておくのと同じです。また、信託の設定を長男との契約によって行うのではなく、自分の遺言の中で指定しておくことも可能です。受益者は何代先までも指定でき、まだ生まれていない孫や曾孫などを指定することも可能ですが、期間には制限あり。「信託設定から30年を経過した時以後に、初めて受益者となった者が死亡するときまで、もしくは当該受益権が消滅するときまで」が期限です。つまり、信託設定から30年が経つと受益権の承継は1度しか認められないということ。例えば、最初の受益者を自分とし、第二受益者を長男、第三受益者を長男の子(孫)、第四受益者を長男の子の子(曾孫)と指定したとします。当該信託設定から30年経過した時点で、自分は既に亡くなっていて長男が受益者として存命していた場合、長男の死後は孫が受益者となりますが、孫が死亡したときに当該信託は終了し、曾孫が受益権を取得することはありません。
信託を活用する上で気を付けておかなければならないのは、遺留分との関係です。受益権の承継・取得により他の相続人の遺留分を侵害した場合は、遺留分減殺請求の対象になる可能性があり、特に後継ぎ遺贈型受益者連続信託の場合は、受益者の死亡により次の者が受益権を取得する都度、遺留分の問題が生じるおそれがあります。これに関しても私としては賛成で、遺言としての効力がしっかりと働いているような感じがする為です。遺言とは自分がなくなった時の財産などを引き継がせる為にあるもで、色々条件はあるが、その役割がしっかりと果たせるこの法は良いものだと思う。
3,遺留分とは
遺言書で分割がなされていた場合でも、法律上法定相続人には、それぞれ法定相続分の1/2の遺留分が認められており、相続分がそれ以下になってしまうときには、「遺留分減殺請求」をすることができます。
本来、財産の処分は自己の意思に委ねられています。遺産をどのように処分することも本人の自由であるはずです。しかし、同居の親族などは、その遺産を頼りに生活している場合も多いため、法は遺留分減殺請求を認めて、本人の意思を尊重しながらもそのような親族をも保護しようとしている。
しかし、この遺留分を侵害するような内容の遺言書を書いたとしてもそれが無効になるということはない。これは、あくまで、遺留分を侵害された法定相続人が持っている権利であって必ず行使しなければならないものではないからです。
遺留分減殺請求は家庭裁判所に申し立てる必要はなく、遺留分を侵害した人に、直接遺留分減殺の意思表示をすることができます。相手方がそれに応じない場合には家庭裁判所の調停によることになる。
遺留分減殺請求は、相続の開始を知った時から1年以内に行わなければなりません(民法1042条)。なお、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
遺留分の具体例としてはB(夫)の遺産が1億円。A(妻)との間にCとDの2人の子供がいるが遺言に『資産の1億円をすべて第三者に遺贈する』とした。この場合、遺言がない場合の法定相続分は、配偶者:5000万円、子A:2500万円、子B:2500万円。遺留分は配偶者が2500万円(法定相続分の5000万円の1/2)、子Aが1250万円(法定相続分の2500万円の1/2)、子Bが1250万円(法定相続分の2500万円の1/2)となる。遺言によって第三者に遺産の全てが行くことになると、配偶者、子ともに相続できる資産は0円となり、配偶者の2500万円、子供の1250万円の遺留分を侵害していることになり、この場合には、この第三者に対して遺留分減殺請求をすることができるとされている。
この遺留分減殺請求に関して私は賛成であり、や遺言に『資産の1億円をすべて第三者に遺贈する』と書いてあったとしても、家族に一銭も与えないというのはあまりにも可哀想だと思う。
4,財産的利益
ここでは現存利益について述べていく
現存利益とは正当な理由がないのに財産的利得を受け、これによって他人に財産上の損失を与えた場合には、利得を受けた者はその利得を返還する義務を負う(これを不当利得返還義務という)。
この場合において、利得を受けた者が善意のとき(すなわち正当な理由がないことを知らなかったとき)は、利得を受けた者は、利得が現に存在する範囲内で返還すればよいとされている。これを現存利益の返還義務と呼んでいる(民法第703条)。
例として、B(夫)は『預金はCに与える』旨の遺言を残しC(10年間同居している愛人)は運用の才があるので1億円を10億円にした。Cはホストクラブでこの金を使ってしまい10億円が5億円になってしまった。これによってA(本妻)がCに返還請求をした場合AはCから10億円を請求できるか、それともできないかという問題である。この判例によると現存利益とは形として残っているものであり、会員や学費や食費、預金などは身につけているものと考えて、浪費したものは現存利益に含まれるので返還の義務はないとされた。よってホストクラブで使われたお金は変換義務があるとされた。しかしこれはおかしいと思う。ホストクラブで浪費したものを変換させるというのはいいが、会員費や学費なども変換の義務があるべきと考える。なぜならその会員や学生になることはCの勝手な意思でたるものである。仮にそこに通ったとして何かの資格などが得られれば、その知識が身につけられたものであると思うが、特にそのようなこともないならばとても身についているものとは言えないものであると私は考える。
5,登記請求権と対抗要件
「登記請求権」は登記義務者(特定利害関係人)に対する請求権であり、「対抗要件」とは、自分以外の何人に対しても主張できる具体的な証拠です。
つまり、登記請求権は何人に対しても請求・主張できませんが、対抗要件を備えたものはその主張ができるということです。
ここで、不動産についての対抗要件は「登記請求権という債権の存在」ではなく、その債権行使の結果、実際に行われた「登記」(公示された物)そのものを指します。
更に言うと、登記請求権を持っていたとしても、それだけではその登記請求権を行使できるか否かも不確定なわけで、もしかするとその請求権は瑕疵により否定されることもあり得るわけです。(例えば、契約の無効を主張されるかもしれないし契約の解除がなされる可能性もあるわけです。)
つまり「登記請求権がある」とは「いつでも対抗要件である登記を備えられる」ではなくて、「いつでも対抗要件を備えられる可能性もある。」という事になり、可能性の域をでていません。よって登記請求権と対抗要件は同一言えないということになります。
6,利益
ここでは、履行利益と信頼利益について述べていく。
履行利益とは、契約が完全に履行されたならば債権者が受ける利益をいいます。信頼利益とは、無効な契約を有効であると信じたことによって受けた損害をいいます。
履行利益の具体例としては、転売利益等が挙げられ、信頼利益の具体例としては、他人物売買における目的物検分のための費用・代金支払のために金融機関から融資を受けたことによる利息等が挙げられます。そして、通常、履行利益よりも信頼利益のほうが少額と言われています。
ただ、従来の理解からは、区別が難しいものがあり問題視されている。
7,まとめ
相続と遺言というテーマであるがこれらは高齢化社会である日本にとってはこれからたくさん起こる事例であると考える。今のままでよいという法もあるが、良くないというものもある。特に履行利益と信頼利益については2つの範囲がかぶっているところもあるので、しっかりと分けたほうが良いと思う。そのため最初に述べた通りなるべく早めにこの相続と遺言に関する法の改正は行った方が良いと私は考えこのレポートの最後とする。
〈参考引用に用いた書籍やサイト〉
授業で取り扱ったことのノート
相続の全知識|手続き・順位・相続トラブルを回避する全手順
遺言(ゆいごん・いごん)とは何か?|遺産相続・遺言作成ネット相談室
遺言による遺産分割
不動産用語を調べる【アットホーム】
遺言執行者とは?-優しい相続対策
遺言の限界を超える『後継ぎ遺贈型受益者連続信託』の活用
Yahoo!知恵袋
http://m.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/q1325208583
【民法の全体像】信頼利益と履行利益について
森本郁弥
親族法 相続と遺言
キーワード:遺言執行者、代理、信託、履行利益、信頼利益、現存利益、遺贈、登記請求権、対抗要件、遺留分
目次:1.初めに
2.相続とは
3.遺言執行者について
4.遺言信託について
5.履行利益と信頼利益
6.相続人以外への相続
7.遺留分についてとその主な判例
8.結尾
人の死後、一番悲しい事態はその家族や親戚たちが揉めることである。そして、その事態を招かないために、相続の際、遺言を用意しておくということは必要であると考える。また、それだけ重要な遺言であるにもかかわらず、本人以外の者によって不正に遺言が書かれる可能性や、遺言を書いた時の意志と死の間際の意志が食い違っている場合の可能性など問題点の多いこともまた事実である。それらを回避するためにも遺言は意思能力が認められているときに残し、更新していくという方法をとるなどして自分の旅立ちの準備をする必要があると感じた。
<初めに>
現代の日本において相続や遺言というのは切っても切れない関係にある。人間には誰しも親、家族、親せきがおり、一人で生きるものなどいないからである。本レポートでは調べてみないとわからない遺言や相続という問題についてまとめ、考えていこうと思う。
<相続とは>
まず、本レポートの大きなテーマである相続というものについて調べていくこととする。
相続とは人が死んだときその人が持っていた財産の権利義務を受け継ぐことを言う。 財産権利を受け継ぐのはその人と一定の身分関係にあった人が受け継ぐことで、受け継ぐ遺産には、土地、建物、現預金などのプラスの財産だけではなく、借金債務や損害賠償債務などのマイナスの財産も相続される。
と、これだけみるとプラスの遺産とマイナスの遺産の両方があるということでなかなかいいことだけではないというのが分かり同時にそれが引っかかるところである。
では、その相続にはいったいどのような手続きが必要なのだろうか。相続をスムーズに進めるために必要なものとして代表的なものとして遺言書が挙げられる。
遺言というのは日常用語としては形式や内容にかかわらず広く故人が自らの死後のために遺した言葉や文章をいう。日常用語としてはゆいごんと読まれることが多く、このうち民法上の法制度における遺言は、死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をいい、法律上の効力を生じせしめるためには、民法に定める方式に従わなければならないとされている。また、遺言の保管者や発見者は相続開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。検認は遺言書の存在を確定し現状を保護するために行われる手続であるが、遺言書の有効・無効という実体上の効果を左右するものではない。なお、公正証書遺言については検認を要しない。封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができない。等、これらのことは条文によって定められている。
自筆証書遺言の場合、代理人に頼んで書いてもらうことは不可能であり、自筆証書遺言は自分で書かなくてはならないとされている。
そのため、例えば盲目の方は自筆が事実上無理であると考えられるため自筆証書遺言では遺言できない。この場合、公正証書遺言でしか方法はないということになる。
自筆証書遺言でやりたいのだが、不安な場合は専門家に頼まれることが考えられる。今では、パソコンのソフトウェアで簡単に作成できるものも存在している。しかし、自筆証書遺言として法的に有効にする為には最終的に自書する必要がある。
また、この他にも遺言により遺言執行者が指定されている場合または指定の委託がある場合は、遺言執行者が就職し、直ちに任務を開始しなければならないとされている。
では、その遺言執行者とはいったいどのような人物が行い、どのようなことをしなければならないのか。次はそのことについて調べていくこととする。
<遺言執行者について>
先ほど挙がった遺言執行者とは遺言の内容を実現する為に必要な行為や手続をする人のことで、遺言執行者は相続人の代表者として、相続開始後に財産目録を作成したり、預貯金や不動産の手続など遺言の執行に必要な一切の行為をする権限がある。特に子供の認知や相続人の廃除をする場合は必ず遺言執行者が必要であるとされる。
また、相続人以外の第三者に遺贈すると、相続人の協力を得られにくいため、あらかじめ遺言執行者を決めておくことが勧められる。
遺言執行者は原則として、第三者に遺言執行の任務を行わせることは許されていない。しかし、遺言者が遺言書によって、遺言執行の復任を許可した場合、第三者に遺言執行の任務を行わせることが可能となる。
これは、民法1016条に規定されており、「遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。」というものである。
遺言執行者は相続人の代理人とみなされ遺言執行者が数人いる場合には、その任務の執行は、原則として過半数で決するが、単独でも保存行為は、することができる。代理とは、代理人が本人の代わりに契約などを行うことを言う。
