滝島 慎
テーマ「交通事故と保険」
１６Ｊ１１００１５ 滝島 慎
日本の保険のシステムは事細かくつくられてはいるが、やはり課題点も見受けられるということ｡
(１）自動車損害賠償責任保険の仕組みや問題点ｔ改善点、不真正連帯債との関連性について｡
(２) 被害者側の過失や過失相殺、責任能力の仕組みおよび、その問題点と改善されるべき点
・まず自動車損害賠償保険が何かと言うことだが、これは自動車損害賠償法によって、自動車および原動機付自転車を使用する際、全ての運転者への加入が義務づけられている損害保険である。略称は自賠責保険とも言われている。公道で走行する際に、加入が義務付けられていることから、俗に「強制保険」といわれる｡つまり日本全国のドライバーはすべて加入しているのである｡事故により負傷した者は被害者として扱われ、相手の自賠責保険から保険金が支払われる。ただし、過失割合が７０％以上の場合は重過失減額として、一定の割合が減額される｡保険金の限度額についてだが、被害者1人につき死亡3000万円まで･後遺障害は段階に応じて75万円～3000万円（介護を要する重度の後遺障害は4000万円まで）・傷害120万円までとなっている｡ここまでが自動車損害賠償保険の一通りの説明である｡私自身は正直保険のことに詳しくはないので説明しづらいが、事故しだいでは加害者の負担がかなり減ると言うことである｡年間２００００円前後最低でも支払っていればいいというのはかなり大きいことだと私自身はおもう｡ただしこの自動車損害賠償保険はあくまで最低限の補償なのである｡と同時にどうしてもそこが問題点でにもある｡交通事故には他にも任意保険というものがある｡つまり自賠責保険では補償しきれない部分を補って暮れる保険で、車検の時期に合わせて更新手続きができるようになっている保険である｡これには訳がある｡自動車損害賠償保険は事故が起きてしまった時、死傷した人に対して、最低限の補償をするためのものですので、保険料が安く損害に対する賠償額も低くなっているのである｡そのため、任意保険が自動車損害賠償保険では補償しきれない部分を補って暮れる保険で、車検の時期に合わせて更新手続きができるようになっているのである｡確かにそう考えれば納得はいく｡とはいえ被害者によってはさらに多額の賠償金を請求する場合も多々あるため、その場合は保険会社加害者との相談または、加害者側がさらに私的に払う問いことも十分にありえる｡自動車損害賠償保険は、万一事故を起こしてしまって被害者に傷害や死亡をさせてしまった場合でも、補償されるの支払い金額が低いのです。
自動車損害賠償保険の補償では、被害者の傷害は、最高１２０万円ですし、後遺症が残るような障害でも、障害の程度によって１級から１４級に区別され、補償金額は１級で最高７５万円、１４級で最高4０００万円です。被害者が死亡してしまった場合の補償金額は、最高３０００万円までで、傷害の場合は１２０万円が限度額です。
自賠責保険の補償金額では、充分なものとはいえませんので、不足分は自腹で支払うか、任意保険に加入して万一の場合の補償を補填するということになります。とはいえ被害者の過失、すなわち、被害者は、交通事故によって被った損害を、加害者（通常は加害者の加入する保険会社）に対して請求することになりますが、被害者側にも事故に対する過失がある場合には、当該過失の程度に応じて請求額が減殺されてしまいます。これは過失相殺とも言われています｡これは加害者のみに責任を負わせないという点ではかなり評価できると私は思う｡
ちなみに自賠責保険の保険期間は、１２ヶ月契約、１３ヶ月契約、それに２４ヶ月契約、２５ヶ月契約、３６ヶ月契約、３７ヶ月契約と６種類あり、自家用乗用車や軽自動車、営業用と自家用の小型貨物自動車およびけん引小型貨物自動車、この他、普通貨物自動車およびけん引普通貨物自動車の営業用に分けられ、自動車保険料がそれぞれ決まっています。また自由診療についても語ろうと思う｡例えば、美容整形は病気の治療ではないので、保険では認められません。歯科での歯の詰め物は、保険で認められているものより良い材質のものを使う場合も自費になります。保険診療では必要最低限の診療を受ける権利のようなもので、人より良い医療を受ける事は制限されているのです。
漢方治療の多くは保険で行えますが、病名ごとに使える漢方薬が保険診療では制限されているため、各個人の体質や病気の状態に合わせたきめの細かい診療を行なおうとすると保険診療は馴染みません。そのため漢方診療を専門に行っている所は自費診療が多くなっています。
日本で未認可の医薬品や、保険適応疾患以外の医薬品の使用も、自由診療なら可能になります。保険で使える診療は保険診療で行い、保険で認められていない部分は自費診療で行えれば解決するのですが、これは混合診療といって、現時点では認められていません。混合診療を認めると、平等な医療を受ける機会を保証した皆保険制度の主旨に反するからというのが理由である。
保険診療（健康保険を使って診療を受けること）の場合には、「初診から治療の終了に至る一連の診療行為の中に、保険がきく診療行為と保険がきかない診療行為を混在させてはならない」という混合診療の禁止のルールがあるのです。このルールがある以上、保険がきかない部分に対して患者に自己負担を求めようとするなら「一連の診療行為」全てを自由診療、すなわち全額自己負担にしなければならないのである。
がん治療の中に、体の抵抗力や治癒力を高めるような治療があまり重視されていない理由の一つは、そのような治療法は保険診療で認められていないからです。漢方治療や健康食品などを利用して抗がん力を高めることを目標とした治療を行おうとしても、保険診療では様々な制限が加えられており、納得のいく治療はできないというジレンマが発生しているのだ。
（２）被害者の過失とは被害者と身分上あるいは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失のことです。このような関係にある者に過失があった場合は、被害者に過失があったと同様に考え、過失相殺される。
これは、飛び出しのように被害者自身に過失があった場合に、たとえば３対７、というように損害賠償額から引かれる「過失相殺」とは異なり、被害者本人でない者の過失に基づき損害賠償額が差し引かれるものである。たとえば、夫が運転し、妻が同乗していた自動車で、夫の不注意で第三者の運転する自動車と衝突し、妻が負傷した場合、妻が第三者に損害賠償を請求したときには、夫の過失についても考慮され、妻の損害賠償額が減額されることになる。言うなれば、被害者のみを優先するのではない、大変公平な制度といえよう｡加害者の責任能力を問うことがあるならば、なおさらである｡また好意同乗にも触れたおく｡これはつまり同乗者が運転手に対し、損害賠償を請求でいると言うことである｡しかし同乗者も場合によっては緊急避難できるときがあるはずである｡同乗していただけで損害賠償というのもおかしな話ではないだろうか｡ここで不真正連帯債務についても触れておこうと思う｡不真正連帯債務とは連帯債務のうち、各債務者が全額についての義務を負うが、債務者間に緊密な関係がなく、弁済及びこれと同視し得る事由を除いて、一債務者に生じた事由が他の債務者に影響しないものを意味するとなっている｡債務者同士責任を共有しないのは悪くないことだと思う｡例えば片方が子供だった場合などは子供に責任を押しつけるわけにはいかないからである｡
