根岸俊暢作成
科 目:親族法(水・4限)
所 属:法学部法律学科 三年七組
学籍番号:11J107021
氏 名:根岸 俊暢(ネギシ トシノブ)
春期の講義ありがとうございました。
訂正箇所がありましたので、再度送信させて頂きました。お手数お掛けして申し訳ございません。
昨年度、社会保障法を受講しており、秋期はホームページに載せて頂き、自分自身にとってそのことが自信に繋がりました。本当にありがとうございました。
今回の親族法のレポートは社会保障法以上に内容が難しいので、まとめ、意見を考えるのが大変でしたが、頑張りましたので、宜しくお願いいたします。
1.はじめに
物権変動とは、「物権の得喪及び変更」を意味している。具体的には物権の発生、変更、消滅のことを指す。
不動産に関しては民法177条で不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができないとされている。弱者とは大多数の他者との比較において、著しく不利な、あるいは不利益な境遇に立たされる者(個人あるいは集団)のことであるとされている。
またこのレポートにおいての弱者は「障がい者」や「高齢者」、「未成年者」といった意思能力・行為能力が不十分な者が該当するはずである。そのような人々に着目して考えることとする。
2.公示の原則、公信の原則
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。(民法177条)、動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。(民法178条)とされており、権利の変動それ自体は目に見えないから、第三者にその存在を知らせるためには、外部から認識することができる形式をともなわなければならない。もし、権利の変動を外部から認識できなければ、権利を喪失した者を依然として権利者であると信じて取引をする第三者が現れるおそれがある。とりわけ物権は排他的効力を有するので、第三者に不測の損害を与えるおそれが大きい。物権の変動を外部から認識できる状態に置くことを、物権変 動の公示といい、公示のために用いる手段を公示方法という。物権には排他性があることから、物権の変動には公示が要求され、公示のない物権変動の効力は多かれ少なかれ否定される。これを公示の原則という。
また、公信の原則とは権利の外形を信頼した者を保護する原則をいうものであり、民法では次のように定められている。取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する(民法192条)とされている。
3.成年後見人、保佐人、補助人
成年後見制度は、記憶力などに障害がある高齢者、知的障害者、精神障害者など意思能力・行為能力が不十分となった者を保護するための制度である。法定後見制度は認知症、知的障がい、精神障がい等の精神上の障がいによって、既に意思能力・行為能力が衰退し、財産管理等の法律行為を行うことに支障をきたしている人を対象として制度である。また、現時点(契約を結ぶ時点)では意思能力・行為能力に問題がないが、将来に備えて任意後見契約という形で、様々な支援を受けるのが任意後見制度である。本人の判断能力の程度に応じて、成年後見人、保佐人、補助人を選任は家庭裁判所が審判する。後見人には、財産管理、身上看護のすべてにわたり代理権が与えられている。保佐人は、判断能力が多少は残っている人のために選定される。本人が望んだ場合に限り、お金の貸し借りや不動産売買、遺産分割などの重要な行為についてのみ代理権が与えられる。補助人は、意思能力・行為能力に不安があるとはいえ、著しく劣っているわけではない人が利用する制度である。補助人は、保佐人の代理権の一部、特定の行為のみに代理権が与えられる。なお、代理権を行使する場合には本人の同意が必要となる。この「後見制度」における問題点が多くある。一つ目は2007年のデーターによると親族以外の第三者が後見人に選任された者は全体の28%あり、前年比11%も増加しており、毎年その割合が増えている。第三者が増えていることについては問題ない。しかし、第三者が増えていることによってこんな問題が起きている。親族以外の第三者後見人の中には、家庭裁判所に選任された後見人という公的立場を理解せず、被後見人の財産を侵奪するケースがあることだ。財産着服は、最高裁家庭局によると、2010年6月から2011年3月の10ヵ月間だけでも182件に及ぶという。 二つ目は、例えば、病気により、「遷延性意識障害」いわゆる「植物人間」に自分の父親がなってしまい、その息子がその植物人間となった父の土地に回復して退院したときに一緒に住めるようにバリアフリーの二世帯住宅を建てようとする。そのときに、建物代を銀行の住宅ローンを使用する場合において、銀行から後見制度を利用しないと融資が実行出来ないと言われるケースがある。