そして、制限行為能力者であっても、代理人になることができる。
つまり、本人が、制限行為能力者に対して、委任することである。
ただし、この場合、本人があえて制限能力者に代理権を与えているのだから、責任は本人にあるため、「代理人が制限能力者なので取消ししてほしい」といっても、それはできない。(=制限能力者を理由に取消すことはできない)
代理には2種類あり、「任意代理」「法定代理」があり、任意代理とは、本人が自らの意思によって、他人に代理権を与えることによって定められる。法定代理とは、法律によって、当然に代理人となる者のことである。例えば、未成年者の親は未成年者が親に対して、代理権を与えるようなことはない。成年後見人も成年被後見人となると法律によって定められる。
親族が遺言執行者に指定されているが、その親族が自分では遺言執行の手続ができないという場合、遺言書に上記のような許可が定められいれば、司法書士が遺言執行者の復代理人として遺言執行手続をすることができる。
次に、先にあげたことを踏まえ遺言執行者の主な仕事等、例を用いてまとめていくこととする。
○遺言執行者の役割
遺言執行者は、遺言の内容を実現する者である。
遺言書を作成するときに、遺言執行者を決めておくことで遺言の内容を実現することができ、手続上大きな役割を果たすことが可能となる。
その一例として、遺言書に、「ある土地を長男に相続させる。」と書いてある場合が挙げられる。この場合、相続人全員の印鑑証明書が必要となる。相続人同士の仲が良い場合では、各人の印鑑証明書を取得することはさほど難しくはないが、ひとりの相続人が長男への相続に反対している場合に、その協力を得ることが困難となる。
このような場合でも、遺言書で遺言執行者が指定してある場合は、遺言執行者の印鑑証明書のみがあれば、長男名義に、スムーズに名義を変更することが可能となる。よって、揉めることが想定される相続でも、遺言書で、遺言執行者が指定してあることで、遺言執行者の印鑑証明のみで手続ができる。
○遺言執行者の仕事
次に、遺言執行者の主な仕事について見ていくこととする。
遺言執行者に指定された者は相続が始まると、まず、遺言執行者をやるのかどうかの返事をしなければならない。この際、断る場合でも理由は必要とされない。
受け入れると、次のような仕事をしなければならない。
1.遺言執行者に就任した旨を相続人や受遺者(遺贈を受ける人)全員に通知 する。
2.遺産の調査をして財産目録を作成し、相続人全員に交付 する。
3.遺言書に子の認知がある場合は、就任してから10日以内に役所へ届出 する。
4.遺言書に相続人の廃除や廃除の取消しがある場合は、家庭裁判所に必要な手続きをする。
5.遺言書の内容にもとづき不動産の名義変更、預貯金の解約・払戻し、その他財産の名義変更等の手続をする。
5.全ての手続きが終了後、相続人や受遺者全員に業務終了の通知する。
遺言執行者の仕事のなかで中心になるのは、不動産や預貯金などの名義変更等の手続である。 遺言執行者は相続人でも第三者でもなることは可能だが、これらの手続で役所や銀行の手続は平日に行わなければいけないことが多く、また手続も煩雑であるとされる。さらに専門的な知識を必要とするため、人によってはかなりの精神的・肉体的な負担になることも考えられる。
また、遺言書の内容や相続人の状況によっては、遺言執行者が相続人だと公平性を欠くことになり、トラブルのもとになる可能性も十分に考えることができる。
遺言執行による手間や相続人間の公平性を考えると、相続を専門に扱う行政書士や弁護士などに依頼しておくことが安心でき望ましいと感じた。
<遺言信託について>
遺言の代理人である遺言執行者のことについては先ほどまとめることができた。しかし、遺言の手続きにはもう一つの方法を取り上げてみたいと思う。遺言信託である。ここで信託銀行等のサービスについて考えていくこととする。
遺言信託とは、遺言を書くときに遺言執行者として信託銀行を指定しておき、いざ相続が生じたときには遺言執行者として指定してある信託銀行が遺言に記載されている通りに財産の分割に関する手続きなどを行うというサービスをいう。 法律用語としての遺言信託とは、遺言において、遺言する人が信頼できる人に、特定の目的に従って財産の管理等する旨を定めることにより設定する信託のことである。
最近、民事信託や家族信託という制度が、少しずつ知られてきているそうだが、遺言で設定する信託のことが法律用語としての「遺言信託」となる。
法律上の遺言信託よりも、商品名としての「遺言信託」のほうが一般化してしまったため、一般的には遺言信託というと信託銀行等の商品名を指すことが多いようだ。
1.信託の定義
信託とは、財産権の移転その他の処分をし他人をして一定の目的にしたがって財産の管理または処分をさせることをいう。@財産権の移転が行なわれることと、A財産権の移転を受けた者が、一定の目的にしたがって、移転を受けた財産の管理または処分をすることが、信託の構成要素である。
2.信託における当事者(その1)―委託者
@財産権の移転その他の処分をし、A他人をして一定の目的にしたがって財産の管理または処分をさせる者を、委託者という。
3.信託における当事者(その2)―受託者
@委託者から、財産の移転その他の処分を受け、A一定の目的にしたがって財産の管理または処分をする者を、受託者という。未成年者、成年被後見人、被補佐人、破産者は、受託者になることができない。
4.委託者と受託者の関係
@財産権が委託者から受託者に移転することに着目すると、委託者が財産の譲渡人であり、受託者が財産の譲受人である。A委託者が、受託者に、財産の管理または処分をさせるという点に着目すると、委任契約において、委任者が受任者に事務の処理を委託することに類似する。
<履行利益と信頼利益>
相続の問題で最も気になりカギとなってくるのは、やはり履行利益と信頼利益である。ここではその問題について見ていくこととする。
まず、定義とその注意点について述べていくこととする。
■履行利益の定義
履行利益とは、「契約上の債務が完全に履行されることによって債権者が受ける利益」を言う。
尚、履行利益には「完全な履行がされれば被らなかったであろう不利益」も含まれる。
具体的には、契約目的物である商品の交換価値や、転売利益などがこれに当たる。
■履行利益に関する注意点
冒頭で述べたように、履行利益とは「契約上の債務が完全に履行されることによって債権者が受ける利益」である。
そして、この定義からも分かるように、 履行利益は契約が有効に成立していることを前提とする概念である。
第1の注意点は、これである。
そもそも、錯誤などで契約が無効であった場合には、履行利益を請求することはできない。
この命題は、判例が採用している差額説の立場からは、比較的理解しやすいはずである(差額説については、前掲・潮見76頁以下などを参照)。
即ち、差額説によれば、履行利益とは、 「契約が履行されていたならばあるべき利益状態と、契約が履行されていない現在の利益状況との差を金額で表現したもの」 である。
そして、契約が無効である場合には、「契約が履行されていたならばあるべき利益状態」というものを観念することはできない (契約が無効である以上、契約は存在しない)。
よって、契約が無効である場合には履行利益の賠償を求めることはできない。
■信頼利益の定義
信頼利益とは、「契約が無効である場合に有効であると信じたことによって債権者が被った損害」を言う (前掲・潮見80頁)。
具体的には、調査費用、契約締結費用、契約が有効に成立すると思って銀行から借りた金銭などがこの信頼利益に当たる。
そして、この定義からも分かるように、信頼利益という概念の中身は、「損害」 である。
換言すれば、信頼利益は、「利益」を賠償させるための概念ではない。
即ち、信頼利益とは、 「契約が無効であることを知っていたならばあるべき利益状態と、 契約が無効であることについて知らなかったために現在置かれている利益状態との差を金額で表現したもの」である。
以上のことに加えてもう一つ押さえておきたいのが現存利益である。
正当な理由がないのに財産的利得を受け、これによって他人に財産上の損失を与えた場合には、利得を受けた者はその利得を返還する義務を負う(これを不当利得返還義務という)。
この場合において、利得を受けた者が善意のとき(すなわち正当な理由がないことを知らなかったとき)は、利得を受けた者は、利得が現に存在する範囲内で返還すればよいとされている。これを現存利益の返還義務と呼んでいる(民法第703条)。
具体的には、財産を遊興費で浪費してしまった場合にはその浪費分を差し引いた残額が現存利益である。ただし財産を生活費に消費した場合や、財産で借金を返済した場合には、それにより自分の財産の減少を免れているので、生活費や借金返済を差し引かない金額が現存利益となる。
<相続人以外への相続>
また、相続問題に関してもう一つ触れておきたいものに遺贈がある。遺贈とは、遺言により人に遺言者の財産を無償で譲ることである。遺贈は単独行為である点で、契約である死因贈与と異なる。
遺贈を受ける者を受遺者といい、受遺者は被相続人の相続開始時に生存している者でなければならない。ただし、胎児は、遺贈については既に生まれたものとみなされるため受遺能力がある。遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈は効力を生じない。停止条件付き遺贈の場合、受遺者が条件成就前に死亡したとき遺贈は効力を生じないが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従う。また、受遺者には相続の場合と同様に欠格事由がないことも必要である。包括遺贈の場合の包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つとされており相続人と同一の法的地位となる。そのため、後述のように包括受遺者と特定受遺者とでは法律上の扱いが異なる。遺贈が効力を生じなかったり放棄により効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは相続人に帰属するが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従う。受遺者が遺贈の放棄または承認をせずに死亡したときは、その相続人は自己の相続権の範囲内で遺贈の承認または放棄をすることができるが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従う。
遺贈を履行する義務は、原則として相続人が負う。包括受遺者も遺贈を履行する義務を負う。相続人のあることが明らかでない場合には相続財産管理人が、遺言執行者がいるときはその者が遺贈を履行する義務を負う。
<不動産と相続>
先に述べた財産には金銭的な物だけではなくマンションなどの不動産もその財産のなかに含まれる。では、それらの相続に関してみていくこととする。
不動産(土地、建物、マンションなど)を持っている者の死後、その不動産の名義を相続人に変更するのが相続登記である。
この時に重要な結びつきのある権利が登記請求権である。では、なぜその権利が必要なのか。
それは不動産を購入して所有権を取得した者や、不動産に抵当権の設定を受けた者は、これらの物権が登記簿に正しく登記されないと、第三者に対抗できなかったり、他人への譲渡が妨げられたりするなど、様々な不利益を受けるからである。そのため、買主や抵当権者が、売主や抵当権設定者に対して正しい登記への協力を求める実体法上の権利を認める必要があり、これを実体法上の登記請求権という。
甲の所有不動産について乙名義の偽造登記がされている場合や、乙が甲に不動産を売った場合などの甲は登記請求権を有する登記権利者であり、乙は登記義務者であるとされる。
一般的にいえば、登記権利者は、登記をすることによって利益を受ける者であり、反対に不利益を受ける者が登記義務者である。しかし、この区別はかならずしも明確ではない。たとえば、買い主は登記をすることによって利益を受けることは明らかであるが、売り主も登記を相手方に移転することに利益がある場合もあり(固定資産税を免れるなど)、この場合には、売り主から買い主に対し登記の移転(引取り)を請求する権利があるといえる。したがって、買い主および売り主は登記権利者であると同時に登記義務者であることになろう。
登記請求権は、実体的な権利関係およびその変動の過程と登記上のそれとが一致しない場合に、両者を一致させるために認められる権利であるが、たとえば、甲→乙→丙と権利が移転した場合に甲→丙という権利の移転があったように登記をすることも、乙の同意があれば一般に有効と解されている。
次に相続放棄について見ていこう。相続放棄とは相続人が遺産のを放棄することであり、被相続人の負債が多いなど相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われる。相続放棄すると放棄した人は最初から相続人でなかったことになり、この遡及効は絶対的なので、登記がなくても他の相続人は第三者に対抗できる。これは相続放棄できる期間が3か月と短いこと、家庭裁判所という公的機関での手続きで第三者にも確認できることから、登記不要ということになっている。