連帯債務は、自己の負担部分のみ責任を負うとの原則（民法427条）を変更し、他の債務者の債務まで責任を負うため、連帯債務者間には主観的に緊密な結合関係が存在する。しかし、債務者間に緊密な結合関係がなくとも、複数の者が偶然に同一の債権者のために同一内容の債務を負うことがあるため、不真正連帯債務という主観的結合のない連帯債務の概念が判例上認められてきた。不真正連帯債務は、債権者が１人又は数人に対して同時又は順次に全部又は一部を自由に請求することができる点で連帯債務と同様である。しかし、不真正連帯債務は、債権者満足させる弁済およびこれと同視し得る事由は他の債務者に影響するが、連帯債務で認められる事項や履行の請求等による効果は他の債務者には影響しない点で異なる。これもわるくないであろう｡だが私には連帯責務の矛盾が発生してきているような気がしてならないのである｡そうでなくても共同不法行為が日常化してしまっている日本では、このような法律は必要なのかもしれない｡しかし、問題はそれほど単純ではない。後に述べるように関連共同性について、客観説をとるにせよ、主観説をとるにせよ、求償を含めた紛争の一体的な解決を目指すには、各人が損害発生にいかなる寄与をしたかについて考慮することが必要となり、結局は、各人と損害発生との間の部分的な因果関係(寄与割合)について議論せざるを得なくなってしまうからである。なぜなら、各人の行為を離れて「共同行為」という独立の行為が存在するわけではないからである。
さらに厳密にいえば、共同行為と損害との因果関係さえあれば足りるという論理は、実は、各人と損害との間の因果関係が部分的にはある(各人が損害発生に部分的に寄与している)ということをいっているに他ならず、各人と損害発生との因果関係が不要となるわけではない。
このように考えると、共同不法行為に関する因果関係論は、各加害者と損害との間に個別の因果関係を必要とする時代から、各加害者の個人の因果関係は問題とせず各加害者が関連する共同行為と損害との間の因果関係を問題にした時代を経て、求償をにらんで各加害者の部分的因果関係(全体の因果関係に対する寄与割合)を議論する時代に入ったとみることができよう。
・wikipedia
http://www.gyoseisyoshi.com/isyaryou/kyoudouhuhoukoui.htm
松本和也
結論
交通事故が起きた時、自動車損害賠償責任保険と医療保険があるが、適用する保険によって保障される度合いが違う。
自動車損害賠償責任保険と医療保険の違い
交通事故場合、自動車損害賠償責任保険と医療保険を使うことができるが、まず自賠責保険とは何かというと、自動車損害賠償保障法によって、自動車および原動機付自転車を使用する際、全ての運転者への加入が義務づけられている損害保険である。これを適用させると傷害の場合120万までしか保険がおりない、また自動車損害賠償責任保険は自由診療となるためすべての医療費が全額自己負担になってしまう。次に医療保険だがこれは保険診療となり自賠責のように120万までという上限などは決まっておらず、医療費は三割負担になる。交通事故の怪我は重いものが多いため、自賠責の120万では到底治療費をカバーできないということにもなってしまう。足りない分は加害者に請求すればいいのだが、もし加害者が貧乏で払えないとなったとき超過分を被害者負担するしかなくなってしまう。これだけだと医療保険を使う方が良いのではないかと考えてしまう。もし事故に遭った被害者が健康保険で治療を受けた場合、もともと加害者が支払うべき治療費を健康保険組合が負担したことになりますので、後日、健康保険組合はその治療費を加害者または自動車保険会社などに請求します。この請求に必要な書類が「第三者行為による傷病届」です。傷病届が提出されないと加害者または自動車保険会社に健康保険組合として請求ができませんので、被保険者に請求する場合があります（http://www.kenpo.gr.jp/nssmkenpo/kon/accident.html）
交通事故と責任能力
まず、事故を起こしてしまったとすると、被害者から損害賠償請求されると思うが、被害者が損害賠償請求をするとき、被害者にも過失があった場合、裁判所が被害者の過失に応じて損害賠償額を減額することを指します。交通事故では、事故当事者の過失割合によって、被害者の、加害者に対する請求額が減殺されますhttps://jico-pro.com/columns/24/
以上のことを過失相殺という。もし、事故を起こしてしまったとする、被害者が成人で加害者も成人だった場合には過失相殺があるかなど考えることができるが、たとえば被害者が責任能力のない子供だった場合にはどうだろうか、８歳の場合判例では過失相殺能力がないとしているが４歳では過失相殺能力がないとしている。もし事故を起こして被害者の４歳児がいきなり飛び出してきて事故が発生してしまった場合、加害者にはもちろん過失はある、しかし４歳児の方には過失がないといって全額賠償させるのは少しおかしくないかと思う。４歳というだけで過失による不利益を加害者側に負わせるより被害者側に負わせた方が公平なんじゃないか。そのため判例は「被害者」の枠を拡張し、被害者と身分上ないしは（１生活関係上２血縁上３社会実態上４戸籍上）いったいとなすとみられるような関係にあるものであれば、その過失を過失相殺の対象とすると判示している（過失相殺能力初級というサイト）この４歳児の母親との関係は身分上一体をなすとみられる関係のため４歳児の過失を過失相殺の対象とすることができる。このようなことを被害者側の過失という。理由としては母親が子供から目を離したことが原因であるため母親には監督責任があるのにもかかわらずそれを遂行できなかったことが過失の主な原因だと考えている。もしこの母親を無過失とするためには、監督義務者の方で，監督義務を怠らなかったことまたはその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったことを立証しなければ責任を免れないものとされており、さらに被害者のほうはその監督義務者に監督義務違反があったことやそれが故意または過失に基づくことなどを立証する必要がないとなっているため、監督義務者が無過失となることはかなり難しいものとなっています。
好意同乗者と過失相殺
まず好意同乗（無償同乗）とは、同乗者が、運転者との人的関係に基づき、その者の好意により無償でその者の運転する自動車に同乗することをいう。もし好意同乗者がいる状態で事故を起こしてしまい好意同乗者が怪我をしてしまい損害賠償を払わないといけなくなった時に相手が好意同乗者の場合損害賠償額が減額される。自分はなぜ同乗しているだけで過失相殺され減額されなきゃいけならないのだと疑問に思っています。たとえば同乗者が運転の邪魔をしたり暴走行為を煽ったりしていたのであれば納得いきますが何もしていないのに過失があるとされるのはどうなのかなとは疑問に持っています。
