高橋悠吾
〜所得保障と経済社会政策〜
19J110020 法学部法律学科3年 高橋 悠吾
〜結論〜
現在の政策を改めて見直して吟味したうえで、もう一度現在の制度を考え直し若い世代がこの国にもう一度希望を持てるようになる方法を考えるべき。
1現在の日本の経済政策の状況
(1) 現在の日本の経済政策をについて考えるうえで、異次元の金融緩和と日銀引受という言葉は外せないだろう。日銀は現在金利をさげてマネーサプライを増やそうとする動きを見せている。これは現代貸幣理論(MMT理論)に基づいて行われている政策だと思われるが果たしてこのMMT理論は本当に安全なのだろうか。
MMT理論では極端な話をすると通貨発行者である政府は負債が増えても通貨を発行することで返済をすることが可能であるため財政赤字が膨らんで債務不履行になることはないからインフレが起きない範囲で需要にこたえ、財政赤字でも支出を国は行うべきという理論である。このMMT理論に基づき現在日本は国債をどんどん発行しそれを日銀が買っている。一見、最先端理論に基づき経済政策を行っているようだが、これは非常に危険な行為である。このままお金を刷り続けると第一次世界大戦後のドイツのようなハイパーインフレが起こる可能性がある。
また現在日本は年間80兆円をばらまいてマネタリーベースを増やしているが現在は将来に不安を感じる人が多いことやゼロ金利政策の影響により、タンス預金や内部留保が多発しておりデフレ状態になっている。
なので、このままマネタリーベースをふやしてもマネーサプライは一向に増えないであろう
一方で社会にお金が出回らず不況と感じた日銀は通貨の供給量を増やしていくだろう。そうすると今度は利子率がどんどん下がっていく。利子率が下がると投資が増えてGDPが上がりGDP増加に伴い貨幣の需要が高まり、利子率が上昇する。このような好循環がうまれるわけだが日本はゼロ金利政策がとられているので供給量をふやしても利子率が下がるわけもない、これは流動性の罠と呼ばれている。
このままでは返さなくてはいけない可能性の高い多額の借金だけが残されるだけではないだろうか、我々の世代やさらにその下の若者たちのためにも果たして現行の制度であっているのかもう一度考える必要があると考える。
(2)問題視すべき非正規雇用者の増加
現在の日本経済は停滞している。日本は1970年ごろから1人あたりのGDPで高水準を維持してきた。しかし近年の成長率は横ばいで中国に抜かれ、さらには世界3位の経済大国という位置づけすらも危うい状況である。戦後、平和の時代を迎え出生率は大きく上がり、空前のベビーブームが到来した。1947年からの5年間は毎年250万人ほどの出生数となり2021年の出生数が81万人だったことを考えるといかに当時のベビービームが大きかったかがわかるだろう。
そしてこの団塊世代が就職をするときには日本は高度経済成長期を迎えていた。
ここまでは日本の経済成長、経済状況ともに順調だったといえるだろう。団塊世代は他の世代と比べても圧倒的に人数が多い、そのため非常に競争が激しいのである。
その競争が日本の最大の武器である「勤勉でレベルの高い経済力」を生み出したのである。しかしこの日本の武器は失われてしまうことになる。この団塊世代の人数の多さは自分たちが就職するときには高度経済成長期というにもあり、競争力がプラスにでていた。しかし問題はこの世代の子供たち、つまり1970年代に生まれた子供たちである。この世代もほかの世代よりも人数が多い。この第二次ベビーブームも1971年〜1974年までは200万人以上の出生率を保っていた。1975年を最後に200万人を下回ることになるのだが、それでもほかの世代よりも多いことに変わりはない。そしてこの団塊ジュニア世代の一番の問題は就職をするときにグローバル化の波にのまれて非正規雇用が多くなってしまったということであろう。非正規雇用は非常に問題が多い。非正規雇用というのは、だれでもできる単純作業である場合が多くなんのスキルも身につかない。ましてやそんな作業に高額な賃金が支払われるわけもなく、正規雇用と非正規協では時給の差は約3倍にもなります。そして非正規雇用は企業年金や退職金もなく経済面での補償もないに等しいといえます。そんな非正規雇用者は将来にたいして不安を持つ場合が多くなかなか結婚に踏み切れない人も多くいる。その問題が非正規社員と婚姻率だ。
男性雇用者で見た場合、30〜34歳の正規雇用者の婚姻率が59.2%なのに対して、非正規雇用者の場合になると30.3%まで下がってしまう。また年間所得のグラフを見てみると正規雇用者のボリュームゾーンが約400万円近辺なのに対して、非正規雇用の場合になると約250万円近辺になる。所得だけをとってもこれだけの差が出てしまうのにさらには企業年金や退職金までもないとなると現在の環境において非正規雇用者が結婚に踏み切るのがどれだけ大変かがわかるだろう。非正規雇用者が多く生まれた1990年代でさえ約20%だったが2021年現在は37.4%となっており問題はより深刻になっている。
(3)真の男女平等と少子化対策
非正規雇用者は前述のとおり多くにデメリットが存在するが、女性の労働者の非正規雇用者の割合は極めて高いといえる。男性労働者の場合正規雇用者の割合が2010年時点で81.1%で非正規雇用者は18.9%となる。一方で女性労働者になると正規雇用の割合が46.2%で非正規雇用の割合が53.8%と半数以上が非正規雇用である。この現実は大きな問題を生んでいる。まずは先ほども言及した非正規社員と婚姻率という問題だ。女性労働者の正規と非正規の割合が逆転した2005年時点のデータでは女性の未婚率は25歳‐29歳で59%で30歳−34歳で32%となっている。一方で1970年のデータでは25‐29歳で18.1%、30歳‐34歳で7.2%と明らかに未婚率が高くなっている。日本では結婚してから子供を作る人が多いので結婚に踏み切れない=少子化につながってしまうのだ。世界的にみると出生率と女性就業率には相関関係があるとされている。母親の生活力と出生率には相関関係があるとされており合計特殊出生率が1.39である日本の女性労働力率が60%弱であるのに対して出生率が2を超えるアイスランドの女性労働力率は約85%となっている。そのほかの国のデータを見てもこの二つに相関関係があるのは一目瞭然であるといえる。
また日本では結婚してから子供を作るのが当たり前のようになっているが世界的にみると妊娠と結婚に対して日本とは異なる価値観を持っている国も多くある。
少産少死である先進国の出生率において1.5を上回る西欧・北欧・北米のグループtp1.5を下回る日本やアジア圏・南欧のグループとで分けられる。1.5を下回るグループは儒教圏やカトリック圏で家父長てきな考え方が女性の出産という行為に歯止めをかけている可能性があります。つまり日本において考えると儒教倫理と少子化に因果関係があるとされている。儒教文化圏では男尊女卑の傾向が強くそれが関係あると思われる。また日本は極端に婚外子が少ないと考える。スウェーデンやフランスなどの西欧・北欧諸国は50%を超える婚外子割合なのに対して日本では2.1%である。これは日本に根深く残る婚外子への差別も原因だと考える。婚外子は父親の名字を使うことはできないし、相続分も半分となってしまう。ほかの先進国を見渡してもこのような規定があるのは日本しかない。現在の日本では皆婚と法律婚を重視しすぎていると感じる。そのことが出産ということへのハードルを上げていると考える。
婚外子の多いフランスなどではPACSという制度を利用した事実婚も多くなってきている。このPACSいう関係性をとるカップルも多くその結果、婚外子が多く誕生している結果となっています。日本でも婚外子への差別をなくし、婚外子という選択肢を視野に入れるべきです。もう一度一人ひとりがPACS(Pacte Civil de Solidarite)と法律婚主義について考えることが少子化に歯止めをかけることにつながると思う。
もう一つ少子化に歯止めをかける方法がある。それは中絶の禁止である。現在の日本は中絶を簡単に選択できてしまいます。人口中絶は年々減ってきてピーク時ほどではないが2020年で年間14万件の人工中絶があったと厚生労働省が発表した。もちろん中絶は女性に権利があるように我々外野の人間が一概に禁止にしていいものではないと思う。
しかし現在の婚外子への差別的な風潮が軽減され、婚外子として産むという選択肢も生まれるのではないかとも考える。つまり中絶の禁止と女性の活躍が少子化対策への第一歩と考える。
(4)女性や非正規雇用者の働きやすい国づくり
少子化対策には女性の働きやすい環境を作ることが大事だと考えるが、そのために同一労働同一賃金の原則を確立すべきだと僕も考える。現在のようなその人の付加価値曲線と賃金の曲線が釣り合わないシステムだと厳しい環境下で働いているのにワーキングプア状態に陥ってしまう人や大した仕事をしているわけではないのに年功序列や終身雇用に守られている人と別れてしまう恐れがある。グローバル化が進んだ現代で旧式の制度でこのままいくのは限界なのではないだろうか。またこの原則により非正規雇用者の待遇を改善することができる。ひいては女性の待遇改善につながり母親の生活力の向上につながり、出生率の底上げにつながるのではないかと考える。
グローバル化により現在の正規雇用の給与水準を維持できなくなり今よりも非正規雇用の割合が増えることが予想されていることからも雇用形態で給与を考えるのではなくその人がもたらす付加価値で給与を考えてみる制度に変えていく必要があると考える。そうすることにより日本のかつての武器である「勤勉でレベルの高い労働力」が戻るかもしれない。
またグローバル化により世界の市場が単一となり、今のままでは賃金の伸びやGAFAM(Google Amazon Facebook
Apple Microsoft)のような企業の登場は期待できない。
そうなった場合共働きの家庭がほとんどになることが予想されるので夫婦二人の給料で生活していけるためにも同一労働同一賃金の原則が必要だと考える。
(5)日本の抱える空き家問題
出生率が上がらずこのまま人口が減り続けると必ず起こる問題がある。日本は空き家問題と相続登記の義務化いう問題を抱えている。その数は平成30年時点で876万戸でこれは総住宅数の14%に当たります前回の調査時から26万戸増えており過去最高の数字を記録した。このままこの問題を放置し続けると2040年には北海道を埋め尽くす量の空き家が生まれるという見解もある。2024年4月1日からは相続登記が義務化されるわけだがやはり一番の解決策は人口増加そして一人ひとりが確実に子孫を残し、相続登記義務により新しい空き家も作らないということが一番の解決策になるのではないかと考える。
2 所得保障
(1)日本の所得保障
現在の日本は低所得者にやさしくないシステムとなっている。年収200万円のワーキングプアだとした場合所得税と住民税が5%で各10万円なのに対して消費税は10%なので20万円負担となります。そして消費税は低所得者と高所得者両方に均等にかかります。200万円の年収でも一億円の収入でも100万円のものを買うときにかかる消費税は10万円で実質的に弱者を苦しめる税といえる。日本の税収を増やさないと現在の社会保障制度を維持できないのは明白である。しかし消費税というには前述のとおり逆進性があるためこれ以上の課税は危険である。あげるべきといえるのは所得税だと感じる。日本の所得税率は約8割が10%となっておりそんな国は他にはない。所得課税は国の税収の大半をしめるが逆進性の消費税ではなく所得税で税収を賄うべきだと思う。
そして低所得者を救う手段として注目したいのが生活保護受給率と給付付き税額控除である。日本の生活保護受給率は北欧・西欧諸国と比べると極端に低い日本が1.6%なのに対してイギリスやドイツでは9%を超えてくる。しかし実際問題ウォーキングプアなどで苦しんでいるひとも多く存在する。現行の生活保護制度は敷居が高く、制度を生かせているとはいいがたい。そこで注目したいのが給付付き税額控除だ。給付付き税額控除では低取得者だけでなく子育て世代にも優しい現在の日本に適した制度だと考える。控除しきれない部分は現金給付することができるためとてもありがたいだろう。そして給付付き税額控除は逆進性対策の有効策とも言われる。
また子供が多ければ控除額も当然多くなるので少子化問題にも一矢報いることができるかもしれない。
(2)海外の所得保障
海外では新たな社会保障の形としてシンガポールCPF(Central Provident Fund)とBasic Income が注目を浴びている。日本は現在医療システムを国が直接運営する手法をとっていますが米国やシンガポールは運営を民間に任せている。アメリカは老人や低取得者にたいして公的に運営し現役世代は民間団体に加入することで国が援助するという形で運営している。
そしてシンガポールはシンガポールCPF(Central Provident Fund)という制度で国民皆保険を実現しようとしている。このシンガポールCPFは雇用者そして企業側から積立が行われ55歳になると引き出しが可能になる。この制度は日本の年金と違い自分が納付した保険料から支払われるため支払う意味が出てくる。現在の若者は実質破綻した年金制度の中自分たちの分ではなく今の老人を養うために自分たちはもらえるかわからないのに多額の税金を払わなければならない。これこそが今の日本が目指すべきシステムなのではないかと感じる。
またBasic
Incomeについても今年からアメリカの主要都市で無作為に選ばれた低所得者を対象に実験が行われるなど注目が集まっている。Basic
Income は最低所得保障制度といわれており衆議院選で維新の会が公約に掲げた際には事前に誰でも必ずもらえる制度といわれており、ワーキングプアや母子家庭層や生活保護には頼れなかった人を救う新しい形になる可能性がある。
3 まとめ
日本は個人口座システムを導入し個人単位で責任を持つ制度を導入してもよいのではないかと感じた。自分が何のために、そして誰のためにお金を払うのかをもう一度
確認し国民一人一人が現在の制度について考え、必要であれば改革を行うというずっと前から立っていた分岐点でとうとう決断をしなければならない時が来たように思う。
変化を嫌い変革から逃げた代償を今払い自分たちよりもずっと後の世代のために決断しなくてはならない。
引用・参考資料・参考文献
・社会保障のイノベーション(中江章浩著2012年信山社)
ベーシックインカムはもう“夢物語”じゃない? 世界各国で実証実験…日本の現在地は
(msn.com)
2021年日本の空き家の現状は?最新の統計調査の結果をご紹介|空き家の管理会社を探すなら安心の全国サイト (akiya-kanri.biz)
給付付き税額控除とは: 日本経済新聞 (nikkei.com)
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/seikatuhogo_qa.pdf
https://www.sendai-l.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/pdf-chousa-7-1-3-210531.pdf
畠山尚士
社会保障法 「所得保障と経済社会政策」