遺産分割で相続分を追加取得するのは、共同相続以降に新たに発生する物権変動なので、相続分なしとなった相続人からの二重譲渡の関係となる。相続が発生してから実際に遺産分割されるまで長期間を要することもまれではなく、しかも共同相続人による私的な協議によるものであることから、第三者には確認のすべもないため、すでに当事者間で成立した法律関係・権利関係を当事者以外の第三者に対して対抗(主張)するための法律要件である対抗要件としての登記が求められている。
第三者が差押えをした者でも条件は同じであるから、遺産分割による相続人は登記がなければ対抗することができない。
<遺留分についてとその主な判例>
民法では、相続人が少なくとも取得できる相続分として遺留分が定められている。仮に遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は、遺留分を侵害している者に対して遺留分相当の財産を返還するように請求することができる。これを遺留分減殺といい、遺留分減殺は、遺留分権利者から遺留分侵害者への一方的な意思表示によって行われる。「遺留分減殺」を原因として相続登記を行う場合、遺留分権利者が登記権利者になる一方で、遺留分を侵害していた者が登記義務者となる。
ではここで、上で説明した遺留分の遺留分減殺をめぐる裁判の判例をもとに考えていくこととする。
○事案の概要
A(大正13年生まれ)は,平成8年2月9日に死亡した。その法定相続人は,妻であるB,実子であるX1,Y1及びY2、養子であるX2、Cである。Aの相続について,X1及びX2の遺留分は各20分の1である。
Aは,公証人作成に係る公正証書により,Aの遺産をYら及びBにそれぞれ相続させる旨の遺言をした。
Xらは,平成8年8月18日,Yら及びBに対して遺留分減殺請求権を行使し,Yら及びBがAから前記公正証書遺言により取得した遺産につき,それぞれその20分の1に相当する部分を返還するように求めた。
Xらは,平成9年11月19日に本訴を提起し,遺留分減殺を原因とする不動産の持分移転登記手続等を求めたところ,Y2は平成15年8月5日,Y1は平成16年2月27日,それぞれ第1審の弁論準備手続期日においてXらに対し価額弁償をする旨の意思表示をした。これに対し,Xらは,平成16年7月16日の第1審の口頭弁論期日において,訴えを交換的に変更して価額弁償請求権に基づく金員の支払を求めるとともに,その附帯請求として,相続開始の日である平成8年2月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
1審は,Xらの遺留分減殺請求を一部認容し,その余を棄却したが,遅延損害金については,XらがYらに対し遺留分減殺請求をした日の翌日である平成8年8月19日からの分を認容した。これに対し,原審は,原告らの遺留分減殺請求を一部認容し,その余を棄却すベきものとしたが,遅延損害金については,判決確定の日の翌日からの分を認容した。
○解説
本判決は,遺留分を侵害する遺贈に対し減殺請求がなされた場合の受遺者の現物返還義務と民法1041条の価額弁償に関して,遺留分権利者の価額弁償請求権の確定時期,および,価額弁償請求権に係る遅延損害金の起算日,という従来論じられていなかった論点につき最高裁として初めての判断を示したものである。
従来の判例の基本的な考え方は、以下のようになっている。すなわち、遺留分減殺請求権の法的性質については形成権説を採用し、これによれば,遺留分権利者は,減殺の意思表示をすることにより,減殺の対象物につき,具体的に算定した割合に基づいて所有権ないし物権法上の共有持分権を取得し,その取得分につき,物権的請求権としての返還請求権ないし移転登記請求権を有することになる(最判昭和51年8月30日民集30巻7号768頁)。そして,受遺者は遺留分権利者に帰属した目的物を現物で返還することを要するが,例外として,受遺者は,目的物の価額を弁償することにより現物返還義務を免れることができるが(民法1041条)、受遺者が民法1041条1項に基づき目的物の「価額を弁償して」返還の義務を免れるためには,価額の弁償をする旨の意思表示をしただけでは足りず,価額の弁償を現実に履行するか又はその履行の提供をしなければならないとされる(最判昭和54年7月10日民集33巻5号562頁)。受遺者が弁償すべき価額について履行の提供をした場合には,減殺請求によりいったん遺留分権利者に帰属した権利が再び受遺者に物権的に帰属する反面,遺留分権利者は受遺者に対して弁償すべき価額に相当する額の金銭の支払を求める権利を取得する(最判平成9年2月25日民集51巻2号448頁)。なお,上記のように価額弁償の履行の提供がされた場合又は現実の価額弁償がされた場合の効果として,「減殺請求によりいったん遺留分権利者に帰属した権利が再び受遺者に物権的に帰属する」ということの意味内容については,減殺請求によりいったん生じた効果をさかのぼって生じさせないこととするという効果を発生させるものであり,遺贈の効力が遡及的に復活するものと解される(最判平成4年11月16日裁判集民166号613頁)。受遺者において価額弁償の意思があることを表示した場合には,遺留分権利者は,価額弁償を訴求することができ,その価額弁償請求訴訟における価額算定の基準時は,事実審口頭弁論終結時となる(前掲最判昭和51年8月30日)。減殺請求をした遺留分権利者が遺贈の目的である不動産の持分移転登記手続を求める訴訟において,受遺者が,事実審口頭弁論終結前に,裁判所が定めた価額により民法1041条の規定による価額の弁償をする旨の意思表示をした場合には,裁判所は,同訴訟の事実審口頭弁論終結時を算定の基準時として弁償すべき価額を定めた上,受遺者がその額を支払わなかったことを条件として,遺留分権利者の請求を認容すべきである(前掲最判平成9年2月25日)。
上記のように価額弁償請求の基本的な考え方が示されているにもかかわらず,遺留分権利者が取得する価額弁償に係る権利の発生根拠や内容については,必ずしも明確になってはいなかった。この点につき,本判決は,遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受けた受遺者が遺贈の目的の価額について履行の提供をしていない場合であっても,遺留分権利者に対して遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をしたときには,遺留分権利者は,受遺者に対し,遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求権を行使することもできるし,それに代わる価額弁償請求権を行使することもできると解されるとした上,上記遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には,当該遺留分権利者は,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い,これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得すると解するのが相当であると判示した。これは,上記遺留分権利者が価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたことに対し,当該意思表示の時点で価額弁償請求権を確定的に発生させる法律効果が生ずるとの考え方を採用したものと考えられる。そうすると,受遺者は,遺留分権利者に対し,上記意思表示の時点で,遺贈の目的の価額を弁償すべき義務を負うと考えられるから,民法1041条1項に基づく価額弁償請求に係る遅延損害金の起算日は,上記のとおり遺留分権利者が価額弁償請求権を確定的に取得し,かつ,受遺者に対し弁償金の支払を請求した日の翌日ということになる。なお、本判決は,遅延損害金の起算日に関して,価額弁償請求権の確定取得に加えて,受遺者に対する弁償金支払の請求が要求されているのは,価額弁償請求権は期限の定めのない債権であり,履行請求を受けた時から遅滞の責めを負うこと(民412条3項)に基づく。
本判決の考え方からすれば,遺留分権利者が上記のとおり受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をするについては,必ずしもこれを訴訟手続においてする必要はないことになろう。
なお,遺留分権利者としては,上記の意思表示をする場合には,@当該意思表示により,遺留分減殺によって取得した目的物の所有権や現物返還請求権をさかのぼって失い,債権である価額弁償請求権のみを取得することになるから,受遺者の無資力のリスクを負うことになること,A価額弁償の目的物の価額算定の基準時は事実審口頭弁論終結時であるから,意思表示の時点からそれまでに目的物の価額が変動する余地があることなどにも留意する必要があると考えられる。
<結尾>
少子高齢化社会であると言われる昨今の日本において相続という問題はとても大きな問題となると感じた。なぜならば、相続の手続きを滞りなくスムーズに進行するために必要な遺言書は意思能力者によるものである必要があり、代理で書くことが許されていない。認知症やアルツハイマーといった言葉が流行する現代では、遺言を書く本人が自分で前もって遺言書を残す必要がある。
以前、私の友人が私に相続についての相談を持ち掛けてきたことがあった。その相談内容としては、その友人の祖父が亡くなったときに相続できたのは祖父の財産のうち遺留分しか相続できなかったというものであった。友人の父の続柄は、祖父から見れば次男にあたり、故人である祖父は友人の父の兄と同居していた。しかし、友人の父はすでに故人であったためにその財産の遺留分のみの相続ということになってしまったというものである。私は友人に遺言には何と書いてあったかと尋ねると、一枚の写真が送られてきた。そこには、子供が描いたような震えた字で「わたしの所有する全財産を長男とその妻に相続させる。故人名、印、住所、日付」と書かれていた。私はそのとき弁護士に相談することを促し、認知症にかかった診断書などなにか故人に関する資料を見せてもらうことはできないのか尋ねてみた。しかし、弁護士曰く、この問題は立証することが極めて困難であるとのことであったそうだ。また、診断書などもすべて処分されておりなにもなすすべなく長男夫婦の条件をのんだとの返事が返ってきた。私はそのときとてもやるせない気持ちになり、同時に相続の問題に関して法律の抜け穴のような、なぜ、どうすることもできないことがまかり通ってしまうのであろうという気持ちとなった。
遺言を残すことは、家族や自分の子供たちが困らないように、もめることがないようにするものであると同時に一番は自分のためであると感じた。自分が何も疑問を持たれることのない遺言書を書くことで自分の死後に家族の自分に対する印象が変わってくるからである。私は、自分を大切に世話してくれた人に最後の恩返しとして遺言書を残すべきであるという見解に至った。
参考文献他
相続と遺言のことならこの1冊 石原豊昭・監修
民法IV 補訂版 親族・相続 内田貴・著
司法書士法人ソリーHP:http://soly.jp/archives/7460
弁護士法人泉総合法律事務所HP:http://www.springs-law-chiba.com/
弁護士法人白濱法律事務所HP:http://www.fudousan-trouble.biz/
佐藤翔弥
結論 遺言は被相続人の意思を最大限尊重するものであり、相続人がその意思に反し信託を裏切った場合は法的に厳しい処罰必要であると考える、と同時に被相続人の意思だけではなく遺族の生活の保障や本来の権利者の保護など相続人対する遺留分の観点も重要視すべきである。
@
初めに問題点とは
まず遺言とは、遺言者がその人の死に最も時間的に近接した時点でした意思表示であり、自分の死後に生ずる財産の処分等の法律行為に対しても自分の意思表示の効力を及ぼすことができる。つまり遺言者(被相続人)が自分で築いてきた財産の行方をある程度自分の遺志に沿った形で相続人に配分することができる唯一の方法である。
しかし前項でも言った通りある程度でしか自分の意思を反映することができない。なぜなら民法1028条に被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には相続開始とともに相続財産の一定割合を取得しうるという権利(遺留分権)が認められておりまた、子の代襲相続人にも遺留分権は認められるとされている。これにより被相続人はどんなにこれを拒んでも一定範囲はその相続人に払わなければならないことになる。
これにより遺族者の生活保障の問題と受遺者の遺贈の利益などが大きな争いになり、いわゆる当事者問題となっていく。この様なトラブルを避けるために遺言執行者を指定し未然に防ぐ方法があるがこれも遺言者の信託や代理権の範囲など、どこまでの行為が許されているかが問題となりうる。
そして上の問題を解決し遺産の分配に至ったとしても相続人が第三者に債権を課されていた場合、その債権回収のため相続人が遺贈されたものを第三者が差押、または登記した場合のよる対抗要件が問題となっていく。