これらのことを考えてみるために例を挙げてみるとAさんの車にBさんが乗っていたとするそこにCさんの車が突っ込んできてBさんが怪我をしてしまった場合どうなるかということだが、損害賠償は自賠責で行うとしてACどちらが支払うのか、自賠責の上限の１２０万の怪我をしていたらどうなるかについてだが、この場合はどちらか一方に請求するのではなくAC両方に請求できるなぜかというと、まずBさんが怪我をしてしまった原因は運転していたAにも責任があるが突っ込んできたCにも責任がある。よってこれはACの二人による共同不法行為にあたるためACの二人が賠償を支払う必要がある。まず、共同不法行為とは何かというと、複数の人間の関与により、権利侵害の結果を発生させる現象のこと。またはそのような結果を発生させた行為のことを指す。（ここでBが好意同乗のために過失相殺があるかだがBが妻子であれば過失相殺があるが、恋人や同僚の場合は過失相殺に当たらないとされている。今回はBが妻ということで過失相殺があるものとして考えて見る。少し戻るがなぜACの二人がなぜ賠償を支払う必要があるのかというと共同不法行為の加害者の賠償責任は不真正連帯債務となる（民法７１９条１項）Cの被害額が１２０万だった場合、Aから６０万Bから６０万ずつ請求すれば良いのかというと別に必ずしもそうするのではなくAだけに１２０万請求してCには請求しないとすることも不真正連帯債務ならできる。もし損害額が限度の１２０万を超えていた場合は片方に限度額の１２０万を請求した後に残りをもう片方に請求することができる、ということは２４０万までの損害なら請求できることになる、今回は妻の好意同乗のため過失相殺により減額はされる。もし被害額が１２０万だったとしても１２０万を超える請求を行うことはできない。このように共同不法行為の責任は連帯債務ではなく、不真正連帯債務となっていることが分かる。
緊急避難の適用
Aが車を運転していたとしてそこにBいきなり飛び出してきて衝突を恐れたAはハンドルを切り回避しようとしたが対向車線のCの車に衝突してしまった場合Aは緊急避難を適用することができるのだろうか緊急避難を起用すると損害賠償をしないで済むがそうなるかというと、一見緊急避難の要件が成立しているかのように見えるがこれは緊急避難にはならない緊急避難はやむを得ずする行為であるためこのAのとった行動はやむを得ない行為だったのか、まず、人が飛び出してくるだろうと予測できる道であれば徐行して運転するのが当たり前であるし、それを怠っただけであるのでただの過失となるだけではないのだろうか、だから交通事故での緊急避難を認めることができないのではないか。自分ははじめこのことについて疑問を持っていましたが調べているうちに、車を運転している時点で事故を認識予見していることが普通であるため、事故に遭ったら過失となるだけとわかり納得した。また民法の緊急避難は刑法のそれより狭く、物から生じた場合だけで人間が行うものに対しては成立しない、無人の車が突っ込んでくるなら話は違うかもしれないが、人が乗っている車にたいしては人間が行っているものなので成立しないのではないのではないか。
保険の使い分け
今までのことを踏まえて交通事故が起こった場合に自賠責を使うべきなのか医療保険を使うべきなのか考えていきたい。たとえばAの運転する車がいきなり対向車線に入りそれをよけようとしたBがハンドルを切ったがいきなり飛び出してきた４歳児のCにぶつかり１０万点の怪我を負わせてしまぅたものとする、この場合Cはいくら請求できるのかを考えていく、過失割合だがAは５０だとして、Bは３０、Cは２０あるとする、なぜCも過失があるのかというとC自体には責任能力がないため過失相殺とすることはできないが監督責任義務のある親の過失として過失割合が２０あるとしている。まず治療費はいくらになるのかというと、自賠責の場合１点２０円のため総治療費は２００万になる、次に医療保険の場合は１点１０円のため総治療費は１００万になる。自賠責を使い誰がいくら負担するか考えていくと、自賠責の上限額が１２０万なので残り８０万をABCで負担すると、Aは４０万Bは２４万Cは１６万負担することになる。次に医療保険を使う場合について考えていくと、医療保険には上限がないが３割自己負担で残りは保険から出るが、第三者行為によるものなので後で加害者に請求される。よって窓口負担の３割を引いた７０万をABCが負担することになる。Aは半額の３５万Bは２１万Cは１４万負担することになる。さらに被害者のCは窓口負担の３０万も払わないといけないのでかなり治療費が高額になってしまう。このように自賠責か医療保険どちらを使うかで医療費が変わってしまう。今回の場合はCにも過失があったためCの負担も多くなってしまったが、これより治療費が高額であったり、Cに過失がなかった場合には医療保険を使った方が安く済むと考えられる、このようにその都度状況を見て保険を使い分けなくてはならないので非常に面倒くさいものだと考えている。
まとめ
交通事故における医療保険と自賠責保険の優劣(両者の適用順位を法的に決めていないのは日本ぐらいで、公的な保険に対する国民不信原因の一つになっている。さらに病院は高額な医療費を７割も負担しなくてはならず保険会社が負担する自賠責のほうを薦めてくるのではないのだろうか。民間保険会社は総医療費が安くなる医療保険を薦める、これは自賠責の負担を民間保険会社がするためであるからでこれではお互いに薦め合って被害に遭った人はどちらの保険を使っていいのか分からなくなってしまうので制度について考え直す必要があるのではないかと考えています。
Windows 10 版のメールから送信
鈴木友太
交通事故と保険
16J110023 鈴木友太
キーワード
自動車損害賠償責任保険、自由診療、第三者行為、過失相殺、責任能力、好意同乗、共同不法行為、不真正連帯債務、被害者側の過失、緊急避難
結論
交通事故により負傷した場合、最低限の補償を受けられるにように自動車損害賠償責任保険は加入を強制している。被害者側の過失の有無により過失相殺の適用があるのか分かれる。さらに無責任能力者が交通事故を起こした場合、損害補償金を請求できないことになっている。
共同不法行為による交通事故の場合は、一人に対し損害賠償金を全額請求できる。また、一人が全額支払った場合、ほかの共同不法行為者に各自の負担割合を求償することができる。
責任能力を欠いている者に対しては損が賠償金の請求ができないことになっている。
1． 交通事故と保険
第三者行為による交通事故により、傷害した場合、自動車損害賠償責任保険から最低限の補償を受けることができる。
自動車損害賠償責任保険とは自動車損害賠償法によって、自動車及び原動機付き自転車を使用する際、すべての運転者への加入が義務づけられている損害保険のことである。また加入が義務づけられているため強制保険とも言われている。この自動車損害賠償責任保険は、あらかじめ加入させておくことで、加害者を介さずに、最低限の損害補償金を被害者が直接受け取ることができる。また、最低限の補償の確保が目的のため、死亡の場合は1200万円まで、後遺障害の場合は段階により75～300万円まで（介護を要する場合は4000万円まで）、傷害のの場合は120万円までとなっており保険金の限度額がきわめて低い。さらに、自動車損害賠償責任保険の記名被保険者、または自動車損害賠償責任保険の対象自動車等の運転者が死傷者の場合は支払いは対象外となり、死傷者のいない物損事故のみの場合も適用されない。そのため、強制加入の自動車損害賠償責任保険以外に、このような場合も保険を受けられる任意保険に加入するのが一般的である。
2． 診療
交通事故により受傷した場合は、診療所や病院での扱いは基本的に自由診療となる。自由診療とは、健康保険や診療報酬が適用されない診療のことで、自動車損害賠償責任保険もしくは自動車保険から治療費が受給される。