18j116019 法学部法律学科 畠山 尚士
結論
日本の国民年金法による基礎年金給付は均一給付方式をとり,厚生年金保険法などによる各種の給付は,算定の基礎となる賃金が被保険者であった全期間の平均標準報酬であるため,現在の賃金水準と比べてかなり低くなると思う。
1. 異次元金融緩和について
第2次安倍政権の放った3本の矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)のうちの鏑矢ともいうべき矢は、日本銀行を巻きこんだ「異次元の金融緩和」政策である。非伝統的と評価される超金融緩和政策の特徴は、第1に、メディアを利用して強いメッセージを発信し、世の中の雰囲気を変え、期待感を高揚させようとする一種の「口先介入」を先行させていることである。「異次元の金融緩和」、「2年で2倍の資金供給」、「国債購入月7兆円」といった強いメッセージは、情勢を先読みして動く内外の浮気な投資家の関心を目覚めさせ、すぐに国債価格の上昇、株高、円安となって表面化し、「安倍バブル」
が発生した。その結果、国債・株式などを保有する内外の投資家の金融資産は上昇し、利益に浴したが、国民の生活は、円安による輸入物価の上昇で悪化した。第2は、金融政策の操作対象を金利から、資金供給量(マネタリーベース=社会で流通している現金と金融機関の日銀当座預金残高の合計)に変更し、この資金供給量を2年間で2倍にし、日本の経済社会に溢れかえるマネーを注ぎ込もうとしていることである。すでに金利はゼロ近傍に張り付いているので、これ以下に下げようがないので、「異次元の金融緩和」を実施するには資金供給の量そのものを増大させることになったわけである。実体経済の成長をともなわない過剰なマネーの供給は、金融資産や不動産関連のバブルを膨張させることになる。第3に、資金供給を倍増させるやり方は、日銀が毎月7兆円ほどの国債を金融機関(銀行)から大量に購入し、その購入代金を提供するやり方(日銀当座預金残高の積み増し)である。日銀が毎月7兆円もの国債を購入するようになると、それは新規に発行される国債の7割ほどが日銀によって引き受けられることになり、国債発行の歯止めを失う。第4に、日銀が、株価や不動産価格の動向に直結するリスクの高い金融資産(ETF、J-REIT)も購入対象にしたことである。「異次元の金融緩和」は、資金供給量だけでなく、リスクの高い金融資産にも手をだす「質」にも配慮した「量的・質的金融緩和政策」の特徴をもつ。これは、「アベノミクス」の金融政策のねらいが、株価や不動産価格も上げようとしていることを示唆している。そもそも、2年間で物価を2%上昇させるために、「あらゆることを実施する」(黒田東彦日銀新総裁)、といった金融政策は尋常ではない。常識的には、中央銀行は「物価の番人」として、国民生活を破壊し、社会を混乱させるインフレ・物価高を抑制するインフレ・ファイターの役割を演じるはずであるが、それとは逆に、インフレ・物価高を促進する役割を引き受けているところに、今回の金融政策の異常性が表れている。
2. 歯止めを失った国債発行と事実上の日銀引受
「異次元の金融緩和」政策は、日銀による国債の買いすぎを防ぐための「銀行券ルール」(日銀の長期国債の保有残高を日銀券の発行残高以下に抑えるルール)を凍結したので、国債発行は歯止めを失ってしまった。近年の一連の超金融緩和政策(ゼロ金利・量的金融緩和・包括的金融緩和・異次元の金融緩和)は、日銀が金融機関に安価なマネーを大量に供給することによって、民間金融機関の経営を救済しただけでなく、増発される大量国債の消化資金を提供してきた。そのしくみは、日本銀行が民間金融機関の保有する国債を購入し(国債買いオペレーション)、その購入代金が民間金融機関に供給される。「異次元の金融緩和」では、月7兆円の国債が購入されるので、新規発行国債の7割は日銀の購入によって消化され、「国土強靱化」といった大規模「財政出動」の安定財源が確保され、潤沢なマネタリーベースを日銀から供給される民間金融機関は、資金繰りが困難になることはなく、国債などの金融資産はいつも日銀が買い取ってくれるので、経営は好転する。そのうえ、銀行は、BIS規制を盾にとり、貸出金の不良債権化を嫌って、貸し渋りをつづけている。打撃を受けたのは借入金に依存する多数の中小企業であり、地域経済である。経済不況と雇用破壊は長期化し、日銀から銀行に供給された大量のマネーが向かった先は、リスク・フリーの安全な金融資産の国債であり、銀行は、貸出よりも、政府保証の国債ビジネスにシフトした。銀行の帳簿では、企業貸出が減退し、それとは対称的に、国債保有高が増大していった。国債を保有し、政府から確実に利子を受け取り、市場で国債を売買することで、国債売買差益が確保できるからである。政府にしても、毎年、40兆円を超える大量国債を新規に増発しつづけるには、国債の大口の買い手を見つけなければならないが、その役割は日銀の資金供給によって強力に支えられた民間金融機関に演じてもらえた。こうして国債増発のメカニズムがフル稼働しはじめ、国債発行はその歯止めを失ってしまった。これは、民間金融機関を介した日銀による間接的な日銀引受といえるであろう。財政資金の調達先を辿っていくと、日銀のマネタリーベースに突き当たり、日銀による財政ファイナンス・財政赤字の穴埋めが行われている、といってよい。国債の日銀引受を禁止した財政法第五条は空文化している。「アベノミクス」の二本目の矢は、10年間で200兆円の大型公共事業を実施する「財政出動」にあるが、そのための財源は国債の増発に依存する。「異次元の金融緩和」政策と日銀の国債大量購入は、国債増発メカニズムとなって作動し、「財政出動」のための財源となる。すでにGDPの2倍ほどに累積した国債発行残高を抱えた「政府債務大国」日本は、「財政出動」で増発される国債を上積みすることになる。1000兆円を超えて膨張しつづける政府債務の返済をどうするのか、「アベノミクス」は、この重大かつ火急な問題について、経済が成長すれば税収が増えるといった、実現しそうにない回答しか用意していない。
3. 日本人の賃金は愕然とするほど低い
実際にOECDの実質平均賃金データを確認してみると、たしかに日本の賃金は愕然とするほど低い。順番で見ると一目瞭然だ。日本は、1990年に22カ国中12位、2000年に35カ国中15位、2010年に35カ国中21位、そして2019年では35カ国中24位となっている。また、1990年当時の22カ国が、2019年にどんな順番になっているか見てみると、日本はなんと21位である。かつて12位だったのが、約20年後に最下位近くまで落ちている。また、1990年当時のOECD加盟22カ国で、この30年間の名目賃金と実質賃金の伸びを見てみると、名目賃金ではほとんどの国で2倍以上となっているのに、日本の伸びはほぼゼロで、伸び率は最低である。1990(平成2)年に20万円だった給料が、今も20万円で変わらないということである。実質賃金についても、50%ほど伸びている国が多くみられるが、日本はわずか5%程度で、これも飛びぬけて低いのである。それぞれの国で、名目賃金の伸びと実質賃金の伸びを見てみると、相関係数は0.78程度になっている。この観点から言うと、日本の実質賃金の伸びが世界で低いのは、そもそもの名目賃金の伸びが低いからということがわかる。賃金の下押し圧力として考えられるのは、なんといってもマネーの不足である。90年代以降、失われた時代における当時の日銀の無策が導いたものなのである。
4. 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない現状
コロナ禍の大規模な金融緩和もあって、日本企業の株価はバブル期以降の低迷期を脱したようにみえる。しかし、足元では日経平均株価3万円に届かないまま行ったり来たりである。半導体や自動車のメーカーを中心に企業の業績は良くなっているのに、なぜか株価が思ったほど上がらない。一方、株価が上昇し続けているのがアメリカの市場である。GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック(現メタ)、アマゾン、マイクロソフト)など、巨大IT企業の株価が牽引し右肩上がりが続く。コロナショックからの回復期を経て、S&P500などアメリカ市場の代表的な株価指数はまだまだ最高値を更新し続けている。アメリカ株の上昇を「バブルだ」と片付けてしまうのは簡単である。しかし、日本株が低迷してきた過去30年間でも、アメリカ株は中長期で見て上昇基調を維持している。日米の企業価値の差は歴然である。GAFAMを代表とするIT企業群は、ソフトウェアや優秀なエンジニア、働きやすい環境作りなどに積極的に投資し、財務諸表に載らない「非財務資本」をうまく蓄積してきた。翻って、日本の企業は環境変化への対応や人材への投資を怠ってきた、と言わざるをえない。例えば人材への投資という点では、入社時や昇進時に数日程度の研修を行うことはあっても、従業員のスキルアップにつながるような投資を地道にしてきただろうか。あるいはDX(デジタルトランスフォーメーション)が近年話題にはなってきたものの、単純な業務の「デジタル化」にとどまっている例は枚挙にいとまがない。インターネットやさらにその先の革新的な技術による新たな事業の創出に結びつくことは稀ではないだろうか。数字からも日本企業の出遅れ感は明らかだ。PBR(株価純資産倍率)は、倍率が高いほど「非財務資本」が大きいことを表すが、日本企業のPBRは1倍付近で停滞している。アメリカの上場企業平均が約3倍なのに対し、明確に低い水準だ。東証1部でも1000社以上がPBR1倍を下回る、すなわち時価総額が純資産より少ない状態にある。
5. Basic Incomeについて
ベーシックインカム(basic income)とは社会保障制度等が議論される際に出てくる政策・制度のことで、簡単に言うと最低限の所得を保障する仕組みのことである。2021年7月、日本では新型コロナウイルスの感染拡大により4度目の緊急事態宣言が発出され、休業要請が実施される等、私達の生活にも大きな影響が出ています。景気悪化が進む中で雇用への不安も増大し、ベーシックインカムが注目を集めている。これは国民に対して政府が最低限の生活を送る為に必要な額の現金を定期的に支給する政策で、国民配当、基本所得保障、最低生活保障と呼ばれる場合もある。また、生活保護と明確に区別するために、ユニバーサルベーシックインカムを略して、UBI(Universal Basic Income)と呼ばれる場合がある。その他の政策との大きな違いは、「失業保険」「医療補助」「養育費・子育て支援」等の個別の名目ではなく、保証を一元化して「国民生活の最低限度の収入(ベーシックインカム)を補償する」ことが目的である。2021年の衆議院選挙で選挙公約に掲げる党が出ており、より活発な議論が行われるようになるだろう。2021年の衆議院選挙で、日本維新の会がベーシックインカムの導入を本格検討すると公約を発表している。選挙結果で議席数を大幅に伸ばしたこともあり、政策議論が活発化しそうである。また、国民民主党の玉木代表は以前より「議論すべき」との立場を表明している。
5(1).Basic Incomeのメリット
➀少子化対策
必ずしも直結するわけではないが、「世帯に対しての支給」ではなく「個人単位での支給」になるため、単純に子供が増えることで世帯所得が増加する。そのため、長期的には少子化対策になると考えられている。儒教論理にもかなっていることから、今や日本での大きな課題である少子高齢化問題を解決する糸口になるかもしれないだろう。
A貧困への対策
ベーシックインカム導入により一定の所得を補償することで、最低限以上の生活を送れるようになると思われる。「働いても生活が苦しいまま」のワーキングプア対策としても期待されている。
➂社会保障制度の簡略化
現在の社会保障制度には「失業保険」「生活保護」に代表されるような、様々な仕組みがある。ベーシックインカムを導入することでそれらを一本化することで、社会保障制度を簡略化することにつながり、行政コストの削減にもつながる。また、生活保護の不正受給が社会問題になっているが、その対策としても効果が期待できる。
C地方創生、地方活性化
国で一律に配布されることを前提とした場合、地価・物価の安い地方で生活することがメリットになる。特にテレワーク・リモートワークが推奨される時代になったことで、より地方での生活を考える人が増えてきている。さらに、通勤負担の軽減も大きいだろう。
5(2).Basic Incomeのデメリット
➀将来への不安や社会福祉水準の低下
まず、明確にベーシックインカムのデメリットとして考えられているのが「既存の社会保障制度を撤廃し、ベーシックインカムの制度に集約」することが前提と考えられていることである。決して「現在の社会保障制度に加えて、ベーシックインカム(一定額の現金給付)が行われる」わけではない。
A個人の責任が大きくなる
社会保障をベーシックインカムに一元化した場合を仮定すると、「後はご自身の責任で全て考えてください」という事になる。現在のような「必要な人に必要な分を配分する」制度ではなくなるため、個人の責任が大きくなると考えられている。
➂財源の不安
全国民に一定金額の現金を給付するとなると、当然財源の確保がデメリットとして考えられる。産油国のように天然の資源があり、国家に大きな収入源がある事が必要になるが、日本はエネルギー政策面で大きな収入があるような状況ではない。そのため、不況に陥った場合等に財源確保が難しくなる可能性がある。財源確保のため、消費税増税等もセットで議論されることになるだろう。
5(3).Basic Incomeと給付付き税額控除
Basic Incomeと給付付き税額控除は、異なる思想と問題意識を背景としているが、給付付き税額控除の再分配効果の有効性は多くの財政学者が認めている。社会保障の組み替えとしてのBasic Incomeではなく、所得税の組み替えとしての給付付き税額控除であれば、賛同者はもう少し増えるだろう。ただし、給付付き税額控除の導入には正確な所得の捕捉が不可欠で、そのための体制整備などに課題は少なくない。日本の現行の租税体系には、他にも問題点がある。まず、株式の譲渡益などの金融所得が、他の所得と合算して税率を掛ける総合課税ではなく、別に一定税率を掛ける分離課税となっていることである。金融所得の税率は20%(別途、復興特別所得税)であり、多くの金融所得を得ている超高所得層にとっては、累進税率が課せられないことから、所得全体でみれば租税負担率が低くなっている。また、年金や医療、介護の社会保険料も、徴収する年間の保険料に上限が設けられていることなどから、高所得層では負担が増えない仕組みになっており、低所得者ほど負担が重い。さらに、新たな財源として消費税の税率引き上げばかりが強調されるが、法人税や環境税、相続税といった重要な租税項目の検討が不十分である。このような問題の解決を目的とする租税体系の再編の中に、給付付き税額控除が位置付けられるのであれば、それも一つの選択肢となるだろう。ただし、例えば所得税の控除と児童手当を給付付き税額控除として再編するにしても、新たな財源の確保は不可欠である。
6. シンガポールCPEと日本
