帝京大学「社会保障法B」(中江章浩先生)レポート「社会保障改革と消費税」 法学部法律学科2年10j013026山内智博(やまうちともひろ)
社会保障改革と消費税
概要
まず、現状について述べていき、次に、どのように改革していくかを記載し、最後に結論を書きたいと思う。
1.現状について
現在の日本の総人口における高齢者の割合は、社会保障制度設計時の総人口における高齢者の割合と比べ、大きく異なっている。しかし、少子高齢化が進み世代間ギャップが生じているにもかかわらず社会保障制度は依然として変わっていない。そして、今回民主党が行う社会保障改革は、今までの制度を大きく変えず、消費税を上げるものである。このまま民主党が今回の改革を行うのみで、抜本改革を行わなければ日本の社会保障制度は崩壊してしまう。では、今後の社会保障制度をどのように変えていけば日本の将来は安定するのだろうか。それについての案を、中江教授や岡田副総理の考え、家族や友人との議論を基に記載していきたいと思う。
2.私の改革案
社会保障の問題点には、大きく捉えると自由と平等のバランス、無駄の削減、制度自体の戦略などが挙げられる。これらのことを踏まえ、医療・少子化・雇用など、分野ごとに対する自分の考えを記載したいと思う。
1)年金改革について
現在日本の年金制度は年金保険料でまかなっている。少子高齢化が進むことによって、このままの年金保険料でまかなう制度を続けていくと、将来的に私たちは肩車のように高齢者を支えなくてはならなくなってしまう。これでは高齢者層と若年層での負担率が大きく異なってしまう。これは世代間ギャップがあり平等の観点から見ておかしいのではないか。そのせいか、将来のことを考えて年金保険料を払わない若者が増え、社会問題化してしまっている現実がある。このような結果を生んでしまったのは制度自体に問題があるからである。では、どのように変えていけばよいのだろうか。まず、高齢者への年金の支払いに関しては、一度払うと約束してしまったので、払うしかない。しかし、このままの制度を続けていくには無理がある。その為、今まで保険料を払い続けた人達の年金は増税をしながら給付し続け、ある一点からは改革された制度を基に世代間ギャップを無くさなければならない。
2)具体的な年金改革
@現在の若年層において、年金保険料を支払い続けても将来的に何も支払わないでよい生活保護より給付が少なくなってしまう矛盾の有るものとなっている。そこで、中江教授や岡田副総理の案であった基礎年金部分と生活保護の一体化をし、無審査で最低限度の給付をすれば、この矛盾は無くなるのではないか。この案は生活保護のミーンズテスト要員などの無駄を省ける面においても優れている。また、給付の仕方としては、基礎年金部分は賦課方式を採用し、その時の最低限の生活水準を達成させ、憲法25条の要件をみたすことが挙げられる。
Aでは、年金の2階部分、つまり現在の厚生年金や共済年金の部分はどうするか。この2部分はシンガポールの個人の利己心を取り入れた、Central Provident Fund(通称CPF)の積立方式をモデルとし、民営化による選択自由の年金とするのがよいと思われる。これならば、民営化により営利法人の競争原理により切磋琢磨をし、サービス面が良くなる。かつ、世代間ギャップも無くなる。もし、個人として失敗しても、それは自己責任である。しかし、この案は理想論であり、独禁法の適用除外の部分を少なくしない限り、2階部分も国が運営することが予想される。国が2階部分も運営するのならばシンガポールのCPFのように積立方式と社会保障個人口座を前提に、明確化した給付内容なければならないと私は思う。
3)少子化対策について
現在の日本の出生率は1.3と社会保障の基本モデルである出生率2.0よりはるかに少ない値となっている。なぜここまで出生率が低くなってしまったのか。それは、日本は豊かな国であり、生物学的な見解からすると、種は存続の危機に瀕しているほど本能により沢山の子孫を残そうとすることから考えると、危機の部分についてはしかたのないことなのかもしれない。では、どのような方向から、出生率を上げるようにすれば良いのか。私は出生率を増やす方法は大きく分けて2つあるとかんがえた。一つ目は結婚数を増やして間接的に出生率を上げる方法である。二つ目は出生率自体を増やす方法である。
@そこでまず私は、出生までのプロセスを考えてみた。日本は法律婚主義の国であり、フランスなどの事実婚主義の国とはことなる婚約の仕方をとっている。そこから考えると、子供を作るにはまず結婚が必要だ。しかし、非正規の社員は自分のことで精一杯のために結婚は難しい。そのため、現在の日本では結婚をしない人が増えている。では、どのようにして非正規社員を正社員と同じような扱いにすればよいのだろうか。これは反対が多く難しいと思われるが、ILO条約の同一労働同一賃金の原則にのっとり、それを法定化するしかないのではないか。しかし、これには先ほども書いたように厚生年金保険法による労使折半の観点からして反対が多い。しかしながら、これは、年金の2階部分を民営化していることを前提にするのであれば、厚生年金はなくなるため、反対も少なくなり同一労働同一賃金の法定化も可能であると考えられる。そうすれば婚姻率が上昇し、結果的に出生率も上がることが考えられる。
