議題『社会保障改革と消費税』
キーワード:国民負担率、応能負担、応益負担、累進性、逆進性、間接税、所得捕捉率、共通番号制、社会保障個人口座、Central  Provident  Fund
私の結論:『消費税を上げるだけが増税ではない。消費税を上げるだけが社会保障の問題を解決する方法ではない。』


 
今日の日本の問題として挙げられるものの中に“日本の社会保障は国民に行き届いているのか”ということと“社会保障に充てる財源は足りているのか”というものがある。
 
前者について私は、社会保障は広く与えられているとは思うがそれが個々の満足いく程度に与えられているとは思わない。また後者に関しても、現段階で財源が足りておらずこのまま我々が歳を重ねた頃には年金を貰えるのか、と財源不足による社会保障に対する将来への不安は日に日に増していくばかりだ。
 
では、実際はどのようにすれば良いのだろうか。
 
2015年には消費税が10パーセントに引き上げられるという素案が出され問題となっている。社会保障に掛かるお金が足りないことが理由の1つである。
 
ただ、ここで疑問が出てくる。この社会保障と税金は一体どのような関わりを持っているのか、何を根拠に政府は増税を掲げているのかということだ。そこで社会保障と税金の仕組みについて簡単に解説した後で私の見解を述べていきたいと思う。

 
私たちは日々働きそれの対価として各々働きに見合った給料をもらっている。これがいわゆる所得である。
 
日本のGDPは500兆円と言われ、その内300兆円は民間で使われている。民間で使われている中でも、日本が誇れる産業として自動車や電化製品等があるだろうが、他国ではITやバイオが発達しているのに対し日本はこの少し古い産業メインで大丈夫なのだろうか、ということは横道に置いておく。ちなみにGDPとはGross  Domestic  Product、
いわゆる国内総生産のことである。一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額のことをいう。話を戻そう。500兆円の内300兆円は民間で使われ、残りの200兆円は公的な目的に使用されている。今日本の国民負担率は40パーセントである。国民負担率とはGDPの内、税金と保険料に当てられている割合である。この公的に使われてるお金には一般会計と地方会計、特別会計に分けられている。一般会計と地方会計には重なりあう部分があり、それが地方交付金である。また特別会計と一般会計の重なりあう部分があり、社会保障による分野で重なりあっている。日本の年金制度は1階と2階部分に別れており、2階部分には共済年金や厚生年金などがある。一般会計の一部は基礎年金の一部に繰り入れられてもいるのだ。
 
一般会計と特別会計とはそもそも、その財源となるものとそれを扱う所管が異なっていて、一般会計が税を財源として所管が財務省なのに対し、特別会計は保険料を財源として所管は主に厚労省である。一般会計である税の管理を財務省1省だけに任せてよいのかというところもある。やはり、専門家にお金の使用方法は任せるべきなのではないか、ということだ。しかし、これに関しては今のままで良い。何故なら財務官僚のプライドにより一般会計の審査にはほぼ穴が無いからだ。一般会計に時間を掛けるがあまり政府も、マスコミも特別会計に目が行っておらず、大規模年金保養基地「グリーンピア」を建設しまっているようなところを見ると、税の所在は一般会計を担当する財務省にあって良い。それ以前にこの会計制度を経済財政諮問会議を開いたり、内閣府による査定を行ったりという抜本的な見直しが必要だからだ。


 社会保障に掛かる財源について説明したので、次は税金について、所得税と消費税を中心に解説する。


 税金は大きく2つに別れる。直接税と間接税だ。直接税とは、国や地方自治体へ税金を納める納税義務者と、税金を実際に負担する担税者が同一である税金のことである。法人税や住民税がこれに当たる。一方、間接税とは、国や地方自治体へ税金を納める納税義務者と、税金を実際に負担する担税者が異なる税金のことであり、酒税やたばこ税などがこれである。間接税の大きな特徴としては、所得や資産の大小に関わらず平等に税金を負担することが挙げられる。
 
以上のことから所得税は直接税、消費税は間接税であることがわかる。では消費税と所得税についてもう少し詳しく見ていこう。そのため、消費税と所得税の性質について分析していく。
 消費税は逆進性を有する、受けた利益に応ずる応益負担であり、貧者ほど負担割合が大きい。それに対して所得税は累進性を有している、能力に応じて負担する応能負担であるので富者であるほど負担割合は大きくなる。この間をとる、貧者と富者の割合が同じになるのが保険料である。累進性である応能負担は平等主義的だが逆進性である応益負担は自由主義的である。
 この累進性逆進性を分かりやすい例を用いて説明すると以下の通りである。  今ここに年収200万円のAさんと年収1000万円のBさんがいる。逆進性の場合、Aさんが払う金額は40万円でBさんが50万円負担することになる。金額だけで見ると、大差が無いように感じるがAさんは所得の20パーセントを負担しているのに対し、Bさんは5パーセントしか負担していないのだ。それでは累進性の場合はどうか。累進性の場合Aさんは5パーセントの10万円支払っているのに対し、Bさんは20パーセントの200万円支払っている。 同じ5パーセント
と20パーセントでもこれだけ違うのだ。ちなみに保険料はそれぞれ10パーセント支払うのでAさんは20万円、Bさんは100万円支払うことになる。

 
今回、政府は消費税の増税を掲げたわけだがそのメリットが無いこともない。まず老人も負担するため現役の負担が減るということだ。さらに税収が1パーセントで2.5兆円と非常に大きい。
 