A
相続の流れと相続人の権利と愛人
民法882条 相続は死亡によって開始する。
被相続人の死亡で相続が開始され遺言がある場合はこれに従う。次に相続人には民法920条の単純承認か民法922条の限定承認か民法939条の放棄などができる。これらは三カ月以内に意思を表示しなければならないが、もし期限内に相続人が限定承認又は相続の放棄をしなかったときは単純承認したとみなされる。その後遺産分割協議に入っていきます。
これは相続遺産をどのように分けるかを、相続人全員で話し合ってきめ、全員が合意できなかった場合は家庭裁判所で遺産分割をすることになります。そしてここまで来て初めて具体的な遺産の分配となります。しかしここで前項でも上げたとうり、被相続人の遺言と相続人の遺留分の当事者問題がよく起きます。
例えば被相続人A(父)が遺産の全てを愛人Dに遺贈すると遺言に残した。このとき母Bと娘のCの遺産はどうなるのかが問題になるが、これは民法890条の被相続人の配偶者は相続人になる条文のと民法887、886条で被相続人の子供も相続人になる条文、そして民法1028条の遺留分を使い母と娘は遺産の半分を手に入れることができる。もし愛人がこれを拒んだとしても民法1031条の遺留分権利者及びその継承人は、遺留分を保全するのに必要な限度で遺贈及び贈与の滅殺を請求することができるとされているのでやはり愛人はこの請求に応え、遺産の半分を手に入れることになる。
私はこの相続の結果にはおおむね同意する。確かに被相続人の遺言は自分の財産を自由に処理するものとして尊重すべき大事なものだが、自身が負っている義務を放棄し権利だけ要求するのはいささか傲慢である。やはり義務を果たして権利を行使すべきであり、世帯主として遺族の生活の保障を果たした後に自身の財産の使い方を決めることが正しい相続であるべきだ。
しかしまた一方として遺留分の意義に疑問を感じる。そもそも遺留分は遺族の生活の保障の為に存在するが、その遺族がもうすでに生活の保障がある場合や子が相続する時点で、すでに子は生活基盤を築いている場合、遺留分を生活の保障とする見解には疑問が生じる。
また愛人の方でも最高裁では愛人契約は民法90条の公序良俗違反になり無効だが生活保護が必要である場合で同居している場合は同居契約として90条違反にならないとしている。そもそも愛人契約がどのような規定で決まるものなのかが曖昧であるのと生活保護の為なら違反にならない事は権利濫用になるのではないかと疑問がある。もし生活保護の為にやっているのならそこは国が保障すべきであると考える。
B
遺言執行者の代理権と第三者の債権回収について
遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実現させるために必要な手続きなどを行う人の事で各相続人の代表として、被相続人の死後の遺産分割における財産目録の作成や、預貯金の管理、不動産の相続登記の手続きなど、遺言の執行に必要なすべての行為を行う権限を有し、特に子供の認知や相続廃除を行う場合は、遺言執行者が必ず必要になる。成人した者であるならば基本誰でもなることができる。遺言書で遺言執行者を指定するメリットとしては、相続開始後相続に関する手続が単独で行う権限があるので、他の相続人が勝手に相続財産を処分したり、手続の妨害を阻止できることであり、たとえ相続人が遺言執行者に反して相続財産を勝手に処分すればその行為は無効になる点である。
例えば、父が死亡し相続が開始され全財産を母に相続させると言う遺言があったとしよう。この時息子が一人いたとする。そしてこの息子が第三者の債権者に借金をしており、債権者は債権回収の為息子が法定相続する財産を差押え登記も完了した場合、債権者のこの行為は認められるか。ただし母は遺言執行者である。
この場合、法定代理人(遺言執行者)の相続による遺族の生活の保障・本来の権利者の保護と債権者の資本主義の理念に則った債権回収がぶつかり合う、当事者問題と対抗要件になる。債権者の行使できる条文として民法176条の物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずるのと民法177条の不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。さらに民法909条の遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じ、第三者の権利を害することはできないとしておりこれらによりこの不動産に対する登記を主張する。確かにこれは筋も通っており正当な権利だと言いたいが、そもそもまだ財産は息子に渡っていないことが重要となる。もし息子が限定承認をして遺産を手にしていたら民法909条の遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じ、第三者の権利を害することはできないとして債権者の勝利となるがこれの場合は違う。
母は父の遺言の信託を受け遺言執行者になっており、民法1015条により遺言執行者は、相続人の代理人とみなすとして代理権が与えられており民法1012条遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有するしている。つまり息子には財産を行使する権利義務はなく、例え先に債権者と不動産契約の登記による債権回収の契約を行っても又はされてもその権限がなく民法1013条の遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができないとして債権者の債権回収を認めていない。そもそも包括受遺者は相続人と同じとし、債権者は民法909条の第三者にはあたらない。よって不動産の登記は遺言執行者である母が債権者に対し登記請求権を行使し正しい登記への協力を求めることができる。
この対抗問題は本来の権利者の保護と資本主義の理念に照らし合わせ合理的な判断だと思う。やはり遺産は遺族の生活の保障の為に使われるべきであり第三者が債権回収の為にこれをみだりに侵してはならない。しかし余りに遺族の生活の保障や権利者の保護と言うと今度は資本主義の理念が否定され債権者の立場を大きく揺るがしかねなくなる。債権回収のされないように悪意的に相続放棄し債権者が期待していた利益が得られず不公平になってしまう恐れが予想され資本主義の理念に基づく契約が成り立たなくなってしまう。なのでこれらを柔軟に判断、対応し公平な利益を双方に持たせるべきである。
C
被相続人の信託と返還請求範囲の利益
民法121条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
例えば本妻A、夫B、愛人Cがおり夫Bは「預金はCに与える」旨の遺言を残した。Cは運用の才能があたのでBからの遺贈一億円を10億円にした。しかしそのうちの五億円をホストクラブで散財して五億円してしまった。これを不服と思ったAが返還請求を求めた。これはAの法定相続とCの遺言相続が対立しぶつかり合っている対抗問題である。
Aからしてみれば夫の遺言の信託背いて散財行為は不法行為であり不当利得だと主張し、民法704条の法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う(不当利益の返還義務)又は民法704条の悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負うべき事項に該当するものだと主張する。しかしCにとっては最初は運営の為に使いBの信託に十分報いていると主張しその利益の使い方まで求められてないと解釈している。またこれは遺贈の法律行為であり一方向の単独行為とし不法行為ではないと抗議した。
ではここで履行利益と信頼利益に当てはめてみよう。そもそもこれは債務者が、契約について損害賠償請求を行う際に請求できる、本来契約が履行されていれば債権者が享受することのできた利益のことを言う。
履行利益とはその契約が履行されていれば、その利用や転売などにより発生したであろう利益のことで、信頼利益とはその契約が有効であると信じたために発生した損害のことを言う。つまり、履行利益は「受け取れるはずだったものを返せ」と訴えることで、信頼利益は「支払う必要のなかった損失を返せ」という意味合いとなる。おそらくAは信頼利益のこと言っており、夫Bがホストで使わせるために信託したわけではない、これはBへの重大な裏切りであり支払う必要のなかった損失であるため民法703条を使い損害賠償請求することであろう。(おそらくホスト代金分)
判例としてはCが現存利益分はAの返還請求に応じる義務はあるが、浪費したもの(ホスト代金)は現存利益に含まれないので返還義務はないものとする。
現存利益とは現在手元に形として残っている利益の事を言い食費や預金、学費などが含まれる。
確かに学費や教育費は自身の身に付き後々に大きな利益を上げられるものであるし、知的財産の観点から見てもその利益は大きく返還義務が生じるのもやむ負えないだろう。しかし教育等の学費には返還義務あり娯楽で浪費されたものには返還義務がないことはいささか違和感がある。国民三大義務のうち教育を受ける義務があるように国は教育推奨している。また日本国憲法25条にはすべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとしている。この必要最低限の生活を送るためには最低限度の教育、義務教育が必要だと考えられる。これは後の利益を確保、保護する為の必要不可欠なものである。では娯楽で浪費するのは必要なことか?少なくとも国が推奨していることではないだろう。この様に必要なものに返還を義務づけ、必ずしも必要じゃないものは免除することは法律上の観点から見ても不公平であり正義に反する。
義務教育や国が公認している教育の学費になどは返還義務を負わないものとするなど、法律や国の柔軟な対応がこれからは必要であると考える。
Dまとめ
遺言や信託は被相続人の最後の意思表示であり最大限の尊重をすることはもちろんだが、受け止める我々相続人や受遺者はそれを権利の様に思わず義務の様だと受け止め、誠心誠意それに答えるようにしなければならない。遺言はただの財産処理の道具ではなく残された人の幸せを願って託すものであるのを忘れてはならない。
<参考・引用に用いた書籍、又はサイト >
ウィキペディア 日本国憲法 第25条
ウィキペディア 登記請求権
ウィキペディア 遺留分また遺留分減殺請求権
ウィキペディア 単純承認
ウィキペディア 対抗要件
ウィキペディア 民法第121条
ウィキペディア 民法第1015条
ウィキペディア 民法第704条
ウィキペディア 民法第703条
ウィキペディア 民法第1012条法
ウィキペディア 民法第909条
ウィキペディア 民法第177条
ウィキペディア 民法第176条
ウィキペディア 民法第1013条
ウィキペディア 遺贈
ウィキペディア 遺言(効力)
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諸角友豊
『相続と遺言』
(1)はじめに
相続が起こった時に最も悲しい出来事は、やはり相続人として残された妻や子の財産を巡る争いである。
『親が死ぬと兄弟仲が悪くなる』という話を、私は何度か見聞きしたことがあるのだが、相続がきっかけとなって、文字通り『兄弟は他人の始まり』になるケースは稀ではないという。
いくら事前に相続税対策を行って、財産をたくさん残しても、財産を巡って争いとなっては、元も子もない。
そんなときに役に立つのが『遺言』だ。
遺言をまとめた一通の『遺言書』を作成することで残された相続人同士での争いを未然に防ぐことが可能である。
遺言は相続において最優先事項、そのため、遺言書を作成しておけば被相続人が亡くなったあとに、被相続人の相続財産をそれぞれの相続人にどのように分配するかを指示しておくことができ、後々のトラブルを防ぐ有効な手段となる。
特に、兄弟などの親族間の争いは、他人同士の争いよりも深刻化し、ひどくなりがちのため、かなり有効と言えるだろう。
このように相続と遺言というものは、重要な役割を持ち、とても深い関係で結ばれている。
が、同時に多くの制約も存在し、せっかくの遺言も水の泡になってしまうことがある。
結論から述べると、遺言が法律で認められるのであれば、それは個人の意思の尊重。意思を尊重するのであれば、もう少し権利の範囲を広げるべきだ、と私は思う。
若干斜め上な着眼点かもしれないが、個人的に気になった事項を以下にまとめたので、遺言や遺言執行者などの権利義務や問題点を踏まえ、述べていきたいと思う。
(2)遺言の種類
遺言とは本来、『亡くなった人が自分の死後のために残した言葉や文章』のことを指すが、ここでは民法上の意味の『自分の死後の法律関係を定める最後の意思表示』のことで、民法960条には民法の定める方式に従わない限り、効力は発生しないとされる。
遺言自由の原則に基づき、遺言の制度を認めることによって、人は遺言により、生前だけでなく、その死後にも自分の財産を認めることによって、人は遺言により、生前だけでなく、その死後にも自分の財産を自由に処分できるという趣旨がある。