➀シンガポールのCPE(年金制度)とは
まずそもそも、シンガポールでは日本で意味するところの厚生年金や国民健康保険等の「公的年金」はない。また、国民健康保険や社会保険といった医療保険専用の公的制度もない。シンガポールでは、年金制度や社会保険制度の代わり「CPF(:Central Provident Fund)」(中央積立基金)というものが存在します。簡単に言えば「政府管理の積立金制度」といったところである。
⓶シンガポールCPEの問題点
確かに日本の年金は受給額がどんどん少なくなったり、支給年齢が上がっていったりしていますので、CPFは「日本のいくら貰えるかもわからない年金制度よりはスッキリしていてよっぽどいいのではないか?」とも思えるが、シンガポール人に聞くと、シンガポールは住宅費用が高くなっているので、CPFの殆どを住宅購入費用に使っているそうだ。そのため、55歳時点でCPF 残高はほとんどない人がかなり多い。なので、老後の年金というよりは、無税で住宅資金を蓄えていくという目的にCPF を利用している場合が多いようだ。このため、日本と同様に、CPF とは別に民間の年金保険のような商品を購入する人もいる。ただ、日本とシンガポールの大きな違いは相続税がないことと中華圏の文化の影響が強いことがある。まず、シンガポールには相続税がないため、日本のように不動産を売却して相続税を払うということはないので、シンガポール人は自分の住居さえ確保できていれば、老後必要になるのは生活費だけと考えられる。また、シンガポールは華僑が多く移り住んでいるので、中華圏の文化の影響で、「親の面倒は子供が見る」という文化が強く残っている。そのため、海外に子供が住んでいても親に生活費として送金を行なっている者は多い。なので、シンガポールの高齢者は、年金はなくとも子供がいれば老後は安心と考えている向きも見受けられる。この面からは、今のところ当地では日本の公的年金のようなシステムは今のところはあまり重要ではないのかも知れない。もっとも、シンガポールも少子化、晩婚化、長寿化が進んでおり、物価水準も高くなってきていることから、今までのようにいくとは限らない。今後は本当の意味での自分の老後を自分で面倒を見るための年金制度の充実が必要になってくると思われる。
7. 所得と出生率・婚姻率の関係
日本社会が抱える問題のうち、もっとも深刻な問題といわれている人口減少・少子高齢化。なかでも若い世代の減少そのものである「少子化」によって、高齢人口と労働力人口のバランスが崩れ、税収、医療、介護、年金、労働など社会の存続にとって不可欠な制度が維持できないほどにまで落ち込み、消費の減退によって経済にも大きな打撃を与えている。出生数の減少、また、生まれてきた子どもたちの育っていく環境も、貧困、虐待、格差、自殺など、過酷なものになっている。人口減少の真っただ中にある日本の人口は現在1億2548万人(3月1日現在の概算値)だが、今後も減り続け、2065年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は38%台の水準になると推計されている。人口減少の最大の要因となっている少子化だが、出生数の減少はすさまじく、1971(昭和46)年からの第二次ベビーブームを最後に右肩下がりとなっている。2005年には出生数を死亡数が上回り、初めての人口の自然減となったが、その後も出生数は減り続け、2016年には初めて100万人を割り込んだ。そのわずか3年後の2019年には90万人を割り込み、新型コロナを経た2021年は前年の妊娠届の減少状況から80万人を割り込むのではないかとの予測まで出始めている。また、一人の女性が生涯何人の子どもを産むのかを推計した合計特殊出生率は、2019(令和元)年で1・36となっている。人口を維持できる「人口置換水準」は2・07とされているが、日本はこれを1975(昭和50)年ごろから下回り続けている。日本で人口減少が始まったのは2008年だが、それ以前から40年以上にわたる出生数の低下によってもたらされた少子化、若年層の減少が高齢化社会をつくりだしてきた。そのことによって労働力不足に陥り、社会制度の維持が限界を迎えはじめた今ごろになって大騒ぎを始め、「高齢者の医療費が若い世代の保険料の負担増加につながっている」「元気で働く意欲のある高齢者が活躍できる社会」「女性が輝く社会」『女性が活躍する社会』などの欺瞞で制度改悪をおこなおうとしているのが今の日本社会の現状となっている。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、夫婦の最終的な平均出生子ども数である「完結出生児数」は戦後一旦大きく減り、その後は1977年の2・19人から、2010年には2人を割り込んで1・96人となり、2015年は1・94人となっている。1977年の調査時と比較して、子どもを持たない夫婦もしくは子ども1人の夫婦が増加し、3人もしくは4人以上の子どもを持つ夫婦が減少したことによるものだ。晩婚化が進むなかで第一子出産時の母の平均年齢は、1980年代の26・4歳から2016年には30・7歳まで引き上がった。子どもを産むことができる期間が短くなっていくことによって最終的な子ども数が少なくなるのは当然だが、それでも多くの夫婦が2人もしくはそれ以上の子どもを産み育てていることがわかる。しかし前記のとおり、出生率、合計特殊出生率がともに下がり続けていることの根源には、母親になる女性が減っていることがあげられる。日本の場合、出産するほとんどが婚姻女性であることから、婚姻数と出生数は密接に関係しているが、近年、婚姻数、婚姻率(人口1000人あたりに占める割合)は下がり続けている。2018(平成30)年には婚姻数が60万組を割り込んで58万6481組となった。2019(令和元)年には「令和婚」の影響でわずかに増えたが、翌2020(令和2)年には再び下がる見込みとなっている。国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、生涯未婚率(50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合)は、2015年時点で男性23・37%、女性14・6%まで高まっている。結婚できない、もしくはしない人々の増加の背景には、生き方や価値観と関わって時代の変化も反映しているものの、若い世代の低所得化が大きくかかわっている。非正規雇用が働く人々に占める割合は第二次安倍政権のもとでさらに拡大し、1980年代の1割から4割まで上昇した。行政の現場ですら非正規社員が3分の1〜2分の1を占めるなど、本来であれば正規社員でやってきたところを非正規社員の労働力に頼っている。正社員の平均給与が503万円なのに対して非正規雇用の年収は175万円(2019年分)。これは未婚率にも大きく影響しており、30〜34歳の男性で見ると、正社員で結婚している人の割合が6割近いのに対して、非正規では派遣労働者で23・8%、パート・アルバイトでは17・1%など、その差は歴然としている。新型コロナ禍の需要低迷で真っ先に職を失ったのが非正規労働者だったが、いつ職を失うかもわからない不安定ななかで結婚・出産など考えることはできないのが現実だ。また正社員であっても、生活を維持していくためには夫婦共働きでなければならない時代になっており、その子ども世代が高校を卒業し大学に進学するさいには奨学金を借りながら学ぶことが今や珍しくなくなっている。社会に巣立つと同時に数百万円の返済が始まることから、とくに都市部では20代のうちの結婚は考えられず、「結婚は30代になってから」という若者が多くいる。40年間にわたる少子化によって、ただでさえ少なくなっている若い世代が結婚し親になることができず、その結果、晩婚化や晩産化、少子化がさらに進んでいく。また子どもを産んだとしても所得が少ないことによる貧困化も著しく、夫婦間トラブルや虐待、離婚など、子どもを巻き込んだ悲劇にも繋がっていく。若い母親たちのなかでは、生活のために出産後働きたくても保育園に預けることができず貯金を切り崩しながら生活していることが語られ、保育現場では子どもを受け入れたいが募集しても保育士が集まらないことが深刻さをともなって語られている。小学校にあがれば、放課後児童クラブの入所を希望しても入れないなど、社会構造の変化によって生じているニーズに制度が間に合っていない。加えて税収減による自治体の財政難から、これまでおこなってきたさまざまな住民サービスが削られる時代になっており、そのことが子どもを育てる世代にますます子育てのしにくさを押し付けているが、これもまた少子化の産物といえる。まぎれもなく少子化をはじめとした子どもたちをめぐる問題は、市場原理主義に貫かれた社会構造によってもたらされた結果である。非正規労働者、女性、外国人、高齢者と、安い労働力を使って利益を増大させる大企業と、それが日本社会の未来にとってどのような影響をもたらすのかを考えぬまま放任してきた国によって、日本は労働力の再生産もままならない弱体国家となった。その原因を作ってきた側が結果だけに目を向けて「子ども庁」を創設して解決するものではない。「子どもは宝」をうたうのであれば、誰もが安心して子どもを産み育てられる社会にすることが最優先課題であり、持続可能な日本社会をつくっていく唯一の道となっている。
8. 所得税と法律婚主義の関係
所得税の課税において、納税義務者は、その配偶者が一定の要件を具備することで、控除対象配偶者となり、配偶者控除または配偶者特別控除を受ける。ここでの『配偶者』は、すでに紹介したように法律婚に基づく配偶者である。事実婚に基づく配偶者は、控除対象配偶者に該当しない。夫婦で生活することにより、独身者の生計費と比べ、夫婦の生計費は増額する。民法は『直系血族及び同居の親族は、互いに助け合わなければならない』(同法730条)、『夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない』(同法752条)と規定している。婚姻により、夫婦の生計費は、夫婦で分担される。しかし、夫婦の一方が控除対象配偶者となるとき、夫婦世帯の税負担をいかにするかという問題が生じる。したがって、同一所得である独身者と既婚者との間において、課税結果としての税額が不均等になることは、税法における租税負担公平原則が優先する視点からは、基本的には許されないことである。ここに従来からの税法における法律婚主義問題がある。
9. PACSについて
新型コロナウイルスの流行は、日本においてもテレワークの普及で自宅にて過ごす機会が増えたことで、家族と一緒に過ごす時間の大切さを改めて認識するきっかけとしてプラス面の影響も見られた。しかしその反面で、行動の制限によりほぼ終日同じ空間で過ごすこと、また在宅勤務と家事の両立の困難さなどからストレスが溜まることで、家庭内暴力や、いわゆる「コロナ離婚」につながるのではないかといったマイナスの側面も指摘された。これらはフランスも例外ではない。3月中旬に始まったコンフィヌモン(本来は「監禁」の意)=ロックダウンの段階的解除が5月に始まって以降、報道によれば、弁護士への離婚相談が前年と比較して増加したほか、2017年に協議離婚手続きが簡易化されたことなどもあり、今後も離婚件数の増加が見込まれている。また、外出制限による結婚式の延期などにより、昨年同時期より婚姻件数が大幅に減少している地域もあり、フランスでは約20年間、結婚件数が減少傾向であるが、コロナ禍が拍車をかけることが予想される。なお、調査会社であるIFOP(Institut Français d'Opinion
Publique)が3,045人を対象に行った調査によると、ロックダウン明けの5月において、11%の人々がパートナーと距離を置きたいと思っており、また4%の人々が永久に別れたいと回答したというが、一方で、コンフィヌモンがカップル間の距離を近づけたという前向きな回答も30%あることから、捉え方は人によりさまざまだったとも言える。いずれにしても、コロナ禍はフランスの家庭のあり方にも影響を与えると考えられる。PACSが導入された当時、その主な目的は、法律婚が認められていない同性カップルの身分保障であった。今でこそフランスは2013年に成立した「みんなのための結婚法(原:Le Mariage pour Tous)」により同性婚が認められているが、1980年代までは同性愛に関する刑事規則が存在し、異性愛と同性愛には法的な区別が残っていた。その後、1985年に性的差別が人種差別同様禁止され、そこでは、同性愛などの性的指向に基づく差別も禁止されることになったことから、当時、法的地位を与えられていない同性カップルの保護についての議論が徐々に進められた。同性カップルは、事実婚の異性カップルには認められる社会保障や福利厚生などが認められないことや死別の際の財産の取扱いなど、様々な面でパートナーが社会的に認められないなどの不都合に直面していたことから、同性カップルの身分を保証するための運動が展開されていった。当時流行していた感染症であるエイズ禍にあって、パートナーの入院や死別などに際して様々な障害があったことも一つの契機と言われている。また、1960年代後半以降フランスでは五月革命や女性解放運動が起こり、結婚や性に関する女性の権利や価値観が大きく変化したことも背景にあった。こうした変化に伴い、女性の経済的自立が促進されたことや、男女間の関係の変化に伴い、法律婚というかたちをとらないカップルが増加した。このような「Union Libre(ユニオン・リーブル=自由な関係)」「Cohabitation(「同居」「同棲」の意)」、「Concubinage(内縁関係)」等といった事実婚関係は、当初は結婚に至るまでの「試行期間」と捉えられていたが、これが徐々に社会に根付いてきていた。1968年から2001年の間に、こうしたカップルは、約8倍となり、250万人に上っていた。こうして導入されたPACSは、実際に制度を利用するのは異性カップルが大勢を占めたが、利用カップルは年々増加、定着し、今日、PACSは法律婚と肩を並べるほどの存在となっている。その背景として、結婚に対する社会的価値観の変化があるとみられている。例えば、導入時の背景にもある女性の社会進出により、家族のかたちも、かつての「男性は仕事、女性は家庭」といった性別役割分担から、お互いの自立を重視するよう変化していったことや、それに伴い、男女関係なく経済的自立のための労働が可能となり、「結婚」という言葉に付随する古典的なイメージを嫌い、また、一度結婚すると離婚が難しいという法的な制約を煩わしく考える人々が増えたことなどが挙げられる。こうした法律婚にとらわれない自由な生き方という価値観が広がった結果、法律婚と比べ、特に締結と解消の点で面倒な手続きが必要なく、それでいてほぼ同等の権利が得られるPACSは若い世代を中心に普及していったと言われる。
感想
今回の授業で、日本の賃金は30年前からずっと変わっておらず所得税が低いことによって結婚率や出産率又は非正規雇用の問題点など、様々な問題点に影響を及ぼしてしまっていることがわかりました。自分の考えとしては、いち早くBasic incomeを導入して、少子化問題や貧富の格差を削減し、社会保障制度を簡略化すべきだと思いました。
参考文献
38.