しかしこれらのメリットは共通番号制にすることで解消が可能なのである。共通番号制とは、社会保障と税に共通の番号を国民一人ひとりに割り振る制度。社会保障制度と税制を一体化することにより、より正確な所得情報を把握して適正な課税や給付につなげ、事務の効率化や国民負担の公平性の向上を図る目的とされているものである。これによって消費税を上げなくても老人の年金から税が徴収できる上、税収も消費税と変わらないのだ。
 
所得捕捉率が産業によってまちまちなのも問題である。この所得捕捉率はクロヨンとも呼ばれる。勤労者が手にする所得の内、課税の対象となるのは必要経費を除いた残額である。本来課税対象とされるべき所得の内、税務署がどの程度の割合を把握しているかを示す数値を捕捉率と呼ぶ。
 
社会保障に対する対策として挙げられるものには社会保障個人口座も含まれるだろう。これは税金と社会保険料をあわせた「社会保障個人口座」を開設し、「社会保障電子通帳」を交付する。医療・介護、年金などの負担と給付の関係を明確化にする。また、その個人口座を使い、個人の選択による自前のセーフティーネット構築を可能にするというものだ。  またシンガポールではCentral  Provident  Fund、いわゆる福祉積立金制度も採られている。 

 

 以上が社会保障と税金に関する解説だが、次に本題とも言える『消費税を10パーセント引き上げる』ということに対しての私の意見を述べていこう。 

 消費税を10パーセント上げることに関して私は反対である。何故なら、政府にはまだ排除すべき無駄が多くあるからだ。  例えば国会議員の給料。下がると言われていたのにも関わらず上がってしまった。それに対して下がっていく民間人の給料。給料が上がっているのにも関わらず下がった民間人に更に負担させようというのはおかしなことである。その上、衆議院議員を減らすという素案も同時に出された。議員を減らすから給料は上げても平気という観点は大間違いである。議員を離れた人達はその後どうなるのか。全員そうとは言わないが天下りする議員も多いだろう。天下り先の給料も税金から出ているのだから議員を減らすのは場合によっては、税金を今より使うことになりかねない。  更に先ほど特別会計のチェックは曖昧であるということを述べた。特別会計のチェックが曖昧であるがためにグリーンピアのような大きな無駄遣いが発生してしまったのだ。足りないと叫ぶ前にまず、このような制度を見直し、改善させていく必要がある。そうして、無駄を省いた上で初めて増税すればよいのだ。 と言っても、私自身も無駄を排除したところで足りるかと言われれば、無駄を排除しても足りないだろうと思う。そのため、増税は避けられないことなのだ。しかし、増税=消費税10パーセントアップとしても良いのだろうか。増税と言っても他にやり方はある。消費税では無く、所得税や保険料を上げるやり方だ。というのも、消費税は、貧者ほど負担が大きい税である。その為、貧者が買い物をしなくなっては、税金は集まらない。税金を上げて、貧者の生活用品は品質を落としたりして、生計をキープしていけばいいのかもしれないが、そうしてしまうと、今度は、そういった人向けに商売をしている企業が影響を受けてしまう恐れがある。また、大きく消費税を得れるのは車や電化製品など高い買い物の時である。しかし、税金が上がるということはその製品自体もあがってしまうため、消費者が減ってしまう可能性もある。そもそもただでさえ、生活が苦しい人もいるのに、更に負担を掛けてしまうのは如何なものか。これで脱税者が増えてしまっても、収入源が減ってしまうので逆効果になってしまう。それでは、所得税を上げてみると言う方法はどうだろうか。所得税は富者ほど負担割合が大きいため、先ほどの例でもわかるように、消費税や保険料を上げるよりも、効率よく更に早く、税収を上げることが出来る。お金を持っている人の負担が増えるので、貧者の負担も大きくなくて良い。しかし、これも問題である。富者も努力したり、一生懸命働いてきた成果として、今の収入に到達した人も多いだろうからだ。そのような人の場合、上がった給料と言うのはその人の頑張りの成果と言っても良い。頑張った分だけ負担が増えると言う考え方も出来てしまうのが、この所得税の増税なのだ。若しかしたら負担が増えるからと働く意欲を失う人も出てきてしまうかもしれない。なので私は保険料のアップが一番良策だと考える。どちらにせよ国民負担率は少し上げる必要があるのは否めない。ちなみに、アメリカは25パーセントでスウェーデンは75パーセントだが上げるとしてもどの程度上げればよいのか。私は、50パーセントで良いと思う。これを越えてしまうと、自動車産業や電気産業など日本の売りにしている産業にも影響を及ぼしかねない。その為、上げるとしても少量で良い。 そして、上げる以前に今の社会保障をどうにかすべきだ。どんなに増税して社会福祉が良くなりますよと言われても、現状を見てしまうと、増税に反対する気持ちが勝ってしまう。生活保護が本当に必要な人にきちんとした額を与えられていなかったり、私達が歳をとった頃には年金が無くなる不安があったりと、増税をする前にしなければならないことがある。特別会計の件にしてもそうだ。このようなところをしっかり定め、改善した上で「増税します」と言わない限り国民の納得を得るのは難しいだろう。それで初めて増税すればよいのだ。その時は、先ほども述べたように、消費税や所得税ではなく保険料を中心に上げるべきである。保険料が今の特別会計のままであれば、保険料を上げるのは非常にリスクが伴うが、先ほども述べたように、そのような根本的なところさえ、改善できれば保険料アップも難しくないはずだ。 消費税を上げるだけが増税ではない。消費税を上げるだけが社会保障の問題を解決する方法ではない。 これがこの問題に対する私の結論だ。消費税を上げる前に、もっと見直すべきところがあるはずだ。消費税を上げる以前にもっと良い策があるはずだ。そのことをよく踏まえた上で初めて増税に踏み込むべきなのではないかと私は思う。