とはいえ、上記の説明だけが遺言か、というわけでもない。
遺言の種類は大きく分けて二種類。一つ目が一般的によく知られている『遺言』。
二つ目が『相続させる旨の遺言』だ。
@遺言
具体的に言い換えるならば、『遺贈する遺言』である。
遺贈とは、遺言で、財産の全て、または一部を相続人ないし相続人以外の人に無償で譲渡することをいい、遺贈の効力は、遺言者が死亡した時に発生し、所有権移転の効果が生ずるとされている。
但し、遺贈の効果を、第三者に主張するためには、所有権移転登記などの対抗要件――当事者間で成立した法律関係ないし権利関係を当事者以外の第三者に対して対抗する法律要件――が必要になる。
遺言で法定相続人――民法で定められた相続人――以外の者に財産を取得させるには、遺言書を作成して、遺贈する方法しかない。
また、遺贈する場合には、他の相続人の遺留分に配慮が必要となる。
遺留分権利者から減殺請求を受けると、侵害した部分については財産を返還しなければならないからだ。
また、遺贈する遺言も二種類に分けられ、それが『包括遺贈』と『個別遺贈』である。
包括遺贈は個々の財産を特定しないで、割合で遺贈する方法で、受遺者は積極財産のみならず消極財産も継承する。
包括遺贈を放棄する際、包括受遺者――包括的に遺贈を受けた者――は、相続人と同じ立場に立つため、遺贈された割合で債務についても負担しなければならない。
従って、マイナスの財産の方が多い場合には、相続人と同様、遺贈の放棄や限定承認することで債務の負担を免れることは可能であるが、家庭裁判所への正式な手続きを要する。なお、何も行わず三ヶ月が経過すると、単純承認したものとされる。
一方で個別遺贈とは、個々の財産を特定して遺贈する方法である。
包括遺贈とは異なり、受遺者――遺贈を受けた者――は遺贈されたものだけ取得し、被相続人がどんなに多くの負債を抱えていたとしても負担する義務はないとされる。
こちらの遺贈を放棄する際は、遺言者の死亡後、いつでも相続人や遺言執行者に対して遺贈放棄の旨を通知すれば良いことになっている。
なお、遺贈の放棄自体は遺言者の死亡後に行うが、効力が発生するのは遺言者の死亡時までさかのぼる。
また、特定不動産の遺贈があった場合は、相続人が移転登記義務を負うことになるが、もし、遺言執行者が指定されているときには、遺言執行者が義務の一切を履行することになる。
以上をまとめると、
――個別遺贈――
・受遺者の権利義務
@債務は継承しない A遺産分割協議不参加
・遺贈の放棄
遺贈義務者にいつでも放棄の意思表示可能。
――包括遺贈――
・受遺者の権利義務
@相続財産の割合に応じ債務負担 A相続人と同じ資格で遺産分割協議参加
・遺贈の放棄
自己へ遺贈があったと認知してから三ヶ月以内に放棄ないし限定承認可能。但し家裁で手続きが必要。
となる。
A相続させる旨の遺言
特定の遺産を特定の相続人に『相続人させる』旨の遺言があった場合、基本的には遺産分割方法は指定されないるため、相続開始と同時に遺産分割を要せず、その財産を取得するものとされる。
但し、『相続させる』相手は、法定相続人に限られ、相続人以外の者に相続させる旨、遺言することはできない。
なお、相続財産が不動産の場合、遺贈を信託された者は登記請求権を単独申請で行使することができる。
相続させる旨の遺言により、遺言執行者が選任された場合、彼らの権利義務として、遺言執行に必要な一切の権利義務を有し(民法1012条1項)、委任契約の受任者に関する規定の準用(民法1012条2項)、遺言執行者は相続人の代理とみなす(民法1015条)ものがある。
遺言執行者が行う法律行為の効果は、直接、相続人に帰属するが、遺言執行者は相続人の利益のために行為をするわけではなく、あくまでも遺言者に代わって遺言の内容を実行する立ち位置にある。
(3)遺言に関する判例と個人的な見解
遺言に関する判例で、
妻子のある男性Bは、愛人Cに、遺族年金・株・家をあげるからと言い、BはCと長年同居をしていた。
Bの死後、本妻Aから返還を求められた場合、これを返さなければならないか。
なお、家は既にAが勝手に登記して第三者Dに売却済みとなっている。
また、Cの方から頼み込んで愛人にしてもらったのだが、Cには運用の才能があるので株の時価総額を10倍に増大させ、全額ホストクラブで使ってしまった場合どうなるか。
といったものがある。
結論を述べると、遺族年金は愛人Cが受給資格を得て、Cは浪費した株の売買代金に関しての返済義務を負わず、家に関しては権利を主張できない、と考えられる。
最初に受給資格についてなのだが、正直な話、両者とも資格があるのでないかと私は思う。
本妻Aが資格を持つ理由として、男性Bと正式な婚姻関係にあったためである。
正当に遺産を相続可能な関係にあるため、問題はないと考えられる。
しかし、AとBは長年別居状態。子供がいたにも関わらず、Bに経済的な依存はないため、遺族年金が受給されなくとも、生活に支障はない。
これに対し、愛人Cの方はホストクラブで全額使い散財し、資金が底を尽きている状態にある。
なおかつ、AB間での交流は見受けられず、婚約関係も形骸化していると考えられるため、どちらかというと、受給資格はCにある。
次に、BC間で結ばれた契約について。
この契約は妻子のある男性Bと愛人Cとの間で結ばれた愛人契約であり、公序良俗(民法90条)に反して無効と言える。
しかし、BからCへの譲渡物に関しては、愛人契約によって譲渡されたことが明らかとなってとり、不法原因給付(民法708条)により返還する義務は生じない。
では、本妻Aが返還請求権を持つかと言えば、相続人は被相続人の地位を継承しているため(民法896条)、Cと同様にAも返還請求権を持たない。
Aの遺留分減殺請求権に関しても、同様の観点から不法原因給付に劣後する。
とはいえ、これ正義的な判断ではないと私は思う。
この事案において、履行利益――契約が履行されていた際、その利用や転売などで発生した利益――は運用利益と売買手数料、現存利益にあたる。
一方で、信頼利益――無効な契約を有効であるも信じたことで受けた損害(利益)――は売買手数料と現存利益にあたる。
そしてこの現存利益とは、形として残っている物、即ち食費や学費のように身に付いているものと考えられ、判例は、ホストクラブで浪費したものは現存利益に含まれないと解している。
やはりおかしい。
そもそも、愛人契約というものは所詮不法な契約であって、公序良俗違反で愛人契約は無効、それに加え、戸籍上、男性Bの本妻であるAに返還請求権がないのはおかしな話である。
Aは相続人でありながら、ある意味被害者であるのだから、Aの権利は保護されるべきではないのだろうか。
次に、本妻Aが勝手に家の登記をして第三者に売ってしまった、という事案である。
これはつまるところ、愛人Cに登記が移転していなかったということになる。
不動産の譲渡における不法原因給付の成立要件とは、登記名義の移転に他ならない。
従って、家の所有権はCに移転しておらず、愛人契約も公序良俗に反して無効である為、Cは家の所有権について所有権を主張できない。
また、家が未登記であった場合には、引渡しにより、Cへ所有権が移ると考えられる。
従って、CとDの間には二重譲渡と類似の関係が生じる為、先に登記を備えたものが所有権を有効に取得することになる(民法177条)。
なお、第三者Dが背信的悪意者だった場合、Dは第三者とは言えず、家の所有権はCが有効に取得することになる。
これに関しても私は同意できない。
不動産の所有権を得るには、他でもない、登記が必要不可欠。
もちよんそれは理解しているのだが、これはBの遺言が達成されていない。
個人の意思を尊重、即ち遺言を尊重するのであれば、家の所有権はCにあるはずだ。
前述の返還請求権では正義に反してまでも請求権を持たないとされ、こちらでは遺言だろうがなんだろうが、早い者勝ちという。
個人の尊厳とは、遺言自由の原則とは、一体何なのだろうか。
(4)まとめ
人が亡くなった際、100人中100人に訪れる相続。
そのときに現れる可能性がある遺言。
その遺言は死後の財産分配に大きな力を持つが、相続人間でのトラブルは稀ではない。
納得できない形で相続することも少なくないだろう。
そのため、この問題は慎重に扱うべきである。
そして、個人の尊厳と平等は憲法と民法の基本的な理念で、決してこれは侵害してはならない。
そのためには、遺留分制度は守るべきものであり、遺言自由の原則とは何かということを改めて考え直すべきではないだろうか。
自由で平等な相続制度を守るためにも、遺留分制度の法的性質や登記制度を見直すべきではないだろうか。
遺言という最後の意思表示は、より尊重されるべきだと私は思う。
(5)参考資料
授業ノート
六法
遺言書の効力 http://all-souzoku.com/article/29/
相続させる旨と遺贈する旨の違い http://www.tamura-souzoku-go.com/article/13496349.html
コトバンク http://kotobank.jp/dictionary/
松ヶ迫 龍星
木曜4限 相続法課題レポート
テーマ:相続と遺言
教育学部 初等教育学科 初等教育コース 3年
14K203026 松ヶ迫 龍星
【はじめに】
私は、相続や遺言はいつかは必ず自分も経験することであるという身近さに対して、とても難しく、ほとんどの人が弁護士や司法書士に頼らざるを得ないという現状の打開が急務だと考える。
【そもそも、相続とは何か】
簡単に言えば、相続とは、亡くなった方の財産や財産上の地位を、子や妻といった法律の規定により定められた相続人に受け継がせることである。(相続によって受け継がれる財産には、不動産や現金といったその人の持ち物など、プラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も含まれる。)
また、相続の中にもいくつか種類があり、被相続人の財産や負債を、原則通りに相続する単純承認や、相続人が相続によって得る範囲の中で被相続人の負債や遺贈などを負担する限定承認などが存在する。
被相続者に債務がある場合は相続するにあたって行われる遺産分割協議において被相続者の債務をどう分割するかも決めることになるが、債権者は遺産分割協議の内容を受けることはない。つまり、どんな形で誰が引き継ぐことになろうと、債権者はすべての相続人に対して債権回収を求めることができるということである。(当然といえば当然であるが・・・)
【相続にも税金はかかる】
相続を行っていく際にも、所得税のように、一定の額を超えると税金がかかる。そのままの名前であるが、相続税といったものである。相続税がかかってくる額の計算としては、3000万円+600万円×法定相続人の数を基礎控除額とし、遺産がそれを超えた時に、その超えた額を課税遺産総額として、税金が課されることになるのだ。例をひとつ挙げてみよう。
例:妻1人、子2人、遺産が1億円の場合
基礎控除額:3000万円+600万円×3人=4800万円
課税遺産総額:1億円−4800万円=5200万円
この場合では、相続した1億円の遺産から基礎控除額である4800万円を引いた残りの5200万円が課税遺産総額となり、この5200万円に相続税が課せられることになる。
このように、莫大な財産が遺産として残された場合には、すべてが自分のものとなるわけではなく、国が税金として持っていくのだ。
このことを知って、「もし莫大な財産を遺産として残せるほどの男になれた場合、国に持って行かれるなんかばからしいよな、何とか使い切るか、税金として取られない方法はないのだろうか」などと考えていた私の前に、ある面白い話が出てきた。
少し前、平成9年ごろに信託を活用した相続税対策が流行したという話だ。内容としては、財産を信託し、信託された財産を収益受益権と元本受益権に分離させることで、相続税への対策が可能といったものであった。しかしこれは、平成19年9月に施行された新しい信託法の中で、信託を利用する際の課税関係について租税回避を防止することに重点を置かれたために、現在では行うことはできず、姿を消すこととなってしまったのだが・・・。
そもそも、脱税は立派な犯罪であるから、もし多額の遺産を相続した場合には、しっかりと相続税を納めることにする。(そんな遺産は入ってこないと思うが。)
また、信託とは、委託者が受託者に金銭や土地を移転し、信託目的に従って金宅財産の管理・処分をする制度のことである。特色としては、管理者と受益者を分けることができる点が挙げられる。中でも、営利を目的とした信託のことを商事信託、非営利な目的の信託を民事信託、家族による信託を家族信託という。
【遺言】
相続とはなにか、大まかに把握したところで、次は遺言についてみていきたい。
まず、遺言とは、人が死亡後したに法律上の効力を生じさせる目的で遺贈や相続分の指定あるいは相続人の廃除、認知などについて行う意思表示のことである。
そして、この遺言とは、相続において大きな力を持つ。中でも1番の効力は、法律である程度決まっている遺産の取り分の割合を、被相続人が遺言によって自由に定めることができる。極端にわかりやすく言えば、「遺産を半分に分け、半分は妻に、半分は愛人に相続する」といった遺言を残しておけば、妻が納得しようがしまいが関係なしに愛人に遺産の半分が相続されることになる。