「異次元の金融緩和」政策とはなにか〜「アベノミクス」の特徴と問題点を探る〜 Copy
Copy of 山田博文のNetizen越風山房 (gunma-u.ac.jp)
日本企業がGAFAMの足元にも及ばないのは、「非財務資本」の差にある(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース
148カ国で最下位! 日本人の給料は30年前から上がっていないという現実 | WANI BOOKS NewsCrunch(ニュースクランチ) (wanibooks-newscrunch.com)
ベーシックインカムとは?|メリット・デメリット・意味を徹底解説! | クリエイト転職 (job-terminal.com)
ベーシックインカム入門:実現可能なベーシックインカム 「給付付き税額控除」とは何か=佐藤一光 | 週刊エコノミスト
Online (mainichi.jp)
シンガポールのCPFの相続手続き(年金の相続)
| 海外投資・海外口座開設・解約・相続手続き相談センター
(kaigaikouza.com)
子どもを産み育てられる社会に 低所得で結婚も出産もできない現実… 世界人口の急増と裏腹な実態 | 長周新聞 (chosyu-journal.jp)
コロナ禍で振り返るパートナーシップ制度「PACS」 - CLAIR Paris
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加賀晶瑛
帝京大学
中江 章浩 先生
お世話になっております。
帝京大学の加賀晶瑛です。
レポート課題を提出させて頂きます。
ご確認のほどよろしくお願いします。
帝京大学 法学部 法律学科
19j116006 加賀晶瑛
社会保障法U
19j116006 帝京大学法学部法律学科
加賀晶瑛
所得保障と経済社会政策
結論:コロナ禍のような様々な不測の事態や、多様なケースにも対応できる社会保障制度の充実を目指さなければならない。
1.異次元金融緩和と日銀引受
日本銀行を巻きこんだ異次元金融緩和政策は、メディアを利用して強いメッセージを発信し、世の中の雰囲気を変え、期待感を高揚させた。また、金融政策の操作対象を金利から、資金供給量(社会で流通している現金と金融機関の日銀当座預金残高の合計)に変更した。異次元金融緩和を実施するため、資金供給の量そのものを増大させ、資金供給を倍増させるやり方は、日銀が毎月7兆円ほどの国債を金融機関(銀行)から購入し、その購入代金を提供する方法であり、日銀が毎月7兆円もの国債を購入するようになると、新規に発行される国債の7割ほどが日銀によって引き受けられることになる(日銀引受)。株価や不動産価格の動向に直結するリスクの高い金融資産も購入対象とし、株価や不動産価格も上げるための金融政策のねらいである。現在、国債と日銀の当座預金は増え続け、日銀が民間銀行から国債を購入し、民間銀行は代金を日銀に預けている。このような政策を打ち出したのは、国の財政問題の改善であり、日本は、財政問題は国債発行によって解決を目指し、現状では政府が発行する国債を日銀が引き受ける方法をとっている。
しかし、当座預金が増大すると、債務超過に陥った際、必要な金利引き上げができなくなる可能性がある。日銀が債務超過に陥った場合、政府が日銀に引き受けさせる前提で国債を発行し、政府が税金で補填しようとすれば、それは大きな国民の負担となるだろう。国民に影響が及ぶとすれば、消費税率引き上げにとどまらない、急激な負担が国民を襲う可能性がある。財政破綻と円安が同時に進行し、税金とともに輸入物価の急上昇など、国民にとって厳しい事態となるだろう。
日銀が国債を買えば、物価が上がって経済成長するわけではなく、金融政策は、経済の一時的なショックがあった場合の応急処置としては有効と考えられる。しかし、潜在成長力を強くする力があるとはいいがたく、金融政策の限界が見えてきていると考えられる。
2.日本の生活と社会保障
国民が安定した生活を送るのに必須なのは賃金の上昇である。しかし、日本の賃金の伸びとしては、低迷が続いている。企業が、業績のよい年にはボーナスを積み増すことはしても、年齢賃金カーブ全体のシフトアップなど、将来の負担を固定化することは避け、結果として賃金が継続的に上昇することはなく、賃金を引き上げなくても労働者の採用や維持に問題が起きないので、賃金を引き上げる圧力は生じなかった。さらに、労働者、あるいはその利害を代弁すべき労働組合も、賃上げを全面的に強く要求することもなく、危機のたびに非正規雇用の雇い止め、正規社員の早期希望退職、新規採用停止などを経験し、労働者や労働組合が雇用の維持を最優先して、賃金上昇の要求を控えてきた。また、国際的なビジネスを展開する大企業のGAFAM(Google Amazon Facebook Apple Microsoft)等が、国内での大型の設備投資を控えたため、生産性が伸びず、その結果として賃金が上昇しなかったことも考えられる。賃金上昇の低迷は、国民が安定した生活を送ることを目指す際の、大きな壁となっているのではないだろうか。それに対して、日本はできる限りの救済制度を施してきた。その一つともいえるのが生活保護である。
生活保護は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を権利として具体化したものであり、生活保護法により、資産や能力を活用しても、生活を維持できないとき、権利行使として生活保護を利用できる。人口が増え、生活保護受給率は減少しているが、人数は増えている。しかし、現在の日本では、生活保護の受給だけでの生活は厳しい状況である。こうした中、シンガポールの社会保障制度として、シンガポールCPF(Central Provident Fund)がある。雇用主である会社と被雇用者である従業員から、それぞれ給与の一定額を強制的に積み立てさせ、それを中央年金庁が運用し、シンガポール国民等に老後の年金として支給する制度で、従業員の毎月の給与から従業員負担分を源泉徴収し、雇用主負担分とともに雇用主である会社が申告納付することとされている。雇用主により積み立てられたCPFは、各個人ごとに一定の割合で以下の3つの口座に分けられ、安定的な資産に再投資される。最低利率や実際の利回りが決定されており、引き出すにはそれぞれの口座ごとの引き出し条件等を満たす必要があるため、実質的に国民等の老後の生活資金として機能している。また、シンガポールではベーシックインカム(Basic Income)が進んでおり、最低限の所得を保障する仕組みである。支給されるようになると、多くの国民は最低限の生活を維持できるようになり、金銭面の不安を理由に子供を持てなかった人にとって財源となり、少子化の解消も期待できる。また、生活保護の不正受給問題の解決も見込める。最低限の生活を維持するための一定の金額が得られることで、不正を抑制する効果が期待できる。長時間労働の削減、労働環境の改善にも効果があると考えられ、無条件に収入が得られれば、生活のための労働に縛られる状況が緩和され、国民はより安全、安心な働き方が可能な企業を選択できる。コロナ禍では多くの人の移動や労働が制限され、経済は大きな打撃を受けたが、ベーシックインカムのような制度が整備されていれば、多くの国民の生活を守り、命を救うことが期待できる。雇用自体が失われたケースのほか、労働時間が制限されたことによる収入減が大きな問題となり、現在の社会保障制度は、生活保護や年金、失業保険が軸となっており、いずれも労働が困難、もしくは労働意欲があっても適職が見つからない国民に対する保障であって、職はあっても収入減に陥っている国民は労働しているため、適用できる救済措置がなかった。そうした状況が、ベーシックインカムの重要性、必要性を大きくし、日本でもコロナ禍によって生活にも大きな影響が出ている。景気悪化が進む中で雇用への不安も増大し、注目を集めている。
また、若年層を中心に非正規雇用やワーキングプアが増加し、格差拡大が社会問題化している。格差問題に対して、税制は所得再分配の機能を通じた是正機能を有しているが、所得税に関して、最高税率の引下げを含む税率の引下げや各種所得控除の拡充等の結果、所得税による所得再分配機能が低下してきている。近年において、年金控除や配偶者特別控除の見直しなど税負担を増加させる改正が行われているものの、機能の回復は十分なものに至っていない。若年層を中心とした低所得者支援、子育て支援、就労支援、消費税の逆進性是正対応等の観点から給付付き税額控除制度の導入の意義が議論されている。社会保障制度の見直しや所得控除の抜本的な整理とあわせ、総合合算制度や給付付き税額控除等、再分配に関する総合的な施策を導入するとされている。給付付き税額控除制度は、限界税率の高い高所得者に減税効果がより大きくなる所得控除から、低所得者に対してより手厚い税額控除に、さらには控除される税額が納付すべき税額を上回る者、税を納付していない課税最低限以下の所得の者に対しては現金を給付する仕組みである。また、税額控除額が所得の増加に伴い増加する仕組みを組み入れることにより、勤労を奨励する効果を持たせることも可能となるだろう。
3.日本の社会問題と日本人の価値観
日本では長いこと、日本人女性の社会進出について議論されてきているが、日本の女性就業率は上昇傾向ではある。しかし、男女共同参画社会基本法が施行され、「すべての女性が輝く令和の社会へ」と女性活躍の推進が唱われているが、教育、経済、保健、政治で構成されている男女格差指数の日本は120位と先進国では最下位、東アジア諸国よりも低いのが現状である。女性に対しての必要な区別というのも考え方の違いにより、結論を見いだすのが難しい事項もある。世界では中絶禁止を法律化している国もあるが、今の日本での中絶は配偶者の同意書が必要である。学校の性教育では、性交という言葉の使用も禁止され、妊娠の過程や避妊、中絶などに関する事項は扱っていない。もちろん多様化という便利な言葉で、教育内容の適正を緩く判断するわけにはいかないだろうが、日本人にはどうしても女性に対しての潜在的な差別が払しょくできていない。
また、日本の女性就業率が上昇傾向である代わりに、近年減少傾向となっているものがある。それが出生率である。世界では、女性労働力率が高い国ほど、出生率も高い傾向があることが確認されてきたが、日本の出生率は減少している。仕事と家庭の両立支援というのが国民にとっては必要ではあるが、日本の男性の育児休業取得率は低く、勤務時間短縮等の措置の普及率も低い。男性の家事、育児に費やす時間は世界的にみても最低の水準であり、男性の家事、育児時間割合が低いと出生率も低い傾向がある。また、非正規社員と婚姻率にも関係があり、こちらは女性の非正規社員の婚姻率よりも、男性の非正規社員の婚姻率の方が低い。婚姻率が低くなっていることの関連として、独り身で子供もおらず、相続人がいないことにより空家が多く存在してしまう空家問題があるが、2024年に相続登記義務化されたとしても、婚姻率が低いことが今後も空き家が存在する要因でもあるだろう。男性の非正規社員の婚姻率が低いのは、婚姻したならば一家の大黒柱として支えなければならないという日本の昔ながらの考え方が影響しているという考え方もある。こういった伝統的価値観が、少子化などの社会問題解決の大きな壁となっているのは間違いないだろう。日本人の価値観を構成している要素の一つとして挙げられるのが、儒教である。
日本人の価値観は儒教倫理の影響を受けている。儒教の基本原理は社会的調和と秩序であり、人は置かれた立場によって異なる役割を果たして社会に貢献することが求められ、それが最大の徳とされている。儒教的思想の中でも世間体を重んじる「恥と世間」は、何かをするときには、まず、世間からどう思われるかを第一に考えるべきであり、人から非難されたり、後ろ指を指されるようなことはすべきではなく、何においても、世間から孤立したり、つまはじきにされることだけは避けなければならないという考え方は内向的な日本人の性格からしても、強い傾向があると考えられる。
日本社会は、近年、社会全体としても個人としても様々の課題に直面しており、その解決策と対処において日本人の価値観が問われ、その度に、潜在的な価値観と、今現在変化してきている新しい価値観が議論されるが、日本人の意識と行動を理解し、合理的に変化させていくのは容易ではないと考えられる。
4.コロナ禍でのフランスの家庭のあり方
フランスでは、家庭の中核となるカップルの一つのあり方として大きな役割を果たしているのが、1999年に制定された民事連帯契約制度「PACS(Pacte Civil de Solidarité)」である。PACSは「同性または異性の成人2名による、共同生活を結ぶために締結される契約」であり、締結及び解消手続きや社会保障関係などが通常の法律婚とは異なる。手続きは申請だけでよいことに加え、公証人が証書を作成するにあたり、感染拡大防止対策として電子署名やビデオ会議システムを用いることで、当事者がその場にいなくても手続きができるため、コロナ禍でも多く利用されてきた。PACSが導入された当時、その主な目的は、法律婚が認められていない同性カップルの身分保障であり、同性カップルは、事実婚の異性カップルには認められる社会保障や福利厚生などが認められないことや死別の際の財産の取扱いなど、様々な面でパートナーが社会的に認められないなどの不都合に直面していたことから、同性カップルの身分を保証するための運動が展開されていき、女性の経済的自立が促進されたことや、男女間の関係の変化に伴い、法律婚というかたちをとらないカップルが増加した。
PACSは、フランスの変化する社会や価値観の中で作られ、定着してきたものであり、日本は法律婚主義であるため、簡単には導入できないが、感染症流行時の適正な婚姻を期待でき、日本でも同性婚の導入することの第一歩になるのではないだろうか。
5.まとめ
日本は社会保障制度の充実を目指すことにおいて、諸外国の社会保障を参考とし、多様化していく考えや思想を考慮して、何人も受け入れられる体制が求められている。
参考文献
・中江章浩 社会保障のイノベーション 信山社(2012年)
・厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/index.html
・毎日新聞 異次元緩和が日本に与えた「二つの深刻な副作用」
https://mainichi.jp/premier/business/articles/20211110/biz/00m/020/001000c
・GAFAM通信簿2021年版
https://www.gizmodo.jp/2021/12/gafam-tsushinbo.html
・コロナ禍で振り返るパートナーシップ制度「PACS」
https://www.clairparis.org/ja/clair-paris-blog-jp/blog-2020-jp/1441-pacs
・日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFS3004I_Q1A131C1EE1000/