後見人が第三者であった場合、その土地に息子が新たに住居を建設する場合には自分の父親の土地であるのに、他人である第三者の代理人に許可を得なくてはいけない点である。三つ目は家庭裁判所から指名された後見人が親族でない第三者の場合はその第三者は病院や施設との契約を結ぶ権限はある。しかし、どのような医療 や介護を受けるかを決める「医的侵襲権への同意権」はない。従って、親族が後見人ではなく第三者が後見人になった場合は、家族が望む治療形態と第三者の後見人の考えが食い違ってトラブルが起こる可能性がある。家族が「今の病院から転院して別の治療を受けさせたい」と考えても第三者の後見人が転院手続きを拒否した場合は転院が出来なくなる。四つ目は本人名義の預貯金から介護・医療等に必要な費用の出金の為に、後見制度の利用が必要になる場合もあり、後見制度を利用すると制限が加わる。後見人が本人名義の預貯金から出金する為には各金融機関で「後見の設定」を行い、後見人の権限下の口座にしなくてはならなくなり、金融機関共通で本人名義のキャッシュカードは廃止される。毎回後見人が公的な身分証明書を提示しなくて はならなく不便である。また、この後見人には財産を管理する代理権が与えられているので、後見人の判断でお金を引き出すことが出来る。後見人の資産管理に対しての家庭裁判所のチェックが甘いため、後見人が着服しようと思ったら、本人の資産を家庭裁判所にばれずに着服する事も可能となる。このような問題を解決するためには後見制度を改革する必要があります。現在、後見人は親族そして第三者といっても素人から弁護士などとさまざまな者が後見人となる制度であり、後見人の質が保たれていません。また、後見人は公的立場があいまいであるので、保護司のように非常勤・無給の国家公務員とする。裁判官、弁護士、司法書士、行政書士、地方議会議員、警察官、地方公務員、国家公務員などといっ た、公務員退職者や法律の専門家、政治家によって構成すれば後見人の質はある程度保たれるはずであります。また、後見人の資金管理のチェック体制が甘く、着服する者も少なくありません。金融機関と家庭裁判所が定期的に連絡を取り合うための制度作りも必要である。
4.利益相反行為
民法826条、860条によると、利益相反行為とは、成年後見人等にとっては利益となるが、成年被後見人にとっては不利益となる行為をいう利益相反行為かどうかについて、判例は外形説を採用している。これは、行為の外形のみを客観的に判断し「成年被後見人等の財産を減少させて成年後見人等または第三者の財産を増加させる行為」を一般的に利益相反行為として扱うという考え方である。成年後見人等が、成年被後見人等の財産を、成年後見人等に、贈与する。成年後見人等が、成年被後見人の不動産を買う。成年後見人等が、銀行からお金を借りる際に、成年被後見人等を保証人にする。成年後見人等が、銀行からお金を借りる際に、成年被後見人等の不動産を担保に入れる。成年後見人等と成年被後見人等が共同相続人である場合に、遺産分割協議をすることや、相続放棄をする場合に適用される。
5.親権者
親権者は、親権を行使する者で、通常、未成年の子に対し、身分上および財産上の監督・保護に関する権利・義務を行使する者を指す。具体的には、未成年の子を監護・教育し、子の財産を管理する父母のことであり、夫婦であれば共同して親権を行うが、離婚するとどちらか一方が親権を行うことになる。一般に夫婦が離婚する場合、どちらか一方を親権者と定める必要があり、親権者の指定のない離婚届は受理されない。また、協議離婚・調停離婚・裁判離婚など、親権者について協議がまとまらない場合は、家庭裁判所が、子の年齢、心身の状況・希望、父母の経済力・生活環境などを考慮した上で指定する。未成年者との間で交わす金銭消費貸借などの契約は、「親権者の同意」を得ないと、後日、その未成年者あるいは未成年者の親権者から契約を取り消されることがある。ただし、未成年者が「自分は満20歳以上だ」「両親の同意を得た」というような「詐術」を用いて契約した場合は、こうした「契約取消権」は認められないとなっている。例えば、未成年の少年A(18歳)はAKB48グループのファンであった。その少年AはSKE48のメンバーである、M・Rに選抜総選挙で投票をするために投票権が同封されている「So long」のCDをどうしても大量に購入したかった。しかし、少年Aはアルバイトもしていなく、収入は親からのお小遣いのみであった。同じサークルの先輩である少年B(21歳)に100万円を借りた。少年Aは少年Bに対し、口頭で両親の同意を得た、アルバイトをしてお金を返すと約束した。この場合、民法587条は「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる」となっており、借主が借りた金銭を返すことを約束し貸主から実際に金銭を受け取った時点で契約が成立するのである。この場合は口頭で少年Aが少年Bに対し、返済を約束したが、この条文により金銭消費貸借契約はいわゆる「借用書」の存在が無くても契約は成立し得るものと なる。よって、借用書の無い金銭消費貸借契約がただちに無効になる事はない。少年Aが少年Bに対し行った金銭消費貸借契約が何らかの事情において無効・取消となった場合においても民法703条により、少年Bから少年Aが受け取った金銭は「法律上の原因に基づかない利益」となり結局のところは支払い少年Aが支払う義務を負う事になる。