また、被相続人は、この遺言を執行する権限を持つ遺言執行者の指定や、その委託をすることができる。遺言執行者とは、相続財産の管理やその他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持つ者のことである。
【遺言を残さなかった場合】
遺言が残されていない場合、法的相続人全員で話し合い(遺産分割協議)が行われる。しかし、その話し合いでも相続の割合等がまとまらない場合には、各自治体の家庭裁判所において、遺産分割調停(審判)を利用して決めてもらうことになる。
【遺産について】
先に、遺言の内容とその効力の大きさを述べたが、ここで問題となってくるのが、非相続人が「だったら、愛人に遺産ぜんぶあーげっちゃお」などといった、自らの家庭を全くもって顧みない不届きものであった場合である。仮に妻が専業主婦で、被相続人の財産に依存する形で生活をしていたとする場合、遺産をすべて愛人に渡されてしまうと妻の経済的基礎を失わせる形となり、妻は今までの生活をすることはおろか、生きていくことすら困難な状況に陥ってしまう可能性がある。
いくら遺言が法的に強力だといっても、そんな状況が多発することは全く好ましくない。そこで、それに対する対策が民法において定められている。遺留分の帰属とその割合の規定である。遺留分とは、直系尊属のみが相続人の場合は財産の3分の1、それ以外の場合は財産の2分の1を遺産として確保するといったものである。これがあれば、先の例における妻は、財産をすべて持って行かれて路頭に迷ってしまうことはなくなるだろう。
また、遺産の中でもとりわけ大きいものといえば、不動産である。不動産には不動産登記というものがある。不動産登記には、表題登記などの表示に関する登記や、所有権保存登記など第三者対抗要件(当事者間ですでに成立した法律関係・権利関係・権利変動などを当事者以外の第三者に対して主張・対抗するための法律要件)である権利に関する登記などがある。
不動産を相続する際には、この「登記」をどうするのかが問題になることもある。特に、不動産登記の場合、共同申請であるために、登記をするためには相続人全員の協力が必要になる場合がある(法的相続人全員の署名や実印を収集など)。そうなった場合に、非協力的な人間のせいでいつまでも登記ができないなんてことがないように、「登記請求権」なんてものも存在したりする。
これらのことを調べていくうちに、何も知らないまま相続を行ったとした場合、自分が相続した遺産を取引していく中で、最悪の結果として「履行利益」や「信頼利益」のような損害賠償などを請求される可能性があることに気が付いた。(履行利益:有効な契約が履行され、債権者が得たであろう利益、つまり損失のこと。 信頼利益:無効な契約を、有効であると信頼した結果生じた損失のこと)
遺産として受け取ったものを他人と取引したとして、それが実は全く別の価値であった場合、「履行利益」や「信頼利益」が発生して訴えられてしまうといった危険性を感じたのである。実際には形見にあたるものであるので、取引することは少ないかもしれないが、思わぬ落とし穴になるこの兎性があるため、私も留意したいと思う。
また、似たような名前のものとして、「現存利益」というものもあるが、これは受け取った利益のうち手元に残っている利益のことを指す単語であり、先の二つとはやや別物である。(これもすこしややこしい。)
相続を行う際には、様々な人による様々な思惑や欲望などが交差することが非常に多い。(だからこそ、それを扱う小説やドラマ、映画、特にサスペンスものは面白くなるのだが・・・)
しかし、自分が相続人となった場合、あんなサスペンスに出てくるような状況には陥りたくない。無論、それは皆同じであるだろうから、この相続やそれに関係する法律などについての知識は身に着けておくべきだと痛感した。
【特別代理人】
未成年は自らの判断で法律行為を行うことができない。そのため、未成年が自身の判断で法律行為を行った場合には、取り消すことが可能となっている。また、未成年者が法律行為を行う場合には、未成年者の「代理」として、法定代理人の同意を得ることになる。
これまで相続における法的手続きなどを述べてきたが、相続における遺産分割ももちろん法律行為に当たる。
相続における法的相続人が未成年の場合、法定代理人とは別に、「特別代理人」を決めることが多い。なぜなら、一般的には法定代理人と未成年者はともに相続人であることが多いからである。つまり、法的代理人と未成年者は遺産分割協議などにおいて遺産を取り合う関係となるわけである。それでは、法定代理人である保護者の判断で、未成年者の分の遺産を自らのものとすることが可能となってしまう。もともと法定代理人とは、未成年者の保護を目的としているため、保護できなくなっては元も子もない。そのため、相続においては特別代理人を立てることが多いのである。
【自分の考え】
今回、このレポート課題に取り組む前までの私の考えは、「遺産は、もともと亡くなった人の個人の財産である。その財産を、この世を去った後、誰にどのように引き継いでいくかを決定する権利は他でもなく、もともとの持ち主である被相続人にあると思うからだ。しかし、あまりに自由を利かせ過ぎると、それはそれで大変な事態を引き起こすことになるだろうから、やはり、ある程度制限は必要だろう。」といったものであった。
しかし、このレポート課題に取り組み、様々なことを調べたことによって、一言で相続といっても、複雑で多様な法律や手続きが必要であり、知らなかったことで損をする場合や、もっと言えば、知らなかったでは済まされないといった状況に追い込まれる危険を感じた。今までこういった分野の知識は全くと言っていいほど持ち合わせていなかったが、もっと知識をつけておかないと、痛い思いをするのは自分だということがよくわかった。もっと言えば、世間の人々がもっと関心を持つべき問題であると私は思う。そのため、まずは私がこれから先、少しずつになってしまうとは思うが、こういった法律や権利について学んでいき、少しでも周りに発信していければと思う。
【参考文献】
・相続税の基礎知識
・コトバンク
・教育小六法
・六法全書
・授業ノート
北村彩香
結論:相続は、亡くなった方の意思(遺言書)をできるだけ尊重すべきである。
1.事例と判例
上記にある結論の根拠を、事例と判例を通して以下に述べる。合わせて2個ある判例と事例をひとつずつみていき、それぞれの結論と意見をまとめる。
@ 女Aは、遺族年金・株・家をあげるからと言われて、妻子ある男性と長年同居したが、男性の死後、本妻から返還を求められた場合、これを返さなければならないか。なお、家は本妻が勝手に登記して第三者に売ってしまっている。また、女性の方から頼み込んで愛人にしてもらったのだが、彼女には運用の才があるので株は10倍に値上がりしていた場合はどうか。
まず、本妻から返還を求められた件について。女Aは遺族年金を受け取ることができるのか。遺族年金は3つ種類があるが、受け取ることができるのは、配偶者又は「子」、父母、孫、祖父母である。本来であれば、この範囲に該当しない女Aは遺族年金を受け取ることはできない。しかし、年金は残された遺族の生活維持のためのお金であり、男性の収入は女Aとの生活に使われていた可能性が高い。そのため、年金は同居していた女Aに渡ると考える。
では、株と家についてはどうだろうか。結論から言うと、女Aは本妻と半分ずつ遺産を分割しなくてはいけないと考える。女Aは世間で言ういわゆる男性の愛人であり、公序良俗違反にあたるが、元々の持ち主であった男性の意思を尊重するためにも、遺留分として本妻に2分の1、女Aに2分の1となると考える。この場合、年金は民法703条により遺産として考えない。
では、株と家をどのように分割するのか。この2つの価値を調べるため、お金に換えとどれくらいになるか調べ、遺産の価値で分割する。例えば、株が1000万、家が2000万円で、本妻が株を、女Aが家を相続した場合、女Aは遺留分として本妻に1000万円を渡さなくてならない。
しかし、亡くなった男性は遺言を残しているか、この文章では定かではない。もし遺言書で「女Aに自分が持っている財産をすべて渡す」と記載されていれていれば遺贈となり、取得させることができる。そして、遺言執行者が受遺者に登記名簿を移転させる必要がある。また、法廷相続人以外にも財産を遺贈の効果を第3者に主張するためには、所有権移転登記等の対抗要件が必要となる。
では、本妻が勝手に家を登記してしまった場合どうなるのか。女Aは法定相続人ではないので、共同申請をしなくても登記はできる。しかし、(仮に遺言書があるのであれば)遺言執行者はその遺言を踏まえて、相続を実行しなければならない。そのため、本妻の登記は無効となる。登記をするのであれば、女Aに登記請求権をもって、同意を求めなくてはならない。しかし、愛人である女Aと本妻が仲良く共同申請するなんて、ほとんど考えられない。
またこの場合厄介なのは、登記した家を女Aに登記請求権を実行しないまま、第3者に売却してしまったことである。第3者は登記が無効であると知らず、家を本妻から購入した。このように、無効な契約を有効であると信じたことによって受けた損害を信頼利益という。信頼利益を蒙ってしまった第3者がかわいそうである。勝手に家を登記し、売却してしたのは、男性に愛想を尽かされた本妻の腹いせにしか思えないので、家の売買の契約は無効となる。本妻は家を売った際に受け取ったお金を第3者に返却しなければならない。
また家を第3者に2500万円で売却し、本妻が利益を受けていた場合、家を譲渡されるはずであった女Aの履行利益が発生する。(履行利益とは、契約が完全に履行されたならば債権者が受けとるであろう利益のことをいう)本妻の現存利益は、家を売却した際の利益であり、それを生活費に使っていたら、現存利益は2500万円残っているとされ、ギャンブルで全て使っていたら、現存利益は無しとされる。
そして、女性の方から頼み込んで愛人にしてもらったのだが、彼女には運用の才があり、株は10倍に値上がりしていた場合はどうなるか。本妻が納得するのであれば、株は運用していた女Aがそのまま相続した方が良いと考える。この場合の株の値段は、「遺産分割をする日の前日の証券市場における取引価格の終値」を基準で考える。女Aが株を相続する場合、遺産分割が遅くなると値上がりして,株式のほかに相続できる遺産が減る。
A 信託についての事例を探したが、見つけることができず、代わりに「信託は遺留分が発生しない?!(http://minjishintaku-kazokushintaku.com/page-734)」という見出しのページを見つけたので、それを参考にしながら信託について述べる。
信託とは、委託者が信託行為(例えば、信託契約、遺言)によってその信頼できる人(受託者)に対して、金銭や土地などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産(信託財産)の管理・処分などをする制度のことである。信託の登場人物は、委託者・受託者・受益者という3人になる。信託では、個人だけでなく、会社も3人の登場人物の1人になることができる。また、信託銀行が受託者になる場合もありますが、個人の相続対策で利用する信託では、費用の問題も絡むため、3人の登場人物の役割を全て家族のメンバーだけで行う「家族内信託」の形をとるのが最も一般的である。
はじめに信託について調べたとき、他人に無償で託す人なんているのかと考えてしまった。しかし専門の人に代理で管理してもらったほうが楽であるとも考えた。信託の中で最もしっくりきたのが「家族内信託」である。家族や身内の中で信託を行うのは、他人に託すよりもきっとストレスがない。
それでは本題に入る。信託は遺留分にならないのか。信託がなされるということは、生前贈与がなされると考え、遺言書を書くのと同じ(かそれと同等の)行為であると考えた。また信託は、遺言書よりも自分の意思が反映されやすく、かつ確実に自分の遺産を分割することができる。ということは、信託をしたことで、本当はもらえるはずであった遺産を受け取ることができない人が出てくる。そのため、法定相続人の生活維持のためにも、遺留分は発生すると考える。
しかし、信託法を見ると、受益者の取得する受益権は「相続によるもの」または「新たに債権を取得するもの」どちらかを選択できると規定してある。また、民法は一般法で、信託法は特別法だが、法律上は、特別法が優先するというルールがある。そして、相続ではないので、相続税が発生しないことになる。国税局としては、相続人から「相続ではないので、相続税を支払いません。」と主張されると困る。そこで、受益権の相続は、「みなし相続税」扱いに変更した。したがって、国税局も相続ではないと認めている主張が成り立つので、遺留分は発生しないと主張される。