鶴岡知弥
社会保障法「所得保障と経済社会政策」
19j108002 鶴岡知弥
<結論>
所得保障をより手厚くすることで、今後の日本の経済政策につながると考える。
T 日本の経済
(1) 異次元金融緩和と日銀引受
異次元金融緩和とは、日銀の黒田東彦総裁が「量的にみても質的にみても、これまでとは全く次元の違う金融緩和を行う」と会見で発表した金融政策のことであり、消費者物価前年比プラス2%を物価安定の目標に定め、マネタリーベースおよび長期国債やETF(上場投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)などの保有額を2年間で2倍に拡大する金融緩和で、金融機関や投資家に対してリスクテイクを促し、金利の低下を通して資金調達コストを下げ、企業や個人の資金需要を喚起するのが狙いである。2016年1月29日には、金融機関が保有する日本銀行当座預金に、歴史上はじめて0.1%のマイナス金利を適用し、より一層の金融緩和に踏み切った。2020年3月16日の決定内容では、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を踏まえた緩和が大幅強化された。
日銀引受とは、国籍について、国と中央銀行が市場を介さずに直接取引することをいう。日本においては、「国債の市中消化の原則」と呼ばれるものがあり、日本銀行における国債引き受け(日銀引受)は、財政法第5条によって原則として禁止されている。国債引き受けを行うと、その国の政府の財政節度を失わせると共に、中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛らなくなって、悪性のインフレ(ハイパーインフレ等)を引き起こすリスクがある。
こういった中で、大胆な金融政策を就任後にすぐ行ったことは良い点であったと思うが、結果的に2%の物価目標が達成できなかったことは残念に思った。2%の物価上昇の目標は金融政策だけで達成することは大変なことだと思うが、達成できなかった後の違うプランをしっかり用意していれば良いと感じた。
(2)賃金の伸びとGAFAM(Google Amazon Facebook Apple Microsoft)
日本で賃金の伸びは課題の一つであって、実際に日本の賃金上昇の推移を見てみると、平成の30年間で上昇した賃金はわずかしかない。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、1990年の平均給与は425万2000円(1年勤続者、以下同)。1990年以降、平均給与はしばらく上昇するのだが、1997年の467万3000円をピークに下がり始める。その後、ずるずると下がり続けて、2017年は432万2000円となる。1990年からの27年間で、上昇した平均給与はわずか7万円ということになる。日本の実質賃金の下げを国際比較してみると、1997年=100とした場合の「実質賃金指数」で見た場合、スウェーデンは138.4、オーストラリアは131.8、フランスは126.4、ドイツは116.3、アメリカは115.3など先進7か国のアメリカやドイツでさえ1割以上上昇しているのにもかかわらず、日本は89.7と1割以上も下落している。そんな日本が賃金の伸びが課題の中、世界市場で圧倒的な存在感をみせるGAFAMがあり、それぞれのサービスは今や社会インフラと言えるほどに人々の生活に根付いている。GAFAMを代表とするIT企業群は、ソフトウェアや優秀なエンジニア、働きやすい環境作りなどに積極的に投資し、財務諸表に載らない「非財務資本」をうまく蓄積してきた。翻って、日本の企業は環境変化への対応や人材への投資を怠ってきた、と言わざるをえない。
こういった今の日本のやり方が世界の企業との差が生まれてきてしまうと思うし、結果的に日本の株価が低迷していることに繋がってくると思う。今後の日本の企業に必要なのは、サービス産業への移行にうまく適応していくことが重要だと思う。
(3)生活保護受給率と給付付き税額控除
日本の生活保護を受ける資格を持つ人が1000万人いる中で「生活保護が過去最多」と報道されることがあるが、日本の生活保護の捕捉率は先進国の中で最低レベルとされている。日本の捕捉率がこれほど低いのは、生活保護がスティグマになっているのが大きな要因である。くわえて、生活保護の制度が正確に知られていないことも原因であると考える。生活保護は憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限の生活」を送るための権利であり、最低生活費を下回っていれば働いていても、金持ちの親族がいても受けられるのが生活保護である。やはり生活保護受給率が低い理由としての生活保護が恥ずかしという風潮をなくす必要があると思うし、生活保護の正しい知識を国からも積極的に発信していく必要があると思う。
給付付き税額控除でも問題点はある。低所得の人に対して増税分の一部を還元するという意味では必要なことではあるが、制度として実施するためには、国がすべての国民の所得や資産を正確に把握しなければならず、マイナンバー制度はあるもののまだ定着していない段階では難しく、国がよく論議してマイナンバーの呼びかけを増やすなどをして弱者に優しい制度をつくり暮らしやすいよう環境にしていければいいと思う。
U シンガポールCPF(Central
Provident Fund)とBasic Income
シンガポールにはCPFと呼ばれる制度がある。CPFは雇用主である会社と被雇用者である従業員から,それぞれ給与の一定額を強制的に積み立てさせ,それを中央年金庁が運用し,シンガポール国民等に老後の年金として支給する内容である。従業員の毎月の給与から従業員負担分を源泉徴収し、雇用主負担分とともに雇用主である会社がCPFBに申告納付することとされている。原則として雇用主はCPFを申告納付する義務を負い、被雇用者はCPFに加入しなければならない。高い金利や免税効果があるなど、一見魅力的にも見えるシンガポールのCPF制度だが、2014年にはホンリム公園で抗議デモが行わるなど、制度に不満を持つ人たちも多い。数百人が参加したこのデモではCPFの運用のあり方について、利子率が低いなどとしている。Basic Incomeとは社会保障制度等が議論される際に出てくる政策・制度のことで、簡単に言うと最低限の所得を保障する仕組みである。2021年7月、日本では新型コロナウイルスの感染拡大により4度目の緊急事態宣言が発出され、休業要請が実施される等、私達の生活にも大きな影響が出ている。
Basic Incomeは「少子高齢化」「貧困への対策」「社会保障制度の簡略化」「地方創生、地方活性化」などの対策になるとされている。一方で、「将来への不安や社会福祉水準の低下」「個人の責任が大きくなる」「財源の不安」などといったデメリットがあげられる。
現在ではオミクロン株など変異ウイルスが猛威を振るう中でBasic Incomeによって助けられる人々が少しでも多く増えてくれればいいと思う。また、SDGsの一つである「貧困をなくそう」という目標に対し、一番その目標に対して取り組むことが出来ると思っている。
V 空家問題と相続登記義務化
現在、空き家が増加している問題が指摘されている。その要因のひとつに不動産登記がされていないことが挙げられている。そんな中で相続登記が義務化された。空き家が管理されずに放置されることで、近隣トラブルや衛生上、防犯上などさまざまな問題を引き起こす「空き家問題」が話題になった。政府は、こうした迷惑空き家に対して、2014月11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家対策特別措置法)を成立させ、私有財産である住宅に行政が関与できるような対策を取った。一方で、放置された空き家や土地に対して管理を求めたり処分したりしようするときに、所有者が分からないという問題も浮き彫りになった。政府は対策に着手し、不動産登記法の改正、民法等の改正、相続土地国庫帰属法の新法制定などを行った。相続登記の義務化されたことにより、不動産を取得した相続人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務づけられる。正当な理由がないのにこれを怠った場合は罰則(過料10万円以下)がある。ただし、登記手続きの手間や費用を軽減するなどの措置も取られる。
新たな法改正により、空き家を所有している人や、今後に土地や住宅の相続が想定される人などは、しっかりと家族で話し合うなど、その土地や住宅についてこれまでの経緯を知っている人から情報を集めなければならないと思った。
W 女性のありかた
(1)出生率と女性就業率
日本では、急速に出生率が低下し、益々少子高齢化社会が深刻化されている。先進国の中でも日本は、出生率と女性就業率がどちらも低くなっている。しかし、国内をみると、都道府県によってその差がある。有業率の低い県において出生率が大きく低下していて、有業率が比較的高い県においても低い傾向である。
この課題は今後の日本の少子化問題を考えるうえで重要なことだと思うから、女性の就業についていち早く対策をよる必要があると考える。
(2)中絶禁止と女性活躍
日本での妊娠中絶は、基本的には刑法堕胎罪で禁止されている。妊娠中絶に関して厳しいのがアメリカ。アメリカ南部テキサス州では、胎児の心拍が確認されてからの人工妊娠中絶を禁止する法律をめぐって、医師らが差し止めを求めていましたが、連邦最高裁判所が判断を示さなかったことから、全米で最も厳しいとされる中絶規制の法律が発効された。2019年に入って、全米の9つの州で妊娠中絶を禁止したり、制限したりする法律が相次いで成立。 南部アラバマ州では、母体や胎児の命に危険が及ぶ場合を除き、すべての妊娠中絶を禁止する、全米で最も厳しい州法が成立した。しかしこれに対し、「中絶は女性の権利だ」と訴えている人たちがデモを起こした。現在日本での妊娠中絶は、刑法堕胎罪で禁止されている。しかし、母体保護法に定める中絶の要件を満たしている場合に限り配偶者の同意を得た上で、合法的に中絶の手術を受けることが可能である。中絶の決断をする理由として、実際に半数以上の女性が「経済的な理由」で諦めているのが現状である。これは、女性の社会での活躍に繋がっている。例えば、大手化粧品会社の資生堂では、女性活躍促進の一環として子育てを理由とした短時間勤務中の美容職社員に遅番や土日勤務を求める働き方改革を始めた。また、企業においては競争が激化し、女性社員を一時期にせよ「戦力外」として扱う余裕がなくなってきていることもある。資生堂のように育児中の社員も戦力とするよう、会社側も時短勤務者側も意識を変えていこうとする会社もある一方で、戦力外として暗に退職を迫る会社も増えている。いわゆるマタハラ(マタニティハラスメント)と呼ばれる違法行為である。
なぜ女性は出産すると戦力外とみなされてしまうのか。それは日本がいまだに「男性は仕事、女性は家庭」という性別役割分業が前提とされた社会のままであるから、どの世代の女性も男性と同じように待遇、同等の給料また仕事量を受け社会的地位につくことで女性の妊娠中絶率が減れば良いと考える。
(3)儒教倫理と少子化
儒教の教えに「五常」と「五倫」というものがある。人は、「仁・義・礼・智・信」からなる「五常」の徳目を守ることで、「五倫」と呼ばれる「父子・君臣・夫婦・長幼・朋友」の関係を維持するよう努めなければならないという内容で、東アジアにおける倫理観の基本になっている考え方である。
日本の出生率すなわち少子化の影響は儒教が一つの要因だと考える。儒教文化は男尊女卑な部分があるから、女性が社会進出してくると、女性は自分より稼ぎの少ない男性は嫌って考えるようになってしまう。時代が進んでいく中で、古い考えが知らず知らずに今に影響を起こしてしまうから、シングルマザーなどをしっかりと法律で守っていかなければならないと思った。
(4)非正規社員と婚姻率
非正規社員は労働者であり、雇用されている人だが、フリーランスは誰かに雇用されているわけでもなければ労働者でもない。 また、非正規社員の報酬額(賃金)は勤務先の会社が提示した額になるのに対して、フリーランスの報酬額はクライアント(仕事を依頼する企業など)と話し合って決めるもの。現在の日本の婚姻率は減少傾向にあり、理由の一つとして、非正規社員が結婚の障害になっていると考えられる。非正規社員であることによって世帯所得の低さが繋がっている。
少子化社会によって、少ない労働者の数で今後何十年後かに低所得の独居高齢者への対策も今後の課題であることが分かった。
(5)PACS(Pacte Civil de Solidarite)と法律婚主義
PACSとは「民事連帯契約」というもので、婚姻より規制が少なく、単なる同棲(事実婚)よりは法的権利がある契約のことである。PACSは、お互いの納得する内容で取り決めをすることができると言うのは自由度がかなり高い。もともとは同性カップルのことを考慮して作られた制度だが、異性カップルの利用者も多くみられている。日本ではPACSは認められておらず、法律婚主義をとっている。
日本でもPACSの制度を取り入れることで、婚姻率が上がり、少子化対策につながるのではないかと思う。
https://www.glossary.jp/econ/finance/nichiginhikiuke.php参照
https://www.ifinance.ne.jp/glossary/japan/jap129.html参照
https://toyokeizai.net/articles/-/267883参照
https://news.mynavi.jp/article/20201127-1528122/参照
https://singsingsingle.net/welfare-single-mother/#:~:text=参照
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210902/k10013238471000.html参照
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO94145540Y5A111C1000000#:~:text=参照
https://www.sbbit.jp/article/cont1/45128参照
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野崎萌子
近年は女性が働きに出ることが当たり前になり、女性の働きやすさや権利を守りながら、どれだけ適切な少子高齢化対策・経済政策をしていけるかで、今後の国の未来が変わる。
【給料が上がらない日本】