A直接出生率を増やす方法としては、共働きであると保育所が必要になると考えられるため、公法人しか建てられない保育所を営利法人も建てられるようにすることが挙げられる。この案は、もし同一労働同一賃金が法定化されたことを前提とすると、人件費の割合から会社立保育所が割高になってしまうことが懸念される。
また、別の案としては事実婚主義のフランスのように、婚外子を社会的差別のないようにすることも出生率を上昇させる案として挙げられる。
4)医療改革について
現在、一般会計の半分である20兆円が社会保障費として当てられている。そして、その20兆円は介護や国保、後期高齢者医療制度などにも当てられている。そのため、医療について改革をし、節約をすれば、日本の社会保障をより良くすることが出来る。ではどのように改革をしていけばよいのだろうか。
まず、医療において一番の問題は、@窓口負担により、医療を受ける人が安いと勘違いしていることにあると私は思う。実際は、自分達の払ったお金が回りに回って負担を重くしているのである。また、ほとんどを応能負担にしてい為、使わなくてよいところも使ってしまう。これらの勘違いを無くすためには年金の案と同じく、最低限度の医療は誰にでも受けることが出来るようにし、そこからは、これも年金の案と同じく社会保障個人口座を基に、自己責任で高額の医療を受けられるようにすれば良いのではないかと私は考えた。自己責任であれば、使わなくて良いところは使わなくなるためである。この考えを応用し、お金を沢山所持している富裕層や外国のお金持ちに関しては、日本の高い技術の医療を受けてもらう医療観光をいてもらい、一部のお金を社会保障額に当て、より良い社会保障にしていけばよいのではないか。Aまた、末期医療における問題もある。末期医療では、延命にものすごく費用が掛かる。そして、日本の安楽死に関する制度の基準はとても厳格なものとなっている。これに対し、オランダのターミナルケアという制度は安楽死を認めており、クオリティーオブライフの観点から見ても、自己決定が出来るところから見ても優れていると私は感じた。末期医療に使うよりは、節約した分のお金は次の世代に使って欲しいという患者の場合は、オランダのターミナルケアの制度の方がよいと考えるだろう。このように、個人の尊厳と、利己心のバランスのとれた医療改革をしていけば良いのではないかと私は考えた。
5)増税の中身について
消費税を5パーセントから10パーセントに上げることが現在の社会保障改革で決まっている。これは、段階の世代の年金部分の不足を補うためや、次の抜本改革のための足がかりにするためには仕方が無いのかもれない。次の抜本改革においても岡田副総理は増税が必要と言っていた。しかし、その後も消費税を上げ続けると、日本はギリシャのようになってしまう。その為、増税の方法を消費税とは別に考えなくてはならない。共通番号製による社会保障個人口座を基に所得税を増税するのであれば、所得税の不利点が無くなり消費税と比べ増税の徴収方法としては優れていると感じた。また別の案としては、現在の高齢者の方達は年金をもらいすぎているので、お亡くなりになった方の使わなかった年金については国の費用として使わせてもらうようにする制度を作ることや、日本は一部の超富裕層が大量の資産を所持していることから、相続税を上げ、そのお金を回す案も考えてみた。しかし、実現可能性の部分などを総合的に考えてみると、やはり消費税増税後は、共通番号製による社会保障個人口座を基にする所得税増税の案が良いと私は結論付けた。
3.結論
今回の社会保障改革をすることは、次の抜本改革をするための足がかりにすることや、貿易での黒字のうちに社会保障改革を急がせねばならないこと、今のままでは、段階の世代の年金などをまかないきれないため、増税は仕方の無いこと等を考慮すると、評価できると私は思う。しかしながら、新たな負担義務を課すのであるから、国民への説明責任は果たさなければならない。社会保障の制度は官僚が制定したのにもかかわらず、良い方向に変更など試みなかった。その責任を果たしていないことから、理想論としては、責任を取ってもらうために天下りの廃止をして欲しい。しかし、それは団体などの反対が多く難しいことから、官僚の給料の半分を国債で支給するように変更して欲しい。これならば、官僚も自分の為に、財政破綻がしないように力を入れるためである。また、民主党には、社会保障改革後に日本の為に抜本改革を絶対に行って欲しい。そうしなければ日本の未来は暗いものとなってしまうためである。
■以上