ここでなぜ、遺言があるのに信託ができたのだろうと思い、調べた。信託協会によると、「信託は、中世のイギリスにおいて利用されていたユース(use)が始まりであると一般的にいわれています。イギリス人は、昔から宗教心にあつく、死後自分の土地を教会に寄進する慣習がありました。しかし、封建領主としては、その力が及ばない教会に土地が寄進されると地代や税金が取れなくなるため、12世紀後半から13世紀にかけてこれを禁止する法律をあいついで制定しました。そこで、人びとはその土地を直接教会に寄進しないで、信頼できる人に譲渡し、譲渡を受けた人がその土地からあがる収益を教会に寄進する、という方法をとり、これはユースといわれました。ユースとは、このように、ある人が自分または他の人の利益のために、信頼できる人にその財産を譲渡する制度をいいます。当時の十字軍の遠征に際しても、参加した兵士たちの間で、国に残した家族のためにユースが利用されたといわれています。このように、ユースは広く利用されていましたが、形式的で厳格な普通法裁判所は一般的にユースを認めようとはしませんでした。その後、15世紀になってバラ戦争が始まると、貴族の中にもユースを利用する人びとが現れました。当時の貴族は、戦争に負けると土地を没収されるため、戦争に行く前に信頼できる人に土地を譲渡していきました。このように、ユースは広く普及したため、ついに国王の側近である大法官が公平と良心に基づいて裁判を行う衡平法裁判所において認められるようになりました。その結果、15世紀から16世紀になるにしたがって、ユースはますます利用されるようになりましたが、封建領主にとっては地代や税金などの収入が減ることになるため、1535年、ヘンリー8世はユース条例を制定し、これを禁止しました。そこで、人びとはこのユース条例をくぐりぬける方法として、さらに二重のユースというものを考えだしました。しかし、この二重のユースも16世紀に普通法裁判所により無効とされましたが、17世紀に衡平法裁判所において衡平法上の権利として認められました。やがて、この二重のユースは、時代の変遷を経て、近代的な信託制度へと発展し、また、人と人との信頼関係に基づくものであることから、信頼を意味するトラスト(Trust)という言葉で呼ばれるようになりました。」とある。
2.結論
遺産は元々の持ち主であった人の意思を、尊重して相続するべきであると考えた。それは、生前にお世話になった人への恩返しの気持ちや、自分が情熱をかけてきたものを自分が死んだ後にも自分と変わらない情熱を注いでくれる人の手にあったほうが良いと考えるからである。
例えば@の事例では、亡くなる直前まで一緒にいてくれたのは女Aであり、もしかしたら自宅介護で毎日お世話をしていたかもしれないのは、女Aなのである。本妻はそれが嫌で別居していたかもしれない。なのに、本妻が遺留分として半分も持っていくのは不平等な気がする。女Aはお金目当てではなかったかもしれないが、男性のお世話で作れなかった自分の時間を有意義に過ごしたいと思ったとき、まとまったお金が必要になる。自分の残した遺産で、残された時間を旅行などに行って使ってほしいと男性は思っているかもしれない。(4102字)
3.参考文献
明徳司法書士事務所HP http://www.meitoku-office.jp/
信託協会HP http://www.shintaku-kyokai.or.jp/index.html
民事信託・家族信託ドットコム http://minjishintaku-kazokushintaku.com/
まほろば不動産HP http://www.mahoroba-fudosan.com/
深山大地
深山大地作成 学籍番号14J114003
相続と遺言
結論
私は現代の社会において自分が死んだ後財産をどのように相続するかを細かく遺書に記しておくべきであると考える。また遺言執行者を定める場合は身内ではなくできることであれば弁護士、税理士、司法書士、行政書士等の第三者に任せるべきである。
まず遺言執行者とは何かその存在意義について考えることにする。
自分が死んだ後に財産を誰かに相続するには、意思表示である遺書を書くことが一般的であるが、その遺書に書いてある内容を代理として実行する者が必要になる。その遺書の内容を代表して実行する者のことを遺言執行者という。遺言執行者は法律的には身内であることを推奨しているようにも思えるが遺言執行者は、未成年及び破産者以外は誰でもなることができ、相続人や受遺者などの利害関係者でもなることができる。
しかし、相続人や受遺者が遺言執行者になると身内であるが故になぜ遺言執行者が私ではないの?もっと早く手続きできないの?財産隠しているのでは?といったトラブルにつながることも少なくありません。
こういったトラブルを避ける手段の一つとして信託銀行のサービスである遺言信託を利用する手があります。
遺言信託とは、遺言を書くときに遺言執行者として信託銀行を指定しておき、いざ相続が生じたときには遺言執行者として指定してある信託銀行が遺言に記載されている通りに財産の分割に関する手続きなどを行うというサービスをいいます。
法律用語としての遺言信託とは、遺言において、遺言する人が信頼できる人に、特定の目的に従って財産の管理等する旨を定めることにより設定する信託のことをいいます。
最近、民事信託や家族信託という制度が、少しずつ知られてきていますが、遺言で設定する信託のことが法律用語としての「遺言信託」となります。
法律上の遺言信託よりも、商品名としての「遺言信託」のほうが一般化してしまったため、一般的には遺言信託というと信託銀行等の商品名を指すことが多いようです。
メリットとしては
費用はかかりますが、お子様がいらっしゃらないようなケースなど安心して亡くなったあとの手続きをお任せすることができる
遺言の作成や保管などに関するサービスが受けられる。
遺言作成にあたって事前相談を受けることができる。
土地の有効活用や資産の組み換えなどアドバイスを受けることが可能。
個人である弁護士や税理士よりも金融機関(法人)である信託銀行のほうが将来的な安心感がある。
定期照会により定期的な見直しが可能である。
いざ相続が生じたときに、財産の分割や引渡し、名義変更などの手続きを代行してもらえる。
デメリットは
信託銀行が遺言執行者として行えることは財産に関することに限られるため、子の認知や相続人の排除など身分に関する事項については行えない。
相続人同士で遺産分割に関する争いが起きている場合や紛争になる可能性が高い場合には信託銀行は遺言執行者とはなれない。(紛争解決にあたって弁護士に依頼する必要が生じる。)
相続税の申告など税務に関することは別途税理士に依頼する必要がある。
遺言執行報酬の算定は、遺産の額(最低報酬額があります)とされており、不動産などが多い場合には遺言執行報酬が多額になる可能性が高い。(不動産についてのみ遺言信託の対象から外し、別途公正証書遺言により作成して司法書士に直接依頼すれば執行報酬を抑えることもできるようです。)また、遺言の保管料が毎年かかります。
弁護士に遺言執行を依頼する場合には、旧弁護士規定による手数料としている事務所が多いようです。報酬については遺産の額(経済的利益の額)によるため、遺言信託よりも必ずしも安くなるとはいえないようですが、最低報酬額がないため、財産が少額の場合には計算上は報酬も安くなる傾向があるようです。また、裁判手続きが必要な場合には、別途弁護士報酬を請求できることとされています。
また相続によって遺贈を受ける者を受遺者という。
受遺者は被相続人の相続開始時に生存している者でなければならない。ただし、胎児は、遺贈については既に生まれたものとみなされるため受遺能力がある(965条・886条)。遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈は効力を生じない(994条1項)。停止条件付き遺贈の場合、受遺者が条件成就前に死亡したとき遺贈は効力を生じないが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従う(994条2項)。
また、受遺者には相続の場合と同様に欠格事由がないことも必要である(965条・891条)。
包括遺贈の場合の包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つとされており相続人と同一の法的地位となる(990条)。そのため、後述のように包括受遺者と特定受遺者とでは法律上の扱いが異なる。
遺贈が効力を生じなかったり放棄により効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったものは相続人に帰属するが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従う(995条)。
受遺者が遺贈の放棄または承認をせずに死亡したときは、その相続人は自己の相続権の範囲内で遺贈の承認または放棄をすることができるが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときはそれに従う(988条)。 (ウィキペディア参照)
遺贈の対抗要件として不動産の所有権などを遺贈された場合登記をしなければ第三者に対抗できない。
そこで不動産の所有権を相続する前に被相続者が亡くなってしまった場合所有権移転登記はどうなるのかという疑問が残るがこれは不動産登記法によって定められている
不動産登記法62条は、「登記権利者、登記義務者又は登記名義人が権利の登記の申請人となることができる場合において、当該登記権利者、登記義務者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該権利に関する登記を申請することができる」と規定しています。
つまり契約が締結した時点で所有権移転登記請求権に対応する登記義務は相続人に継承される。
では次に相続される土地や不動産を兄弟などでどのように分けるかについて考える。
不動産や土地が一つしかない場合最初から相続先が決まっていれば話は早いが決まっていない場合、兄弟姉妹でどのようにして分けるかを話し合わなければならない。このようにして親の遺産を分けることを遺産分割といいその話し合いのことを遺産分割協議というそしてその話し合いによってまとまったものを書類にしたものを遺産分割協議書というこれをしないと親の遺産の所有権を移すことができない。
ではどのようにして分けるのかという疑問だが、親の不動産が一つしかないかつ相続人が複数いる場合の分け方には大きく分けて不動産を売却するか、不動産を残すかという選択を前提に四つの方法がある。
一つ目は現物分割で相続人一人が単独取得するもしくは土地を分割して分割後の土地をそれぞれ単独取得する。
二つ目は代償分割で相続人の1人が自宅を単独取得し、他の相続人は自宅を相続した人より不動産に代えて相応の金銭を取得する。
三つ目は共有で自宅を相続人共同で取得する。
四つ目は不動産を売却し売却して代金を分け合う。
この不動産の売買のなかでトラブルが起こることがあります。
例えば1000万で土地が売れる予定なので500万相続できるといわれていたのに実際には500万円ほどでしか売れず250万円しかもらえなかった場合などがある
履行利益とは、「契約上の債務が完全に履行されることによって債権者が受ける利益」を言う。尚、履行利益には「完全な履行がされれば被らなかったであろう不利益」も含まれる
信頼利益とは、「契約が無効である場合に有効であると信じたことによって債権者が被った損害」を言う。具体的には、調査費用、契約締結費用、契約が有効に成立すると思って銀行から借りた金銭などがこの信頼利益に当たる。
上の例だと信頼利益では1000万−500万=500万
1500万で転売する予定だったが何らかの理由で建物が売れない場合履行利益は
1500万−1000万=500万である
トラブルの多い遺留分について説明する。
遺留分とは、民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のことをいう(民法1028)。
基本的には、亡くなった人の意思を尊重するため、遺言書の内容は優先されるべきものです。
しかし、「自分が死んだら、愛人に全財産をあげる」という遺言書を作られてしまうと、残された家族は気の毒になります。ですから、民法では最低限相続できる財産を、遺留分として保証している。遺留分が保証されている相続人は、配偶者、子供、父母です。法定相続人の第3順位である兄弟は、遺留分を保証されていない。
また、侵害された遺留分を確保するためには、遺言書により財産を相続した人に、「遺留分減殺請求」をする必要があります。さらに、「遺留分減殺請求」の権利は、相続開始、および自分の遺留分が侵害されていることを知った日から1年、あるいはそれを知らなくても相続開始の日から10年を過ぎると、時効で消滅するので注意をしてください。遺留分として請求できるのは、配偶者や子供が法定相続人にいる場合は相続財産の2分の1、法定相続人が親だけの場合は、相続財産の3分の1になります。
つまりもらえないと思っていても法律によってある程度もらうことができるのです。
ほかにもトラブルとしては失踪者に対する相続についてだ
生死不明の失踪者に失踪宣告がなされると、その失踪者は死亡とみなされ、権利能力こそ失わないが、死亡と同等の相続や婚姻解消などの法的な手続きが開始される