長年の不景気からの脱却を測り、日本銀行が黒田東彦総裁のもと、2013年4月4日、「量的・質的金融緩和」として発表された異次元金融緩和。日銀が毎月7兆円ほどの国債を金融機関から大量に購入し、その購入代金を提供するやり方である。日銀が毎月7兆円もの国債を購入するようになると、それは新規に発行される国債の7割ほどが日銀引受になる。アベノミクスの効果と言われ、最初の1.2年は景気が良くなった気がしたが、それも長くは続かず、賃金は伸び悩んでいる。日本は30年間、給料が上がっていない。一方、アメリカでは約30年で給与水準は2倍以上に上昇している。特にGAFAM(Google Amazon Facebook Apple Microsoft)は、米国株を牽引しており、市場を盛り上げ利益を出している。
日本には、GAFAM(Google Amazon Facebook Apple Microsoft)のような革新的な企業が出てこない。何か新しい物を生み出す余裕もなく、今を乗り越えていくのに必死なのだと思う。全体的に活発がない。政府もその場しのぎの対策ばかりで、結果が出せず、国民に全く反映されない。企業全体の内部留保が年々増えていて配当に回されないなどの企業側の問題もあるので、そういったところも政府の後押しが欲しいと感じる。
そんな不景気続きの日本だが、近年のコロナ禍でさらに打撃を受けた人々も多い。生活保護の申請件数は2021年6月で1万9478件、前年同月より13.3%(2288件)増加した。また、保護開始は1万7012世帯となり前年同月より12.3%(1870世帯)増えてる。長期化するコロナ禍の影響もあってか、生活保護受給率は一瞬増えた。しかしその後は少し減った。生活保護受給は受けるまでハードルが高い。特に扶養照会で親族に連絡が行くことが嫌で受けない人も少なくない。生活保護を受給するのは「恥ずかしい」と考える人もいる。
低所得者層を救済するために、軽減税率を取り入れたりしたが批判も多い。そこで給付付き税額控除という案も出ているが、税務署や役所の対応が複雑化、痛税感の緩和を実感出来ない、所得の多少で給付付き税額控除対象を決めるのは不公平ではないかという問題点がある。
そこでBasic Incomeが注目されている。
〈メリット〉
・少子化対策
必ずしも直結するわけではないが、「世帯に対しての支給」ではなく「個人単位での支給」になるため、単純に子供が増えることで世帯所得が増加する。そのため、長期的には少子化対策になると考えられる。
・貧困への対策
Basic Income導入により一定の所得を補償することで、最低限以上の生活を送れるようになる。「働いても生活が苦しいまま」のワーキングプア対策としても期待されている。
・社会保障制度の簡略化
現在の社会保障制度には「失業保険」「生活保護」に代表されるような、様々な仕組みがある。Basic Incomeを導入することでそれらを一本化することで、社会保障制度を簡略化することにつながり、行政コストの削減にもつながる。また、生活保護の不正受給が社会問題になっているが、その対策としても効果が期待できる。
・地方創生/地方活性化
全国で一律に配布されることを前提とした場合、地価・物価の安い地方で生活することがメリットになる。特にテレワーク・リモートワークが推奨される時代になったことで、より地方での生活を考える人が増えていく。
〈デメリット〉
・将来への不安や社会福祉水準の低下
まず、明確にBasic Incomeのデメリットとして考えられているのが「既存の社会保障制度を撤廃し、Basic Incomeの制度に集約」することが前提と考えられている。決して「現在の社会保障制度に加えて、Basic Income(一定額の現金給付)が行われる」わけではない。
・個人の責任が大きくなる
社会保障をBasic Incomeに一元化した場合を仮定すると、現在のような「必要な人に必要な分を配分する」制度ではなくなるため、個人の責任が大きくなると考えられる。
・財源の不安
全国民に一定金額の現金を給付するとなると、当然財源の確保がデメリットとして考えられる。産油国のように天然の資源があり、国家に大きな収入源がある事が必要になるが、日本はエネルギー政策面で大きな収入があるような状況ではない。そのため、不況に陥った場合等に財源確保が難しくなる可能性がある。
財源確保のため、消費税増税等もセットで議論されることになる。
他国を見てみると、シンガポールCPF(Central Provident Fund)という積み立て式年金がある。日本のような公的年金は存在せず、政府が個人で管理している。
日本では、若者が高齢者の年金を支えている状態だが、少子高齢化が今より進み、今の私たち世代が将来年金をしっかり貰える確証はない。今のままでは確実に、貰える年金は少なくなるだろう。その点、シンガポールCPF(Central Provident Fund)は積み立てた金額よりも受け取る金額が少なくなることは無いことや、2.5%以上の利回りを政府が保証など安心要素がある。もちろんデメリットもあるが、少なからず今の日本のように若者が将来に不安を抱えて年金を賄っていくよりは良い方法だと思う。
【少子高齢化による空家】
少子高齢化や核家族問題により、所有者不明の空家問題が近年問題になっている。特に地方では所有者不明土地の増加が上げられる。所有者が分かっても連絡が取れないなどの問題があり、相続登記義務化が法改正で決まった。
相続登記義務化することで、ニュースでよく取り上げられている空家の近隣トラブルの早期解決、所有者への賠償金請求に繋がることになるので良い事だと思う。
【少子化が進む国々】
少産少死の先進国の出生率で、1.5を下回る日本を始めとした国々は儒教倫理が根強く、家父長的な社会構造が少子化*の要因になっている。現在は「女性活躍」が叫ばれ、男性と同じように女性も社会に出て働くという選択肢が増えました。昔で言う一家の大黒柱の男性だけで家族を養うのが難しくなった為、女性も働かざる得ないというのもあるが。そんな中でも、やはり女性が家事や育児をするべきだという考えが残っているのが問題だ。仕事もこなし、家事や育児も...となると女性の負担が大きい。それでは結婚して子供を産みたいと思えないだろう。家父長的な意識を変えていく必要がある。今や、結婚のイメージはそこまで良くない上に、わざわざ負担や責任を背負ってまですることでは無いと思う人が増えているのだ。
また日本では中絶が非常に多く日本の死因1位と言われている。その中絶が無くなれば、少子化問題が解決するほどだが女性の権利もある為、中絶禁止にする訳にもいかない。今の日本で出産して子供を産むには覚悟と何よりお金が必要だ。子育て支援など政府の対策が不足していることも要因だろう。
まず私が考えるのは、産みたいと思う女性が産める環境を整えることだと思う。女性だから産むべきという考えではなく、子供を持つ持たないも個人の自由だ。だからこそ、産みたいのに産めないという現状が問題だ。高齢化対策ばかりに気を取られているが、政府には子育て支援をもっと手厚くしてもらいたい。
また中絶が多いのは「育てられない」からというのもあるが、特に10代の中絶は性教育が足りていないのも原因ではないかと思う。日本は性に対してタブーな風潮があるが、自分の体を守る大切なことなのでしっかり学校で学ぶべきだ。
日本ではないが、中絶禁止で最近問題になったのが米国のテキサス州で妊娠6週目以降の中絶を禁止する州法だ。あらゆる女性の権利を主張している時代にこの州法が施行されたのは驚きだった。少子化対策とは違った視点だが、胎児の心音が聴こえるため、命を保護する目的だという。妊娠6週目は妊娠の自覚もないため、気付いた時には中絶が出来ない。なお、近親相姦や強姦による妊娠についても、この法律は適用する。この州法は女性の権利を侵害しているため、私は反対だ。強姦等の妊娠にも適用とはあまりにも酷い法律である。様々な価値観を持っている人がいるが、自分のことは自分が決めることであり、他人や法が強制するべきことではないと思う。どこの国でも、例え子供が産みやすい社会であっても中絶は方法のひとつとしてあるべきだ。
【事実婚と法律婚】
フランスでは同性婚が認められる前、PACS(Pacte Civil de Solidarite)が1999年に民法改正により施行された。成年に達した二人の個人が、安定した共同生活を営むために交わす契約だ。もともと同性カップルの身分保障の為に作られたものだが、今では多くの異性・同性カップルがこのPACS(Pacte Civil de Solidarite)を利用していて、法律婚と肩を並べるほどだ。女性の社会進出により、家族の形、かつての「男性は仕事、女性は家庭」といった性別役割分担から、お互いの自立を重視するよう変化していったことや、それに伴い、男女関係なく経済的自立のための労働が可能となり、「結婚」という言葉に付随する古典的なイメージを嫌い、一度結婚すると離婚が難しいという法的な制約を煩わしく考える人々が増えたことなどが挙げられる。こうした法律婚にとらわれない自由な生き方という価値観が広がった結果、法律婚と比べ、特に締結と解消の点で面倒な手続きが必要なく、それでいてほぼ同等の権利が得られるPACS(Pacte Civil de Solidarite)は若い世代を中心に普及している。それでいて、法律婚より解消率が低いのだ。
一方、日本では今でも同性婚に対しての議論が進んでおらず、2019年にはアジアで初めて台湾が同性婚を認めて、主要7カ国(G7)のうち同性婚を認めていない国は日本だけだ。日本は届け出による法律婚主義をとっているが、今日の日本では結婚への敷居が高い。結婚となるとお金が絡んでくる。
働き方も多様化が進められ、非正規社員も増えている。 雇用形態別・男女別の婚姻率(2012年10月末時点で独身の20代だった人、「結婚した」はその後離婚した者も含む。就業形態は「結婚した」は結婚前、「結婚していない」は2015年11月時点)の調査の結果は、男性の正規社員の2割強が結婚しているのに対し、非正規社員の婚姻率は7.6%しかいない。女性の正規社員の婚姻率は30.5%、非正規社員の婚姻率は24.6%だった。非正規社員は、低賃金や不安定な雇用、能力アップの機会が少ないなどの問題があり、結婚に対しては消極的だと分かる。
多様化が進み、結婚だけが全てではない時代になった。コロナ禍によるコロナ離婚も話題になって、他人と暮らしていく難しさを実感する。将来は結婚するつもりがないという人も増えた気がする。特に女性も稼げるようになったので、1人で生きていけるほど十分な経済力を持っているとわざわざ結婚する必要性を感じない人も多くなっただろう。最近では、芸能人でも別居婚をとっている人がニュースになり、賛否両論あったが、多様な生き方を認めていくならば、PACS(Pacte Civil de Solidarite)のような制度も必要になってくるかもしれない。ただ同性婚すら議論が進まないお堅い日本だと、こういった柔軟な対応は難しいかもしれない。
【女性の社会進出と少子化】
少子化というと、女性就業率が上がると出生率が下がるという意見が出てくる。しかし、スウェーデンやデンマーク、アイスランド、ニュージーランドのように女性の就業率が高い国はどこも出生率が高い。女性の社会進出に異議を唱えるのではなく、男性の働き方を改善し、家事育児を夫婦で分担し、共働き世帯を社会で支えることが重要なのだ。
共働きだと家事の分担が当たり前だと思うが、やはり女性の方に負担がかかる傾向があり、まだ女性が家事をする風潮が残っていると感じる。度々、家事の分担についてSNSで議論がされているが、パートナーと2人でちゃんと話し合うことが大事だと思う。子育てに関しては、男性の育児休暇が取りやすい社会にしていくのと同時に、父親側が自分の子供でもあるいう責任感を持つべきだと思う。
少子高齢化が進むことで、様々な面で問題が起こり負のスパイラルになる。高齢化対策も大事だが、これから国の未来を作るのは子供なので政府は子育て支援に力を入れて産みたい女性が安心して産める社会を実現して欲しい。これは若い人達にだが、しっかり政治に興味を持って選挙に行き、若者の声が政府に届くようにしなくてはならない。でなければ、ずっと高齢者に有利な政策ばかり打ち出され、若者にお金が使われなくなってしまう。
《出典・参考文献》
経済社会評論
38.「異次元金融緩和」政策のリスク
「 〜国債ビジネスの恩恵と「一億総債務者」化〜」
山田博文
閲覧日2022/1/18
http://shakai.edu.gunma-u.ac.jp/~yamachan/contents/forum/cn13/pg381.html
カブコム証券
異次元金融緩和
閲覧日2022/1/18 https://kabu.com/glossary/kabu3101.html
ZAI ON LINE
米国株「GAFAM+α」の中でも、2022年も株価上昇に
更新日2022/1/3
閲覧日2022/1/18 https://diamond.jp/articles/-/291739
BBCニュース
米テキサス州、妊娠6週以降の中絶禁止法を施行 連邦最高裁は差し止めず
更新日2019/5/31
閲覧日2022/1/18
https://www.bbc.com/japanese/48469825.amp
AERA
女性の就業率が高い国=出生率高い? 海外の例から見えたこと
更新日2016/6/1
閲覧日2022/1/18
https://dot.asahi.com/amp/aera/2016053100259.html
CLAIR Paris
コロナ禍で振り返るパートナーシップ制度「PACS」
更新日2020/12/10
閲覧日2022/1/18
https://www.clairparis.org/ja/clair-paris-blog-jp/blog-2020-jp/1441-pacs
Yahooニュース
正規社員より非正規社員の方が恋愛や結婚をするのは厳しい
更新日2018/7/7
閲覧日2022/1/18
https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20180707-00087979
BUSINESS INSIDER
なぜ日本では同性婚の議論が進まないのか? アメリカとの違いから見える日本の現在地
横山耕太郎
更新日2021/12/1
閲覧日2022/1/18
https://www.businessinsider.jp/amp/post-246360
公明党
非現実的な給付つき税額控除
更新日2016/3/17
閲覧日2022/1/18
https://www.komei.or.jp/news/detail/20160317_19468
PRESIDENT Online
なぜコロナ禍でも「生活保護の受給者数」はまったく増えていないのか
桜井啓太
更新日2021/2/18
閲覧日2022/1/18
https://president.jp/articles/amp/43315?page=1
ヤッパン号
シンガポールに関するQ&A
ISHIN
SG 永井貴之
閲覧日2022/1/18
https://www.yappango.com/faq/singapore%E2%80%9060.html