一方、保険診療では健康保険が適用されるため、通常自己負担（窓口負担）は三割となり、高額療養費制度により上限から超えた部分は保険組合から払い戻しされる。
3． 被害者側に過失がある場合
過失割合に関わらず、事故により負傷した者は被害者として扱われ、相手の自動車損害賠償責任保険から保険金が支払われる。ただし、過失割合が70％以上の場合は重過失減額として、過失割合に応じて一定割合の減額が適用される。
交通事故において被害者に過失がある場合も原則として無過失責任主義に基づき、一定の割合まで過失相殺による減額を認めていない。そのため損害に対する保険金は100％支払われる。過失相殺とは、不法行為に基づく損害賠償において裁判所は債権者の過失を考慮して損害賠償の責任や賠償額を定めることである。つまり、被害者側の過失の割合が大きい場合は賠償金を100％支払う必要がないということである。
被害者側の過失が70％未満の場合は、死亡・後遺障害・傷害に関する保険金は減額がない。70％以上の場合は、20％が減額される。80％以上の場合は死亡・後遺障害に関する保険金は30％減額され、傷害に関する保険金は20％減額される。90％以上の場合は、脂肪・後遺障害に関する保険金は50％減額され、傷害に関する保険金は20％減額される。被害者側の過失が100％の場合は加害者に責任がないとされ支払う必要がないとされている。
|
過失割合 |
死亡・後遺障害に関する保険金 |
傷害に関する保険金 |
|
70％未満 |
減額なし |
減額なし |
|
70％以上 |
20％減額 |
20％減額 |
|
80％以上 |
30％減額 |
20％減額 |
|
90％以上 |
50％減額 |
20％減額 |
|
100％ |
減額なし |
減額なし |
※ウィキペディア参照
4． 好意同乗（無償同乗）
過失相殺が行われる好意同乗者の範囲は、運転手・通行人の双方に過失がある交通事故の場合、助手席にいた者の被害は双方の運転手の共同不法行為によって発生したと考えられる。その場合、妻子・被用者は相殺の対象になるが、恋人・婚約者・子守を頼まれた近隣の主婦・保育園の保母・職場の同僚は対象とならないのが判例となっている。
5． 不真正連帯債務
各債務者が全額についての義務を負うが、債務者間に緊密な関係がなく、弁済及びこれと同視しうる事由を除いて、一債務者に生じた事由が他の債務者に影響しないものを、不真正連帯債務という。負担部分がなく、求償も当然には生じないが、類型によっては求償関係が生じることもある。
・法人の不法行為
法人が損害賠償債務を負う場合、理事個人も損害賠償債務を負う。この法人の債務と理事個人の債務は不真正連帯債務の関係にあるとされている。
・使用者責任
被用者の不法行為による使用者の賠償債務と、被用者の賠償債務は不真正連帯債務の関係にあるとされている。使用者が賠償した場合は被用者に対して求償することができる。
・共同不法行為
交通事故が起きた場合、複数の加害者が関連して一つの不法行為を構成した場合が共同不法行為に当たる。共同不法行為者は生じた損害全体につき各自が連帯して責任を負い、それぞれの責任割合にかかわらず、被害者に対してそれぞれ損害の全額を賠償する義務を負う。被害者はその全員順次又は同時に損害賠償の請求をすることができ、その中の一人が損害額全額の賠償をした場合には、他の全員の責任が免れる。共同不法行為責任は、直接の加害者の間に限らず成立する。
共同不法行為において、各共同不法行為者の負う損害賠償債務は、不真正連帯債務であると解されている。一人が賠償した場合は、不法行為者同士の間における負担割合に応じてほかの共同不法行為者に対して求償することができる。
6． 責任能力
民法上、責任能力とは不法行為に関する責任を負う能力のことであり、その行為の責任を弁識するに足るべき知識を備えていることが要求される。
責任能力を持たないものに対して不法行為責任が認められないため、損害賠償を請求することができない。責任無能力者の監督義務責任者が原則として責任を負うとされている。
～意思能力・責任能力・不法行為能力・過失相殺能力の違い～
意思能力は事理弁識能力のことであり、これに統御能力が加わると責任能力になる。過失相殺能力は当初、責任能力と同じものと考えられていたが、過失の客観化がすすみ、最判昭和３９年６月２４日の判例で事理弁識能力でよいとされた。責任能力と意思能力を合わせて不法行為能力となる。
7． 正当防衛と緊急避難
正当防衛とは、緊迫不正の侵害に対し、自分または他人の生命・権利を防衛するため、やむを得ずにした行為をいう。正当防衛は、それが構成要件に該当しても犯罪が成立せず（刑事上の正当防衛）、他人の権利を侵害しても損害賠償責任を負わない（民事上の正当防衛）。
いっぽう、緊急避難とは、急迫な危険・危難を避けるためにやむを得ず他社の権利を侵害したり危難を生じさせている物を破壊したりする行為であり、本来ならば法的責任を問われるところ、一定の条件の下にそれをされるものを言う。日本の刑法では、自己または他人の生命、身体、自由または財産に対する現在の危難を避けるため、やむをえずした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を越えなかった場合に限り、罰しないと規定している。日本の刑法学では緊急避難は違法性阻却事由とみる説が通説となっている。
それに対し、民法における緊急避難は、他人の物によって生じた急迫の危難に対して、自己または第三者の権利を防衛するためにその物を毀損する行為については不法行為による責任を問わないというもである。（民法７２０条二項に規定）
例えば、担任の飼い犬が暴走して襲ってきた場合にこれを撃退する、のが民法上の緊急避難である。他にも、今にも崩れそうなブロック塀がある場合に所有者に確認をとらないままにこれを取り壊してしまう行為も緊急避難にあてはまる。
正当防衛と緊急避難の違いは、正当防衛が「他人の不法行為」に対する防衛であるのに対して、緊急避難は「他人の物から生じた急迫の危険」にお対する防衛であることである。つまり、正当防衛は他人の行為からの防衛（不正対正）であり、緊急避難は他人の所有する物から防衛が問題となる。例えば、暴漢から逃れるために他人の家の門を壊して敷地内へ逃げ込んだ場合、刑法上では緊急避難の問題となるが、民法上では正当防衛の問題となる。民法の緊急避難は刑法のそれより狭く、一方で民法の正当防衛は刑法のそれよりも広くなっている。
参考文献
ウィキペディア 自動車損害賠償責任保険
ウィキペディア 自由診療
（https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%94%B1%E8%A8%BA%E7%99%82）
厚生労働省ホームページ
（http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-10.html）
ウィキペディア 過失相殺
ウィキペディア 責任能力
共同不法行為
（http://www.gohda-office.co.jp/category/1454704.html）
ウィキペディア 連帯債務
ウィキペディア 正当防衛
ウィキペディア 緊急避難
中江ゼミホームページ
花房ほのり
私は交通事故で保険を適用する場合は健康保険を適用するのが良いと考える。理由は以下の３点の通りである。
1、 第三者行為による事故