また、学生ローンと呼ばれる学生本人を対象に融資を行う消費者金融があり、高校生を除く満18歳以上の学生(大学生・短期大学生・専門学校生など)に限って利用が出来る制度がある。学生ローンは未成年者が借りる場合は書面による、親権者の同意が必要である。「親に心配をかけたくない」という子が親を思う気持ちを悪用する者もいる。親権者の同意がいらない「ヤミ金融」と呼ばれる、国(財務局)や都道府県に貸金業としての登録を行っていない貸金業者から借りる学生も少なくない。こうした業者は登録を行わず、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の制限を超える金利を課すことや、人権を無視した取り立て(キリトリ、債権回収業務)を行うことも多く、このような取り締まりにより自殺する学生も出る可能性や不当な金利により生活が圧迫されている。悪徳業者を撲滅することは簡単でないのが現状である。
友人間の金銭トラブルや無計画の融資により、多額の債務を抱えることや悪徳業者からの借金など金銭に関する問題は我々大学生には身近な問題であるが、相談出来る体制が完璧でない。弁護士や行政書士など法律の専門家に依頼する場合はお金が掛かり学生では簡単には相談出来ない。弁護士会等の相談日はあるが、なかなか解決に繋がっていない。気軽に相談出来る体制を作るために大学の学生担当事務、帝京大学でいえば学生サポートセンターに司法書士資格のある者等の法律の専門家を配置するなど大学側も対応が必要である。お金に関するトラブルを防ぐために友人間で貸し借りをしないことや、悪徳業者から借りないように入学時ガイダンスなの入学当初から大学側が注意喚起すべきである。
6.まとめ
高齢者から私たち学生までさまざまな世代が関わる問題が「物権変動」であると感じた。
後見制度についてこのレポートでは多く取り上げたが、後見人は財産の保全・活用にとても神経を使う仕事であり、財産以外にも多くの仕事があり、一般人が行うには難しい仕事であると思った。最近、家庭裁判所業務に精進し、資産調査のみならず家庭紛争調整のベテランである調査官OB・OGで組織されている社団法人家庭問題情報センターに家庭裁判所から後見人斡旋依頼が出るようになった。家庭裁判所のOB・OGが後見人として参加するようになり、元調査官はその経験を生かして中立な後見人として活動をすることが可能であると思った。後見制度を改革し、財産管理後見人と身上監護後見人を分けることや、個人ばかりでなく法人や公的機関を後見人に選任すべきである。そして、法律 ・福祉分野の経験者の後見人候補者の確保をするために政府は即急に対応すべきである。
また、親権者の問題も20歳未満の者がお金を借りる場合は個人、団体問わずに親権者の同意がなければ、返済する義務がないように民法を改正すれば、必ず親権者の同意が必要となるので個人間の金銭トラブルやヤミ金融などといった怪しいところがお金を借りないようになっていくはずです。
日本全体の経済は自民党・安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」により上向きつつある。しかし、このような問題を国会で取り上げられていない気がする。社会全体が明るくなりつつある今だからこそ、社会全体の利益を多少犠牲にしてでも、弱者を切り捨てないようにする方向に日本は舵を切るべきであり、総理大臣などの閣僚、国会議員らがそのような政策・法案を実現させるためには、それらの人々だけでなくすべての日本国民が考えることが大切である。
<参考文献>
○インターネット(アクセス日)
・法務省 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html (2013/07/27)
・リーガルフロンティア21 http://www.hou-nattoku.com/mame/yougo/yougo193.php (2013/07/28)
・後見実務相談室 http://kouken.ne.jp/index.php?itemid=124&catid=3 (2013/07/29)
・民法まとめ
○書籍
・「市民後見人養成講座〈3〉市民後見人の実務」 成年後見センターリーガルサポート(2013) 民事法研究会
・「Q&A「成年後見」実務ハンドブック」 田中 亮一(2009)
セルバ出版
・「プリメール民法」 松井 宏興(2005) 法律文化社