失踪宣告のなされた失踪者の生存や、失踪宣告とは異なるときに死亡していたことがわかった場合、利害関係人か本人の請求により、裁判所は 失踪宣告を取消さなければいけない。この取消によって、原則として、従来の法律関係は復活する。相続などはなかったことになる。そうなった場合失踪者から相続した者は相続した財産を返さなければならないがその際変換は現存利益となる。現存利益とは契約などのような法律上の原因がないにもかかわらず、本来利益が帰属すべき者の損失と対応する形で利益を受けること(利得すること)、またはその受けた利益(利得)そのもののこと。またはそのような利益が本来は帰属すべきだった者に対して自身が得た利益(利得)を返還させる法理あるいは制度(不当利得法、不当利得制度)のこと。日本の民法においては民法第703条から第708条に規定されている。
契約、事務管理及び不法行為とならぶ債権の発生原因であり、不当利得返還請求権は事務管理及び不法行為に基づく債権と同様に法定債権の一つである。
以上のことから私は相続は人の私利私欲をかきたて様々なトラブルの原因になりうると考えている。自分の死によって残された遺族などがトラブルを起こして不幸になるよりは正当に財産が相続されるように事前に弁護士、税理士、司法書士、行政書士等の第三者に任せるようにしておけば何も心配もなく残された遺族もスムーズに遺産を処理できると考えました。
以下参照
https://souzoku-pro.info/columns/22/ 相続弁護士ナビ
http://123s.zei.ac/yuigon/sikkousya.html 遺言の部屋
https://ja.wikipedia.org/wiki/ ウィキペディア
https://ssl.okweb3.jp/itojuku/EokpControl?&tid=306756&event=FE0006 伊藤塾
http://s-gyousei.com/guide/yuigon-trouble/ 園行政書士
http://souzokuzei.tkcnf.com/yuigon6 税理士横浜パートナーズ
山下翔大
15J114019
山下 翔大
期末レポート 相続と遺言
人は命あるものとしていずれは終わりがありその時には、相続の問題があり近年では相続をめぐる争いが度々起きている。そこで、争いを防ぐ役割を果たすのが遺言である。なぜ、相続争いが起きるのかまた、遺言の仕組みについてしっかりと考える必要がある。
A)遺言執行者の役割
遺言を作成するうえで大切な役割を果たす者がいる。それが遺言執行者である。遺言を書く者は遺言執行者を指定することや決めることができる。(民法1006条)遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な行為や手続きする人のことを指し相続人の代表者として、相続開始後に財産目録の作成、預貯金や不動産の手続きなど遺言の執行に必要な一切の手続きをする権限がある。(民法1012条)子供の認知や相続人の排除をする場合は必ず遺言執行者が必要となる。必ずというわけではないが相続人以外の第三者に遺贈する場合は、相続人の協力が得られない可能性が高いため、あらかじめ遺言執行者を決めておいたほうがよいと考える。役割は遺言の内容を実現することだ。遺言所を作成するときに遺言執行者を定めておくことで遺言の内容を実現することができ手続き上大きな役割を果たすことができる。たとえば、遺言所で「土地甲を長男に相続させる」と書かれている場合でも相続人全員の印鑑証明書が必要となる。相続人同士揉めることなく各人の印鑑証明書を取得できれば簡単だが一人の相続人が反対している場合はすぐには協力をしてくれない。しかし、そのようなケースでも遺言で遺言執行者を指定している場合は、遺言執行者の印鑑証明書のみあれば長男名義にスムーズに変更することができる。このように、揉めそうな相続でも遺言執行者を指定していれば手続きが簡単になるのだ。遺言執行者が必要な場合と必要でない場合がある。必要な場合のケースは前段落でも記したが認知と相続人の排除がある。遺言書で遺言執行者を定めていない場合でも、相続人が家庭裁判所に請求することで遺言執行者を定めることが可能になる。必要でない場合は、遺贈、遺産分割方法の指定、祭祀継承者の指定の三つである。これは遺言執行者が不要ということではなく遺言の内容に基づいて執行すべきことではないということである。遺産分割方法の指定や遺留分減殺の方法の指定の二つが例である。
B)遺贈すると相続させるの違い
遺言執行者が必ずしも必要ではないものの一つである遺贈とはどういうものなのか。「相続させる」と「遺贈する」同じような意味に聞こえる。二つに共通していることは、どちらも遺言者が亡くなった場合に特定の者が財産を取得することになる。という点である。しかし、この二つには大きな違いがあるのだ。最初に相続について考えてみる。人が亡くなると生前していた時の財産上の権利、義務等は一定の関係のある方に移転する。このことを相続(民法882条)といい一定の関係にある人を法定相続人と呼ぶ。つまり、法定相続人に財産を移転させることを「相続させる」ということである。従って、法定相続人以外に対しては「相続させる」と書くことはできない。一方、「遺贈」とは遺言によって財産を無償で譲ることをいい、譲る相手にも特に制限はない。つまり、法定相続人に対してもそれ以外の人や団体に対しても「遺贈する」と書くことができる。
法定相続人に対しては「遺贈する」と書くより「相続させる」と書いたほうが不動産の登記手続きにおいて大きなメリットがある。「遺贈する」と遺言に書いた場合は、遺贈を受ける者は他の法定相続人全員と共同で所有権移転の登記申請をしなければならない。このため、法定相続人全員の印鑑証明書が必要となり、かなりの時間と手間がかかる場合がある。また、相続人の間で相続争いが起きた場合は、他の相続人の協力が得られず登記手続きが進まない恐れもある。なお、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者と遺贈を受ける者が共同で登記申請することができるので、他の相続人の協力を仰ぐ必要はないといえる。一方、「相続させる」という遺言の場合は、指定された相続人が単独で所有権移転の登記申請をすることができるので手続きが簡単かつ迅速に行うことができる。また、「遺贈する」という遺言では登記をしなければ債権者に対して自分の登記請求権を主張することができないが「相続する」という遺言では登記がなくても債権者に自分の登記請求権を主張することができる。
C)遺産分割と対抗要件について
登記等の遺産分割と対抗要件について。遺産分割で相続分を追加取得するのは、共同相続以降に新たに発生する物権変動なので、相続分なしとなった相続人からの二重譲渡の関係になる。相続が発生してから実際に遺産分割されるまで長期間を要することもまれではなく、しかも共同相続人による私的な協議によるものなので、第三者には確認のすべもないため、第三者対抗要件としての登記が求められている。
遺言書を作成すれば、法定相続人以外の者に全財産を遺贈することができてしまう。しかし、そうなると残された家族が住む家を失い生活ができなくなってしまうという事態も起こり得る。このように、相続人に不利益な事態を防ぐため、民法では、遺産の一定割合の取得を相続人に保証する遺留分という制度が規定されている。相続人の遺留分侵害する遺言も、無効になるわけではない。遺留分を取り返す権利を行使するかどうかは相続人の自由でありそれを遺留分減殺請求といいこの権利が行使されるまで有効な遺言として効力を有する。遺留分を侵害された相続人が遺留分減殺請求権を行使すると遺留分を侵害している者は、侵害している遺留分の額の財産を遺留分権利者に返還しなければならず、返還する額をめぐって訴訟になるケースも多く見受けられる。遺留分請求権は、権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与や遺贈の存在を知ってから一年で消滅時効になる。また、事実を知らなかったとしても相続開始から10年で権利行使ができなくなる。
D)信託の応用
信託を応用した相続対策がある。通常の遺言では、自分の相続についてのみ定めることができる。自分の財産を相続した相続人が、その財産を誰に相続するかは相続人が決めることであり、自分で決めることはできない。しかし、信託を利用すると信託した時から30年先の相続まで指定できる。これを、受益者連続型信託という。例えば子供がいない夫婦の場合、通常の遺言であれば1次相続で配偶者が相続すると2次相続(配偶者の相続)では配偶者の兄弟等が相続することになるが、信託を活用すると、2次相続では自分の弟に相続させる等指定することができるため、財産を自分の親族に承継させることが可能となる。しかし、妻の相続人は遺留分の減殺請求をする権利は有する。
無権代理の相続問題は大きく分けて2つある。1つは、本人が無権代理人を相続して無権代理行為の責任を問われる場合。この場合、本人は追認を拒絶することができるが、無権代理人の責任も相続しているので損害賠償義務を負う。もう1つは、無権代理が本人を相続した場合。無権代理人が本人の相続により、無権代理行為の追認を拒絶することは信義則上許されない。無権代理行為は有効となる。遺産相続の代理人になってもらうとしたらどのような問題があるのか。まず、信託銀行で考えてみる。結論から言うと信託銀行は代理人にはなれない。信託銀行が代理人として業務を行えるとしたら、亡くなられた方が遺言書を作成していて、そこに遺言執行者として信託銀行が選任されている場合のみだけである。次に弁護士で考えてみる。弁護士以外のものが、遺産分割の交渉や調停などにおいて代理人となる事は出ない。また、弁護士の先生は、正義の味方ではなく、正しくは依頼者の味方なのであるので相続人全員から遺産分割がうまくいかないので相談にのって欲しいと依頼しても、これは残念ですが対応してもらえない。双方代理の禁止といって、利害関係のある両者の代理人になる事は法律で禁じられている。結果、どこに代理を頼んでもメリットとデメリットは必ずついてくる。それらをきちんと把握したうえで相続の手続きを考えなければならない。
E)信頼利益と履行利益の問題点
信頼利益と履行利益の問題がある。この2つは、債務者が、契約について損害賠償請求を行う際に請求できる、本来契約が履行されていれば債権者が享受することのできた利益のことをさす。履行利益とは、その契約が履行されていれば、その利用や転売などにより発生したであろう利益のことであり契約を行った目的ともなりうるもので、債務不履行により損害が生じた場合、債権者に落ち度はありませんから請求されてしかるべきである。「信頼利益」とは、その契約が有効であると信じたために発生した損害のことをさす。不動産の売買の契約が成立するのを見越して、建築用の資材を購入した場合、この購入代金は、信頼利益となる。簡単にいうと、履行利益は「受け取れるはずだったものを返せ」と訴えることで、信頼利益は「支払う必要のなかった損失を返せ」という意味合いとなる。瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求の場合では、賠償の範囲が信頼利益に留まるのか、履行利益まで含まれるのか、意見の分かれるところとなっているのである。
F)現存利益の問題点
現存利益についての問題がある。人は生死不明が7年間明らかでないときは失踪宣告ができ、その失踪者は死亡したことになる。(民法30条1項)権利能力は失わないが通常の死亡と同じように相続や婚姻解消などの法的手続きが行われる。では、失踪者が突然生きて帰ってきたらどうなるのか。その問題を解決するのが民法32条1項の失踪宣告の取り消しにより裁判所は利害関係人か本人の請求により失踪宣告を取り消さなければならない。原則として法律関係は復活し相続もなかったことになる。もう1つの問題がある。それは、失踪宣告によって得た財産である。民法32条2項に定めがある。現に利益を受けている限度のみ返還すればよい。となっている。これが現存利益である。
遺産と相続には複雑な問題がたくさんある。すべての人がこの仕組みを把握するのは難しいと思うが相続争いを起こさないためにもしっかり相談をして正しい遺言を書く必要があると思う。
「参考文献」
http://houritutechou.blog46.fc2.com/blog-entry-15.html 試験研究室
http://www.bengo.jp/03_keiyaku/05_torihikitoraburu/04_iyakukin.html 吉田泰太郎法律事務所
http://houritutechou.blog46.fc2.com/blog-entry-15.html 法律勉強ノート
http://souzoku-zouyo.com/trust.html 相続専門オフィス
https://souzoku-pro.info/columns/37/ 相続弁護士ナビ
http://www.e-souzok.com/report/archives/84 福岡相続サポートセンター
http://www.nagoyasogo-souzoku.com/souzoku-touki/fudosan-souzoku/ 名古屋・愛知の弁護士による相続相談
http://www.nagoyasogo-souzoku.com/souzoku-touki/fudosan-souzoku/ 遺産相続の法律相談
http://minami-s.jp/page010.html みなみ司法書士合同事務所