第三者行為による医療費は、本来加害者が全額負担すべきものである。健康保険で診療を受けると、加害者が負担すべき医療費を、健保組合が一時加害者に代わって立て替え払いし、あとから加害者または自動車損害賠償責任保険（任意保険会社）に請求し、支払いを受けることができる仮に被害者の過失割合を２０％(４０％)とするとき、被害者が健康保険を使用しない場合には被害者は治療費として２００万円を支払うことになるため（全額負担+保険診療の２倍の診療報酬）それにその他の損害を合わせると被害者の損害額は合計３００万円となる。そして被害者がこの３００万円を保険会社に請求すると，３００万円全体に対し２０％（４０％）の過失相殺がなされるため，被害者の受け取ることのできる保険金額は，３００万円の８０％（６０％）である２４０万円（１８０万円）となる。そうすると，被害者はすでに２００万円を病院に支払っているため，被害者の手元に残る金額は，結果として，４０万円（－２０万円）となる。反対に被害者が健康保険を使用した場合には，被害者は治療費として３０万円を支払うにとどまりまるため（窓口３割負担+通常の診療報酬），その他の損害と合わせると被害者の損害額は合計１３０万円となる。そして被害者がこの１３０万円を保険会社に請求すると，１３０万円に対して２０％（４０％）の過失相殺がなされるため，被害者の受け取ることのできる保険金額は，１３０万円の８０％（６０％）である１０４万円（７８万円）となる。そうすると，被害者はすでに３０万円を病院に支払っているため，被害者の手元に残る金額は結果として，７４万円（４８万円）となり，健康保険を使用しなかった場合よりも，手元に残る金額が大きくなる。また、自動車賠償責任保険では、傷害による損害の限度額は１２０万円と決まっている。だからといって１２０万円を超えて治療をしてはいけないということではないが、金額が高い自由診療だと、ケガの程度によるが治療費だけでこの金額の大部分になってしまうことがある。そうすると、相手側が自動車賠償責任保険だけしか加入していない場合には、他に請求したい休業損害や慰謝料などは自動車賠償責任保険から受け取ることができないということになる。よって、健康保険を適用したほうが良いと考える。
2、責任能力がない者の場合
未成年者や精神上の障害がある者など，行為者に責任を弁識する能力（責任能力）が無い場合には，その行為者は不法行為責任を負わないとされている。自分の行為の意味，つまり自分がその行為をするとどのような結果が生じるのかということを理解できる程度の能力つまり事理弁識能力のない４，５歳の幼児の場合には，過失相殺における自己過失があるかどうかということで損害賠償額を調整するのではなく，その保護者等に真正過失または落ち度や不注意がなかったのかということを加味して，監督義務者責任または被害者側の過失を考慮し，それによって損害賠償額を調整すべきと考えられている。責任能力とは自分の行為が違法かどうかを認識できる能力のことで、判例では12歳程度の知能が一応の基準と見なされます。大人でも認知症や精神疾患などの心神喪失状態では、責任能力なしと見なされることがある。ノイローゼによる正面衝突事故被害者の遺族が提訴した民事訴訟においては、一時的な心身喪失状態で死亡事故を起こしたとする加害者の男性が、民法 713条の「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない」という条文に基づき、運行供用者責任（賠償責任）も負わないと主張した。 これに対して大阪地裁は2005年２月14日、加害者は事故当時「心神喪失の状態」にあった、すなわち責任能力がなかったとものと認定したものの、自賠法の趣旨から民法713条は適用しない（運行供用者としての責任は免責されない）と判示した。 判決理由で「自賠法３条但書は、自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったことを証明しなければ運行供用者は免責されないとしているが、人の心神喪失も、車両の構造上の欠陥又は機能の障害と同様、車両圏内の要因・事情ということができるから、このような場合に運行供用者の免責を認めるのは相当でない。よって、責任能力のない者の場合でも健康保険を適用するほうが被害者側の負担も軽減される。
3、好意同乗の場合
たとえば，Ａさんが自動車を運転していたところ，Ｂさんを見かけたため，好意・無償でＢさんを同乗させてあげ，その後，Ｂさんを同乗させたまま交通事故を起こし，Ｂさんに怪我をさせたとする。Ａさんが運行併用者であった場合，Ｂさんも共同運行供用者に当たるという事情がない限り，Ｂさんは他人のため，Ｂさんは，Ａさんに対して，運航併用者責任に基づく損害賠償請求をすることができる。また，Ａさんが運行供用者でなかった場合またはＡさんが運行供用者であるもののＢさんが共同運行供用者である場合であっても，Ｂさんは，Ａさんに対して，一般付保行為に基づく損害賠償請求をすることができる。しかし、好意同乗（無償同乗）減額は，他人の親切をむげにするべきではないという日本人的考え方からなのか，以前から裁判でも比較的認められている。しかも，かつての裁判例には，好意同乗・無償同乗であるというだけで，減額が認められる場合もあったくらいであるが、現在では，好意同乗であるというだけで減額が認められるという例は少なくなり，同乗者（前記の例でいえばＢさん）に何らかの帰責性がある場合だけ，好意同乗減額を認めるというのが一般的になっている。具体的には，過失相殺の規定を適用または類推適用して，交通事故の発生や損害の発生・拡大についての同乗者の帰責性を割合的に把握し，それを損害賠償額に乗じることによって，好意同乗減額を行っている。
共同不法行為の場合の損害額算定は、被害者の総損害額に対し、共同不法行為者各自の過失割合に応じて、その分担額を決定するのが原則である。共同不法行為とは、複数人の過失ある行為が客観的に共同して損害を引き起こしたことを指し，加害者の損害賠償責任は「不真正連帯債務」となる（民法７１９条１項）。 対人賠償保険の場合、自動車賠償責任保険における共同不法行為の計算が、責任割合のとりきめのないかぎり、各自の過失割合に従って算出するのではなく、共同不法行為者各自の過失を平等と推定し、各々の車両の保険金限度額まで支払っている関係上、つぎの方法で損害額を算定している。過失の小さい者の賠償金分担額が、自動車賠償責任保険金支払額以上の場合、この場合は一般原則どおり、被害者の総損害額に対して各々の過失割合を乗じて分担額を算定しているが、過失の小さい者の賠償金分担額が、自動車賠償責任保険金支払額以下の場合は、過失の小さい者の賠償金分担額を自動車賠償責任保険支払額と同額とし、他の共同不法行為者については、被害者の総損害額から、過失の小さい者の自動車賠償責任保険金支払額を控除した残額を負担させる。交差点における出合いがしらの事故で、一方の車両に同乗していた者が死傷したときは、双方の車両に賠償責任が生じる。民法719条は「故人が共同の不法行為に因りて他人に損害を加へたるときは各自連帯にて其賠償の責に任ず」と規定し、被害者は共同不法行為者のいずれに対しても、損害額の全部または一部を請求することができる。 例えば，Aが運転する車にBがAは飲酒運転であることを知りながら同乗していたときに、Aの車とCの車が衝突したとする。そして，その衝突の衝撃で，Aの車とDの車が車道から外に出て歩道上に飛び出し，歩道上にいたBに接触して，Bがケガをし、100万円の損害が生じたとする。AとBとCの過失が，A：B：C＝５：2：3だったとする。平成１５年の最高裁判例では，複数の加害者の過失と被害者の過失が競合する１つの交通事故の場合など，原因となったすべての過失の割合（絶対的過失割合）を（同時に）認定することができる場合には，絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について，加害者の連帯責任となるとされている。そのため、このような場合には，まず被害者であるBの絶対的過失割合である「２」について過失相殺が行われ、過失相殺をした損害賠償額は８０万円となる。そして，この８０万円については加害者の連帯責任となるため、BはAに請求してAから８０万円全額を支払ってもらうこともできるし，Cに請求してCから８０万円全額を払ってもらうこともできる。このとき，BはAに５０万円，Cに３０万円をそれぞれ分けて請求する必要はない。