Create 転職
ベーシックインカムの意味とは
更新日2021/12/12
閲覧日2022/1/18
https://www.job-terminal.com/s/features/ベーシックインカム/
iPhoneから送信
渡辺温貴
社会保障法
〜所得保障と経済社会政策〜
第2次安倍政権の放った3本の矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)のうちの鏑矢ともいうべき矢は、日本銀行を巻きこんだ「異次元の金融緩和」政策である。非伝統的と評価される超金融緩和政策の特徴は、以下の4通りである。
第1に、メディアを利用して強いメッセージを発信し、世の中の雰囲気を変え、期待感を高揚させようとする一種の「口先介入」を先行させていることである。「異次元の金融緩和」、「2年で2倍の資金供給」といった強いメッセージは、情勢を先読みして動く内外の浮気な投資家の関心を目覚めさせ、すぐに国債価格の上昇、株高、円安となって表面化し、「安倍バブル」
が発生した。その結果、国債・株式などを保有する内外の投資家の金融資産は上昇し、利益に浴したが、国民の生活は、円安による輸入物価の上昇で悪化した。第2は、金融政策の操作対象を金利から、資金供給量に変更し、この資金供給量を2年間で2倍にし、日本の経済社会に溢れかえるマネーを注ぎ込もうとしていることである。すでに金利はゼロ近傍に張り付いているので、これ以下に下げようがないので、「異次元の金融緩和」を実施するには資金供給の量そのものを増大させることになったわけである。実体経済の成長をともなわない過剰なマネーの供給は、金融資産や不動産関連のバブルを膨張させることになる。第3に、資金供給を倍増させるやり方は、日銀が毎月7兆円ほどの国債を金融機関から大量に購入し、その購入代金を提供するやり方(日銀当座預金残高の積み増し)である。日銀が毎月7兆円もの国債を購入するようになると、それは新規に発行される国債の7割
ほどが日銀引受によるものであり国債発行の歯止めを失う。第4に、日銀が、株価や不動産価格の動向に直結するリスクの高い金融資産(ETF、J-REIT)も購入対象にしたことである。「異次元の金融緩和」は、資金供給量だけでなく、リスクの高い金融資産にも手をだす「質」にも配慮した「量的・質的金融緩和政策」の特徴をもつ。これは、「アベノミクス」の金融政策のねらいが、株価や不動産価格も上げようとしていることを示唆している。
GAFAMを代表とするIT企業群は、ソフトウェアや優秀なエンジニア、働きやすい環境作りなどに積極的に投資し、財務諸表に載らない「非財務資本」をうまく蓄積してきた。翻って、日本の企業は環境変化への対応や人材への投資を怠ってきた、と言わざるをえない。例えば人材への投資という点では、入社時や昇進時に数日程度の研修を行うことはあっても、従業員のスキルアップにつながるような投資を地道にしていない傾向にあった。またDX(デジタルトランスフォーメーション)が近年話題にはなってきたものの、単純な業務の「デジタル化」にとどまっている例は枚挙にいとまがない。インターネットやさらにその先の革新的な技術による新たな事業の創出に結びつくことは稀ではないだろうか。数字からも日本企業の出遅れ感は明らかだ。PBR(株価純資産倍率)は、倍率が高いほど「非財務資本」が大きいことを表すが、日本企業のPBRは1倍付近で停滞している。アメリカの上場企業平均が約3倍なのに対し、明確に低い水準だ。東証1部でも1000社以上がPBR1倍を下回る、すなわち時価総額が純資産より少ない状態にある。アメリカ率いるGAFAMはこれらの背景がアメリカの賃金の伸びに繋がっている。それに対して日本の賃金は30年間横ばい状態であると言える。
生活保護受給者数は約214万人。平成27年3月をピークに減少に転じた。生活保護受給世帯数は約164万世帯。高齢者世帯の増加により、世帯全体は増加しているが、高齢者世帯以外の世帯と生活保護受給率については減少傾向が続いている。しかし、新型コロナウイルスの影響に失業等の経済的な大打撃の影響力はすさまじく、それに伴う新型コロナウイルスの経済対策として一律10万円の給付が実現したことで、ベーシックインカム(BI)に対する注目が高まっている。生活に必要な現金を中央政府が一律・定期的に給付するBIは、「貧困の撲滅」や「働き方の改善」といったメリットも論じられているが、経済学者や財政学者の中では反対論や警戒論も根強い。その理由は、主に次の三つの点に集約される。
第一に、BIが社会保障給付の切り下げを意味するのではないかという懸念である。現在の社会保障体系では、年金、生活保護、失業給付、児童手当・児童扶養手当といった現金給付が既に存在している。BIによってこれらの現金給付の水準が引き下げられたり、合算して据え置かれたりするのであれば、再分配政策(租税制度や社会保障制度などを通じ、所得格差を縮める政策)としては「後退」することになる。
第三に、インフレへの恐怖である。BIを現金給付の切り下げや現物給付の市場化を伴わない体系、すなわちいかなる歳出も削減せず、財政赤字の拡大によって設計した場合、一国の供給力が一定とすれば、需要だけが増大することになり、短期的にはインフレに帰結する恐れがある。物価上昇は資産を持たない低所得層ほど実質的に所得が目減りし、結局は低所得層に負担のしわ寄せが集中することになりかねない。
このように、警戒されがちなBIではあるが、現金給付と租税負担を組み合わせて普遍的に給付するのは、必ずしも突拍子もない考えではない。その代表的な例が、主に欧米で導入されている「給付付き税額控除」と呼ばれる制度で、所得税の課税額より控除額が大きい場合、その分を現金で給付する仕組みである。
この給付付き税額控除が導入された背景には、各国で広く採用されている所得税の基礎控除に再分配効果上、欠陥があるとの認識がある。所得税には一般的に基礎的な控除が存在し、日本でも2019年まで一律38万円の基礎控除があった(20年から所得に応じた控除に変更)。これは、課税によって生活が立ち行かなくなることを防ぐため、最低生活費には課税しないという考え方に基づいている。
しかし、最低生活費の非課税=所得控除は、所得が高くなるほど税率も高くなる累進税率の所得税体系では、高い税率を掛けられる高所得層の基礎控除分も非課税となるため、高所得層により大きな利益をもたらす。また、非課税世帯のような低所得層は、そもそも基礎控除分を課税所得から控除しきれず、制度からほとんど利益を得られていない。こうした欠陥を抱えているため、所得控除の再分配効果は限られている。
ちなみに日本と比較的近いシンガポールではCPF(Central Provident Fund) と呼ばれる制度があり日本語では中央積立年金と呼ばれることもあるが、日本の厚生年金と似ているこの制度、日本の厚生年金が賦課方式(今の現役世代からの年金が今のリタイヤ世代への支払いに充当される制度)をとるのに対し、CPFは積立方式(自分が現役世代に支払った年金は積み立てとされ、将来、自分で受け取ることになる制度)である点で大きく異なる。
BIと給付付き税額控除は、異なる思想と問題意識を背景としているが、給付付き税額控除の再分配効果の有効性は多くの財政学者が認めている。社会保障の組み替えとしてのBIではなく、所得税の組み替えとしての給付付き税額控除であれば、賛同者はもう少し増えるだろう。ただし、給付付き税額控除の導入には正確な所得の捕捉が不可欠で、そのための体制整備などに課題は少なくない。
株式会社野村総合研究所の調査によると、2033年には空き家数は2,150万戸、空き家率は30.2%まで上昇すると予測されてる。所有者が不明な土地も多く、今まで以上に空き家対策が必要となるが、2021年現在、空き家の実態を株式会社カチタスが「空き家所有者に関する全国動向調査」を実施。空き家の建物形態を調べたところ、78.1%が「戸建て」という結果に。この割合はマンションの4倍以上に相当し、空き家の大半を戸建てが占めている「空家問題」また所有者が不明な土地の発生抑制や解消を目的とし「相続登記義務化」が2021年4月21日に不動産登記法の改正法が国会を通過した。土地や建物の相続は現金と異なり分割が難しく、相続人が多いと遺産分割協議が成立しなかったり、誰も住む予定がなく相続を望む人がいなかったりといった理由で、登記をしないまま放置されるケースが多々あった。「相続登記義務化」の施行により、所有者が不明な土地の減少が期待されるとともに、相続人は早い段階で、土地や建物の今後を考える必要があると言える。
女性就業率・労働力参加率相変わらず出生率に対してマイナスの影響を持つが、両立度自身は国家間の分散も大きくなってきたので、説明力が高まり、出生率に強い正の影響を与えるようになる。 そうなることにより女性の労働力参加率が両立度を通して出生率に間接的に正の影響が与えることになる。
中絶禁止と女性活躍を取り扱う上でアメリカの事例が分かりやいので例に挙げることにする。中絶禁止を巡る争いの歴史は長く、初めは社会的に女性に伝統的な家庭での役割を求める動きが強まり、女性の権利を抑制する動きが出てくる。また医師会も助産婦などの中絶手術を禁止することで、自らの利益保護を図り、中絶を犯罪とする動きに加担した。さらに19世紀後半、出生率低下が顕著になり、政府も中絶禁止に乗り出した。
ただ、こうした中絶を禁止する動きの結果、望まぬ妊娠をした女性は闇で中絶をすることを強いられた。その結果、多くの女性は死亡するか、不妊になった。
20世紀に入ると移民が増えた。移民女性の多くは貧しく、子供を産めないため、わずかの手術費を握りしめ、中絶をする闇の病院の前に列を作った。中絶禁止が、逆に多くの女性に苦痛を強いた。ただ裕福な中産階級の女性は、信頼できる医師によって安全な中絶手術を受けることができた。その結果、1950年代にはアメリカでは年間100万件を超える違法な中絶手術が行われた。毎年、1000人以上が死亡した。違法な中絶手術によって死亡した女性の75%が黒人女性であった。中絶問題は、同時に「女性問題」でもあり、「人種問題」でもあった。こうした背景の中で、1960年代にはいると女性解放(フェミニスト)運動が始まり、中絶の合法化を求める声が強くなる。幾つかの州で中絶は合法化されたが、レイプや15歳以下といった限られた条件の下での合法化であり、完全なものではなかった。また、中絶をするかどうかの判断は医者に委ねられ、女性の主体的な判断は認められていなかった。手術費は高額で、一般女性が恩恵を受けることはなかった。アメリカの中絶問題の決定的な転機となったのは、1973年1月22日の最高裁の「ロー対ウエイド判決」である。
1970年3月、テキサス州で一人の未婚女性が、「母体の生命が脅かされる場合以外の中絶を禁止する州法は憲法違反である」という訴えを起こした。連邦地方裁、連邦控訴裁の判決で原告の主張は認められたが、州法の執行停止の請求は棄却された。原告、被告ともに判決に納得せず、最高裁に上告した。最高裁の審理が行われた時、原告の女性は既に出産していたため、裁判は集団訴訟の形で行われた。
判断基準から宗教的要素を排除しているのも大きな特徴であった。妊娠期間を3期に分け、妊娠第1期は妊婦が中絶に関する決定を行う権利を持ち、2期は州が妊婦の安全を考慮して中絶を規制できるとした。3期は胎児を保護するために中絶を禁止できるとした。中絶に関する権限の一部が政府に残されたが、女性にとっては大きな勝利であった。
現在においてもこの議題の賛否両論はあるが、中絶を規制する法的な枠組みがなくなることになれば、それと同時に女性の社会的地位に関する新たな問題も出てくるだろう。「中絶問題」はお互いに妥協の余地のない問題であり、様々な問題が絡み合って出てきているのが現状でもある。
低出生力は高度に発展したポスト近代的な社会経済システムと,変化が緩慢な家族システムの葛藤の結果と見られる。経済の成熟に伴う低成長と若年労働市場の悪化,人的資本投資の重要性の増大,女性の労働力参加と伝統的性役割の衰退といったポスト近代的
に最も耐性が強いのが北西欧型家族パターンであり。それとの差異が大きいほど葛藤は大
きく出生力は大きく低下する。出生力低下以外にも、結婚力低下・離婚率上昇・国際結婚
の増加といった側面でも儒教倫理の影響によって変動を示している。
一方で台湾での公的部門における高いジェンダー平等度の達成や、韓国の個人戸籍制度
の成立など、政治的・法的に介入が容易な領域では、日本以上に先進的な制度が確立され
た側面もある。そうした介入が容易な領域における変化の急激さと、介入が困難な家族意
識・規範における変化の緩慢さの乖離が、ポスト近代的家族変動を激化させている側面も
あろう。特に台湾の出生力低下は、公的部門と家族部門におけるジェンダー関係の乖離が
原因となっている可能性がある。儒教圏の極端な低出生力がこうした文化的基層に根差す
ものである場合、日本との格差は長期間維持されることが予想される。その場合、韓国・
台湾の少子化は長期間続くだろう。
正規社員と非正規社員との間には生計の安定感の差異がある。それは異性関係にどのような影響を及ぼしているのか。結婚観や異性との関係の実情を、内閣府が2018年6月に発表した「少子化社会対策白書」での解説をきっかけとし、厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査(平成24年成年者)」(2012年10月末時点で20代だった男女およびその配偶者に対し、同年から毎年同一人物を継続的に調査していく連続調査。毎年1回調査が実施され、最新の各調査結果のうち、検証に値する調査項目における最新調査結果の数値から確認する。
まずは第1回調査時点で独身だった人における、直近調査までの間に結婚したか否かを就業状態別に見ていく。「非正規雇用として採用されている非正規社員」はパート・アルバイト、契約社員、派遣社員が該当する。また「結婚した」はその後離婚した人も含まれている。
非正規社員の方が結婚願望は薄い。元々結婚への意欲が無いので非正規社員としての就業状態を望んでいるのか、非正規社員だからこそ金銭的な不安感を持ち結婚が無理だと判断し、したくないと答えているのかまでは今調査項目だけでは確認できないが、非正規社員の方が結婚願望が薄い、明確な意識を持っていないのに違いは無い。結婚願望と同じく相関関係はともかく因果関係までをも説明できるものでは無いが、少なくとも非正規社員の方が正規社員よりも、結婚を望む人は比率的に少なく、結婚を望んでいたとしても子供の数は多く望んでいないことが分かる。多分に就労そのもの、そして金銭的な不安定さが家族構築への足かせとなっていることが想像できる結果には違いない。
異性の交際相手がいる率もまた具体的な結婚観、子供の希望人数とまではいかなくとも、交際している異性がいるかいないかの点でも、正規・非正規間に差は生じている。