3、緊急避難の場合
たとえば、自動車を運転中、前方の道路脇を走っていた二人乗りのこどもの自転車が急にハンドルをとられて道路の中央にふらついてきたので、これを避けようとしてハンドルを右に大きく切ったところ、あいにく右側を通行中のおじいさんをひき殺してしまった場合。この場合はこどもを避けるためには、あの場合そうするより仕方がなかったため、緊急避難に値する。緊急避難とは、自己または他人の生命、身体、自由もしくは財産に対し法益侵害の危険がきわめて切迫した状態にある場合に、それを避けるためやむことを得ないでした行為のことをいう。自分や他人の生命などを守るために、やむを得ず緊急避難行為をしようという意思があること、相当性が認められるためには、「緊急避難行為以外に方法がなかったこと」「侵害した利益が守ろうとした利益を上回らないこと」が必要である。補充の原則と法益の権衡という二つの要件を満たす必要がある。したがって、本問の場合にも、あなたの行為が、他に方法がない絶対的な手段であり、その行為から生じた害が避けようとした害の程度を越えないものであれば、緊急避難として免責となる。通常、このような事件で、一見緊急避難と考えられるような事例でも、実は、このような事態現出以前において、前方不注視、スピード違反等の過失が認められる場合が多く、緊急避難と認定されることは、実際上ほとんどないが、かりに結果的には、避けようとした害が大きくなった場合でも、他の緊急避難の要件をすべて満たしていれば、責任は問われず、無罪たるべきものである。この場合においても健康保険を適用すべきであると考える。
以上の３点を理由に私は交通事故で保険を適用する場合は健康保険を適用するのが良いと考える。
http://dourotokoutu.com/2jidousyahoken/14
http://www.ko2jiko.com/hoken/kenkou.html
http://www.nagasaki-kotsujiko.com/145/
--
帝京大学法学部法律学科
花房 ほのり
16J110009h3@stu.teikyo-u.ac.jp
宮橋直也
＜結論＞
交通事故では被害者も保険の知識を備えておく必要がある
＜交通事故と保険の関係＞
交通事故を起こすと当然被害者と加害者がでてくる。民事処分で民法７０９条の「不法行為による損害賠償」に基づき、加害者に対し被害者の医療費や車両の修理費を払うことを求められる。自動車と人の事故の場合、責任を全負担するのはまず自動車側と思うだろう。だが、場合によってはそうでもないことがある。
＜保険の選択＞
例えば自動車運転手Aがセンターラインをはみ出したことにより反対車線の自動車運転手Bがやむなくよけたところ車道に飛び出してきていた歩行者Cに骨折（10万点）の怪我を負わせてしまった。この場合に設定された過失割合はAに50 %、Cに50%でB
＜過失相殺能力の程度＞
上の例のように交通事故による損害賠償請求においては，過失相殺が問題となることが少なくない。民法７０９条等にいう過失を「真正過失」、過失相殺における過失を「自己過失」といって，両者の呼称を区別する場合もある。真正過失があると認められると，不法行為責任を負うことになる。もっとも，自己の行為の責任すら理解できない者に対し法的責任を負わせることは，過失責任の原理に反する。そのため，未成年者や精神上の障害がある者など，行為者に責任を弁識する能力（責任能力）が無い場合には，その行為者は不法行為責任を負わないとされてはいる。だが、過失相殺における自己過失については，その行為者に責任能力があることまでは必要ではなく，事理を弁識する能力があれば足りると解されている。最高裁判例は，古くは責任能力が必要であるとしていたが，その後判例が変更され，上記のとおり，事理弁識能力で足りるというように判断されている。つまり、過失相殺能力があるというためには，その行為者に責任能力までは必要ないが「事理弁識能力」はなければならないということ。事理弁識能力とは，自分の行為の意味，つまり自分がその行為をするとどのような結果が生じるのかということを理解できる程度の能力ということです。そこで，事理弁識能力は，何歳くらいから備わっていると言えるのかということが問題となってくるのだが、判例では6・7歳から事理弁識能力があるとされている。先ほどの例の歩行者Cが8歳ならば過失相殺能力あり、4歳ならば過失相殺能力なしとされる。そこで，このような幼児の場合には，過失相殺における自己過失があるかどうかということで損害賠償額を調整するのではなく，その保護者等に真正過失または落ち度や不注意がなかったのかということを加味して，監督義務者責任または被害者側の過失を考慮し，それによって損害賠償額を調整すべきとされている。
＜好意同乗の問題＞
もし交通事故を起こし，好意・無償で同乗させていた他人に損害を与えてしまった場合に，その運転者等は通常どおりの損害賠償をしなければならないのか，それとも減額が認められるのかという問題を「好意同乗減額」の問題という。たとえば，Ａが自動車を運転していたところ，Ｂを見かけたため，好意・無償でＢを同乗させてあげ，その後，Ｂを同乗させたまま交通事故を起こしてしまい，Ｂに怪我をさせてしまったとする。Ａが運行供用者であった場合，Ｂも共同運行供用者に当たるという事情がない限り，Ｂは「他人」なので，Ｂは，Ａに対して，運行供用者責任に基づく損害賠償請求をすることができる。また，Ａが運行供用者でなかった場合またはＡが運行供用者であるもののＢが共同運行供用者である場合であっても，Ｂは，Ａに対して，一般不法行為責任に基づく損害賠償請求をすることができる。この場合，Ａはあくまで好意及び無償でＢを同乗させてあげている。それにもかかわら
ず，好意・無償でない場合や通常の交通事故の場合と同じような責任をＡに課すのが妥当なのかという疑問が生ずる。そこで，このような好意同乗の場合には，それを理由として，損害賠償額を減額すべきではないのか，という問題が「好意同乗減額」と呼ばれる問題である。
＜加害者が複数、被害者が一人の場合＞
自動車運転者Aがセンターラインを越えてきて居眠り中の自動車運転者は急ハンドルで車道側によけたところ歩行者Cに衝突し骨折の怪我をさせてしまった。治療費は100万円であった。設定された過失はA：B＝8:2である。まず、被害者は複数加害者がいる場合、誰からいくら請求してもらえるのか。また、歩行者CがBの負担を免除すると言ったら歩行者Cの治療費はどうなるのか。複数人の過失ある行為が客観的に共同して損害を引き起こした場合を「共同不法行為」といい，この場合，加害者の損害賠償責任は「不真正連帯債務」となる（民法７１９条１項）。この場合運転者Aと運転者Bの「共同不法行為」にあたるので，運転者Aの責任と運転者Bの責任は「連帯責任」となる。したがって，2人から合計100万円になるように請求できるのだが、被害者は運転手Aに50万円，運転手Bに50万円をそれぞれ請求しなくてもよく，運転手Aに請求して運転手Aから100万円全額を支払ってもらうか，又は，運転手Bに請求して運転手Bから100万円全額を払ってもらうこともできる。なので歩行者Cが運転手Bを免除した場合、運転手Aが100万円払うということになる。もし、被害者にも過失があった場合はどうなるのか。平成15年の最高裁判例では，複数の加害者の過失と被害者の過失が競合する１つの交通事故の場合など，原因となったすべての過失の割合を認定することができる場合には，絶対的過失割合に基づく被害者の過失による過失相殺をした損害賠償額について，加害者の連帯責任となるとしている。例えばA：B：C＝5:3:2と過失割合を認定した場合。被害者である歩行者Cの絶対的過失割合である「2」について過失相殺が行われる。この過失相殺をした損害賠償額は80万円となる。そして，この80万円については加害者の連帯責任となるので，運転手Aと運転手Bから合計80万円を払ってもらうことになる。
＜交通事故での正当防衛、緊急避難＞
正当防衛・緊急避難はどちらかといえば、刑事責任の分野で登場してくる場合が多いが、民事責任の分野でも登場してくる。刑事責任の分野で、正当防衛・緊急避難が認められれば犯罪が不成立となり、反社会的行為ではないということになる。民事責任の分野でこれが認められれば不法行為とはならない適法行為ということになり損害賠償責任はないということになるわけだ。まず当防衛の条文から見ていくことにする。民法720条1項「他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は損害賠償の責任を負わない。」この条文規定から明らかになることは、刑法の正当防衛要件と大きく異なる点があるということ。 正当防衛のために加害行為を加える相手方は、刑法においてはあくまでも加害者だけであるのに対して、民法の正当防衛は、加害者だけに限られず第三者に対する加害行為も認められるということだ。片側一車線の道路を進行中、いきなり反対車線から車両が飛び込んできたので、これとの衝突を避けるために、歩道に避けたところ歩行者にぶつかってしまった。刑法では緊急避難ということになるが、民法では正当防衛が成立するということになる。次に、緊急避難の条文。民法720条2項。「前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその者を損傷した場合について準用する」 この条文規定から明らかなように、民法の緊急避難は、あくまでも物からの侵害のみで、その侵害物を毀損する場合のみに成立するということ。人からの侵害に対しての緊急避難は成立しないということだ。このように、理論上は、交通事故においても正当防衛・緊急避難は成立するが実務的にはその適用は非常に難しいと思われる。実際の事故においては、正当防衛適用事故態様はかなりあると思われるが、立証の問題がある。正当防衛を主張する前提として、まずみずからの運転行為は過失のない適法行為であったことを立証しなければならず、これを乗り越えることが容易ではないがために、実務的にはあまり正当防衛による無過失主張が見かけられないのではないかと推測される。
＜おわりに＞
今回のレポートに取り組んで交通事故と保険の関係についていろいろ考え調べたら授業中にやったこと以外の知識も増えた。いろいろな場合について損害賠償がどうなるかを調べたが、私としては判例や通説の見解で納得できる。私は自動車免許を持っているが、もし事故が起きた時に保険ってどう使えるのかわからなかったが、今回でとても理解が深まった。また、自分が交通事故を起こした立場となったとしても、交通事故に巻き込まれてしまったとしても、これらの知識を備えておければ弁護士や医師にまかせっきりで損をする示談を回避することができるだろう。
交通事故オンライン http://www.jiko-online.com/index.htm
交通事故・損害賠償請求ネット相談室 http://www.koutuujikobengo.jp/
ライフデザインノート
ポケット六法
佐藤 拓
【交通事故と保険】
16J110018
佐藤 拓
キーワード一覧【 自動車損害賠償責任保険、自由診療、第三者行為、過失相殺、責任能力、好意同乗、共同不法行為、不真正連帯債務、被害者側の過失、緊急避難、】
結論：加害者側に被害者の過失分を除いた分の治療費を請求ができる。
自動車事故の損害賠償請求において最も重要ともいえる制度が、自動車損害賠償責任保険だ。これはいわゆる自賠責保険という。
現在の環境は交通手段が発展し、様々な場面においてその利用するのが不可欠となった、それに伴って交通事故も避けることができない問題になってきた。自動車事故は他の交通手段より事故件数が多くなっている。事故に遭ってしまった場合、被害者は加害者に対し損害賠償を請求することができる、もっとも自動車事故の損害賠償額は高額になる場合があり加害者に資力が無い場合において十分な補償が受けられない事態もあり得る。しかし，十分な補償を受けることができないとすると，被害者保護に反する。そこで，被害者保護の見地から生み出された制度が，自動車保険という制度だ。自動車保険のうち最低限度の損害賠償を保障するための公的な自動車保障制度が自動車損害賠償責任保険だ。さらに、この制度は強制保険であり自動車または原動機付き自転車で運行するに当たり自動車損害賠償責任保険に入っているのが義務である。また自動車損害賠償保障法5条で自賠責保険に入ってない自動車等を運行の用に供にするのは禁止されている。これに違法した場合1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される。
2.自由診療と保険診療の違い
自由診療とは保険が適用されない診療のことをいう。厚生労働省が承認していない治療や薬を使用すると自由診療となり、治療費が全額自己負担となる。保険診療は、健康保険が適用になる通常の治療のことで、通常自己負担は3割で高額療養費制度により、上限から超えた部分は払い戻しが受けられる。また自由診療にはメリット、デメリットがある。
・メリット
病院側のメリットとしては自由診療ができることにより、自由に料金を設定することができるようになるので、利益が上げやすい。また金額に見合った治療環境や医療技術を提供するため、医療の質が高まることが予想される。
また自由診療は医師から自分に合った治療法を提案してもらったりし、自分の納得のいく治療を受けることができる。各個人の体質や病気の状態に合わせたきめ細かい診療は保険診療では難しいことだが、自由診療なら可能になる。
・デメリット
自由診療のデメリットは医療格差だ。お金を持っている人は最高の医療を受けることができるが、お金を持っていない人は自分の支払える範囲の治療しか受けることができない。民間の医療保険やがん保険に加入していれば良いが、加入していない人は高額の医療費を払い続けることは難しいということだ。
3.第三者行為による傷病