雇用形態・男女別の交際異性の有無時間の拘束の点などでは非正規社員の方が融通は利きやすいはずだが、金銭面や生活の安定性の問題は、異性と付き合う余裕のある無しにも関わってくるようだ。また、付き合う異性との巡り合いの機会の点でも、非正規社員は正規社員と比べて恵まれていないのかもしれない。つまり、非正規社員であることから経済面と結婚願望が低いことが結果的に婚姻率低下の原因を担っているといえよう。
PACSが導入された背景としては当時、その主な目的は、法律婚が認められていない同性カップルの身分保障であった。今でこそフランスは2013年に成立した「みんなのための結婚法」により同性婚が認められているが、1980年代までは同性愛に関する刑事規則が存在し、異性愛と同性愛には法的な区別が残っていた。その後、1985年に性的差別が人種差別同様禁止され、そこでは、同性愛などの性的指向に基づく差別も禁止されることになったことから、当時、法的地位を与えられていない同性カップルの保護についての議論が徐々に進められた。同性カップルは、事実婚の異性カップルには認められる社会保障や福利厚生などが認められないことや死別の際の財産の取扱いなど、様々な面でパートナーが社会的に認められないなどの不都合に直面していたことから、同性カップルの身分を保証するための運動が展開されていった。当時流行していた感染症であるエイズ禍にあって、パートナーの入院や死別などに際して様々な障害があったことも一つの契機と言われている。
また、1960年代後半以降フランスでは五月革命や女性解放運動が起こり、結婚や性に関する女性の権利や価値観が大きく変化したことも背景にあった。こうした変化に伴い、女性の経済的自立が促進されたことや、男女間の関係の変化に伴い、法律婚というかたちをとらないカップルが増加した。このような「Union Libre(ユニオン・リーブル=自由な関係)」、「Cohabitation(「同居」「同棲」の意)」、「Concubinage(内縁関係)」等といった事実婚関係は、当初は結婚に至るまでの「試行期間」と捉えられていたが、これが法律婚主義と共に徐々に社会に根付いてきていた。1968年から2001年の間に、こうしたカップルは、約8倍となり、250万人に上っていた。
文字数6948
参考文献
・山田博文のNETIZEN越風山房
・ヤフーニュース〜日本企業がGAFAMの足元にも及ばないのは、「日財務資本」の差にある〜
正規社員より非正規社員の方が恋愛関係をや結婚をするのは難しい
・エコノミスト〜実現可能なベーシックインカム「給付付き税額控除」とはなにか〜
〜自由の国アメリカで「中絶禁止」の現実味〜
・生活保護制度の現状について Microsoft PowerPoint
・ARUHIマガジン 〜空き家問題 所有者の多くが2024年「相続登録義務化制度」を知らないという結果に〜
・内閣府 第二節女性の継続就業と結婚・出産を巡る現状と課題
・カントに学ぶ意識の倫理学
・クレアパリ コロナ禍で振り返るパートナーシップ制度
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工藤利騎
中江章浩先生
法学部法律学科3学年工藤利騎です。
社会保障法Uのレポート試験を提出させていただきます。
何卒よろしくお願いいたします。
社会保障法 「所得保障と経済社会政策」
19j113014 法学部 法律学科 工藤利騎
2022/01/19
(1)結論
日本の所得保障について、速やかな改善が求められる。
(2)理由
統計によると、米国や中国などの先進国が、10年の間でGDPが2倍から3倍に増加しているのに対して、日本は10年前から全く変わっていない。そのため、他国と比べてもGDPが成長しているとはいえない。加えて、天引きにより保険料が引かれるため、給料の手取りが少なくなっている。また、少子高齢化に伴い若者が減少している現状では、将来受け取るはずであった年金が、少なくなる可能性がある。このように、GDPが成長していない日本において、手取りでもらえる給料が低いため、老後の生活を支える自分年金を作ることも難しいといえる。したがって、現行年金制度の改正を行わなければ、自身が日本で老後を迎える上で、不利な立場に追いやられるのではないかと、考えるからである。
(3)根拠
日本における賃金の伸び悩み
かつての日本は、1985年9月22日のプラザ合意により、為替レート安定化に関する合意を行ったため、賃金においてトップであったが、急速な円高による低金利政策を継続していた。その結果、日本の輸出企業が弱体化したため、国内において、景気の悪化や採用停止、非正規化などの就活氷河期に突入した。そこで、景気の底上げのために、アベノミクスが行った経済対策が、大規模な金融緩和である。これにより、日銀が金利を引き下げることで、人々や企業がお金を借りやすくするという狙いがあった。しかし、景気の良い状態とは金利が上がる円高を指す点から、1950年から2020年にかけて金利が6%近く減少している日本の現状は、デフレの機構があると考えられる。加えて、長期的な金融緩和によって、預金と貸出金の金利差で稼ぐ地域金融機関に、大きなダメージを与えている。このように、大規模な異次元金融緩和と日銀引受により、一時的には株価や雇用などのマクロ経済指標が改善されたが、超低金利であることから国や地方の債務残高が増え続けているため、財政の状態は悪化しているといえる。そのため、LM曲線のような右上がりになる政策を打ち出すことが、国民所得を増加させる上で必要であるのではないかと考える。
また、世界的に活躍するIT企業としてGAFAMがあげられる。統計によると、日本の東証一部上場2170社の時価総額が550兆円であるのに対し、GAFAMは5社で560兆円のため、株式市場において巨大ITに資金が集中している。情報社会が進展している現代において、インターネット事業であるこれらは、便利なツールとして幅広い年代に利用されているため、今後の社会において多大な影響力があると考えられる。よって、賃金の伸びとGAFAM(Google Amazon Facebook Apple
Microsoft)の関係性について、将来性がある企業を選ぶことが、安定な賃金を受け取る上で重要であると考える。
日本の所得保障
日本の税率の種類は、比例税率・累進税率・逆進税の3つであり、給付付き税額控除の課題への議論が進められている。給付付き税額控除は「負の所得税」といわれており、税額控除で控除しきれなかった残りの枠の一定割合を現金にて支給している、個人所得税の税額控除制度である。しかし、年収700万と年収7億の人の税率において、年収700万の人の負担が大きいため、公平性という面での運用が難しいと考えられる。そこで、必要とされるのが、生活保護の受給である。1952年から2011年にかけて、生活保護世帯数が2倍以上になっている一方、保護率は10%以上減少している。特に1980年代のバブル期から、2000年にかけては、およそ20%減少していることから、生活保護利用者の増加に対して、利用率が減少している。生活保護が、「健康で文化的な最低限度の生活」を営むための制度である点から、人々の生活を支えるものであるため、幅広い層への活用が期待される。このように、生活保護受給率と給付付き税額控除については、日本の政策の遅行が影響していると考えられるため、これらの制度については国民に対して適切な説明をする必要があると考える。加えて、国民に対して政府が最低限の生活送る為の必要額を支給する政策である、ベーシックインカムへの議論も進められている。また、今後の日本の年金制度を支えるためには、シンガポールで行われている中央積立基金への積立方式を活用するべきである。年金への取り組みが個人責任である点から、低所得者に対しては老後が大変であると懸念されているが、家族制度があるため、高齢者を支える政策がより良く行われているといえる。このように、シンガポールCPF(Central Provident Fund)とBasic Incomeの両方を日本の政策に取り入れることが、日本社会の将来を考えることで重要となる。
平成30年度において、日本の空き家は848万9千戸であり、全国の住宅の13.6%を占めている。高齢化が進む日本において、今後空き家の増加が懸念されるため、無駄な空き家の活用が求められている。そこで、対策として議論されているのが相続登記の義務化である。空き家状態とは、所有者不明の土地であるため、放置された土地の所有者の捜索に多大な費用と時間がかかる。したがって、不動産を所有している相続人が怠った場合の罰則を設けることで、空き家増加の対策を行っている。この空家問題と相続登記義務化については、高齢化が進むほど過密な問題が増すため、速やかな対策を行う必要があると考える。
日本の少子化問題
現在の日本社会において問題となるのが、増え続ける社会保障給付費に伴う、将来世代への負担である。かつての日本において、団塊世代の数がおよそ810万人であるため、毎年270万人の出生率を記録していた。しかし、2020年に産まれた赤ちゃんが約84万人でるため、日本の出生率は大幅に減少しているといえる。そして、日本と同様に韓国の出生率も低下しているが、これは儒教的思想が原因であると考えられている。儒教の影響が色濃い家族関係においては、家父長制や戸主制を最たるものとして考えられてきた。1980年代の民法中改正法律により、家族法が改革されたため、夫婦平等や男女平等が謳われるようになったが、2021年の現在においても、性別格差が大きいことから、男女平等が是正されているとはいえない。そのため、儒教倫理と少子化の関係性について、儒教文化圏である日本の社会においても、少子化対策を議論する上で重要な要因になると考える。また、キリスト教徒の多いアメリカのテキサス州においては、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を禁止する州法の発効が、女性の権利の侵害であると議論されている。子供を産む権利と生まない権利の関係性から、賛成と反対の意見が対立しており、女性の権利という観点から話し合いが進められている。このように、中絶禁止と女性活躍などについては、宗教的・政治的な思惑が重なっているため、これらを改善するための運動を盛んに行うことが、思想や法律の改正へ繋がると考える。
日本が陥る問題としては、2025年には団塊世代の人々が後期高齢者になる点から、超高齢社会に突入することとなる。よって、高齢者に対して若者が少ない現状において、若者世代への負担が増え続けることが懸念されている。そこで考えられる少子化への対策として、日本の雇用形態の改善が考えられる。日本においては、1985年から2010年にかけて、655万人であった非正規社員が1755万人とおよそ3倍に増加している。そのため、年々非正規の雇用が増加しており、非正規社員内訳の推移からその半分以上が、パートとアルバイトであり、会社規模別の非正社員の割合から、会社の規模が小さくなるほど非正規社員の割合は大きくなっている。そして、雇用形態別年齢別賃金の推移から、正社員と派遣労働者では2倍近く時給に差が生まれる。このように、正規社員と非正規社員とでは、賃金に格差があるため、年齢が上がるほど収入差が大きく開くという問題点がある。また、厚生労働省による雇用形態別婚姻率の分布によると、25歳から29歳の男性雇用者において、正規従業員が34.4%であるのに対し、非正規従業員は14.8%とである。2倍以上差があることから、非正規雇用者が増加する限りは、子供を養えないと考える人々も増加するため、結婚率の低下に繋がっていることが考えられる。したがって、非正規社員と婚姻率の関係性について、今一度深く考察するとともに、正規労働者の採用率を増加させるといった改善が期待されるべきである。
また、現在の日本においては、女性の社会進出が期待されている。内閣府によると、仕事や子育てを両立できる環境整備の遅れが、今日の少子化問題に繋がると懸念している。女性の年齢別就業率によると、結婚・出産期にあたる25歳から35歳にかけてM字のカーブが描かれているが、近年ではその谷の部分が浅くなっている。この溝が深いほど、女性が結婚や出産、育児期になると離職をし、家事や育児に専念するというライフスタイルが確立していることを、指し示している。そのため、女性が外で働く方が、子育てをする際にも安心できるということ観点から、早くからこのM字カーブを是正する取り組みをおこなうことが、少子化対策に繋がる。よって、出生率と女性就業率という関係性について、より女性が働きやすいような社会政策を打ち出す必要があると考える。
しかし、女性の社会進出を考える上で、日本の法律婚主義的思想が課題となる。世界各国の婚外子割合によると、2008年において米国が40.6%、イタリアが17.7%であるように、先進国において出生率が高い一因となっているのが、婚外子の多さである。しかし、日本は2.1%と先進国の中でも低い割合である。この婚外子の割合が低い要因として考えられるのが、法律婚主義である。かつての日本においては、キリスト教の影響により一夫一妻制が尊重されていた。そこで婚外子は「罪の化身」等と社会的に汚名を負い、父母の関係においてさえ法律上の権利義務を否定されていた。このような主張は1970年代以降に改革されたが、婚外子への社会的偏見は残っているだろう。加えて、日本においては、事実婚のカップルなどは、法律上の夫婦に当たらないという点から、法律婚と比べて、受けられるサービスなどに大きな違いが生まれる。つまり、PACS(Pacte Civil de Solidarite)と法律婚主義という、夫婦の関係性の示すこれらの考え方について、婚外子への不平等をもたらす法制度や、社会保障制度を見直す必要があるだろう。
(4)まとめ
このように、社会保障だけでは、満足な年金を受け取ることができなくなるため、政策の遅行に対しての改善が求められるべきである。また、婚外子が、結婚していない女性により出生した子供のことを指す言葉であり、嫡出でない子や非嫡出子とも呼ばれているため、「結婚してから出産するのが普通」という風潮がある日本においては、結婚前から妊娠をすること自体への抵抗が強いといえる。したがって、日本の婚姻関係について、国ごとの文化や価値観を踏まえた上で、事実婚に法律上の関係を認めるような是正をする必要があると考える。
参考文献
中江章浩、社会保障のイノベーション、信山社(2012年)
在青島日本国総領事館 HP(最終閲覧日1月18日)
https://www.qingdao.cn.emb-japan.go.jp/jp/publicrelations/index_150917.html
厚生労働省 HP 生活保護制度(最終閲覧日1月17日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
NPO法人 空家 空地管理センター(最終閲覧日1月17日)
https://www.akiya-akichi.or.jp/what/troubles/
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