交通事故などのように、第三者の行為によってケガをした、病気になった場合、その医療費は加害者が負担するべきものだ。しかし、加害者と話し合いがつかなかったりして、加害者がその場で精算できないような場合、健康保険で診療を受けることができる。ただし、通勤途上や業務上のケガは健康保険ではかかれない。加害者から損害賠償の支払いを受けた場合、健保組合は、その賠償の金額の限度内で、保険給付を行わなくてもよいことになっている。たとえば、被害者が加害者と示談を結んでしまうと、請求すべき医療費などを加害者あてに請求できなくなり、その結果として被害を受けた方が負担することになるので、注意が必要だ。また自動車事故のように第三者の行為によってケガまたは、 病気になり健康保険で診療を受ける場合は、必ず「第三者行為による傷病届」を健保組合へ提出し、示談をするような場合は再度健保組合に相談する。健康保険で治療を受ける場合は、必ず健保組合に対して「第三者行為による傷病届」を提出しなければなりません。（健康保険法施行規則第65条)まず、口頭や電話で健保組合に連絡し、後日できるだけすみやかに「第三者行為による傷病届」を提出しなければならない。
第三者行為による医療費は、本来加害者が全額負担すべきものだ。健康保険で診療を受けると、加害者が負担すべき医療費を、健保組合が一時加害者に代わって立て替え払いし、あとから加害者または自動車損害賠償責任保険（任意保険会社）に請求し、支払いを受けることになる。
4．過失相殺による減額
損害賠償の額を定めるにあたり，加害者に全面的に負担させるのではなく，被害者側の過失があればこれを斟酌して損害の公平な分担を図る制度をいう。不法行為だけでなく債務不履行にも適用されるが，交通事故のように事故の態様が定型化できる場合にはそれに対応した標準的な過失相殺率により事故処理がなされ，実務上も重要な役割を担う制度である。 過失相殺では，公平の理念にもとづいて賠償額が減額されるわけであるから，被害者側の過失も，加害者としての過失と較べて，注意義務違反の程度が軽いものでもよく，また，責任能力が具わっている必要はない(事理を弁識するに足る知能，〈事理弁識能力〉で足りる)。
5．好意同乗による減額
好意同乗とは、運転者の好意により無償で車に同乗させてもらうことだ。運転者が交通事故を起こしたため傷害を負った同乗の被害者が、加害者である運転者に対して損害賠償請求する場合、保険会社は、好意同乗を理由とする減額を主張してくる。
・減額される理由
同乗者が、危険な運転状態を容認または危険な運転を助長、誘発したなどの場合には、加害者の過失の程度などを考慮のうえ、総損害額から一定の減額を行うか、慰謝料額を減じる扱いをすることがある。たとえば、飲酒によるアルコールの影響を運転者が受けていることを認識しながら同乗した場合などだ。
私はアルコールの影響により交通事故を起こした場合の損害賠償または慰謝料は減額せず全額自分で支払えば良いと思う、なぜなら運転者が飲酒していて交通事故になる可能性が高いと知りながらも乗車するなんて同乗者の落ち度がしられるからだ。
6．民法上の特殊不法行為について
719条に共同不法行為がある、これは複数の人間の関与により、権利侵害の結果を発生させる現象のこと。またはそのような結果を発生させた行為。またはそのような行為に対する民事上の責任（不法行為責任）の発生要件と主観的・客観的範囲を定めた私法上の制度。日本法においては、不法行為の特殊類型として民法719条に規定されている。また類型として
719条第1項前段・数人の者が共同の不法行為によって他人に損害を加えた場合
719条第1項後段・共同行為者のなかで実際に誰が損害を加えたのか明らかでない場合
719条第2項・教唆者・幇助者
がある。さらに共同不法行為には成立要件がある。
・行為者それぞれが709条の不法行為の成立要件を満たすこと
従来の通説においては、行為者それぞれが通常の不法行為の成立要件（709条）を満たすことが必要とされているが、近時の有力説においては、それでは719条で独自に規定の意義を定めた意味がなくなるとして、たとえば因果関係の要件を緩和するなど、解釈論に工夫を加える学説も多い。
・行為者の行為に関連共同性が認められること
判例は「共同」とは客観的にみて不法行為が共同で行われたことで足り、共謀といった不法行為者間の主観的な認識を必要としないとする客観的共同説をとる。
また719条の行為者は生じた損害全額につき連帯して責任を負うとされるの【連帯して責任を負う】の解釈において旧判例は共同不法行為者同士が連帯債務を負うことと解していた。しかし、その後、判例は共同不法行為者の責任は不真正連帯債務であり連帯債務ではないと判示している。不真正連帯債務は連帯債務のうち、各債務者が全額についての義務を負うが、債務者間に緊密な関係がなく、弁済及びこれと同視し得る事由を除いて、一債務者に生じた事由が他の債務者に影響しないものを意味する。また不真正連帯債務は下記のことがある。
法人の不法行為
・法人が損害賠償債務（旧民法44条「（現）一般社団法人及び一般財団法人に関する法律78条参照」）を負う場合、理事個人も損害賠償債務（709条）を負う（大審院昭和7年5月27日判決・民集11巻1069頁）。この法人の債務と理事個人の債務は、不真正連帯債務の関係に立つとされる。
使用者責任
・被用者の不法行為による使用者の賠償債務（715条）と、被用者の賠償債務（709条）は不真正連帯債務の関係にあるとされる。使用者が賠償をした場合は、被用者に対し求償することができる（715条3項）。
7.緊急避難について
緊急避難は急迫な危険・危難を避けるためにやむを得ず他者の権利を侵害したり危難を生じさせている物を破壊したりする行為であり、本来ならば法的責任を問われるところ、一定の条件の下にそれを免除されるものをいう。刑法、民法、国際法においてそれぞれ意味が異なる。
刑法：人や物から生じた現在の危難に対して、自己または第三者の権利や利益（生命、身体、自由、または財産など）を守るため、他の手段が無いためにやむを得ず他人やその財産に危害を加えたとしても、やむを得ずに生じさせてしまった損害よりも避けようとした損害の方が大きい場合には犯罪は成立しないという制度である。
国際法：自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しないと規定している（刑法37条1項）。日本の刑法学では緊急避難は違法性阻却事由とみる説が通説となっている。日本の刑法では条文の位置からも正当行為、正当防衛、緊急避難の順に規定されており、前二者が明らかに違法性阻却事由であることから緊急避難も違法性阻却事由と解されている。違法性が阻却されるためには刑法37条の要件を満たす必要がある。なお、以下の刑法37条の要件を満たさない場合でも期待可能性を欠く場合には責任が阻却されることがあり得る（超法規的緊急避難と呼ぶ）。
民法：一定の危難から自己または第三者の権利を守るため、やむを得ずにした行為によって他者に損害を与えたとしても損害賠償責任は発生しないとする制度をいう。
私見
・今回の内容は将来起こりうる可能性がある交通事故と保険のことで、キーワードの内容や関連性を調べ、まとめていくうちに覚えておかないといけない内容が出てきたのでまだまだ法律のことはわからないことが多いけど少しずつ覚えたいと思いました。
参考資料
・wiki
・ポケット六法
・弁護士ドットコム